業火剣乱の狂奏曲《コンチェルト》   作:ムササ

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#77 ガールズタイム

合宿開始から5日。合宿初日とは打って変わってここ最近のファニーオレンジ島には休暇とは程遠い環境に置かれていた。

 

「ふぃー……きっつ」

 

8月の日差しは容赦なく俺たちの体力を削ぎ落としていく。

更に蒸し暑い独特の気候がじりじりとだがしかし着実に集中力を奪う。

しかし実戦で集中力を切らす、もしくは体力が尽きる。と言うことは即、死へと繋がる。それだけではない、それによって仲間の命までも脅かすこととなるのだ。

 

「うっし、もう一回!」

 

俺は今、蒼火桜の固有武装である光華紫電一本のみを持ち、グレースさんと対峙していた。

これが俺のこの4日間の訓練。俺に足りないのは同格以上の対人戦の経験だ。

それは少し前まではあまり必要のないものであった。しかし、今この状況下ではそうも言っていられないのだ。創生龍(ティアマト)が素晴らしい人材を育成し、イージスの最大戦力である天剣十三将を仲間に引き抜いたお陰で、対グリモア用の訓練だけではなく対人戦の訓練をしなければいけなくなったのだ。

 

「鋼夜殿、まだやれますね?」

「はい、次お願いします」

「流石『天将』の一番弟子です。その目はそっくりですね」

 

対するグレースさんはまだまだ全然余裕である。

勿論俺は光華紫電のみで戦っており、剣翼も天羽々斬も使用していない。それに対しグレースさんは十聖剣こそ無いものの、俺より世代は上の第6世代だ。基本スペックが違う。固有能力を使わないこの状況では勝てるほうがおかしい。というよりその為の訓練なのだから普通なのだが。

結局1本も取ることが出来ないまま。今日の訓練は終わった。

 

どうやら俺がグレースさんと模擬戦をしている間、他のみんなはセルディに稽古をつけてもらっていたらしい。

みんながみんな耐力の限界まで訓練を続ける生活がもう今日で5日目。正直気力、体力共にすり減っている。

夕食をなんとか済ませ、風呂に入って俺は自室へと倒れ込むように入り、死んだように布団に潜り込むのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

5日目がもう直ぐ終わり、もうそろそろ6日目が始まろうという時間。女性組が止まっている部屋は明かりが点いていた。

オルトのお陰で女性組が全員同じ部屋となった為、セルディやエレナ、グレースといった年長組さんも同じよう部屋である。この部屋の明かりがついている理由、それは勿論ガールズトーク、ようは定番である恋愛話である。

昨日までは何事もなく泥のように眠っていたのだが、今日はみんな都合の良いことに起きていたのだ(慣れたとも言う)。

 

「ねえねえ、それで結局どうなのよ」

 

エレナがポーラに発した一言で、場は騒然と……しなかった。

 

「どう、とは?」

「鋼夜のどこが好きなのよ」

「「「「ブッッッッッ!」」」」

 

美月、ポーラ、ミーシャ、ライラが口から飲み物を吹き出した。若干一名、「そんなの決まっているじゃない、全部よ」と言っていた猛者がいたのだが。

 

「ななななっ!そそそそそ、そんな事はべべべ別に、ありりりりませんけど?」

「いや、そんな反応されなくても知ってるし」

 

その言葉に全員の視線がエレナに向く。

 

「当たり前じゃない。みんな態度で丸わかりだもん。顔に書いてあるわよ、私は鋼夜が大好きですって」

「そうですね、皆様相当分かりやすいかと」

 

セルディの追い討ちを受け、全員が押し黙る。

 

「まあ、天剣になる程の者はそういう宿命に生まれてるようなものですからね。それに鋼夜殿はかっこいいですしね。後10年早かったら私もアタックしてました」

 

グレースのそんな爆弾発言で今度こそ場が騒然とする。

 

「まあまあ、そんな事はどうでも良くて、わたしはみんなが私の義弟のどんな所が好きなのか聞きたいわけよ。ほらほら、ポーラ言っちゃいなよ」

「あ……あ、ぅぅ……あの、ううぁぁぅぅ……」

 

何だか酒が入って新入社員をいびるドS上司見たいな図である。

 

「言わないと鋼夜に言っちゃうよ?」

「えっ!言います!言いますから、言わないでぇ!!」

「はっはっ、冗談冗談、言わないよ。そんな野暮な事はしない」

 

そんなエレナの様子に赤面しながらも、ポーラはおずおずと口を開く。

 

「自分の心が決まっている所……でしょうか」

「うん?もうちょっとストレートに言ってみ?」

「自分の決めた事を絶対に曲げない、そんな強い所です」

「ほーう、即ち真っ直ぐな所が良いと。まああいつは結構良くも悪くも真っ直ぐだしねえ。よし!合格!」

 

ポーラはそういうと真っ赤になって俯いてしまった。

 

「ほい、じゃあ次ミーシャ」

「ふえっ!?私ですか!?」

「うん、ほらほらお母さんの前で言っちゃいなよー」

「そうですね、私も娘がどんな所に惹かれたのか気になります」

「お母様まで……はあ、そうですね。やっぱり、強い所。でしょうか」

「ほうほう、強い所。ねえ、してその理由は?」

「強い者と結婚せよ。それがアルキオス家の家訓です。だから私はイリーガル・ブルーに憧れた。そしてその憧れが目の前に居た」

「つまり、ミーシャはイリーガル・ブルーとしての鋼夜が好きなわけだ」

「いや、えっとそうじゃなくて……なんというか、私はそうじゃ無くても鋼夜には惹かれていたと思います。こう、なんというか、朧火鋼夜という1人の人間の強さに」

「そうねえ、それじゃあ合格かな!まあ付け加えがなかったらダメだったけど。グレースさんは?」

「そうですね、確かに鋼夜殿だったらいいでしょう。精進しなさい、ミーシャ」

 

はいっ!と大きな返事を赤面しながら返すミーシャ。

 

「じゃあ、次はライラかな」

「うん!私はねえ……約束したから」

「約束?何を?」

「私のヒーローになってくれるって」

「ほう?詳しく聞かせて貰おうか」

 

ライラは水着を買いに行った際の出来事をみんなに話す。

 

「それで、私はずっとヒーローになりたかった。でもなれないって分かったから、だから私のヒーローになってくれるって約束してくれた鋼夜君が好きなんだ」

「うんうん、ヒーローねえ。合格!自分の義弟がよく言われるのは悪い気しないしね」

 

えへへ、と笑いながらライラも顔を赤く染める。

 

「じゃあ、ティナは?」

「全部よ」

 

迷う事なく、むしろ覆いかぶさる感じでそう言った。

 

「鋼夜の強い所も、格好良い所も、話し方も、声も、顔も、匂いも、全部よ」

「それは、鋼夜のダメな部分も見て言っているのかな?」

「勿論、私は師匠の元で鋼夜と一つ屋根の下で生活していたのよ。ダメなん所の一つや二つや三つや四つ把握してるわ。完璧なんてつまらない。ダメなところがあるから良いのよ」

「合格!いいね!ティナ!流石よく分かってるよ!」

 

ティナはまあまあ厚い胸を張りながら得意げな顔をする。

 

「じゃあ次は……セルディ!」

「えっ、私ですか?」

「うん!勿論!同じチームメイトとして気になってない……訳ないよね?」

「えーっと……」

 

今、セルディが言い淀むという珍しい光景を目の当たりにしていることを誰も気づいていない。セルディが本当に鋼夜の事を好きなのかみんながみんな聞き耳を立てているのだ。

 

「そうですね、好意は持っています。しかしそれが愛かと言われると微妙ですね」

「うーん、惜しい。セルディだったら年上の魅力でコロッといきそうな気がするのに」

 

ほっと一息つく一同、セルディは贔屓目なしに見てもかなりの美人だ。多分この中で1番と言っても過言ではないくらい。そんなセルディも参戦となると、更に勝率が低くなるのだ。

 

「じゃあ、最後は美月!」

「ふぇっ!?わわわわ私ですか!?」

「うん!さあさあ、美月は鋼夜のどんな所が好きなのかな?」

「あぅぅぅわうわうわうわうわうぅぅぅ」

「本当免疫ないよね、でも言わないと鋼夜に……」

「ああああああっ!言いますっ!言いますっ!」

「ほれ、言ってみい」

「守ってくれる所……です」

「ほう、それはどんな時にかね?」

 

美月は小学校時代の話をみんなに話す。

 

「それはいいエピソードだねぇ、うんうん。みんな合格!」

 

だが、しかしそれは脱落者が出なかったことを意味する。ということはまだまだ鋼夜を巡る熾烈なレースは終わらないというわけだ。が、しかし

 

「それならば鋼夜殿が天剣で良かったですね」

「えっ?どう言うことですか?」

「天剣には重婚が認められているのですよ」

 

その時全員の体に雷が走った。

それ即ち、取り合いをしなくても良いという事である。

 

因みに天剣に重婚が認められている理由は、ジュエルは遺伝する。そういうことである。

 

「まあ、結婚相手も天剣。若しくはイージスの重役である事が条件ですが」

 

ライラにもチャンスはある、そういう事だ。

その時全員の目標が決まった。最低でも天剣に入る。少女達は明日からの訓練のメニューを増やす事を決心した。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

「うおっ!?どうしたんだよ鋼夜いきなり立ち上がって」

「……なんかめちゃめちゃ寒気がした……」

「風邪か?」

「わからん……でも何だかすげえ怖い」

「不吉な事言うんじゃねえよ……」

 




明日からは戦闘描写が入ります。休暇は今日で終わり!多分……
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