業火剣乱の狂奏曲《コンチェルト》   作:ムササ

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やっと終わった……ミリアとかマリーとかやんなくて本当良かった……そろそろ先に進みたい……


#73 幼馴染との日曜日

8月13日日曜日。以下略。

 

「えーっと……」

 

それに遠巻きに俺を見る視線がヒシヒシと伝わってくるのだ。しかも「あれってミーディア学園の制服じゃね?」「えっ!あのフリーダムナイツの!?」「しかも何あの人!格好良くね!」「えっ、でもあの人真夏にコート?」「何?変人?」「遂に7日連続……これは伝説になるぞ……」とかなんとか言ってくる輩が居るのだがもういい。良いのだ。今日でこの俺の一週間は終わりを告げる。

なんと言われようがもう気にしない事に決めたのだ。

 

「にしても、遅い」

 

かれこれもう集合時刻から15分の遅刻である。

いや、みんなも遅れはしたけど5分とかなのである。セルディとエレナ姉曰く「女性の身だしなみを整えるのは時間が掛かるのです」らしいので、まだ一応許容範囲内なのでは有るのだが、流石に少しばかり長いと思う。

そろそろムカついてきたのでイージスの端末で電話を掛けようとした時。

 

「ほら、美月様。鋼夜様がイラついていらっしゃいます」

「で、ですがこんな格好……」

「良いのです似合っております。ほら、早くしないと首根っこ捕まえて引きずり出しますよ?」

「ひっ」

 

という何やら不穏な会話が交わされているのに気が付いた。そちらの方向へ顔を向けると見覚えのある銀髪のメイドらしき人とこれもまた見覚えのある黒髪の少女が口論をしていた。いや、口論と言うよりも一方的に駄々を捏ねているらしい。

そしてその銀髪メイドがいきなり黒髪少女を突き飛ばすと、こちらを向いて満面の笑みを浮かべた。

何も聞かなくても分かる(後は任せた。しっかりやれ)であろう。

そしてその突き飛ばされた少女であるが、勢い余って俺の胸にダイブしてきた。

 

「わぷっ」

「ぐえっ」

 

前者はいきなり顔に何かがぶつかった事による悲鳴。

後者は腹に重い打撃を食らった事による悲鳴である。

 

「おい、美月。そろそろ離れろ」

 

抱き着いている形となっている美月を諭す様にそう言うと、美月のかおがみるみるうちに赤くなっていくのが分かった。そして、直ぐに臨界点に達したのだろう。

ひときわ大きな悲鳴がココモココの前に響き渡ったのだった。

 

「ばーかばーか、お前があんなところに居るのが悪いのだ。そもそもセルディが私服で行けと言わなければこんな事には……」

 

叫び尽くした後からの美月はこんな感じでずっと恨み言をブツブツ言っているので、取り敢えず宥める事とする。

 

「まあまあ、取り敢えずさっきの事は置いといて」

「置いておける訳がないだろう!?」

 

どうやら、人前でおれに抱き着いた事がよっぽど恥ずかしかったらしい。更に真っ赤になって反論してきた。

 

「そもそもだな、セルディがこんなヒラヒラした服を着ていけと言わなければ……」

「おお、そういや珍しい服を着てるな。なんというか何時もと違って新鮮な感じだ。うん、よく似合ってるぞ」

「なななな何を言うか!べべべ別に似合ってるとかいいい言われてもうううう嬉しくなんかないっ!」

「まあまあ、そう言わずにとっとけ」

 

もう既に美月の顔はゆでダコ状態である。

 

(あわわわ、どうしようどうしよう、鋼夜が鋼夜がににに、似合ってるって言ってくれた。へ、変じゃ無いって事だよね。ああ、セルディありがとう)

 

現金な奴である。

 

「それじゃあそろそろ行くか」

「ちょっ、ちょっと待て鋼夜」

「ん?何だ?」

「た、確か前に一つだけお願いを叶えてくれるって言ったな?」

「……ああ、そういや言ったな。中々言わないから忘れてたぞ」

 

美月の誕生日の際に色々あって美月に誕生日プレゼントを渡すことが出来なかったので、その代わりに何でも一つだけお願いを叶えてあげると約束したのだった。

 

「で、ではな。こ、これからする事に驚かない、びっくりしない、拒まない、誰にも口外しないと誓え」

「え……?」

「ち、誓えっ!」

「……わかったよ」

 

些か理不尽ではあるが、朧火鋼夜に二言は無い。そもそも何でもいいと言ったこちらに拒否権など無いのだから。

 

「よ、よし」

 

美月は少し迷った後不意に俺の手に自分の手を絡ませてきた。

 

「うえっ!?」

「ば、ばか。びっくりするなと言っておろうが」

「あ、ああ」

 

無理難題を押し付けられても困る。

 

「こ、これから寮に帰るまでずっとこの手を離してはならんぞ」

「えっ、ずっと?」

「そうだ」

「トイレとかは?」

「……我慢だ!」

「ええーー……」

 

なんという事であろう。この暴君は生理的欲求すら弾圧するのだ、この独裁者は俺という小市民を理不尽な命令で弾圧するかの傍若無人振りである。

自分でも何を言っているか分からないが、ともかく理不尽此処に極まれりである。

 

「というかお前もトイレくらい行くだろ。その時も離さないつもりか」

「なっなっ、お前私の…ごにょごにょ…うぁぁぁあ不潔だ!!」

「誤解だ!というかそれならこんな命令すんな!!」

「ならば私も我慢する!!だから鋼夜も我慢しろ!!」

 

そんな感じで先行き不安なまま美月との買い物は始まったのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

「まずはどこ行く?」

「ふむ、みんなとは何処に行ったのだ?」

「ポーラとはゲーセン、ライラとはアクセサリー屋、ミーシャとは服屋、セルディとは猫カフェ、エレナとは映画館、ティナとはカフェだな」

「では、全部だ」

「は?」

「だから、全部だ」

 

どうやら門限ギリギリになっても帰れるかどうかの時間になるのは決定らしい。

ともかく、このスケジュールで行くならば時間が惜しい。

俺たちは急いでゲーセンへと向かったのだった。

 

「はあっはあっ。で、何やるんだ?」

「ふっふっふっ、これだ!!」

 

美月が指差すのはポーラとやったフリーダムナイツのゲームである。

 

「げっ、マジかよ」

 

因みに昨日ユーザーからの強い希望によりバージョンアップが施され蒼火桜が導入されたらしい。

ともかく、今日の主役は美月だ。当然拒否権も無いので始めたのは良いのだが。

 

「おい、美月手ぇ離せ!やり辛い!」

「やだ!」

「おぃぃい!!てか、右!右!攻撃きてる!!」

 

蒼火桜だったので、なんとかクリアしたがポーラの時とはえらい違いである。

ポーラはルームメイトじゃ無いのにノーミスクリア、美月はルームメイトなのにギリギリクリア、この差は如何に。

次はアクセサリー屋だ。

 

「鋼夜!鋼夜!これ見ろ!」

 

そこにあったのは砕け散った俺と美月の翡翠のネックレスそっくりのものであった。

あの翡翠のネックレスは『双刃夜月』になった際に砕け散ってしまったのでもう手元には無い。

どうしてもとせがませるのでちょうどいいから9個それを買ってコバルト・シリウスのメンバー全員に渡すこととした。

何故か美月は怒っていたが、その後に入ったティナと行ったカフェで飲んだ抹茶がとても気に入ったらしくご機嫌は治った。

 

「しかし、流石に映画館には行っている時間は無いぞ」

「うむ、仕方がない。まあ別にいいだろう」

 

と言うわけで次の店は洋服屋である。

 

「あら、貴方は……」

「ああ、あの時の店員さん」

「またプレゼントですか?羨ましいですねぇ」

 

なんとあの時の店員に捕まってしまった。

ミーシャとは違う女性を連れていたので怪しまれたが、何かいきなり納得した様子となりご機嫌で相手をしてくれた。

 

「これが似合うのではないですか?」

「いや、私はこういうヒラヒラしたのは……」

「似合ってるぞ、美月」

「これにします!!」

 

即決である。何なのだろうか、俺が褒めるとみんなそれにするのだが……

そしてミーシャの時と同じように俺が店を出ると美月が呼び止められていて直ぐに顔が真っ赤になっていた。

その後に聞いても答えてくれないのも同じだ。

 

「次は猫カフェだが……」

 

何故か俺が行くと数少ない犬に絡まれるのだ。

俺は犬派なので良いのだが、残念なことに美月も犬派なのだ。

今日は猫と遊ぼうと思いつつ、店内に入ると案の定犬が勢いよく飛びついてきた。

 

「うぷっ、ちょっ……ナキ!」

 

飛びついて来たのは真っ白なゴールデンレトリーバーのナキ。前に来た時に最後まで離れなかったやつだ。とうとう店員さんに名前を付けてあげて下さいと言われる程に。

 

「あ、あれくらい積極的にいけば……ナキ、油断出来ん」

 

何やらブツブツ美月が言っていたが、俺はそれどころではない。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

「や、やっと解放された……」

 

俺はやっとナキから解放され、最後に残った水着売り場へと歩いていた。勿論その間もずっと美月との手は離さなかった。

 

「以外と門限までは時間があるな」

「まあ明後日からはファニーオレンジだし早く帰らないといけないけどな」

「うむ、そうだったな」

 

そんな話をしながら水着売り場へと向かう。

今日は日曜日だが、そんなに人は多くなかった。今日は水着を買うよりも海に行くのだろう。

 

「これとか良いのではないか?」

「いや、それよりこっちの方が……」

「いや、それは派手ではないか?」

「うーん、でもそれはちょっとなあ」

 

結局着てみては如何ですか?という店員さんの声に従って試着する事となった。のだが……

 

「おい、手離せよ美月」

「……やだ」

「いやいやいやいやいや、手離さないと試着出来んだろう」

「……出来る」

 

あーでもないこーでもないと三分程もめたが結局俺が折れて手は離さない事となった。

が、しかし片手を鋼夜を繋ぎっぱなしというのは美月は片手でしか水着を着られないということである。

 

「んっ、くっ、このっ」

 

どうやら苦戦しているようであるが、ここで鋼夜に問題が起きる。それもそうであろう。今の鋼夜ははたから見たら試着室に片手を突っ込んでいる紛うことなき変態である。

 

「お、おい美月。早くしろ、このままだと俺が不味い事になる!」

「わ、わかっている。わかっているからそう急かすな。片手では着づらいのだ」

 

と、そこで悲劇が二人を襲う。

 

「と、とととときゃあ!!」

「えっ、ちょっ、美月さんっ!?引っ張ると……」

 

ズドーン。

鋼夜は思いっきり美月に引っ張られ試着室にダイブした。

 

(痛てててて……)

 

と、その時鋼夜は目の前に柔らかくて暖かい物がある事に気がつく。それに顔面を覆い尽くされている事も。

そして前方から発せられる般若のごときオーラを。

鋼夜はギギギギと首を上へと向ける。

案の定そこには鬼が居た。

 

「ちょっ、これは、誤解……っていうか半分お前の所為……あっ、あっ、ギャァァァァァァァアッ!!」

 

哀れな一人の男の悲鳴が響き渡った。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

8月13日 日曜日

 

バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ

鋼夜のバカ、アホ、ドジ、マヌケ。

 

鋼夜…………………………÷*=1€÷♪×1÷

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