8月8日火曜日午前10時。大型ショッピングセンターココモココ前。そこに俺は一人で待ち惚けを食らっていた。勿論一昨日の美月の話によりみんなの水着選びを手伝うこととなったのだが、一昨日の内にメンバー決めが行われた事くらいしか知らないのだ。以下略。
「えーっと……」
それに遠巻きに俺を見る視線がヒシヒシと伝わってくるのだ。しかも「あれってミーディア学園の制服じゃね?」「えっ!あのフリーダムナイツの!?」「しかも何あの人!格好良くね!」「えっ、でもあの人真夏にコート?」「何?変人?」「あれ?私あの人昨日ココモココで見た気がする……気のせいか」やっぱり俺の顔は余り知られていないようで良かったが、これもまたと言うべきか変人扱いで俺のHPは以下略。
と、そこにとっても明るい音色の声が響き渡る。
「やっほー鋼夜君、ライラだよっ!」
「おお!今日はライラか」
その声の持ち主は誰であろう紛う事なきライラ・デクアルートである。その服装は普段のミーディア学園の制服やフリーダムナイツをメンテナンスする時のオーバーオールとは違い、十代の女の子らしいヒラヒラした服装である。全体を黄色で纏め上げたその格好はライラの快活な雰囲気を見事に表していると言える。
「うんっ!呼ばれて飛び出てズドドドドーンッ!貴方の為のライラちゃん!爆誕!!」
ズドーンという効果音と共に(自分の口から出でいた)まるで戦隊ヒーローの様なポージングを見事に決める。
因みにそれを見た周りの人々の反応はと言うと……
「何あれ?テレビの撮影?」
「そうなんじゃない?」
「ママーあの人カッコいい!」
「や、見ちゃいけません!!」
うん、聞かなかった事にしよう。
「そ、そろそろ行こうかライラ」
俺は未だ一人でカッコいい効果音(しつこいようだが自分の口から出ている)と共に戦隊ヒーロー並みのポージングを決める隣の快活な少女にそう声をかける。
「おっ?そうだな、そうしよう、うん。そうするべきだバヒューン!」
「おっ、おう……」
と、そこに、「ひったくりよ!誰かそいつを捕まえて!!」という声が響き渡る。その声の方向を見ると若い男が女性のバッグを今、正にひったくったところだった。
俺が蒼火桜を展開して男を捕まえようとした時、
「ふっはっはっ!罪無き女性の荷物を無断で奪うとは、どんなに世間が許しても、どんなに世間が見逃しても、私の目は欺けない!とおっ!」
そう言ってライラがその男の前に飛び出した!
「な、なんだお前は!!」
「私の名はライラ……あぁ、違った。ふっふっふっ!名乗るほどの者でもないが勿体振る程の者でもない、悪を裁き、正義を守る正義のヒーロー!ライラ・レッド!」
「「はぁ?」」
なんと言う偶然であろうかその男と俺の言葉がシンクロする。
「助けを求める声が私の耳に木霊する!貴様が悪か、我が目に留まった事が運の尽き、正義の前に全ての悪は栄えない!喰らえ必殺!ライラウルトラデリシャスアルティメットハイパーシャイニングジャスティスウルトラパーンチ!!」
「ひでぶっ!?」
ライラの右ストレートが男の顔面を強打する!
(てゆうかウルトラって二回言った!)
哀れライラうんたらかんたらパンチをくらったオトコは鼻血を出して倒れてしまった。
「はっはっはっ!正義は勝ーーーーつ!!!」
割れんばかりに拍手がココモココの前に木霊する。
「凄いなライラ」
「おっ、鋼夜君!ふっふっふっ見られたからには仕方がない、我が正体を知ってしまったからにはもう二度と普通の生活には戻れないぞ?」
「え、いや、別に」
「呼ばれて飛び出てズドドドドーンッ!貴方の為のライラちゃん!爆誕!!」
「だから……何で二回言うんだーー!!」
〜〜〜〜〜〜〜
取り敢えず警察に男を突き出し、ココモココへとやっとの事で入る。しかし、
「あぅう……」
「えっと……ライラ?」
「あぅう……あぁ……うぁ」
「だ、大丈夫?」
「は」
「は?」
「恥ずかしいぃぃぃぃ!!」
「ひでぶっ!?」
強烈なビンタが炸裂した。
「えっと、纏めるとライラはテンションが上がるとあんな感じで擬音語とよく分かんない言葉を使い始めてしまうと」
「うん……」
「で、テンションが最高潮に達すると戦隊ヒーローに成り切ってしまい、もう人格が変わったんじゃないかって言う感じになってしまうと」
「はい……」
「で、そのテンションが過ぎ去ると凄まじい恥ずかしさに襲われると」
「そうなんです……」
「難儀だなぁ……」
「うぅう。穴が有ったら入りたい、っていうか全身くまなくスッポリ嵌って埋められたい……」
で、そのテンションの過ぎ去ったライラは何時ものテンション以上に低くなりなんというかしおらしくなってしまった。
「しかし何でそんな性格になっちゃったんだ?」
「笑わないで聞いてくれる?」
「おう、もちろんだ」
「私ね、本当はフリーダムナイツに乗りたかったんだ」
「えっ?」
意外だ。ライラはなんというかお父さんのことを誇らしげに話して自分の整備士という仕事に誇りを持っている凄い少女だと自分の中で勝手に決め付けていたものだから。
「意外でしょ?でも、ずっとちっちゃい頃から私ヒーローが好きでね。この世界には分かりやすいヒーローが居る。分かるでしょ?」
考えるまでもなくライラの言うヒーローはフリーダムナイツの事だろう。
「私ね、ジュエルは一応有るんだ。だからフリーダムナイツも展開出来る」
「えっ、じゃあ」
「でもね。私のジュエルは力が弱くてとてもじゃ無いけどフリーダムナイツを使ってグリモアと戦えるだけの宝力を生み出すのは無理だった。頑張れば出来るんだけどどう頑張ってもヒーローにはなれないって分かった」
俺はライラの告白をただ単に聞くことしか出来なかった。
「ちっちゃい私はそりゃあ泣いたよ。私はヒーローになれないんだって思い知らされた。だけどそんな私をオルトお兄ちゃんが支えてくれた」
『ライラ!お父さんの所に行こう!』
「そう言ってオルトお兄ちゃんはお父さんの仕事場に連れて行ってくれた、そしてそこには沢山のヒーローが居た。凄い感動したのを今でも覚えてる」
決して狭いとはいえない仕事場に所狭しと並べられた沢山のヒーロー。そしてそれを汗だくになりながら整備する両親の姿。その時始めてライラは幼心に感動を覚えたのだろう。
「だからね、鋼夜君。私はヒーローにはなりたいよ?でもね、私は今のこの仕事にとっても誇りを持ってるの。ヒーローになれなくたって良い。でもね私はヒーローを支える事が出来る。私の世界で一番大好きなお母さんとお父さんからその技術を教えられた。だからね、私にとってのヒーローは鋼夜君。君なの」
「俺?」
「うん、君は私になれなかったフリーダムナイツの操縦士でその中でも凄い天剣で、みんなの憧れの『蒼天皇』で、それで私達にとっての隊長で、何より朧火鋼夜っていう私にとっての一番凄いヒーロー。私はね、そんなヒーローを支えていきたい。それが私の新しい夢。ねえどう?貴方はそんな私の夢を叶えてくれる?」
その瞳は余りにも真剣で、余りにも愚直だった。
「ああ、勿論だ。その夢、俺が叶えよう」
その返事を聞き、ライラはパアッと顔を輝かせる。
「ありがとう!鋼夜君!今日から貴方が私のヒーロー!……貴方だけが、私のヒーロー」
その呟きはライラの耳にだけ届いていた。
「だからテンション上がると子供の頃の夢がぶり返しちゃう訳だ」
「う、うがぁぁあ!そ、それは禁止!!」
暫くヒーローとその仲間の鬼ごっこは続いた。
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8月8日 火曜日
今日は鋼夜君と水着を買いに行きました。
その途中で私の恥ずかしい秘密を知られてしまいましたがそのお陰で鋼夜君との話を深める事が出来ました。
鋼夜君はヒーローになってくれると言ってくれました、私のヒーローに。
私だけのヒーローに。
「おおーい、ライラ!飯食いに行こうぜ!」
「うん!オルトお兄ちゃん!今行くよ!」