輪舞曲では無く輪武曲!!
三章プロローグ 太陽と海の輪武曲《ロンド》
「憤怒」を司りしはテミス。それが用いしは鎮魂歌。
「色欲」を司りしはヴィーナス。それが用いしは微笑。
「暴食」を司りしはミネルヴァ。それが用いしは夢想。
「怠惰」を司りしはクロノス。それが用いしは声援。
「強欲」を司りしはセレス。それが用いしは抱擁。
「傲慢」を司りしはロキ。それが用いしは策略。
「嫉妬」を司りしはハーデス。それが用いしは怨嗟。
古の魔女の血は世界の終わりの始まりに再び現れる。
ーー魔女の古文書より一部抜粋。
〜〜〜〜〜〜〜
「ーー以上が俺のチーム。コバルト・シリウスのメンバーです」
真新しい巨大な施設の一角。そこには『天将』こと師匠と『業炎』ことフェルリア先生。『爆炎砲』ことシアンさんと『雷剣』ことグレースさん。それに元『疾風』セルディ。イージス側に残った天剣の全員が集まっていた。
「ん。まあ順当な結果にだわな」
「中々良いチーム編成ではないか」
「うん!フェルりんにさんせー!」
「ミーシャをよろしくお願いします」
その理由は一つは俺のチームである、コバルト・シリウスのメンバーを最終的に決定する為。一応師匠の許可が無いとチーム編成は通らないのだ。
「どーもです。そういや師匠。幾つか聞きたいことがあるんですけど」
「ん?なんだ?」
「天剣十三将に結構空きが出たじゃないですか?その穴埋めとかやるんですか?」
「まあ、時間があったらな。ゆくゆくはしていかなきゃならんが」
流石に五人で世界を守るのは無理だ。
そもそも天剣十三将だと世界中に張り巡らせたイージスの自動防御システムにスルー出来るからなるべく早く裏切った天剣の後始末は付けなければいけないのだが、その後釜を探すのがかなり大変なのである。
奴らの派閥のイージスも根こそぎ創生龍に持っていかれた為、ただでさえ人が少ないのにその中で有能なのと言うと俺には千鶴くらいしか出てこない。
いつかはポーラやミーシャ達も天剣クラスになれるとは思うが、まだ早い。
「じゃあ取り敢えずは俺ら五人ですか……」
「まあ、フェルリアとシアンにもチームを率いさせるつもりだがな」
「えっ!?そうなんですか?」
「ああ、そう仰せつかっている。だからミーディアの教師はもう出来ないな」
残念だ。しかし、まだ時間はあるらしいし、別に会えなくなる訳では無い。それにまぎれもない世界の危機なのだ。天剣という称号を持つ者が動かない訳にはいかない。
「あぁ、それでだな。セルディにも天剣に復帰してもらうおうと思うんだが」
「えっ!?それだと折角決まった俺のチームが解散の危機なんですけど!?」
「ああ、それは平気だ。別にコバルト……なんたらに所属して貰って構わん」
「ならば受けましょう。『天将』の頼みとあれば断れません」
「ん、あんがとよ。それで…だ。ほれ」
そう言って師匠が取り出したのは鮮やかな緑色のコートの様なものだ。それはどんどんと取り出されていき、俺には青。フェルリア先生は赤。シアンさんはオレンジ。グレースさんは黄色。そして師匠が黒だ。
「これはな、上の奴らが提案した天剣としての証だ。これを着て色と関連付けて貰うことで世間の皆様の認知度をあげようって訳だな。ほれ、お前ら着てみろ」
そう言われるがままにみんなが一斉にコートを羽織る。
「って、重っ!」
ずしっとした重さが全身に掛かったと思うと、直ぐに軽くなった。なんだ?これ。
その疑問を師匠にぶつけると。
「当たり前だろ。これの素材はお前らの宝力だからな」
「はぁ!?それって……」
確かに天剣に入る際に宝力のサンプルは提供したが、それがまさかこんな事に使われるとは。というか、それは……
「簡易的なフリーダムナイツだな。殆ど」
自身の宝力で編んだコートなどフリーダムナイツ以外の何物でもない。見た感じ武装は無さそうだが、何処かから現れたりするのだろうか。
「まあ、武装は無いが防御力が飛躍的に上がるな。フリーダムナイツの下にフリーダムナイツを着込んでるようなもんだからな。お前らこれから片時も離さずこれを着とけ」
「えっ……今、夏……」
「着とけ」
何故長袖にしたのか……
「おっと、そろそろ時間だな。ほら、鋼夜行ってこい」
「もうそんな時間ですか。了解です」
「なんだ?緊張でもしてんのか?」
「まあ、少しは」
「まあ今まで顔を隠してずっと活動してきたんだもんな。この、シャイボーイめ」
「いや、俺の所為じゃないですから」
「かかっ、んじゃあ行ってこい。俺らは此処でお前が終わるまで待っとくからよ」
そう促されるまま、俺とセルディは『蒼天皇』と書かれた部屋を後にした。
ここはイギリスはバーミンガム。イージス本部、そこの一角に設置された天剣の為の個室が用意された区画である。
さっきまで居たのは俺の部屋。これから俺たちコバルト・シリウスは記者会見に臨むのだ。
コバルト・シリウス結成の報せと『蒼天皇』の正体を明かしに。
〜〜〜〜〜〜〜
「うぅう、緊張するよう」
その途中。先ず最初にポーラとミーシャに割り振られた部屋を訪ねる。
「そうか?私は結構お母様の記者会見についていったからな。あまり緊張は無い」
「だって私は初めてなんだよっ!?うぅ、お腹痛くなってきた」
そんな感じで対照的な二人を拾っていく。
「あははっ!凄い凄い!私達これからテレビ映るんだよっ!?うわーうっわ!鋼夜のチームに入って良かったぁ!」
「こら、はしゃぐなライラ……恥ずかしいから止めろって!」
次はライラとオルトのデクアルート兄妹だ。
こちらは結構リラックスしているみたいで良かった。
次は……
「うーん、久しぶりねバーミンガムも」
「私は鋼夜のオペレーターとして何回か最近も来てますね」
ティナとエレナだ。
この二人はもうカメラなど何回も経験しているので(ティナは実家の所為で雑誌などで写真も載っている)普通の様子である。残りは……
「ブツブツ……ブツブツ……ブツブツ」
ドアを開けた瞬間、ビクッとした様子でこちらを見てくる。
「うわぁ……緊張しまくってるわね」
「おい、美月。時間だ行くぞ」
「ひゃあ!!」
ガタンゴトン……ゴンガラガラ……
何も目に入っていない様子だったので、肩を揺するとビックリしすぎてテーブルに足がぶつかり、上に乗っていた高そうなお茶受けと共にこれまた高そうな紅茶が零れ落ちた。
「だっ、大丈夫みゃ、きっ、キンチョーなど……しておりゃん」
俺のパートナーである美月には個室が与えられていたのだが、どうやら緊張を高めさせる結果となったらしい。
結局美月を宥めるのに時間がかかり、俺たちの記者会見が始まるのは五分遅刻となった。
〜〜〜〜〜〜〜
パシャパシャパシャ
会見場に入るなり恐ろしい勢いでフラッシュが焚かれる。
カメラの技術は200年前から進歩が止まっているらしく、未だフラッシュは健在だ。
恐らく質問が集中するのは俺と副隊長であるセルディなのであまり他のメンバーに質問が振られない様にしなければ。
「どうも。私が天剣十三将序列十三位『蒼天皇』、イリーガル・ブルーこと朧火鋼夜でございます。以後お見知り置きを」
そういった瞬間ざわめきが起こる。
当たり前だろう、あのイリーガル・ブルーが高校生だと言うのだ、驚くのは当たり前だ。
「それを証明する手立ては?」
これは想定されていた質問だ。だから俺は、
「来い、蒼火桜」
蒼火桜を数秒間展開する。唖然とする会見場。
だが、数秒後には何も無かったかの様に質問が飛んできた。プロって凄い。
その後は予想どおり俺とセルディに質問が集中した。が、最後の質問が不味かった。
「貴女が『蒼天皇』のパートナーなのですね?貴女から見て『蒼天皇』はどの様なお方ですか?」
あろうことか美月の方に……
ああ、もう助け舟はだせない。頑張れ美月。
「あ、あにょ」
あにょ?
「こっ、こーやはその、とてみょ格好良くて」
みょ?……てゆうか格好良くて!?
「強くて……格好良くて……」
二回目!?
「だ、大好……」
キューバタン。
あっ、倒れた。
そのまま記者会見はお開きとなった。
……明日のニュースが怖い。
因みに余談だが、その記者会見を見ていたミーディア学園の人間が生徒会を除いて全員昼食のコーンポタージュを吹き出したらしい。
ご飯を粗末にしてはいけません。