〈対象の宝力を確認、『蒼天皇』と認識。どうぞお通り下さい〉
ベネチア滞在二日目。
昨日は色々あったし疲れてたけど、結構会食は楽しかったし何より一人一人に部屋が割り振られてるのが最高だった。
いつもは誰かとなりにいるからな、一人で誰の目を気にしなくていいっていうのは結構楽なものだ。
今日は天剣十三将だけの会議の日、師匠たちとは此処で裏切り者を見極める事にしている。
三日目だともう直ぐ帰らないといけないからドタバタして見逃しちゃうかもしれないし。
俺が今の所一番怪しいと思ってるのは『翼竜』。
理由としてはこいつは結構黒い噂が絶えなかった奴だし、何より南アメリカが陥落した時に丁度出払ってたって言うのは幾ら何でも都合が良すぎる。
個人的には『爆破王』も怪しいとは思うけどあいつは古参の天剣じゃないし、もしかしたら共犯っていうのもあるかもしれないけど取り敢えず主犯じゃないのは確かだ。
師匠もフェルリア先生も昨日のうちに全員の話したみたいだけど、俺は結構嫌われてるからなぁ、昨日のを見たら誰でも裏切り者に見えてくるし、今日で見極めるとしますか。
そんな事を考えながら俺はオートロックのドアを潜り抜けた。さあ、世界最強の集まる会議の開始だ。
〜〜〜〜〜〜〜
特別に用意したであろう巨大な円卓。それを囲んで見知った人物達が座っていた。空気は静寂に包まれており、悪く言えば歓迎されていない事がありありと分かる。
「全員揃ったな。それでは天剣十三将の会議を始める」
前提として俺らは全員の非武装だ。俺は特例として前までバイザーのみ付けていたが、今はもう必要ない。
さらに言えば裏切り者が創生龍に繋がっている事がばれていないこの状況では俺の正体というものが、更に言えば俺そのものが餌となる。
まあ、事前に創生龍が裏切り者に情報を流していれば意味はないがまだあれから一ヶ月しか経っていない。
それに裏切り者が創生龍に加入したといってもまだ日は浅い。それならばそうやすやすと重要な情報を渡す訳は無いと思う。
「それで今回招集された理由は何なのだ?未だ我は聞いておらぬのだが」
そう言ったのは『百人将』、序列4位ながらもかなり実力のある部下を持っているらしい。
「今回招集をかけた理由は三つだ。一つ目は最近の
司会を務める師匠の声に一斉にこちらに視線が向く。
円卓なので上座下座は無いが、取り敢えず俺が一番出口に近いので下座である。
「ほう、それは興味深い。『天将』。妾達にも話さなかったという事はかなり切羽詰まった様子のようじゃな」
「ああ、俺ははっきり言ってこの中に裏切り者がいると思ってる」
「ほう、裏切り者と出たか。して、それはいかに?」
『嵐女帝』かそう言うと会議の空気が一瞬にして変わった。なんというか敵意に満ちた感じだ。そりゃそうだよないきなり裏切り者なんて言ったんだから、まあここでしか言うタイミング無かったけどね。
「まず一つ目はミーディア学園に対する完璧なタイミングの襲撃だ。ハッキングを受けた事は確かにミーディアに内通者がいたが、そいつだけでは実現不可能な事が沢山あった」
そう、確かにミーディア学園には内通者がいた。しかしそれだけではあんなに大勢力を動かせるわけが無い。そいつよりも権力のある者が情報を流していたと考えるのが普通。という事は内通者は天剣の裏切り者の部下という事となる。天剣の部下ならフリーダムナイツを持っていても不思議じゃ無いしな。
「そして二つ目、フェルリアが本部に報告へ行った帰りに起きた創生龍の襲撃だ。あれも事前に情報が漏れていたとしか考えられない。それにフェルリアは本部で足止めを食らったと言っていたしな」
「ふん、それではその『業炎』が裏切り者なのでは無いか?自作自演という可能性もあるだろう」
「それは無い。もし『業炎』が裏切り者なら創生龍の襲撃の際一緒に攻撃すれば間違いなくミーディアは落ちてた」
「その場には『天将』がいたのでしょう?それならば……」
「あの場にはジュライアが居た。勝ち目はなかったよ」
あの場には確かにジュライア・アクス・ヒスドマーノという創生龍最強の男が居た。その実力は師匠と同等。白夜もいて数で負けていたあの状況ならフェルリア先生があちら側だったならば負けていたのは確実だろう。
「ふん、感動の再会って事か?ええ?『業炎』よう!?」
「黙れ『爆破王』。私はあの者とは関係ない」
「おうおう、随分と冷えな『業炎』の名が泣くぜぇ?」
ちっ、やっぱりうざったいな。こいつやっぱり裏切り者か?今この場で天剣をバラバラにしても意味ないだろうに。
「まあ分かった。確かにそれはイージス内部の、それも上層部の裏切り者がいる可能性が高いだろう。しかし『天将』それだけでは天剣の中に裏切り者がいるとは限らないだろう?」
「セルディの本名が知られてた」
「それは誠か!?」
師匠のその言葉に『嵐女帝』がガタンと音を立てて椅子を蹴り飛ばしながら立ち上がる。
「ああ本当だ。朧火白夜がその事を知っていた」
「くっ、まさか本当に知っているとは……セルディ」
「どうした?『嵐女帝』」
「いや、なんでもない続けてくれ」
「……そうか?なら他の奴も結構考えといてくれ。多分この中に裏切り者がいるっていうのは間違いねえと思う……いいか、俺はそんな奴絶対に許さん。そいつは俺が息の根を止めてやる」
「おお、怖え怖え」
『翼龍』がそんな事を言う。ちっ、どいつもこいつも怪しく見えてきやがる。まあいい、次だ。
「ふん、では次の議題だが……」
「『蒼天皇』の正体についてだったな」
その話を引き取ったのは意外にも『絶対防御』だった。
その言葉にもう一度俺に視線が集中する。
「それについては本人から語って貰おう」
「はい、先ずは改めて自己紹介からお初にお目にかかります皆様。私の名は朧火鋼夜、一応天剣十三将の末席を名乗らせて頂いております」
「朧火!?まさか君……」
食いついたのは……『爆炎砲』か。この人は違うな。フェルリア先生にべったりだし。フェルリア先生もこの人だけは絶対に無いって言ってたしな。
「はい、私は創生龍第二席、『黒き太陽』朧火白夜の実の弟です」
「何故お前は創生龍に入らなかったのだ?兄の元へと行こうとは思わなかったのか?」
「はい、私はあいつを兄とは思っていません。何せあいつは家族を皆殺しにして創生龍に入る資格を得たのですから」
その言葉にみんなが押し黙る。
そして止めとばかりに俺は上着を脱ぎ捨てる。
「それは……」
「まさか……」
「君もしかして……」
「魔女……の誓約印?」
全員が全員恐ろしいものを見たかのようにこちらを向く。
「はい、俺の妹。朧火紗夜は『憤怒』の魔女でした。そして紗夜は、俺は死ぬ間際に一つ誓いを立てた。その結果がこれです」
「『憤怒』……?まさかそれは……『テミスの鎮魂歌』……」
「その通りです『雷剣』殿。この存在を隠すため私は正体を隠す他ありませんでした」
「なるほど……で、その『テミスの鎮魂歌』は今までに何回使ったのかね?」
そう言ったのはまたも『絶対防御』だ。
「三回です」
「教えて貰ってもいいかね?」
「二つならば」
「最後の一つを教えてもらえない理由は?」
「裏切り者の存在がある為です」
「ふふっ、なるほどさすが『天将』の弟子だ。ミーディア学園に関する者たちの総意という事だな?裏切り者という者の存在は」
「はい」
「そうか、ならばいい。二つでいいから教えてはくれないか?」
「承知しました」
そう言って俺はぐるりと見回す。
「『テミスの鎮魂歌』の能力を知っているという前提で話させて頂きます。まず一つ目は『生存』7年前のあの日俺は紗夜を助ける為に白夜によって倒壊寸前の自宅へと入った。その時に紗夜は倒れていた鉄骨に足を挟まれていました」
あの日俺は目の前で紗夜が切られる光景を見た。
その倒れこむ紗夜を助ける為に俺は自宅へと入り、そして紗夜もろとも倒れてきた鉄骨に足を挟まれた。そしてその時にテミスの鎮魂歌が刻まれ、火災の発生した自宅からの生存を俺は願ったという訳だ。
その時の代償はよく覚えていない。
何故かその記憶が
そして二つ目は『傷の治癒』創生龍戦の時に使ったように俺は1日に一度どんな怪我でも自分のものならば治せる。
その代償は、片方の腎臓だったな。1日という制約が無かったらどれだけもっていかれていた事か。
「……」
場に沈黙が降りる。
さーて、俺のこの情報に食いつく裏切り者は誰だ?
俺は敢えて最後の一つを教え無かった。その理由は餌になるからと思った事と、それともう一つ。教えてしまえば裏切り者への対策が練りやすくなるからだ。
「その事に関してだが……」
さあ獲物はかかったのか?大物が釣れる可能性は……正直かなり高いと思ってる。さあ、どうだ?