時は暫し前に遡る。
「鋼夜っ!」
私はあのフリーダムナイツに乗った鋼夜が吹き飛ばされるのを見て、思わず声を上げてしまう。
「待って!ミーシャ大丈夫よ、鋼夜はあれくらいじゃあやられないわ。それよりも、早くこいつらを片付けるのが優先よ」
そう、今私達と鋼夜の間を阻んでいるのは無数のゼノギアだ。それがまるで壁のように鋼夜の元に駆けつける事を邪魔している。
「そうね、あれくらいで『イリーガル・ブルー』が負けるもんですか」
そうだ、これ位で『イリーガル・ブルー』不当なる蒼とまで言われた男が負ける訳がない。
だったら私達がやるべき事は一機でも多くのゼノギアを一秒でも早く倒す事だ。
「〈強固なる盾を、絶対なる壁を、全てを封殺せよ〉スフィンタリア!」
私がその言葉を紡ぐと、私の周りに六枚の
「〈明日へと切り開く汝らの曲を奏でろ〉チューン・オブ・トゥモロー!」
そう言ってポーラが、二丁のマシンガンを構える。
「援護するよっ!ミーシャちゃん!」
「そうね、私もこの状況じゃあストラトス・ディーヴァは使えないし」
「そうだな、私も双刃夜月を唱えている時間は無いだろうな」
どうやら鋼夜の方を気にしているのをみんなには勘付かれたらしい。
「ありがとう、じゃあ一気に突破しよう!」
そう言って私もスフィンタリアと固有武装である二刀レイピアを構えた。
「そこを、退いてっ!!」
先陣を切ったのはポーラだ。
チューン・オブ・トゥモローで増加した弾丸がまるで津波の如く押し寄せる。
それを食らい、次々と被弾するゼノギア。しかし、それだけでは一向に倒れる様子が無い。
「このゼノギア、前のより強い!?」
正解である。
元々
よって、集団で孤立していたフリーダムナイツを奪い取りフリーダムナイツの仕組みを解析したもののそれは、認証された個人でしか使えない事が分かった。
よって、
そうして起こったのが、当時フリーダムナイツ研究の世界的権威であった心音夫妻の殺害事件である。
話がずれたが、このゼノギアは三ヶ月ほど前のミーディア学園の
あの時の膨大な戦闘データによりゼノギアを進化させることに成功していたのだ。
それによって防御性能は格段に上がり、今のように第三世代の固有脳力でさえ、無傷とはいかないが耐え切れるほどになったのだ。
「だったら、力技で突破するだけ!」
私はスフィンタリアを私の前に配置して、シールドバッシュの体制でゼノギアに突っ込んだ。
それは数機のゼノギアを吹き飛ばし、押し戻したものの、数という最強の武器の前には言葉通り多勢に無勢である。
「数が……多すぎるよぉ」
「あぁ、もう!鬱陶しいわね!」
ポーラもティナも突破口を開こうと私の周りのゼノギアに銃撃を仕掛けてくれているが、それでも視界からゼノギアが消えることは無い。倒れるそばから増えていっている感覚だ。
「ぐっ、奴ら後方から狙撃を…」
「〈不死をも殺す、強靭なる刃よ〉レーヴァテイン!」
美月がそう言ってレーヴァテインを顕現させる。
「邪魔、だぁぁっ!!」
美月がレーヴァテインを横薙ぎに振るうとゼノギアがそれに沿うように吹き飛ばされていく。
これで目に見えてゼノギアの数が減った。
「ナイス美月!一気に行くわよ!!」
そう言ってティナが固有武装である大型スナイパーライフル。ヘヴンズ・デビルを構える。
「ストラトス・ディーヴァはないけど……ゼノギア相手ならこれで十分よっ!」
そう言ってヘヴンズ・デビルの引き金を引き続ける。
それは一点に集中してまるでそこだけ不可侵の領域となったかのようにそこに居るゼノギアから順々に弾かれている。
「私も援護するからね、ティナちゃん!」
そう言ってポーラもマシンガンの引き金を引き続けて、チューン・オブ・トゥモローで更にティナの作った道を広げる。
「最後は私がやろう、いけえっ!レーヴァテイン!」
美月が大きくレーヴァテインを振り切る。そうすると不可視の斬撃がそれに合わせて大量のゼノギアを吹き飛ばした。
「今だっ、行けミーシャ!」
言われるまでもなく私は走り出していた。
私のフリーダムナイツ、ナイトリオンは決して機動力が高い訳ではないが、それでも第三世代に進化しているのでゼノギアよりも速い。私はスフィンタリアを右に二枚、左に二枚、前に二枚構えてみんなが作ってくれた道を駆け抜けていった。
しかし、
「此処は、通さん!」
最後に隊長格らしき明らかに軍人と分かる体つきの男が待ち構えていた。
「そこを、退けぇぇっ!」
「此処は私が蛍様より任された戦場、私を倒さぬ限り此処は通せん!」
「ならば、力づくで通るまで!」
そうして、大盾と相手の大剣がぶつかり合う金属音が鳴り響いた。
「貴様、この力の使い方……貴様も軍人の教育を受けているな!」
「やはり貴方も軍人か、だが此処は通させてもらう!」
「たわけ!小娘に倒されるようなやわな鍛え方はしておらんわ!」
そう言って大剣が少しづつではあるが、私の大盾を押し戻してくる。
(フリーダムナイツの性能はこちらが上、だけど操縦士の力はあっちの方が全然高い!)
「だけど……それでも私は……退けない…退きたくない!」
そう言って大盾に込める力を更に強める。足の踏ん張りも限界、もって後数秒。ならば、此処に全力をかける!
「それが……騎士だぁぁっ!!」
相手の体制が崩れた。その機を逃さず私は相手にレイピアを突き立てる。
それは相手の右腕に突き刺さり、鮮血が飛び散った。
その衝撃で相手は大剣を落としてしまう。
「見事だ、貴様……いや貴殿、名は?」
「ミーシャ・アルキオス」
「ミーシャか、貴殿の様な軍人……いや、騎士に出会えた事を誇りに思おう。私の負けだ。殺すが良い」
「殺しませんよ」
「何故だ、負けた私にこれ以上生き恥を晒せと言うのか。貴殿も守れない騎士になってまで生きていたくはないだろう」
「確かに、そうです。でも、例え敵でも、次に会えばまた剣をぶつけ合うとしても、それでも騎士は、戦えない相手に剣を突き立てる様な事はしない」
「……甘い理想論だな。次に会えば負けるのは……殺されるのは貴殿なのかもしれないぞ」
「いいえ、負けませんよ。次に会う時は私はもっと強くなっていますので」
「貴殿も守りたいものが有るのだな」
「ええ、今は守られるだけですけど。いつか私もお母様や鋼夜の様な見知らぬ誰かを守れる。そんな人になりたいので」
「見知らぬ誰かを守れる、か。確かにそんな力を得ることが出来たのなら、この世界はもう少し、もう少しだけ平和になるのかもな」
「そうですよ。同じ人間なんですから、争う事のない世界だって作れます」
「ふっ、やはり甘い理想論だな。ーーっ!!そこを退け!!」
ドンッ、という軽い衝撃と共にいきなり突き飛ばされ、思わず尻餅をついてしまう。
「いきなり何をーーっ!?」
すると私がいた場所には地面から何やら黒い影の様なものが現れ、私が戦っていた相手を包んでいるところだった。
「なっーーそれは……?」
「こんなものは我々の作戦には無い、すまんなこれが何かは私にもわからん」
「では、貴方は!?」
「ふむ。嫌な予感がするのは確かだ。だから最後に言っておこう。ミーシャ・アルキオスよ」
そう言って彼は確かにーー
「いつか貴殿も世界の真実を知る。その時にどう決断を下すのかは私には分からん。しかし私には貴殿達ならば何かを成し遂げる。そんな予感がする」
ーー笑った。
「世界を頼んだぞ」
次の瞬間、凄まじい光があちこちから輝き出す。
みるとゼノギアの大半があの影に包まれている様だ。
そして、あまりの光量に目を瞑り、目を開けた時には……
全てのゼノギアは跡形も無く、消滅していた。