「んじゃあまあミリアは周りのグリモアを頼む」
「……ん。秋水……頑張って」
時は『蒼天皇』と『爆破王』がまだ戦っている時まで遡る。ベネチアの中央で『天将』がそう言う。
その言葉を受け、そのパートナー。『怠惰』の魔女、ミリア・ハイベリオ・ミュアールはそのフリーダムナイツ。ヴァルプルギスを駆り、周辺のグリモアを殲滅すべく飛び立つ。
何を隠そう彼女、普段はやる気もなくグダッとしているだけだが、宝力だけで言えば朧火鋼夜に迫るほどであり、『怠惰』の魔女の名に恥じず魔女の如く『天将』にかかる火の粉を振り払う。天剣十三将の頂点に上り詰めた男が惚れこむほどの逸材なのである。
「いいのですか?たったお一人で」
対するは天剣十三将、序列四位『百人将』序列五位『黒影』序列六位『翼竜』序列十一位『人形使い』序列十二位『切り裂き魔』である。
戦力差にして1対5。
「ああ、お前ら如き俺一人でもお釣りがくる」
「その慢心が貴方の命取りです『天将』天剣十三将最強の座。今日で降ろさせて貰いますよ!」
「はっ、馬鹿言え。お前ら天剣を抜けた身だろ?俺は甘くないんでね。お前らの復帰は認めんよ!」
一斉に五人の天剣が『天将』に向かって飛びかかる。普通の人ならば、いや。非凡と言われる者でもこれだけの数の天剣に狙われて無事に帰れるはずも無い。
「狙いが甘い。やるんだったら一撃で敵の首を狙え、今ある勝機を逃して次を待つってのは二流のやる事だ」
秋水は苦もなく全ての攻撃を受け流す、更に他の体制が整う前に誰よりも早く体制を立て直し、距離を取る。
「んでもって、それでも尚勝つのが。超一流だ」
秋水が距離をとった理由はただ一つ。詠唱を唱える為である。滝沢秋水のフリーダムナイツは第七世代。よって使える固有能力は二つ。そのうち第七世代能力は強固な制限がある為気安く使えるたぐいの物ではない。しかし、それを補って余りある程に協力である。しかし、第三世代能力も負けず劣らず強い。それは……
「〈我が心は鋼なり、我が身は
滝沢秋水のフリーダムナイツの固有武装、天穿を構える秋水の周りに何か白い物が可視化される。それは宝力が放出されたものであり、どこか幻想的な風景を映し出している。
彼の固有能力、【心身武闘】は端的に言えば動作の最適化である。滝沢秋水という1人の人間のスペックのリミットが全て解放され、そのスペックが全て戦闘における最適化が行われる。即ち今の秋水は人間の限界に達した最強の戦闘兵器である。
それが彼を天剣最強を名乗ることの出来る理由であり、力であった。
「さあ、餓鬼ども。再教育だ」
秋水は未だ戦意衰えぬ五人の天剣に向かって不敵に微笑んだ。
〜〜〜〜〜〜〜
一方その頃ミーディア学園では学園側の総指揮と日本のイージスを纏める総指揮が会合を開いていた。
ミーディア学園側はセルディ・ルナセリア。元天剣であったことを買われ、ミーディアの全ての指揮権を渡されている。
そして日本のイージスの総指揮官は、
「では、我々が周りのグリモアを担当します。本当にそれで良いのですね?」
「はい、我々には私を含め天剣が二人、それならば少数精鋭でかかった方が得策かと」
「『蒼天皇』ですか……その方を貴女は知って?」
「はい、私の命の恩人ですので。それにティナお嬢様の大切なお方です」
「そうですか、分かりました。ですが危なくなったら直ぐに助けに参ります」
「ご助力ありがとうございます」
「いえいえ、これも散っていった同胞に報いるため、それに私達の日本を守るためです」
千鶴はそう言って会釈をしと共にイージスの駐屯基地へと戻って行った。それに殆どの三年生が付いていく、彼らは日本のイージスと共に周りのグリモアを担当するのだ。
セルディがティナ達の元へと帰ってきたときだった。
凄まじい轟音と共にグラウンドが土煙を上げるのを見た。
「敵襲!?」
「ううん、違う……あれは……」
〜〜〜〜〜〜〜
「痛った。無理して上空で換装するもんじゃねえな」
ベネチアから一時間、蒼火桜の最高速度と自身の宝力をありったけつぎ込み朧火鋼夜は日本へと戻ってきた。
チームを組むまでは自分の正体を明かすことは出来ない為ミーディアの上空で前に貰ったイグナイトに変えたまでは良かったのだが、予想以上に落下のスピードが早く、校庭に穴を開けてしまった。
「鋼夜!」
と、暫く校庭で足をさすっていると昇降口から見覚えのある金髪が走り寄ってきた。間違いない、ティナである。
ティナはガバッと腕を広げ抱きついてくる。
「良かった……『爆破王』と戦ったって聞いたから……」
「うん、大丈夫。無事だよ」
泣きじゃくるティナの背中をさすってやるといつの間にか足の痛みも引き、ティナも泣き止んだ。
「さあ、みんなの所に行こうか。話したい事もあるしね」
俺はティナを連れてミーディアの中へと戻ってきた。
みんなから歓迎の旨を伝えられ、奥に見覚えのある二人組を発見した。
「貴方が朧火鋼夜?何だか頼りないです。やっぱりイグナイトだし」
「本当だし、この男に本当にチームのリーダーが務まるし?」
マリーとメリーだ。その周りに居るのは……ああ!思い出したこいつら生徒会だ、だから見覚えがあったのか。
ムッとした表情をする美月とティナを手で押さえ、マリーの元へと近づく。
「お忘れですか?つい先日お会いした筈ですが」
「先日?私はベネチアに居ました、人間違いでは無いですか?」
「いいえ、確かに会いました。ベネチアで」
「しつこい、本当に貴方がチームのリーダーを務まるとは……」
しょうがない、まあマリーとメリー……というか生徒会にはバレてもいいか。
「蒼では無く、他の色を目指せと言った筈だぞ?マリー」
「ーーッ!!」
恐らく一言一句間違えていないはずだ、あの日にマリーにしたアドバイス。驚愕に目を見開き呆然と立ち尽くすマリーを尻目に俺はある人の名前を呼ぶ。
「エレナ!」
「お呼びですか?」
「上層部に通達、今から俺はチームを組む、上に通達!」
「了解しました」
そして俺は美月、ティナ、セルディ、ポーラ、ミーシャ、ライラ、オルトの方を向く。三人ほど笑っているが他の四人は何が何だかわかっていないといった顔だ。
「美月」
「はい」
「俺のチームに入ってくれないか?」
「ああ、パートナーとして当然の事だ」
美月が安心した顔で頷く。
「ティナ」
「はい」
「お前もだ。いいか?」
「うん、いいよ。隊長」
ティナが満面の笑みで頷く。
「セルディ」
「はい」
「貴女も良いですか?」
「ええ、私の命はとうに貴方とティナ様の御心のままに」
セルディが深くお辞儀をする。
「ポーラ」
「はっ、はい!」
「お前の力が必要だ。俺のチームに入ってくれ」
「うん!ど、どうぞよろしくお願いします!」
ポーラが勢いよく頷く。
「ミーシャ」
「ああ」
「俺に力を貸してくれ」
「……鋼夜は私よりも強いか?」
「ああ、そのつもりだ」
「ならば、答えはひとつだ。騎士として貴方を護ると誓おう」
ミーシャが礼儀正しく頷く。
「ライラ」
「はいっ!」
「俺のチームに入ってくれるか?」
「うんっ!もっちろん!」
ライラが我慢できないようにはしゃぐ。
「オルト」
「ああ」
「俺を、助けてくれ」
「……友達の頼みとあれば悩む必要も無い、承ったぜ」
オルトが仕方ないなぁといった感じで頷く。
「エレナ」
「はい」
「みんなのサポート、頼むぜ?」
「ええ、何せ義弟の頼みですから」
エレナが頷く。
「うっし、これで全員だ。これから頼むぜお前ら!」
「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」
「チーム名は『コバルト・シリウス』。隊長は朧火鋼夜、副隊長はセルディ・ルナセリア、前衛が心音美月とミーシャ・アルキオス、後衛がティナ・ルナセリアとポーラ・バリトレオ、整備士がライラ・デクアルートとオルト・デクアルート、オペレーターがエレナ・エレサール」
それを聞き、エレナが直ぐさま端末で何やら打ち込む。恐らく上層部へと送る書類だろう。
「よし、全員フリーダムナイツを纏って右腕をだせ」
それを聞き、みんながフリーダムナイツを纏い出す。
「雪時雨」「グロリアス・エンジェル」「ストーム・テンペスター」「フォーチュン・ドリーム」「ナイトリオン」
ライラとオルトとエレナは生身だ。
「みんな、今まで隠しててゴメンな。まあ、ちょっと事情があってさ。また後で『シェムハザ』を倒したらゆっくり話すよ。ーー来い、『蒼火桜』」
俺は初めてみんなの目の前で蒼火桜を纏う。
「えっ!?」
「それって……」
「まさか……」
「嘘ぉ……」
「「「「イリーガル・ブルー」」」」
ポーラ、ミーシャ、ライラ、オルトの順で発した声が最後に重なる。
俺はバイザーを上げ、微笑んだ。
さあ、『コバルト・シリウス』の初陣だ。
『シェムハザ』到達予想時刻まで、残り15分。