業火剣乱の狂奏曲《コンチェルト》   作:ムササ

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さりげ、毎回重要だったりするエピローグ。


三章エピローグ 死へのカウントダウン

「あ、あ!ーーあああああああああああっ!」

 

死が流れ込んでくる。

リュミルの触れた所から、漆黒よりも黒い冥府の闇がポーラと鋼夜の体へと流れ込んだ。

それは黒い痣となり、二人の体を蝕む。

 

「任務完了。蛍、終わった」

「ええ、見てたわ。さあ、リュミル帰りましょう」

 

蛍が地面へと降り立ち、リュミルに触れる。

二人の眼下には尋常ではない痛みに言葉すら発する事の出来ないポーラと鋼夜が横たわっている。

 

「大丈夫、痛みはもう少ししたら一旦ひくから。でも、もう私には止められない。『嫉妬』の怨嗟は闇より深い」

 

そう言ってリュミルは蛍と共に帰ろうとする。

 

「ま……て」

 

二人の歩みを止めたのは、今にも死んでしまいそうな1人の男の声だった。

 

「何故……俺……を……殺さ……ない……」

 

フリーダムナイツを解除され、それと同時に固有能力も解除された事で、鋼夜の意識が戻ったのだ。

蒼天崩獄を使用していた際にも、鋼夜の意識ははっきりしており、鋼夜は自分が負けた事を自覚していた。

自覚していたからこその、この問いだ。

 

「貴方を殺せという命令は出ていない。だから私は貴方を殺さない」

「だが……白夜に……とって……俺は……邪魔な……筈……だ。白夜の……事を……思っている……の……ならば……殺す……べきでは……ないのか?」

「?貴方は殺されたいの?」

「……いいや……俺は……復讐を……終えるまでは……死ねない」

「じゃあ、黙ってそこで無様に横たわっていればいい。折角殺さないって言ってるのに、そんな時間稼ぎは不毛」

 

リュミルは興味を失った様に、くるりと踵を返し、歩き始める。

だが、しかし今度は自発的に自分で歩みを止めた。

そしてもう一度、踵を返し、こう言った。

 

「貴方は英雄になるべき存在。確かにこの世界に英雄は必要。だけど、貴方がもし運命をなぞるだけの英雄ならば、そんなものは要らない。白夜が求めているのは『クルティナの予言』の阻止。『クルティナの予言』の成就に必要なものは英雄と覇王。貴方は英雄になるべき。だけど、私達の邪魔をするのならば、容赦無く殺す」

「分からない……な。白夜の願いに……邪魔な……ものを……何故……求める」

「英雄と覇王は『クルティナの予言』の成就に必要。だけど、『クルティナの予言』の阻止にも必要。ただ、それだけ」

「『クルティナの予言』……ってのは……何なんだ……何故……白夜は……それを……止めようと……する」

「貴方が知る必要は無い。どうしても知りたいならば自分で真実を知ればいい。だけど、『クルティナの予言』の真実を知ったら、貴方はもう、この世界に居場所は無い」

「師匠は……ジュライアは……『クルティナの予言』を……成就させたい……と言っていた。自分も……成就させたいが……あまりにも……プロセスが……違う……とも言っていた。同じ創生龍(ティアマト)に与する……筈なのに……何故……白夜は……『クルティナの予言』を……拒む」

「……貴方に教える義理は無い」

「もういいでしょう。リュミル、行くわよ」

「ま……て……」

「待たないわ。さようなら蒼天皇。我が主の最愛の弟よ」

 

そのまま蛍とリュミルは一瞬の内に、ファニーオレンジ島からその姿を消した。

すると緊張の糸が切れたのか、忘れた様に体の至る所から激痛が走る。特にもう、足は見るも無残な姿になっている。もはや、肉塊と言った方がまだ納得できる。

 

「鋼夜!ポーラ!」

 

リュミルと蛍がいなくなった事で、美月とティナが勢いよく駆け寄ってくる。二人とも生身で走って来るところを見ると、二人とも宝力切れらしい。どうやらセルディとグレースに宝力が無い事を見抜かれ、半ば強制的に行動を押さえつけられていたらしい。見た所大きな怪我も無く、外傷も少ない。

それに少し遅れてセルディとグレースに抱えられたミーシャがやってくる。

二人とも深刻そうな顔である。

 

「鋼夜っ!鋼夜っ!死ぬなっ!」

「大丈夫だ……これ位……『テミスの鎮魂歌』で……」

 

鋼夜が魔女の誓約印を発動しようとした、その時。

耐え難い苦痛が鋼夜の身体を襲った。

 

「ぐっ、がっ……あぁぁぁあっ!」

 

魔女の力とは本来人の身に余る強大なもの。それを今の鋼夜は一人で二つも背負っているのだ。相反する二つの魔女の力が鋼夜の体内で暴れまわる。

『憤怒』と『嫉妬』互いが互いを拒絶し合い、狂った様に鋼夜の体内で暴れまわるその激痛は容易に鋼夜の意識を奪い去った。

鋼夜は、まだ幸運な方だ。何せ『憤怒』の魔女の力が有るお陰で、気を失う事が出来るのだから。

 

「あっ、いっ……ああああっ!」

 

ポーラも同様の『嫉妬』を受けている。

ポーラの黒い痣の侵食は、リュミルが触れた場所。即ち左肩から広がっている。

 

「ポーラっ!」

 

誰かの悲鳴が響くが、ポーラには届かない。

荒れ狂う激痛に抗うだけで、精一杯である。

 

『嫉妬』の魔女の力。ハーデスの怨嗟とは、触れた他者に呪いを掛ける能力である。

その呪いとは、触れた部分に『死』を流し込み、耐え難い激痛を伴わせながら、苦しみ抜いて苦しみ抜いて、狂い通した後に殺すという、世にもおぞましき最悪の力だ。

この呪いの恐ろしい所は、触れた対象者に逃げる事を許さない事。自決する事はおろか、気を失うことも出来ないのだ。痛みに意識を手放したとしても、直ぐさま同じ痛みで、現実に引き戻される。それが、この『嫉妬』の能力だ。

 

今も二人の黒い痣の部分には、他者が到底想像すらすることの出来ない痛みが延々と続いている。

そしてそれは15日間というその者にとっては永遠にも思える期間を経て、全身へと行き渡る。そうしてようやくその対象者は死をもって、『ハーデスの怨嗟』から解放されるのだ。

魔女の力故に、通常の治療での完治はおろか、抵抗すら不可能。たとえ呪いを受けた部分を切り落としたとしても、空間すら超えて、呪いは対象者の肉体へとたどり着く。

 

それが冥府の王。ハーデスの怨嗟である。

 

「くっ、何か手立ては無いのか……」

「通常の治療では全くの無力。でも、このままでは……」

 

あと15日後に鋼夜とポーラは死ぬ。

 

セルディとグレースは、なまじその力を知っているが故に、絶望感に包まれていた。

そこにエレナとライラ、オルトの三人が駆けつける。三人はすぐさま状況を把握し、他のメンバーと同じ様に絶望感に包まれる。

 

「テミスの鎮魂歌の力で『嫉妬』を排除出来ないのか?」

「ダメですね。過去の実験から察するに、一人の人間が二つ以上の魔女の力を持つ事は不可能です。ただでさえ、危うい状況なのにこれ以上鋼夜様に『憤怒』の力を使わせたら、死が早まるだけかと」

「くそっ、じゃあ見てる事しか出来ないってのかよ!」

 

その時、ティナの脳裏にあるものが引っかかった。

魔女?魔女の力……?

何かを忘れている気がする。何か途轍もなく重要な事を……

 

「そうだ!ミリアちゃんに『怠惰』の力を使って貰えば!」

「却下です。二つでさえ死という現象しか及ぼさないのに、三つ目など」

 

美月が名案を思いついたとばかりに目を輝かせるが、直ぐさまセルディに却下される。

が、そのお陰でティナは自分の脳裏に思いついたある事を思い出す事が出来た。

 

「違う……『怠惰』じゃダメだ。『怠惰』は時間を巻き戻す能力。それだけだと、鋼夜もポーラも魔女の力に負けて死んじゃう」

「どうしました?ティナお嬢様」

「『強欲』……そうだ!セルディ!『強欲』の魔女!」

「ーーっ!確かに『強欲』ならば可能性はあります!鋼夜様を、ポーラ様をお救い出来ます!」

 

ティナの脳裏に浮かぶのは、ファニーオレンジ島に来るときに乗っていた船での一幕。あの時私とセルディはルナセリア家から『強欲』の魔女が見つかったとの知らせを受けた。

『強欲』の魔女の力は、他の魔女の力を相殺する能力。

『強欲』ならば、二人を救える!

 

二人を救えると聞き。コバルト・シリウスとグレースはにわかに活気づく。

 

ーー待っててね鋼夜、ポーラ。今度は私達があなたたちを助けるから。

 

 

 

To.Be.Continued……To.the.next.stage……




次回からは、第四章!
先に章名だけ言っておきます。

第四章の名前は、愚者と道化の劫進曲《マーチ》
『行』では無く『劫』です。
では、次の時間もまたお会い出来る事を祈って。
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