「被害は!!」
「甚大です!!日本のイージスの約三分の一が戦闘不能!!そのうち死者も多数!!」
「千鶴ぅ!死ぬ気で全員生き残らせろ!!」
「了解!」
「マリー!メリー!お前らは千鶴の補佐だ!」
「「了解しました(だし)!!」」
途切れなく怒号が飛び交う戦場で、俺は『シェムハザ』の攻撃を一手に引き受けつつ指揮を執っていた。
この中では俺は戦闘経験豊富な方だ、1番はセルディだがあいつにはコバルト・シリウスのメンバーの指揮を任せているため全体の指揮を執るのは俺しかいない。
「美月!お前はこっちに来い!デュランダルと天羽々斬で一気に押し切る!」
「わかった!!」
よし、これでいい。美月にはパートナーとして俺の戦闘方法を教え込んでいる。ティナ並みには合わせてくれる筈だ。
そのティナは既に二発目のストラトス・ディーヴァの準備に取り掛かっている。
出来ればそれで首をまとめて吹き飛ばしてくれるのが理想だが、それは難しいだろう。だから敢えて俺はティナを囮に使う。『シェムハザ』は俺の主観だが、かなりの知能を持っていると思う。それならば先刻自分の首を吹き飛ばしたティナのストラトス・ディーヴァはかなり警戒している筈。その予兆があれば回避行動を取るほどには。
戦闘でもっとも致命的になるのは、先の動きを読まれる事だ。そしてそれを最も読みやすくなるのは回避行動をとった時。逃げる方向さえわかっていれば、狙い撃ちをするのはそう難しくない。
そこを俺と美月が首を、マリーとメリーで尻尾を狙ってコアを削ぎ落とす。セルディと千鶴はそれぞれ失敗した時のために援護に回って貰う。考えたくもないが、『シェムハザ』のコアはもう一つ残っているのだ。
マリーとメリー曰く心臓部分に取り付けられたそれが『シェムハザ』の最大動力部。それを破壊しない限り『シェムハザ』は止まらない。さらにそのコアはほかに類を見ないほど巨大であり、それが『シェムハザ』を第一級危険種指定される程の圧倒的な攻撃力と無尽蔵のスタミナの土台である。
「うがぁぁぁあ!!」
「きゃぁぁぁ……」
三方向にそれぞれ発射されるソニックブームを俺一人で迎撃するのは不可能だ。どんなに頑張って速く動いても音速で飛翔する鉄片に追いつくことなど不可能なのだから。それ故どんなに頑張っても頑張っても頑張っても……どんなに諦めずに絶対に守り抜くと誓っても取りこぼしというものは発生してしまう。周りから聞こえてくる悲鳴や絶叫一つ一つに痛みと苦痛が載っている。そしてそれが途絶えた時がその者の命の尽きる時だ。
俺はその声を聞き逃さまいと必死に耳を傾ける。それが彼らを助けられなかった俺の義務だと思うから、せめて最後の声を聞いてあげたいから、それが例え俺に対する怨嗟の声だとしても。
「十分経過!そろそろだな鋼夜!」
「オッケー美月、ティナ!準備はいいか!?」
「何時でも撃てるよ!!」
その声を聞き、俺と美月は十聖剣をそれぞれ滅茶苦茶に振り回し、『シェムハザ』に対し威嚇をする。それを見た『シェムハザ』はそれに押し込められる様にミーディア学園の校舎の方へと追いやられる。
「響け!ストラトス・ディーヴァ!!」
そしてミーディア学園に平行に並ぶ様に『シェムハザ』に向かい一筋の光線が飛ぶ。ティナのストラトス・ディーヴァだ。それを見た『シェムハザ』は直ぐさま行動を開始する。手痛い攻撃に対する反応はどんなものでも過剰になる。それを直ぐさま克復するのは不可能だ。
右からは俺と美月、左には壁の様な校舎、前からは先刻手痛い目にあった一筋の光線、後ろに避けても衰える訳は無い。ならば何処に避けるか、それは一点しか無い。
『シェムハザ』は馬鹿では無い、それは重々承知だ、だがどんなに頭が良くても、罠だと分かっていても逃げるしか無い。唯一残された逃げ道、上に。
「行きますよお二人共!」
「了解しました!」
「了解したし!」
『シェムハザ』の後方、丁度尾の部分に寸分違わずマリーとメリーが出現する。
セルディがデュランダルに二人のフリーダムナイツをぶつけ強制転移させたのだ。
目の前に現れる巨大な尾、それは二人にとっては獲物以外の何物でもない。
「レディアン・エース!」
「マディオン・ジョーカー!だし!!」
マリーのフリーダムナイツ、クロス・レディオンの固有武装、レディアン・エース、それは身の丈の二倍はあろうかという巨大な大槌だ。
対するメリーのフリーダムナイツ、クロス・マリアンの固有武装、マディオン・ジョーカーはそれも身の丈の二倍はあろうかという巨大な大鎌である。
マリーが『シェムハザ』の背中にレディアン・エースを叩き込み、仰け反った所でメリーがマディオン・ジョーカーで『シェムハザ』の尻尾ごとコアを一つ切り落とした。
「しゃあ!!」
思わず声を上げる。残るコアは四つ、もうこの様な手は通じないだろう。だからこれからは単純な力比べだ。
残念ながら俺は参謀になれる程頭が良い訳じゃ無いんでね。
〜〜〜〜〜〜〜
「そ、そんな……馬鹿な……」
「あり得ない……」
「5対1の戦力差で……」
「これが天剣十三将の長……」
「『天将』滝沢秋水……」
「ふん、終わりか?」
同時刻ベネチアにて一つの戦いが集結した。
天剣十三将序列一位『天将』滝沢秋水VS五人の天剣である。『百人将』『黒影』『翼竜』『人形使い』『斬り裂き魔』の戦いである。
その結果は圧倒的とも言えるものであった。
ボロボロの五人に対し、『天将』はまったくの無傷。明らかなワンサイドゲームである。
「流石にシュウの相手は無理かね」
そこに割って入ったのは、
「ジュライア……」
「やあ、最近よく会うね。シュウ」
滝沢秋水をシュウと呼ぶ彼は見た目かなり若い。これで秋水の弟弟子であると言うのだから恐ろしいものである。
「こいつらを唆しやがったのはてめえか」
「ああ、そうだよ。だが唆したというのは頂けないね。彼らからこちらに付きたいと言ってきたのだから」
「何?」
「君達にとっての平和が彼らにとっては苦痛だという事だよ。確かにイージスのお陰で世界的に平和になりつつある。アウターが進行してきた初期とは雲泥の差だ。しかしその一方でイージスに対する不満も高まってきている。他でもないイージス内部からね」
「……天剣十三将からか」
「ああ。シュウ。君の意向で後進の育成のため戦闘の最前線に赴けなくなった奴らは不満が爆発したんだ」
「ーーッ、そんなもののために……」
「ああもちろん違う理由の者もいるよ?例えば『嵐女帝』や『爆破王』。この二人はちょっと理由が違う」
「誰が一番最初にそれを持ちかけた……」
「『絶対防御』だ」
やはりか。そんな思いが胸中を占める。
「まあ、という訳で彼らにはもうちょっと働いてもらわないと困るんだ。だから殺さないでくれるかい?」
「そんなこと出来るか。と言いたい所だが、俺もお前と戦うのはよしておきたい」
「うんうん。流石シュウ、賢明だな。もう『絶対防御』達の戦闘はやめさせたから心配はしなくて平気だよ?君の一番心配しそうな死者も無しだ。よかったねシュウ」
「そうか」
「あっ、それとベネチアの町をこのままにしておいたら町の人困っちゃうよね。うん、それは心外だ。治しておくよ」
そしてジュライアは詠唱を始める。
「〈全ての上に立ち、全てを斬り裂き、我を王とす聖なる光の頂点に君臨せし剣よ〉エクスカリバー」
そして眩い光に包まれたジュライアの手が持っていたのは、神々しい光を放つ長剣である。
あれが十聖剣の頂点に君臨する最強の剣。エクスカリバー。それをジュライアは少し地面に突き刺すと町全体を凄まじい光りが覆う。そして次の瞬間にはベネチアの町が全て元通りに復元されていた。
否、復元では無い。破壊されたという事実を消し去ったのだ。
「うん、中々良い感じ。じゃあねシュウ。また会ったら今度は殺し合いをしよう」
そう言ってジュライアは他の創生龍側に付いた天剣を連れて創生龍の本拠地へと帰っていった。