「総員攻撃の手を緩めるな!撃て、撃て!撃ちまくれ!!」
インドネシアと日本の間の海では夜を徹しての『シェムハザ』迎撃作戦が行われていた。
海上艦隊からの一斉射撃。自動照準システムなどという便利なものは無いので太平洋を埋め尽くす銀の艦隊一つ一つにはそれぞれに帰りを待つ家族がいる命が乗っている。
グリモアに対し通常兵器でトドメを刺すことは叶わない。
すなわちこれは帰れる見込みの無い片道切符であり、搭乗員はそれを承知で乗り込んでいる。
ただ、日本という国を、家族の場所を守る為に。
フリーダムナイツという希望に一途の望みを懸けて。
少しでも日本のイージスにシェムハザの攻撃パターンを見せるために1秒でも長く、一つでも多くの傷を。
そして3時間ほどの交戦の後、この戦いに参加した約350名の命と引き換えに三時間の戦闘データが日本へと送られた。
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「二年と一年は全員国外へ退避!横浜湾に停泊しているミーディア学園の大型脱出船に乗ってロシアへ避難!第三世代以上の戦う意思のある三年は此処に残り私の指示を仰げ!」
「慌てるなだし!ゆっくり、ゆっくりと焦らず進むし!!『蒼天皇』が来てくれるし!心配しなくても日本は大丈夫だし!!」
「こらそこぉ!走るなって言ってんだろ先輩!」
「お願いしまぁす……走らないで下さぁい……」
「こらぁ亜紀!声小さい!」
「ううぅ、ごめんね春……」
生徒会が率先して指揮をとり生徒達を避難させていく、ミーディア学園の一二年はイージスに正式に加入しておらず、殆どの生徒がチームに所属していないためイージスの正式な防衛戦に参加することは出来ない、三年生でもチームに加入していない者はいるし、それらの者はいくらやる気があってもシェムハザ防衛戦に参加させる訳にはいかない。
「どうしたのあなたたち!早く船に乗って!」
「嫌です」
「何を!?あなたたち一年生でしょ!?チームも組んでないのにシェムハザ防衛戦に参加させる訳にはいかない!此処にいても邪魔なだけ!とっとと乗って!」
「嫌です、私達はチームを組みますから」
「そんなにシェムハザと戦いたいし?チームの隊長は誰だし?言ってみるし」
「朧火鋼夜」
そう真っ直ぐに目を見て金髪の髪を長く伸ばした麗しき外見を持つ少女。ティナ・ルナセリアはそう言った。
その後ろにはティナに説得されたミーシャ達が不安そうに立っている。
「じゃあいいし、此処にいるし」
「メリー!!」
「いいし、使えなかったらシェルターに避難させるし……この子達の目は何かをやってくれる目だし」
「ああ!もう!分かったわよ!勝手にすれば!!」
ミーディア学園から全生徒を乗せた船が出航する。これでミーディア学園に残っているのは教師と生徒会、一部の三年生とティナ達だけである。
「ティナちゃん……本当に戦うの?」
「ええ、鋼夜が来てくれれば勝てるわ」
「何でそこまで鋼夜に……」
「それは鋼夜が私の騎士だからよ。鋼夜はきっと日本を……ううん、世界を救ってくれるって信じてる」
そうして日本の命運をかけた夜は更けていく。
〜〜〜〜〜〜〜
「時間だ。行くぞお前ら」
日本時間で午前8時。ベネチアでは午前1時。普通に考えれば夜である。しかしその時刻、天剣十三将はベネチアのあるビルに集まっていた。
「『蒼天皇』が居ないな。四人で我々に勝てるとでも?」
「はっ、あいつは日本に行かせる、お前らの相手は俺たちだ」
「じゃあ俺っちが『蒼天皇』を追うとするかぁ!じゃあ後は頼んだぜ『絶対防御』」
そう言って『爆破王』が俺たちの前から飛んでいく。
まあこれは想定内だ。鋼夜には適当にあしらってもらうとしよう。
「では我々も始めようか、シュウ」
「いや、お前とアルシアの相手はこいつらだ」
そう言うと俺の前にフェルリアとシアン、グレースが割り込む。
そうして直ぐさまその五人は東の方角へと飛び立っていく。恐らく場所を変えるつもりだろう。
「では、我々の相手は誰がしていただけるのですか?」
「俺だ」
「本気ですか?いくら一位といえど五人ですよ?」
「ごちゃごちゃ言ってねえでかかって来いよ。どうせなら纏めて来い、小僧ども」
その言葉にカチンときたらしい。にわかに殺気立ってきた。そうだ、それでいい。
「いいぜ、久しぶりに本気でやってやるよ、『天将』の力見せてやる。来い、天龍」
俺は黒いフリーダムナイツを全身に纏い内側から外側込み上げてくるものを抑えきれず笑った。
やっぱり俺も戦闘狂だな。久しぶりに本気を出せることが嬉しくてたまらんぜ。
「行くぞ、ミリア」
「ん。秋水と戦う。おいで、ヴァルプルギス」
ミリアもフリーダムナイツを纏う。久しぶりだな、ミリアがフリーダムナイツを纏うのは。さあ、行くぜ見せてやるよ、『天』の名を継ぐものの力を。
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「では、行きます『蒼天皇』様」
「おっけ、行くぜ美月」
「おう、頼む」
俺はベネチアの高層ビルの上から今にも飛び立とうとしていた。その時。
「はっはぁ!見つけたぜ『蒼天皇』ぉぉぉ!!」
「くっ、『爆破王』……行けエレナ!美月も連れてってくれ!!」
「分かりました……ご武運を……」
「……直ぐ来るんだよな、鋼夜」
「ああ、心配すんな。直ぐ追いつく」
そうしてエレナと美月は飛び立った。エレナが美月を抱え、美月が補助動力としてのブースターを使用している状況だ。
美月とエレナの姿が見えなくなってから、俺はおもむろに口を開く。
「何故……止めなかったんだ?」
「ああん?そりゃあ俺っちはあんな雌に興味はねえからな。俺が戦いたいのは『蒼天皇』お前だぁ!さあ『王』と『皇』の本物を決める戦いの開始だぁぁ!」
「ああ、いいだろう。本気でやってやるよ」
俺と『爆破王』は互いに距離を取り、戦闘態勢をとる。
「それでいい!来いよ『蒼天皇』!お前は俺っちがぶっ殺してやるぜぇぇぇ!!」
「黙れよ、お前は俺が倒す」
「はっ!言ってろ屑がぁ!」
「うるせえ、ばーか」
「行くぞ蒼火桜」「やるぜぇ、バルティコ!」
俺たちは互いに接近し、俺は光華紫電を、『爆破王』はあいつの固有武装である爪を互いにぶつかりあわせ、激しい火花と共に俺たちの戦いは幕を開けた。
「まずは小手調べってかぁ!」
『爆破王』は腰からナイフを引き抜き、三本続けて投擲する。が、俺は全てを光華紫電で叩き落す。
「悪いが投げナイフの対策は少し前に痛い目にあって以来怠ってなくてね。じゃあこっちから行くぜ」
「〈鋼鉄の刃よ、我が身を纏いて翼となれ〉」
俺は剣翼を纏い、『爆破王』と共に空中に飛び出し、激しい斬撃を交わす。
「はっはぁ!やってくれるじゃねえかぁ!こっちも行かせてもらうぜぇ!〈爆炎よ、全てを焼き尽くし、覆い尽くし、全てを破壊しろ〉グランド・ハザード!!」
そう唱えると『爆破王』はもう一度ナイフを投げつける、またか?いや……これは……
俺は嫌な予感がし、それを叩き落すことはせず避ける。
そして数秒後壁に突き刺さったナイフが爆発する。
「はっ、よく見切ったな『蒼天皇』、俺っちのグランド・ハザードは衝撃を与えることで爆発する効果を触れたものに付与する能力、接近戦は俺には獲物だぜ?」
「そうかい、俺にはあいにく
俺は天羽々斬を構え、もう一度距離を取り『爆破王』と相対する。
『シェムハザ』日本到達予想時刻まで残り二時間。