業火剣乱の狂奏曲《コンチェルト》   作:ムササ

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#49 三つ首の鷲頭

戦闘開始から十五分。

 

(ーー距離、およそ300メートル)

 

ミーディア学園の屋上に一人の少女が静かにその時を待っていた。

 

(ーー風速5メートル、追い風)

 

静かに、ただ静かに。気付かれぬように、一撃で屠れる様に。

 

(ーー目標、『シェムハザ』。東に移動)

 

私は機械だ。ただ正確に『シェムハザ』の脳天を撃ち抜く機械だ。

 

(ーー発射五秒前)

 

「終わったわ!!」

 

ティナがそう叫ぶと共に鋼夜達が一斉に離れる。ついでに鋼夜が『シェムハザ』の足を切り落としてくれたお陰で外す心配も無い。

3……2……1……

 

「響け!ストラトス・ディーヴァ!!」

 

瞬間。ティナのヘブンズ・デビルが火を噴く。その威力、十五分間分の貯蓄されたエネルギーが恐ろしい勢いで光線となり、『シェムハザ』に襲いかかる。

『シェムハザ』が気づくももう遅い。既にそれは回避不可能な所まで肉薄している。二の十五乗の威力、通常の約36782倍である。逆に言えばそれほどまでしないと『シェムハザ』の厚い装甲を吹き飛ばし、更にコアを消し飛ばすのは不可能という事だ。

そして、断末魔を上げることすら許されず、『シェムハザ』の頭部が首から下を残して吹き飛んだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

戦場が歓喜に沸く。『シェムハザ』のコアは頭部。それはこれまでの戦闘データから分かる通りである。

あの俺たちが来るまでに必死に自分達の命と引き換えに戦闘データを送ってくれた連合艦隊のデータのお陰でそれはわかっていた。しかし俺は見てしまった。

 

『シェムハザ』の頭部が消し飛んだ瞬間周りのグリモアが恐ろしい勢いで『シェムハザ』に突っ込んでいくのを。

 

無論、杞憂であると願いたい。しかし、俺には如何してもそれが何の意味もない事だとは信じられなかった。

そしてそれは確信に変わる。瞬く間に『シェムハザ』の頭部が再生を始める。しかも、さっきまでよりも明らかに多い。

それを見て歓喜の声が一斉に止まる。

 

「「「ギギャーーオォォォ!!」」」

 

合計三つの首を持つ異形の化け物が誕生した。

 

「な、何だよ……あれ……」

 

誰かがそう呟いた。無理もない、倒したと思った相手が明らかにパワーアップして復活したんだからな。

しかし、妙だ。なんであいつは頭を吹き飛ばしたのに死なない?データによれば対空ミサイルと空中機雷のコンボ攻撃で頭を吹き飛ばした際、通常兵器では破壊不可能な赤いコアが有ったとの報告があった。だから今のティナの攻撃で完全に一度コアは吹き飛んだ筈なんだ。

コアごと再生した?

いや、ありえない。コアが機能を停止すればグリモアは直ぐさま全体の機能が停止する。だったら何だ?

 

「鋼夜さん!!」

 

その声に振り向くと、そこにはマリーが立っていた。

何やら神妙な面持ちだ。

 

「わかりました!『シェムハザ』が機能を停止しない理由!」

「本当か!?」

 

しかしそれに対するマリーの反応は重い。

 

「はい……ですが……かなり厄介ですが」

「そうか。分かった、だけどやるしか無いだろう。教えてくれ、あいつが機能を停止しない理由は何だ」

「それは……『シェムハザ』にはコアが複数有るからです」

 

『シェムハザ』にコアが複数有る?と言うことは……全てを破壊しないと『シェムハザ』はその機能を停止しないということか。

 

「何で分かった?」

「私のフリーダムナイツ。クロス・レディオンの固有能力です」

 

マリー曰く彼女の固有能力はスペード・オブ・クローバー。彼女のクロス・レディオンに触れられると、グリモア、フリーダムナイツ問わずその能力とスペックが分かるらしい。

 

「なるほど……コアは再生するのか?」

「それは出来ない様です。ですが……さっきの三頭になった時から……戦闘能力が……」

「……かなり上がってるし。それもまだ止まらないし」

 

引き継いだのはメリーだ。彼女のクロス・マリアンの固有能力はダイヤ・オブ・ハーツ。触れる事で身体能力と潜在能力が分かるらしい。

二人に触られると自分の全てが暴かれるという事だな。

 

「分かった。ティナ!!セルディ!!」

 

俺は二人を呼んだ。

ティナはあのままあそこに置いておくと『シェムハザ』は黙っていないだろう。セルディは副隊長だ。出来れば意見を聞きたい。

 

「ティナ。後もう一回。撃てるか?」

「ええ、撃てるわ。あと一回と言わず二回はいけるわよ」

 

ティナのストラトス・ディーヴァは見た目によらずかなりの宝力を使う。エネルギーのチャージは長くなれば長くなるほどその分に比例して宝力が持っていかれるのだ。

しかし宝力は使い込む事で筋肉と同じ様に鍛えられる。その結果、最大量が増えるのだ。

 

「おっけ、頼りにしてるぜ?」

「任せて!隊長!」

 

おどけた感じのその言葉に苦笑しながらも安心する。ティナは強い、これならばもう少し頼っても心配無いだろう。

 

「セルディ。お前から見て今の戦況はどうだ」

「互角、いえ。やや劣勢というところでしょうか」

「やっぱか」

「せめてもう一人天剣が居れば楽だったのですが……」

「今の状況は厳しいしな。エレナ、お前から見ては?」

 

俺は通信機に向かって話しかける。今エレナはミーディア学園の放送室だ。あそこなら何処にでも小型カメラを飛ばせるからな。エレナなら多角的に見ていられただろう。

 

『そうですね、私もセルディさんに同意です。やや劣勢なのは否めないですね』

「お前は出れないか?」

『無理……ですね。私ではブランクがありすぎていきなり『シェムハザ』というのは……』

 

流石に無理……か。

元々エレナは腕のいいフリーダムナイツの操縦士だった。

今は訳あって俺の専属オペレーターだが、もしかしたらと思ったが無理か。

 

「ですが、幸い今の攻撃でかなりグリモアの数も減っていますし、再生ももうあまり出来ないでしょう」

「となるとやっぱ俺らで地道にダメージを与え続けるしかないか」

「でしたら我々も『シェムハザ』にまわしてくれませんか?」

 

そう言ったのはマリーだ。

 

「いけるのか?」

「はい!大丈夫です!伊達に生徒会長やってません!」

「他のメンバーも結構フリーダムナイツ歴長いし、邪魔にはならないし」

「よし、おっけ。千鶴そっちは頼んだ」

「了解しました。我々だけでグリモアは殲滅させてみせます」

 

あと知らなきゃいけないのは……

 

「マリー、メリー、『シェムハザ』のコアの場所は分かるか?」

 

あと少しで『シェムハザ』の再生が終わってしまう。それまでになんとか作戦を立てないと。

 

「残るはあと五個だし、頭に一つづつ、尻尾に一つ、そして心臓部分に馬鹿でかいのが一つだし」

「となると……セルディ、頭のは頼んでいいか?」

「はい、首ごと斬り落としてしまいましょう。そのための……力です」

 

デュランダル……か。なるべく使いたくなかっただろうな。

 

「ゴメンな、セルディ」

「いえ、大丈夫です。きっとみんなもそれを望んでいますから……」

「尻尾は……マリー、メリー頼んだぞ」

「「了解しました(だし)」」

「十分気を付けてな」

「分かってるし」

 

残るは……心臓部分か……

それは俺の仕事だな、だが俺の能力じゃああの巨体を貫くには時間がかかり過ぎる。

 

「ティナ、美月、援護頼むぞ」

「オッケー、分かってるよ」

「ああ、了解だ」

「ポーラとミーシャはセルディの方を頼むぞ」

「分かったよ!鋼夜君!」

「了解した」

 

その為にはまたティナのストラトス・ディーヴァの為の時間稼ぎだな。

その瞬間、『シェムハザ』が再生を終えた。

三つ首の鷲の頭を持つ異形の化け物はまるで神話に登場する地獄の番犬ケルベロスを彷彿とさせる。

 

「うっし、行くぞみんな。『シェムハザ』討伐戦第二ラウンドだ」

 

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