「ビーフシチュー好きなの?」
俺は取り敢えず当たり障りのない話題から入ることとする。
「う、うん。好き……」
「そうなんだ、うん俺も好きだよ美味いもんな」
「う、うん……」
うーん、どうも話が弾まないな。
ふと、横からの視線を感じそちらを見ると何故か美月がこちらを見て睨んでいた。
「ん?何だ?」
「……えらくご執心だな」
「ああ、ほっとけないからな」
「何がだ?」
「こういう子をだ」
パキッ。
美月の持つ箸が割れる音がする。
へ?なんか俺変な事言った?
「それは……その…こういう人が好みという事か?」
いつもハキハキと話す美月にしては珍しく歯切れが悪い。
「鋼夜。君は何ていうかこう…もっと言葉を選んだほうがいいな」
前で話すミーシャにも言われてしまった。
その横のポーラに至っては赤面で俯いてしまっている。
「ああ、そういう事か。ちょっと違うな」
「では何だ!」
ダンッという効果音と共に美月がそう問いかける。
「紗夜に似てるからな…」
「!……すまん……」
「いやいいんだ。てゆうか謝らせてばっかでゴメンな」
「謝るのはこちらだ。すまないな鋼夜」
いまいち話についていけないオルト、ライラ、ミーシャ、ポーラは落ち込む美月を不思議そうに眺めている。
「ああ、紗夜って言うのは俺の妹なんだ。ゴメンなポーラいきなりそんなこと言われてビックリしただろ?」
「う、ううん。美月さんはどうしたの?」
「紗夜は、殺されたんだ。7年前に」
「そっか、そうだったんだ。ゴメンねそんな話をしちゃって」
「いや、いいんだ。まあこの際だから聞いてもらおうかいいか?美月?」
美月は黙って頷く。
「最初に言っとくけど俺と美月は両親共に居ない。殺されたんだ」
「あっ、心音って……」
どうやらオルトは心当たりがあるらしい。
それは多分正解だ。
「うん。美月の両親はフリーダムナイツ研究の第一人者心音夫妻だ。美月も7年前に両親共に殺されている」
「そうだったんだ……」
「俺の話もしたいところだけど……って!やべえ!時間がねえ!」
俺が時計を見ると昼休み終了3分前であった。
そして俺の前には冷え切った手付かずの昼ご飯。
そそくさと立ち去るクラスメイト……っておい!
どうやら話している間にみんな食べ終わったらしい。
「やばいぞ美月!みんな行っちまった……ぞ?」
「では、お先に失礼する。生きろよ鋼夜午後の授業はフェルリア先生もいるぞ」
そう言って美月も食堂を出て行ってしまう。
そして残された俺。
あい あむ ろんりー。…いやいや!あろーんだ!決して孤独ではない!
だがご飯を残すのは自分ルールその三、ご飯は残すべからずに違反するのできっちり食べ終える。
昼休み終了1分前、何とか食べ終えた俺は食堂のおばちゃんにお盆を下げる。
「あら、偉いわねえ君は!きちんと食べてくれたのね!」
「自分ルールに反するので。美味しかったですよ」
「どうもお粗末様でした。それじゃあ今度は何かオマケしてあげようかねえ」
「ありがとうございます!」
そう言って俺は全速力で廊下を走った。
結局着いたのは本鈴の10秒程前だった。
「あー。疲れた……」
「よく間に合ったな。何で残さなかった?」
「ああ、自分ルールだ。あれを守らないと師匠がキレる」.
「だが、その師匠とやらは此処に居ないだろう?」
「まあな、でも約束だからな」
「そうか」
美月が微笑む。
一瞬その顔に見惚れそうになったものの、直ぐに目線をそらす事で回避。
いきなり笑うなよな、ビックリした。
丁度その瞬間フェルリア先生と多賀先生が入ってきた。
「では午後の授業を始める。では多賀先生よろしくお願いします。諸君!私は次の授業の準備をして来るので多賀先生先生の授業の後、校庭へと出てくるように」
そう言い残してフェルリア先生は出て行ってしまった。
滞在時間、約5秒。
「それでは授業。というよりまた説明ですねー。この時間は『天剣十三将』と『十聖剣』についての説明ですねー。皆さん『天剣十三将』は知ってますね?じゃあミーシャさん」
「はい、イージスで認められた実力者の総称で実質的な世界のトップです」
「正解です。この学園には二人の十三将が居ます。先ずはこのクラスの担任のフェルリア先生。フェルリア先生は序列8位ですね。それとこのミーディア学園の校長です。あの人は序列1なので世界のトップと言っても過言ではありませんが放浪癖が有るので政治には向きません。あっ、今のはオフレコで」
「知ってた?」
「まさか……鋼夜知らなかったのか?」
「………」
「校長の名前は?」
「………」
「……無知は恥だぞ」
怒られてしまった。そこまで言う事ないだろう。俺の幼馴染みは言うことが辛辣である。
「では『十聖剣』は知ってますか?では美月さん」
「はい、世界最高の十本の剣の事で、選ばれたフリーダムナイツにのみ発現すると言われています。確か別名は
「はーい正解です。よく勉強してますね」
そうして午後の1コマ目の授業は過ぎていく。
そして、2コマ目の授業開始までの休み時間。
「次は校庭だっけか」
「ああ、フェルリア先生の授業らしいな」
「まあ、いいや早く行こうぜ」
「貴様に言われなくともそのつもりだ」
「そうだ、美月今週の週末は暇か?」
「暇だが?」
「良かった、ちょっと買い物に付き合ってくれないか?」
「そっ、それはデート………」
「ん?良いか?」
「あ、ああ!勿論だ!…ああいや、しかた無いから付いて行ってやろう!」
「どっちだよ……」
校庭に出た俺たちを待っていたのはフェルリア先生であった。
「さて、貴様達は6月にクラス対抗の新人戦が有るのを知っているか?まだ入学したてだが手っ取り早く第二世代になってもらわないと困るのでな。まあウチの伝統だと思ってくれて構わない」
初耳である。だが今度はクラスメメイト全員がそうであったらしく、ざわついていた。
「それに当たってクラスの代表選手を決めるためにそうだな…五月の上旬にクラス内でのトーナメント戦を行う、新人戦はペアで出るのでな優勝ペアがクラス代表として新人戦に出てもらう。尚ペアは部屋割りと一緒だ。そのため新人戦及びトーナメント戦に向けて本日より体力面でのトレーニングを開始する。メニューはマラソンだな」
その顔にクラスメイトの殆どは渋い顔をする。
「今日は軽めに校外を3周と言ったところか」
ミーディア学園の校外は一周約3キロ。
その言葉に一部の女子が目を剥く。
「今日はそのままだが、明日からはフリーダムナイツを着て走ってもらう。勿論、補助動力源は無しだ」
oh…それはすなわち鉄の塊を体につけて走るのと同義である。
「今日のノルマは…まあ一時間もあればいいだろう」
そしてその言葉に一部の男子も目を剥く。
「それでは準備体操始め!」
かくしていきなりノルマありのマラソン大会が幕を開けたのだった。
ムササはこのマラソン大会、ノルマクリアは失敗確実ですね。