「「きゅう〜……」」
結果、呆気なく美月とティナは戦闘不能となった。
此処に恐ろしき少女達の野望は阻止されたのだ。
おめでとう!朧火鋼夜の大事なものは護られた!!
ーーThe Endーー
〜〜〜〜〜〜〜
「……」
「……」
「とても美味しいです、鋼夜様」
「そうか、そりゃ良かった」
時刻は午後三時。既に八月となって夏休みに突入しているのだが、正直全員が寮暮らしで夏休みといえどフリーダムナイツの訓練を怠る訳にはいかないので実際のところただ学校に行って勉学に励まなくても良いだけである。
訓練が終わり、その足でココモココへと向かいシュークリームを買ってきて全員に差し入れた後、今は俺の部屋に戻ってみんなで三時のおやつへと突入しているのである。
「美月はどうだ?美味いか?」
「……美味しい」
「ティナは?」
「……美味しいですわ」
問題はこの2人だ。さっきから無口で何を話しかけても上の空である。これはあれか、恋患いというやつか。今頃彼女らの頭の中では意中の人の顔が思い浮かんでいるのだろう。
ティナは……多分どっかの貴族の跡取り息子とかかな。
美月は………………えーと…………た、多分古来から続く由緒正しき家系の息子だな。正直美月が恋する相手なんて思い浮かばん。
そんな事を考えていると不意に声を掛けられる。
「なあ、鋼夜」
「ん?なんだ?美月。恋愛相談なら何時でも乗るぞ?まあ俺に言われたくなんてないだろうけどな」
「ーーっ!?!?」
なんだ?美月のやつ顔が熟れたトマトみたいだぞ……あぁーでも俺あれダメなんだよなぁ、あのグジュってした感じ、どーも好きになれん。
「い、いやっ、そ、その話は今度にしてだな」
「ああ」
「先程の訓練の結果なのだがな」
「ああ」
「私達はお前を倒せなかった」
「ああ」
「しかし頑張ったとは思わないか?」
「ああ」
「だ、だからな。その、一つ何でもとは言わないからお願いを聞いてはくれないか?」
「あ、あ?」
何でもとは言わないからお願いを聞いてはくれないか?って事は俺に拒否権があるお願い?それって普通にお願い……
「まあ、良いけど」
「本当か!?」
「うん」
「では今日私と五つ星ホテルのディナーに行きませんこと?」
「却下だ」
俺はティナの提案を即座に却下した。ティナの好感度が1下がった。
「そんな事言うならそっちにはセルディが居たからな。同じ天剣が居たんだから少しくらい譲歩してくれないと」
「そうですお嬢様。それにディナーだけでは済まされないでしょう?」
「シュークリーム50個追加」
「鋼夜様、少しくらいティナお嬢様にも優しくされてはいかがでしょうか?」
「随分と甘ったるいメイドだな!?」
俺のセルディに対する信頼感が2下がった。
「で、では今度……その……ぎを買いに行かないか?」
「ん?何だって?」
「だから……ずぎだ」
「だからの後が聞こえない。もう一回頼む」
「だからっ、水着だ!」
いきなり耳元で大声を出すものだから耳がキーンってなった。俺の聴力が3下がった。
「あ、ああ。それ位なら良いけど、丁度お前らには水着買ってもらおうと思ってたからな」
「「えっ、それって」」
二人の恋する少女の脳内に一緒に手をつないで海辺を歩く映像が映し出される。みずを掛け合って「えいっ!」「おっ、やったな、こいつ!」「きゃあ冷たい!」ってやるのだ。そして沈む夕日、それに合わせるようにムードは最高潮へ、そして夕日が沈むロマンティックな海辺で重なる唇と唇……
ボンッ!!
ボンッ!!
本日二回目のショート音が二人の少女から発せられた。
美月とティナのHPが0になった。テロテロリーン寂しげな効果音と共に目の前が真っ暗になった。
因みにその後何とか意識を取り戻した美月とティナをセルディと俺で食堂まで運び、偶々そこにいたポーラとミーシャ、ライラとオルト、それにエレナに同じ話をしたところ被害者が四名に増えた。美月とティナ、ミーシャとポーラの四人が先頭不能に陥ったが、どうでも良いので割愛する。
鋼夜は『言葉で女を爆発させる男』の称号を得た!
〜〜〜〜〜〜〜
「それで、どうして水着が必要なのですか?」
「ん、ああ。言って無かったけか、夏休みの後半にコバルト・シリウスのメンバーで合宿行こうと思っててさ」
「合宿ですか。それは何処で?」
「それは、エレナが師匠に取ってくれたよな?」
「ええ、ここです。ハワイ近郊にイージスが持つ人工の無人島、ファニーオレンジ」
エレナが空中ディスプレイにファニーオレンジなる島の地図を映し出す。
「うわー!これ鋼夜君の島!?うわうっわ!凄い凄い!!」
「確かに、大きいなこりゃ」
「いや、別に俺の島っていう訳じゃ無くてあくまで天剣の別荘みたいなものだ」
無駄にはしゃぐライラとオルトの言葉を遮って訂正を入れる。このまま行くとこのファニーオレンジなる島の所有権が俺になってしまう。
「それで、合宿って何?鋼夜君」
「そうだな、私もそれを聞きたい。何をするのだ?」
「ああ、一応はコバルト・シリウスのフリーダムナイツの合宿だ。まあ、他にも色々必須事項とかあるけどな。その訓練だ。でもってこの島海が綺麗なので有名なんだよ、だから自由時間に海に入るだろうから水着が必要って事」
「ふぇー、凄いねぇ」
「ああ、貸し切りなのか?」
「うん、『蒼天皇』の名前を出せば他のイージスは使えないし、他の天剣は使う気無いって言ってたしな」
どうやらみんな賛成の様だ。
「そ、それでだ。鋼夜、さっきの話なのだが」
「おう」
「本当に水着を一緒に買ってくれるのだな?」
「別に良いぞ」
その言葉に一様に色めきだったのは他のメンバーである。
「えっえっ!いいなぁ美月ちゃん!ね、ねえ鋼夜君、私も良い?」
「おう、ポーラもか別に良いぞ」
「本当!?やったぁ!」
「な、ならば私もいいか?」
「ん?ミーシャもか良いぞ」
「じゃあじゃあ!はいっ!私もー」
「ライラもか?いや、別に良いけど」
「当然私も立候補しますわ」
「ティナも?まあ良いけどさ」
「では私もお願い致します」
「えっ、セルディも?別に良いよ?」
「じゃあ私もお願いしようかなぁ」
「エレナも…良いよ」
結局コバルト・シリウスの女子全員が立候補という事となった。
「じゃあ全員で一緒に……」
「「「「「「「ダメっ!!」」」」」」」
どうやら一人一人行かないといけないらしい。
これが乙女心というやつなのだろうか、複雑怪奇極まりない。朧火鋼夜はまた一つ大人への階段を登った。鋼夜のレベルが1上がった。
〜〜〜〜〜〜〜
ピッ……ピッ……ピッ
北アメリカ大陸の東、ある都市に朧火白夜の本拠地がある。創生龍の上位メンバーはそれぞれ色々な場所に本拠地を構えているのだ。一応本部はジュライアのいるオーストラリアとなっているが、本拠地はバラバラである。
そこで白夜はあるニュースの録画を永遠と見続けていた。
『どうも。私が天剣十三将序列十三位『蒼天皇』イリーガル・ブルーこと朧火鋼夜です。以後お見知り置きを』
ピッ
『どうも。私が天剣十三将……』
ピッ
「白夜さん、いつまでそれを見ているのですか?」
「おお、リュミルか。だって僕の最愛の弟の晴れ舞台だよ?何回だって見るさ」
その部屋に入って来たのは創生龍に白夜が入ってからその才能を拾い上げた一人の少女である。ピッ、イージスの言うチームというものはピッ、創生龍にもあり、彼女は蛍と同じ白夜のピッ、チームという事となる。
「お呼びでしょうか、白夜様」
そう言って現れたのは左腕が義手で出来た少女、蛍である。
「うん、君達二人を呼んだのはね。ちょっと鋼夜の所に行ってきて欲しいんだ。鋼夜の成長を確かめたくてね。聞いた所によると『シェムハザ』を退けたらしいし、丁度良い」
「「了解しました」」
「それでね、入っておいで」
現れたのは元天剣十三将に名を連ねていたイージスの裏切り者『翼竜』である。
「彼に道案内を頼もうと思ってね。場所は分かるね?」
「はい、未だ残る私の配下の者の情報によりますと『蒼天皇』からファニーオレンジ島の使用許可があったと」
「じゃあ君ら三人でそのファニーオレンジ島に行って鋼夜と鋼夜のチームと戦ってきてよ。あっ、殺しちゃダメだよ?でも鋼夜は殺す気でいってね、多分君達だと殺す気で行かないと鋼夜を追い詰める事は出来ないから」
「「「了解しました」」」
「うん、じゃあ行って良いよ」
そうして白夜はまたテレビの画面へと戻る。
「心音夫妻が遺した最後のフリーダムナイツ、か。意図したものじゃないとはいえ偶然にしては奇跡的だね」
美月の両親の作った最後のフリーダムナイツ。
一つは彼らが殺された時に一人の少年が戦利品として持ち帰り、もう一つは滝沢秋水が保管し一人の少年に託された。そしてもう一つは何かの因果か分からないが夫妻の娘へと渡った。
蒼火桜、黒陽、雪時雨。
この三つのフリーダムナイツが心音夫妻が遺した最後のフリーダムナイツにしてフリーダムナイツの最終系。
稀代の天才が生み出した答え。
「『嫉妬』の代償者『翼竜』『黒翼の瞬蝶』」
白夜はテレビから目を背けると側に置いてあったチェス盤に三人の
「さあ、ショータイムだよ。鋼夜、君は全てを否定された世界を肯定出来るかな?」