業火剣乱の狂奏曲《コンチェルト》   作:ムササ

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#44 約束

「グランド・ハザード!グランド・ハザード!グランドォォォ、ハザーァァァァァアド!!!」

 

『爆破王』がナイフを投げる度、俺の周りの壁が爆ぜる。

ナイフの閃きが空気を切り裂くのに合わせて、俺は天羽々斬を振るうものの、斬る前にナイフは轟音と共に爆ぜる。

 

「ちっ、うるせえよっと!」

 

既に周りのビルや建物は原型を留めないほどに崩れており、ちょっとした災害の後である。

それほどまでに天剣十三将という人類が持つ個人個人の力は凄まじくそれらがぶつかり合うとなればそれもまた必然であった。

 

「はっはぁ!お前も木っ端微塵にしてやるぜぇぇえ!!」

「じゃあ俺はお前を切り刻んでやるよ」

 

白熱した戦闘と相手とは裏腹に朧火鋼夜の心は冷静であった。それはこの戦いが終わったとしても『シェムハザ』という敵との戦いが待っている事に起因しており、この戦闘に死力を尽くすことの出来る『爆破王』とは異なり、鋼夜は余力を残しておく事を余儀なくされているという事である。さらに鋼夜はこれからユーラシア大陸を一人で横断せねばならず、それは一瞬でも宝力というフリーダムナイツの燃料を失った瞬間、死へとダイブする長距離飛行であり、一瞬でも気の抜けない緊張の連続が続く事を意味しており、それは少しばかりのプレッシャーとなって鋼夜のコンディションに関係していた。

 

「一つ聞きたい……」

「なんだぁ?『蒼天皇』ぉ!」

「何故、イージスを……人類を裏切った」

 

それは鋼夜が裏切り者の存在を知った時から如何しても尋ねたかった事であり、またその者と決別する理由とすべきものであった。

 

「ああん?そんなんどーだっていぃじゃねぇかぁ?」

「よくないっ!!」

 

いきなり怒鳴り散らしたにも関わらず『爆破王』は相変わらずヘラヘラした表情を崩さなかった。その事が俺を余計に苛立たせる。

 

「はっ、熱くなんなよ『蒼天皇』。まあ強いていゃあ……俺っちはよぉ、やりてぇ事があんのよ」

「やりたい事?」

「……ちっ。はっ、そんな事どーだっていぃじゃねぇかぁ!さあ楽しもうぜぇ!命を懸けた殺し合いってぇヤツをよぉ!」

「くっ……」

 

『爆破王』はいきなり話しを切り上げ、上段蹴りを放つ。間一髪の所でこめかみを狙ったそれを躱す。

……これ以上話を続けるのは無理か……

そう判断した俺は臨戦態勢へと戻る。

 

『爆破王』の戦闘スタイルは改めて対峙するとかなり、それも俺並みに対人に優れている。

物質に関係なく爆破出来る能力はグリモアとの戦闘よりもその攻撃を一撃食らった瞬間戦闘不能に追い込まれる可能性の高い対人戦闘にこそ、その本領を発揮する事は想像に難くない。

俺の戦闘スタイルも基本的に白夜を倒す事を念頭に考えられた為グリモアよりも対人に特化している。

 

互いにグリモアよりも対人に優れているフリーダムナイツ同士の戦闘。それは人類vsグリモアという従来の戦闘とは異なる戦闘の始まりの戦いでもあり、それでいて頂上決戦とも言うべき次の世代の戦いであった。

 

俺は蒼天皇の剣翼を最大まで展開、合計111の日本刀で出来た翼を広げ、眼前に起こった爆発を突っ切り右翼の刀を、総勢55もの刀からなる連撃を繰り出す。

『爆破王』は空気をなぐ事で爆発を引き起こし、無理やり翼の軌道を逸らす。更に身をよじり、左翼の一撃を後方へと受け流し、鋼夜の胴に鋭いボディーブローを打ち込む。

 

「がはっ……」

「おらおらぁ!まだまだ止まんねえぜぇ!!」

 

苦悶に顔を歪め、体をくの字に曲げながら苦痛に耐える俺の顔面にアッパー、空に浮いた顎を更に横薙ぎに打ち、更に追い討ちをかけるかの如く足払いをかけ、今度こそ完全に空中に浮いた俺の体の上から背中を目掛けかかと落としをねじ込む。

 

「ぐはっ……」

 

一瞬気を失いかけるも俺はなんとか持ち堪え、後ろへと跳躍し体制を整える。

ここで攻撃の手を緩めるほど天剣はやわな感情を持ち合わせてはいない。俺の予想どおり『爆破王』はまたも抜き身の投げナイフを繰り出す。ただし今度は軌道が違う。

鋭く足を狙って二本、更に顔面に二本、そしてやや山なりに三本。どれか一つに気を取られれば他のをもろに食らってしまう。

俺は下の二本を撃ち落とし、爆発から逃れるべく後方へと下がる。そして数秒後凄まじい轟音と閃光が放たれる。

爆発の起こった地面は陥没し、その威力を物語っている。

 

「ぐらぁぁ!」

「ーーっ!」

 

と、『爆破王』の攻撃は終わらない。爆煙を突っ切りものすごい速度で突っ込んでくる。

 

「ーーまあ、読んでたけどな」

 

俺の右頬を狙って打ち込まれる右ストレート、鋭い爪を伴ったそれを俺は光華紫電で爪を切り裂き、その衝撃で相殺する。驚愕に目を見開く『爆破王』に体制を整える隙を与えず、直ぐさま天羽々斬で左の爪も切り落とす。

更にそのまま慣性の法則に逆らわず体を一回転させ、『爆破王』の顔面に上段回し蹴りを叩き込む。

凄まじい勢いで『爆破王』がまだかろうじて外壁を保っていた建物であったものにぶつかる。

『爆破王』はそのまま重力に従い地面へと座り込んだ。

 

「ちっ、あーあ!俺っちの負けだ……殺せよ」

 

武器を失い、対抗する術の無い『爆破王』は動く素振りがない。

俺は『爆破王』に戦意の無いことを確認すると剣翼を24本に戻し、飛行体制にする。

 

「待てぇ!情けは無用だ!殺してけぇ!」

「……やだよ」

「んだとぉ!?」

 

恥辱か、それとも怒りか。その顔からは判別は付かないが真っ赤にして俺に食いかかる。

 

「……約束したんだよ」

「あぁ?」

「七年前のあの日と、ミーディアのみんなに」

「俺は誰も殺さないってかぁ?んなの偽善以外の何物でも……」

「誰も殺さないじゃない……俺の目の前で誰も死なせない(・・・・・)。だ」

「ーーッ!」

「じゃあな、また再戦なら付き合うぜ。だから気が向いたら……戻ってこいよ」

 

俺はそう言って全速力で日本の方角へと飛行を開始した。

なるべく宝力を使わないように戦闘を行った為、まだ宝力には余力がある。これならば全速力で日本まで行けるだろう。俺の眼下でベネチアの町が遠く過ぎ去っていく、だから……

 

「はっ、その約束とやらは敵にも有効ってかぁ?……全く度が過ぎたお人好しだなぁ、『蒼天皇』」

 

『爆破王』のそんな声は聞こえなかった。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

「『シェムハザ』到達予想時刻まで残り……一時間」

 

ミーディア学園は極限の緊張感に包まれていた。

無理もない、後一時間で日本の……ひいては世界の命運がかかった戦いが始まるのだ。

と、その時轟音がミーディアに近づいてくる。

 

「敵襲か!?」

「ううん、違うし……これは……」

 

私も何回か聞いたことがある。師匠がよく使っていた、イージスのフリーダムナイツの長距離移動用の後付け装備、『ストライク・イーグル』の飛翔音。

そして数十秒後。聞きなれた声と聞きなれない二人の女性の声が聞こえてくる。

 

「美月!」

「美月ちゃん!」

 

ミーシャとポーラが聞きなれた方の女性へと駆け寄っていく。鋼夜のパートナーの美月だ。

とすれば。と、淡い期待を胸に見回すが鋼夜はまだ来ていない様だ。

と、その時聞きなれない方の女性が挨拶をする。

 

「どうも、お初にお目にかかります。私は『蒼天皇』の専属オペレーター、エレナ・エレサールと申します。以後お見知りおきを」

 

『蒼天皇』と言った。と言うことはこの人があの日に鋼夜達を迎えに来たイージスの人か。

 

「美月」

「はい、エレナさん。ポーラ、ミーシャこっち来て。マリーさん、メリーさん。お話があります」

 

美月がみんなを連れて奥へと向かっていく。恐らくは『シェムハザ』について詳しい話があるのだろう。

私も行かなきゃ……

 

「少々お待ちくださいティナ様、セルディ様。『蒼天皇』より言付けがあります」

「何ですか?」

 

エレナさんは少し間を置き、こう言った。

 

「『すぐ行く。ちょっと待ってろ』だそうですよ?」

「っ!」

「それは……『蒼天皇』自身が?」

「はい、『蒼天皇』朧火鋼夜自身がそう言いました。そしてもう一つ」

 

今度は満面の笑みで続けた。

 

「『美月、ティナ、セルディ、ポーラ、ミーシャ、オルト、ライラ、エレナ。お前らは俺のチームに入ってくれ、お前らが必要だ。頼む』だそうです。全く…私のマスターは無自覚の女ったらしで困ります」

「全くです」

 

笑い声がミーディアに木霊する。

鋼夜が来てくれる。

それだけでもう勝ったような気になるのは何故だろうか。

 

 

『シェムハザ』日本到達予想時刻まで、残り一時間。

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