業火剣乱の狂奏曲《コンチェルト》   作:ムササ

86 / 114
#80 レイジング・ボルト

「じゃあ、いく」

 

そう言ってリュミルが鋼夜に向けて凄まじい勢いで突貫する。その威力はその場の地面が抉れる程である。

リュミルは薙刀を大きく振りかざし、上段からの斬りおろしを仕掛けてくる。鋼夜はそれに対し、光華紫電で受け止める。が、キィンッという音と共に鋼夜の右手から光華紫電が弾かれる。

 

「んなっ!」

 

その隙を逃さず、リュミルが薙刀を振るう。

普通のフリーダムナイツの剣士だと、この時点でノックアウトだ。しかし、鋼夜は『天将』滝沢秋水に手ほどきを受け、実の父親が道場主という家系である。古武術などの刀を失った時の対処術などある。薙刀を避け、屈んだ姿勢のまま回し蹴りを顔面に向かって放つ。だが、ここで予定外の現象が鋼夜に降りかかる。

顔面に向かって放った蹴りが、まるでリュミルを避けるかのごとく湾曲したのだ。

 

(ちっ、これがあいつの固有能力か?やっぱあの時にもう発動してやがったな)

 

しかし妙である。さっきはティナのストラトス・ディーヴァを逸らし、先ほどの高速移動が能力だとすると、この蹴りを逸らした能力とが噛み合わない。

一番最初のストラトス・ディーヴァを逸らした能力と、この蹴りを逸らした能力が同じだとすると、二回目の高速移動をする能力がわからない。

もしも第七世代だとすれば、未だに第五世代である鋼夜に勝ち目は無いとまでは言わないが、かなり低くなる。

 

(だけど、まだ数回打ち合っただけだけど圧倒的なまでの実力差は無い)

 

それならば第七世代である可能性は低い。

 

「凄いね、あの体勢から私の攻撃を避けて反撃してきた人なんて全然居ないよ」

「そりゃどうも。じゃあ御褒美として君の固有能力教えてくれないかね?」

「うーん、だめ」

「そうかい。じゃあ仕切り直しといこうか」

「わかった。次で仕留める」

「おっけー、じゃあ俺も本気だそうかね。〈鋼鉄の刃よ我が身を纏いて翼となれ〉蒼天皇の剣翼」

 

鋼夜の背中に二十四の日本刀が現れる。

鋼夜はそれを連続でリュミルに斬りつける。四方八方、縦横無尽に襲いかかるそれはしかしリュミルの目の前で屈折し、虚しく空を切るだけである。

 

「無駄、私に攻撃は通じない」

「なら、これでどうだっ!」

 

鋼夜は全ての日本刀を出現させ、合計百十一の刀の雨として、リュミルに降らせる。それは土煙がリュミルを覆い隠すほどに続く。しかし、リュミルの体には傷一つどころか、埃一つ付いていない。百十一の日本刀はリュミルの周りの地面に突き刺さっているのみである。

 

「今度は、こっちからいく」

 

リュミルが手を差し出す。すると、

 

「ぐっ、こりゃぁ、まずっ」

 

鋼夜の体がまるでリュミルに引き寄せられる様に吸い込まれ始めた。その力は凄まじく、ブースターを総動員しても全く衰える気配も無い。

 

「だったら!」

 

鋼夜は剣翼をリュミルに向かって、引き寄せられながらも投げる。リュミルがもし、その手で全てを引き寄せたりする事が出来るのならば少々狙いが甘くても当たるはずだと思い。

 

「流石だね」

 

しかしリュミルはそう言って、その日本刀を少しの動きだけで避ける。そして、

 

「まずは、一撃」

 

凄まじい衝撃と共に、鋼夜の腹部に回し蹴りが叩き込まれる。そしてそのまま、鋼夜の体は後方へと吹き飛ばされ、空中で静止した。

否、違う。またもリュミルに引き寄せられているのだ。

 

「二撃目」

 

そして今度はさっきとは違う方の足でまたもや回し蹴り。バキッという音と共に蒼火桜の装甲が割れる。そしてまた、慣性に従って吹き飛ばされ、またも静止する。

 

「トドメ」

 

リュミルは器用に空中で一回転し、鋼夜にかかと落としを放つ。しかし今度は離れない(・・・・)。そのまま更に空中で一回転し、そのまま地面に回転しながら叩きつけた。

 

「が、はっ……」

「これで貴方はテミスの鎮魂歌を使わざるを得なくなった。これでもう超回復は使えない」

 

しかし、鋼夜は悲鳴をあげる体を無視してある事を考えていた。

 

(そうか、あいつの能力は……くそっ。かなり厄介っていうか普通に最強じゃねえか……いや、まてよ?あいつ、なんでさっき……)

 

その時鋼夜の頭にある推論が浮かぶ。

 

「どうしたの?死んじゃった?」

「ぐっ、残念ながら死んじゃいねえよ……」

 

そう言いながら、鋼夜は立ち上がり、テミスの鎮魂歌を発動。この日に受けた傷全てを回復する。

 

「でも、残念。私の能力が分からないと貴方は絶対に……」

「解けたぜ、お前の能力」

 

驚くリュミルを尻目に鋼夜は不敵に微笑んだ。

 

「お前は第七世代なんかじゃない。お前の能力は一つだ」

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

「雷の剣だと?体にそんな電気を纏って、目くらましのつもりか?」

「いいえ、これからが『雷剣』の戦闘です」

 

そう言ってグレースは長剣を構えると、消えた。

勿論本当に消えた訳では無い。あくまでもそう見えるだけである。そして次の瞬間、蛍の体は吹っ飛ばされていた。

 

(なんだ!?何も見えなかったぞ!?)

 

「あら、随分と簡単に喰らいましたね?真逆見えませんでしたか?これでも手加減しているのですがね?なら、これ位ですか?」

 

すると今度はグレースが高速で移動していることが分かる。しかしその速度たるや蛍でさえ、目で見る事がやっとである。

 

「ぐうっ!」

 

今度は何とか長剣で受け止める。そして、これで蛍にはグレースの能力が分かった。だてに蛍も白夜の右腕として白夜の元で働いているわけではない。

 

「あらあら止められましたね」

「貴様、その能力は……」

「あら?気がつきましたか?」

「雷を剣に落とす能力……という訳では無いのだろう?貴様の能力は雷自身を自分に纏わせる能力だ」

「正解、私の能力の弱点はこれですね。直ぐにバレてしまう」

 

グレースのフリーダムナイツ、パラディオの固有能力、レイジング・ボルトは自身の持つ長剣に雷を落とす能力である。しかしその効果はただの威力上昇だけには止まらない。その雷はグレースの体にまで伝い、その身に電気を宿す。

 

人の神経が電気信号で動いている事は周知の事実だと思うが、人間の脳は普通の生活を送っているときはたった10%しか働いていないことも知っているだろうか。

つまり、我々人間はどんな人間でも有事の際には今発揮している能力の10倍の力を発揮する事が出来るのである。

 

話を戻すが、グレースはその電気信号を強制的にその雷によって発生した電気で書き換えるのだ。

つまり、グレースは今まさに、その有事の際にしか発動しない人間の本来の力を発揮している事となる。

人間の種としてのリミッターの解除、更に限界値の突破。それがグレースのレイジング・ボルトの隠された能力であるのだ。

 

しかし勿論そんな人間としての力の全てを出せる能力にデメリットが無いはずが無い。まず時間制限がある。制限時間は約10分。それにその10分が過ぎるとグレースは全く体を動かす事が出来なくなる。

しかしグレースの能力は電気信号を完璧に支配しているため全てを脊髄反射で行う事が出来る。

 

故にグレースは何者よりも早く動き出すことが出来る。

故にグレースは曲がる無く動くことが出来る。

故にグレースの長剣はその刀身と同じように真っ直ぐ最速で放たれる。

それ故グレースの真っ直ぐな性格も相まって付いたあだ名が『雷』

 

誰よりも真っ直ぐな天剣。それが天剣十三将序列十位『雷剣』グレース・アルキオスである。

 

「この能力は使った後の反動が酷いのですが、この状態になれば本気を出した『疾風』殿や『蒼天皇』殿にも速度の面では引けを取りません」

「それが、貴様の能力……それほどの力を持ちながら何故」

「世界を相手に戦わないのか。ですか?それは簡単。私が騎士だからです。騎士たるもの仲間を守るべし。それが騎士としての務めであり、義務。ノブレスオブリージュ。私の家の家訓。それを果たすために私は剣を振るう」

「やはり天剣とは相容れない」

 

しかし蛍にもまだまだ負ける気などはなかった。

 

(私は…負けられない。白夜様の為にも……)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。