8月9日水曜日午前10時。大型ショッピングセンターココモココ前。そこに俺は一人で待ち惚けを食らっていた。3日前の美月の話によりみんなの水着選びを手伝う事になったのだが、以下略。
「えーっと……」
それに遠巻きに俺を見る視線がヒシヒシと伝わってくるのだ。しかも「あれってミーディア学園の制服じゃね?」「えっ!あのフリーダムナイツの!?」「しかも何あの人!格好良くね!」「えっ、でもあの人真夏にコート?」「何?変人?」「やっぱり私あの人3日連続で見てる気がする……」やっぱり変人扱いで俺のHPはレッド以下略。
と、そこに困ったような恥ずかしげな声が響く。
「ま、待ったか?鋼夜」
「おう、その声はミーシャ……だよな?」
声が詰まったのも無理はないと言って欲しい。
何時ものミーシャは制服かジャージなのだ。何でも動きやすいからだそうだが、今の服装はそういった動きやすさとは無縁のものだ。上は白のブラウスでスカートなのだ。
ずっと見慣れてきたそんな服装からかけ離れたそんな服装を見たら疑問を持つのも無理はない……よな?というより何時ものフリーダムナイツの練習や騎士としての心構えのような実直な言葉遣いからミーシャは男勝りの様な印象を受け、ミーディア学園の男子生徒からは少しばかり女扱いが低い様な扱いだが、ミーシャは誰が見ても、例え10人が10人中でも美人と言うような女の子である。
そんな彼女がそんな女の子らしい服装をするとどうなるか、それは周りの反応から見ても明らかだ。
周りの男性がちらちらこちらを見てため息を吐いているのだがら。
「そ、その……あまり見ないでくれると嬉しい」
「ん?何でだ?」
「に、似合っていないのは自覚している」
「は?何言ってんだ?似合ってるぞ?」
「ー!ほ、本当……いや、別にお世辞はいらない」
どうやらミーシャは自分が女の子らしい服装をする事に抵抗があるらしい。どうも自分では似合っていないと思っているらしい。そんな事は全然なくとても似合っていると思う。
「別にお世辞じゃねえよ。似合ってるぞ」
「ふ、ふん。騎士たるもの本音を隠すとはなんたることが」
「いやいや、似合ってる似合ってる、めちゃめちゃ可愛い、ちょーさいきょー」
「か、可愛いっ……ふ、ふん。ならば剣に誓って貰おう」
「剣に?」
「ああ、剣とは騎士の命とも言うべきもの。それに誓いを立てるのは最高の誓いだ」
「ああ良いぜ、天羽々斬に誓ってやる。ミーシャはその服装が似合ってる」
その言葉を聞いてミーシャはパアッと顔を綻ばせる。
しかし直ぐさま咳払いをして、顔を隠してしまう。
「でもミーシャ、お前自分で似合って無いって言う割には結構いい服持ってるな」
ミーシャの今着ているブラウスとスカートは俺でも分かるほどに良いものだと分かる。
「いや、これはティナのものだ。鋼夜の言うように私はそんな服は持っていないのでな。ティナに貸してもらった」
「ああ、通りで」
胸元がぼたつくわけだ。
ミーシャが俺の視線に気づいたのかジト目で何か言ってくる。
「通りで、何だ?」
「いや、何でも」
「……ふーん」
多分さっきの思いを素直に言っていたら少なくとも半殺し、下手をすれば4分の3殺しだ。
「じゃ、じゃあさ今日は水着を買いに行く前に服を買いに行かないか?」
「服?いや、別にいい。こんな服を着る機会はそう無いからな」
「いやいや、別に持ってても良いだろ。美月たちと一緒に買い物に行くことだってあるだろうし」
「う、うーむ……」
なにやら考え込んでいるようだ。これからの事とかを考えているのだろう。
そこでミーシャは意を決したかのようにこちらを向く。
「こ、鋼夜は私がそういう服を持っていたらいいと思うか?」
「ああ、勿論だ」
「私が可愛い服を持っていても可笑しくないか?」
「全然、むしろ嬉しいぞ」
「そ、そうか。そこまで言うのなら仕方がない。水着の前に買いに行くとしよう」
「おう」
心なしか軽い足取りのミーシャの手を引いて俺達はココモココの中へと入っていった。
〜〜〜〜〜〜〜
「ここなんか良いんじゃないか?」
「い、いや。私にそう言われても……」
しかし悲しいかな男子と女子力が限りなく低い女子とのペアならではの弊害がそこにはあった。どんな店に入ればいいのかが分からないのだ。なまじココモココが大型ショッピングセンターなので女性用の洋服店など沢山ありすぎてわからない。
「まあ、気に入ったのが有るかもしれないし入ってみよう」
「うむ、それもそうだな。そうしよう」
そうしてその洋服店へと入るのだが……
「いらっしゃいませ。どの様な洋服をご所望ですか?」
「ああ……えーっと、この人の洋服を……」
「まあ!可愛らしいですね、その制服……ミーディア学園のお客様ですね。承りました。暫しお待ちください」
そう言ってその店員さんは奥へと引っ込んでしまう。
鋼夜はと言うと慣れない女性用の洋服店の雰囲気に呑まれてしまっていた。ミーシャもまた然り。
少ししてその店員さんが1着の洋服を持ってきた。
「こんなものなどいかがでしょうか?」
そう言って見せてきたのは秋物のワンピースだ。真っ白のそれはミーシャの雰囲気にとてもマッチしていてその店員さんの目が確かなことを窺わせる。
「ご試着されますか?」
「時間あるしそうして貰ったらどうだ?ミーシャ」
「じゃ、じゃあします」
「承りました。試着室はこちらになります」
そう言ってその店員さんがミーシャを引っ張っていく。
少しして、ミーシャが試着室から出てきた。
「ど、どうだ?似合うだろうか?」
鋼夜はしばしの間そのミーシャに見惚れてしまっていた。普段とは打って変わって女の子らしい服装をしたミーシャに見入ってしまったのだ。
ポカンと言う間が2人を包む。
「あ、ああ!似合うぞミーシャ」
「ほ、本当か!?で、では店員さん。此れを一着」
「お、おいミーシャ。そんな簡単に決めていいのか?」
「ん?構わんぞ。というより、これが良いのだ」
「何でだ?」
「これは鋼夜が初めて褒めてくれた私の服だからな」
そういった後ミーシャは何かに気づいたかのようにハッとした表情になる。
「い、いや、えっと、他にも私自身とても似合っていると思うし、えっと店員さんのセンスもいいし、多分お母様もそう言ってくれるしだな」
支離滅裂だったが、ミーシャは気づいていないし鋼夜はその迫力に圧倒されて頷くしかない。
「では、3850円になります」
「ほい」
ミーシャがお金を出そうとした時、先んじて鋼夜が丁度の金額でお金を払う。
「こ、鋼夜!?これは私の服だぞ?」
「いや、別に良いよ。俺が払う」
「まあ!甲斐性の有る彼氏さんですね。彼女さんにプレゼントなんて」
「か、彼女……」
「ああ、いや。別にそういうんじゃなくて」
鋼夜は店員さんに訂正を入れながらお会計を済ませてしまう。
「あらあら、そうだっんですか。これは失礼を」
店員さんが頭を下げる間もミーシャは終始顔が赤いままだった。
そして店を出る直前、その店員さんがミーシャだけを引き止めて耳元で囁いた。
「ちょっとちょっと」
「はい?」
「あんな良い物件そう有りませんよ?ちゃんと捕まえとかないと、ライバル沢山居るでしょう?」
「ーーッ!?」
「それにあの人、噂の『蒼天皇』でしょう?」
「気づいておられたのですか?」
「ええ、何となくだけどね。貴女惚れてるのは直ぐに気づいたわ。頑張ってね、応援してるわ」
そう言ってミーシャはその店から鋼夜の元へと出て行った。
「何話してたんだ?」
「ふふっ、秘密だ」
「なんだよ、ケチ」
ミーシャはこの後その店の常連となり、ポーラ達と通うことになるのだが、それはまた別の話。
因みにその店、リーズナブルながらも良い服を売ってくれる店として有名で、その店員さんは結構有名な人であった。
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8月9日 水曜日
今日は鋼夜と水着を買いに行った。
そこでミーシャはペンを置く。と、それをポーラが覗き込む。
「ああー!ミーシャちゃん!今日くらいちゃんと書きなよ!」
ミーシャは実はこういった日記が苦手なのだ。そしてミーシャは苦心して付け足す。
8月9日 水曜日
今日は鋼夜と水着を買いに行った。
水着を買いに行くつもりだったのだが、何故か洋服も買いに行くこととなった。だけど鋼夜も褒めてくれたし良かったと思う。
また今度も行きたいものだ。
因みに水着を見た鋼夜は私の胸元を見ていたが、何となくムカついたので殴っておいた。
鋼夜はミーシャだけに優遇した訳じゃなくてポーラとライラにも買ったから不平等でないように買ったのです。
ライラにもアクセサリーを買ってあげております。