「……と言うわけで我々の属するフランスとしては……」
「だが、そんな事をしてはイージスの反感を買うのではないですか?」
「俺っちはそんなこたぁどーでもいぃんだよ!反感勢力?殲滅すりゃあいい話だろぅが!!」
天剣十三将が集まっての会議三日目、最終日。
水の都ベネチアのある場所に集まっての会議は最終日だと言うのに全くもって終わる気配を見せなかった。
天剣だけでは埒があかないとそのパートナーも入り乱れての論議を交わすこととなったのだが、火に油を注ぐが如く会議が白熱するのみであった。
そんな論議に加わる気にもなれず暇を持て余す『蒼天皇』とそのパートナーはミーディアに戻った後の事を考えていた。
「……そうか……天剣に裏切り者が……」
「ああ、だからミーディアに戻ってからもまたどっかに出かける事になるかもしれない」
「ポーラ達には言わぬのか?」
「そうだな……俺はあいつらにチームを組んで貰おうとしてるしな……帰ったらあいつらだけには言おうかな」
「良いのではないか?……ミーシャというライバルが増えるのは辛いが……」
最後の方がよく聞き取れなかったが概ね同意してくれているらしい。
「そういやエレナ。お前もミーディア来ないか?」
「私……ですか?」
「うん。一応俺のオペレーターなんだし教師でもやれば?」
「……うーんそうですね。考えておきます」
「頼むぜお姉ちゃん。俺のチームのオペレーター頼んでるんだからよ」
「チーム名も決まって無いのによく言えますね」
「ん?決まってるよ?教えないけど」
「あら、そうだったんですか。それは楽しみにしておきます」
ふふっ、と笑う義姉に鋼夜も微笑み返す。
むむぅと声を漏らす美月の頭を撫でながら俺は師匠の方へと顔を向ける。
既に会場は混沌としており、さっきから怒号が飛び交っている。天剣の会議では珍しくもない光景なのだが……今日はいつもと空気が違うと感じるのは気のせいだろうか?
なんだか、あの時ーー白夜と戦った時に感じた、殺気が感じられるのは。
「おーいそこの色男、お前はどうなんだ?」
「……って俺っすか?」
「お前以外に誰がいるよ『蒼天皇』」
声を掛けてきたのは『翼竜』だ。
要注意人物筆頭に声を掛けられ俺は密かに体を強張らせる。昨日までならばまだしも今は美月とエレナが近くにいる。百歩譲ってエレナは多分自力で時間を稼ぐから良いとしても美月はまだ第二世代だ。
イージスの基準ではまだ公式戦闘に出せるレベルでは無い。天剣クラスに狙われてはひとたまりもなかろう。
今この状況で仕掛けてくるとは思っていなかったがそれでも警戒を全くしないほど鋼夜はバカでもなかった。
「フランスの国土防衛作戦、「マーレボルジェ」。どう思う」
「すみません聞いてませんでした。って事でもうちょいほっといて貰っていいっすか?」
「おう、お前は裏切り者の特定にでも躍起になっとけ」
薄ら笑いを浮かべながら『翼竜』は他の天剣に意見を聞きに行った。
そして近づいてくる一人の影。
「今はお暇かね?『蒼天皇』」
「『嵐女帝』……」
妖麗な雰囲気を漂わす全女性(男性)の憧れ、『嵐女帝』であった。
「ほう、其方が『蒼天皇』のパートナー。『蒼天皇』共々若いの」
「い、いえっ、そ、そのっ、あのっ、えっと……」
美月はいきなり現れた憧れの『嵐女帝』にたじたじである。
「其方達からは心地よい力の波動を感じる……其方達にはまだ先がある。一つ聞きたい」
「何ですか?」
『嵐女帝』は周りを確認して小声で俺に何かを囁く。
「其方には何を捨てても護りたいものはあるか?」
「はい、たとえ自分の命を捨てても護りたいかけがえのないものが」
「そうか……妾もじゃ……命を大事にな」
『嵐女帝』の顔が悲しみに歪んだのは気のせいでは無いと思う。
「一つ忠告じゃ。誰も信用するな、天剣は……な」
その言葉の意味を聞こうとした時、ベネチア中にけたたましい警戒音が鳴り響いた。
〜〜〜〜〜〜〜
「おい、そこの生徒!!廊下を走るんじゃない!!」
急いで自分の部屋へと戻っているティナに聞き慣れない男の声がする。
「……何よあんた。私にタメ口きいていい男は師匠と鋼夜だけなんだけど?」
「俺は一年生徒会庶務、
「そうよ、分かったらさっさと退くのよ」
「いや、例え『姫』でも規律違反は規律違反、このまま逃したら会長に合わす顔がねえ、でも……」
「さっさと退くって言うのが聞こえなかったかしら?」
苛立ちを込めた視線をティナは翔に向ける。
「うっ……わかった今日は厳重注意で済まそう。一応聞きたい、なんで廊下を走っていた?」
「決まってるじゃない。そろそろ鋼夜の帰ってくる日にちだからパーティの準備よ」
「そんなんわかる方が不思議じゃないですかねぇ!?」
「まあいいわ、私の歩みを止めた罪は重いけど今日は機嫌が良いから不問に処すわ」
「……ちなみに平常時だと?」
「倒れる→無理やり起こす→また倒れるのループを私の気がすむまで行うサンドバッグにしてあげるわ」
「理不尽!?!?」
「まあそう言うことで私の気が変わらない内に。チャオ」
少々遅れてしまったが、まだ幸い鋼夜が帰ってくるのには時間がある。このくらいならば問題ないだろう。
そう思いティナは1人部屋へと戻るのだった。
〜〜〜〜〜〜〜
「それ、手伝いましょうか?」
ポーラが先生に言われて運んでいた教科書を指差してそう言ってくれたのは、ポーラの知らない女子だった。
「えっと……貴女は?」
「あっ、えっと私は一年生徒会書記の
「じゃあ……お願いしてもいい?」
「ええ!任せといて!!」
手伝ってもらった事もあってポーラは直ぐに教科書を運ぶ事に成功する。
「ありがとう亜紀ちゃん、助かったよ」
「ううん、私も貴女とは話してみたかったんだ。貴女結構有名なんだよ?」
ポーラはこの学年で初めてミーディアに入ってからフリーダムナイツの進化を果たした生徒として結構な知名度である。
「友達になろっ?ポーラ」
「っ!!うんっ!」
確かな友情が二人の間に芽生えるのを感じながら二人の少女は会話を交わす。
〜〜〜〜〜〜〜
「ふー、やはり汗を流すのはいいな」
ミーシャは一人で武道場で素振りをしていた。
ミーシャはナイトリオンへとフリーダムナイツを進化させてからと言うもの、毎日その重さに慣れるため一時間の素振りを続けていた。その成果もあってか最近は素振りの量も増えてきている。
「あっ、先客が居たのね」
ガラッという音と共に襖が開き、一人の少女が入ってくる。
「見ない顔だな君は?」
「ああ、私は一年生徒会会計、
「ああ、よろしく春」
ミーシャはポーラと違い名前が知られていることに驚いたりはしない、一ヶ月前の創生龍攻防戦で戦ったミーシャも中々の知名度を誇っているのである。
「よければこれから稽古に付き合ってくれない?私の戦い方も防御が主体でね」
「ああ、私で良ければいつでも付き合うよ」
「そう?じゃあ宜しくね」
数分後、金属音を鳴り響かせながら二人は稽古を続けるのだった。
〜〜〜〜〜〜〜
ーー同時刻インドネシアーー
けたたましい警戒音と共に爆音が響き渡る。
多数のグリモアが島を蹂躙していく。
インドネシアの人間も黙ったままでは無い。フリーダムナイツを着込み多数の戦力を注ぎ込み、グリモアの進行を食い止めんとする。
が、しかし……
「うわぁぁぁぁぁ!!助けっ……」
「や、やめっ……あぁぁぁぁぁあ!!!!!!」
「痛い、痛いよぉ……」
「ば、化け物がぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
グリフォンの圧倒的なまでの攻撃力に蹂躙は止まらない。
所用時間約三時間。
そのままグリフォン率いるグリモアは勢いを止める事なく真っ直ぐに北上を続けるのだった。
しかしそんな絶望でも希望はある。
「こ、こちらインドネシア……『シェムハザ』を確認……インドネシアは壊滅……『シェムハザ』はゆっくりと北上を開始……至急日本に緊急警戒態勢を……」
たった一本の希望の糸が紡ぐ思いは果たして届くのだろうか。