「分かりました!ぜえーったいに私達がその悪魔の正体突き止めてみせます!」
「えっ!ちょっ、ライラ!?」
「いいじゃん!私達も悪魔の正体突き止めないと……ね?」
ライラが言っているのはファニーオレンジでの事だろう。
確かに私も気にはなるけど……
ちらっとセルディの方を向くと、ライラに賛同するように頷いていた。
あぁ、セルディ昔っから正義感強いもんなぁ。
「ありがとうライラちゃん、みんなも喜ぶわ」
「いえいえ!私達、コバルト・シリウスにお任せあれ!」
「ふふっ、頼もしいわね。ありがとう、これできっと悪魔に連れ去られた街の人も報われるわね」
そう、そうなのだ。ミオさんが言うように、あの黒い影。ミオさんの言う悪魔に連れ去られた人々はどこでどうなっているのかは分からない。
しかし、現実はそう楽観視できるものでは無いとみんなが既に知っている。それはいきなり空からグリモアが現れた時からみんなが知っている事だ。
この世で現実から目を逸らし、安易な道に進むのは間違いだとみんなが知っているのだ。
「では、失礼します。色々とありがとうございました」
「いいえ、またこの街に来ることがあったら寄って行きなさい。あんまりおもてなしは出来ないけどね」
「そんな事無いです、紅茶、美味しかったです。じゃあ、また」
そう言ってミオさんは私達を笑顔で送り出してくれた。
すっかり日も暮れかけている、早く戻らないと。
「ミオさん……無理してた」
「えっ?」
ライラの言葉にみんながそちらを向く。
ライラはみんなから目を逸らしたまま、話し始めた。
「ミオさんの家の本棚の上に写真が有ったの分かった?そこにはミオさんともう一人男の人が写ってた。多分、その人は……」
「いや、でもまだ帰って来てないだけって事も……」
「ううん、それならあの時買ってたパンの量が足りない。あれは絶対に一人分だった」
「……」
ライラのその言葉に私も黙るしか無かった。
ライラの言う事が本当ならば、ミオさんも大切な人を悪魔に連れ去られた本人だ。なのに、無理をしてあんな風に振舞っていてくれた。
見送ってくれていた時の笑顔が妙に心に残るのを感じながら、私達はイージスへと戻るのだった。
〜〜〜〜〜〜〜
「そう、ですか……ストックホルムにも、あの人に黒い影が……」
私達はイージスに戻った後、エレナさんとオルトにストックホルムにもあの黒い影が発生していた事を話し、ついでに通信機を使ってミーディア学園の師匠にも調査をして貰うようにお願いをした。
「あの影……何なんでしょうか……」
「分からないですね……私もファニーオレンジ島で初めて見ました」
「フリーダムナイツの固有能力……とか?」
「それはないですね、三日前と言うと私達がファニーオレンジ島で黒い影を見た時と同じ時間です。そんな大規模発現が出来る固有能力なんて聞いたことありません」
「じゃあ、アウターの攻撃とか?」
「まだ、そっちの方が可能性は有りますね……いずれにしても対策の練りようが有りません」
アウターか……ふと気になり、セルディの方を向くと何やら難しい顔をしている。が、私の視線に気がつくと微笑んで逸らされてしまった。
「なので、今は取り敢えず『強欲』の魔女です。詳しい位置は分かりましたので明日の朝にでも出発しましょう」
「うえっ!?エレナさん、どうやって聞き出したの?」
「あのストラスとかいう奴に聞いてもらちがあかないと判断したので本部に直接聞きました」
「ああ、そっか。エレナさん前まで本部の人だったんだもんね」
「ええ、伊達に『蒼天皇』のオペレーターをやっていた訳では有りません」
眼鏡をくいっとあげる仕草を見せるエレナさんはなんか年上のお姉さんっていう感じだ。セルディとはまた違った魅力がある。
うーん、鋼夜ってば昔っから年上の人に甘いからなぁ。
まあでもエレナさん自身が鋼夜の事は出来の悪い弟みたいって話をしてたし、平気かな?……平気だよね?
「あっ!私鋼夜君の昔の話聞きたい!」
「それは、私も興味があるな」
「あらそう?じゃあ少し話してあげようかしらね」
今日の夜はそんな話をしながら過ぎていく、だけど私の胸にはミオさんのあの笑顔が張り付いて眠れなかった。
〜〜〜〜〜〜〜
「おはようございます皆様、朝でございます」
「うぅん……もう朝ぁ?」
セルディの声で今日も目を覚ます。
時差ボケで、寝起きが辛い……セルディは流石としか言いようが無いわね。
セルディが寝坊したところ見たことあったかしら?
いえ、それよりも何かに遅れたことは?
私が朝起きた時にはもう身支度バッチリだったし。
あれ?セルディって何時に起きてるの?
そんなことを考えていると、セルディの声でみんな起きたのか、布団を擦る音が聞こえ始めた。
暫くして、ぞろぞろと体を起こし始める。
うん、昨日は遅くまで鋼夜の話で盛り上がってたからみんな眠そうね。特にライラなんかまだ半目じゃない、女の子がしちゃいけない顔をしているわ。
だけどこんな事をしている間にも鋼夜とポーラの呪いは進行しているのだ。今は何とか薬で抑えてはいるが、鎮痛剤だけではそろそろ効き目が無くなってきた。一刻も早く『強欲』の魔女に二人の呪いを解いて貰わないと。
「うしっ、ほらほらみんな早く起きないとくすぐりの刑よ!」
「わひゃひゃ!や、やめてよぉ、ティナちゃん!」
取り敢えず空元気でも出しとかないとね、ないよりマシよ。
と言うわけで手短なライラからくすぐりの刑に処する。
今日こそは、『強欲』の魔女に会わないとね。
全員で身支度を整え、朝食をぱぱっと済ませて出発の準備を整える。
出来れば早く済ませて、出て行きたい。
二日連続であの豚に会うのは勘弁してほしい。
幸いみんな気持ちは同じだったようで、15分ほどで身支度を済ませ、みんながエントランスに出揃った。
が、出かける直前で一人のイージス職員が走り込んできた。
「み、皆様!もう行かれるので?」
「ええ、一刻も早く『強欲』の魔女の所へ行かないと。残念だけどそんな訳で朝食をストラス殿と食べるわけにはいかないの、そう伝えておいて」
「あんな豚の事はどうでも良いのです。それよりも」
うわあ、この人今自分の上司豚って言ったわよ?
ってか、あの豚以外の職員が全員いるんじゃないかってくらい集まってきたわ、えっ?ナニコレ。
「「「どうか、ストックホルムの悪魔の正体を突き止めて下さい!!よろしくお願いします!!」」」
全員が一斉に私達に頭を下げる。
「えっ、でもイージスが調査を打ち切ったんじゃあ……」
「いえ、調査を打ち切ったのは豚の独断です。何度も抗議したのに不自然な程にあいつは調査を拒みました」
「ちっ、またあの豚なのね」
「「「街の者はもう自決を考えるほどに疲弊しております。どうか、無力な我々に変わってお力添えを」」」
「勿論よ、ってか昨日ライラがミオさんに言っちゃったしね。私達に任せなさい」
私がそう言うと、職員達が一斉に無言で頭を深く深く下げた。この中にも家族を失った人が居るのだろう。
大勢の職員に見送られながら私達はイージス支部を出て行った。
やること増えちゃったけど、鋼夜でもそうしたわよね。
私達は車でストックホルム郊外、『強欲』の魔女の家へと向かった。
「此処が、『強欲』の魔女の家?」
「なんか、普通の家だね」
そして着いたのは普通の一軒家。私達が想像していたカラスが鳴き続ける森の奥の廃屋とかではなかった。
正直ビビっていたので良かったのだが……
インターホンを鳴らし、人が出てくるのを待つ。
ってか、イージスの護衛が一人もいないってどういう事よ!本当にあの豚使えないわね!
数分待ったが、誰も出てこない。
「もしかして留守なんじゃ?」
そう言って美月がドアノブを捻ると、ガチャリという音と共に開いた。
あっ、これはマズイ。よくある殺人現場のパターンだ。
恐る恐る家の中に入ると私達が見た光景は……
「うぅ、お腹すいたよぉ」
小柄な少女がお腹を押さえてうつ伏せに倒れている所だった。グゥ〜という音も聞こえた。
えっ、ナニコレ。