そよ風に歌声を乗せて   作:おにぎり(鮭)

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第10話です。


第10話 一度会った人って意外とまた会う

「いただきまーす!!」

 

 待ってました! と言わんばかりに声を上げカレーを食べ始めるリンを横目で見ながら、俺は未だ来ない自分のカレーを待っていた。

ちなみに、今俺達はカレー屋に居る。理由? 夕飯と言ったらカレーじゃね? って言う誰かの発言がそのまま実行されただけさ。

で、今はこうしてオーダーしたカレーが来るのを待っている訳なんだが……どういう訳か俺が最初に頼んだはずのに俺のカレーが一番遅い。これは結構はストレスの原因になりかねないシュチュエーションなんで早いところ来てほしいんだけどな。

 

「駿君のカレーまだ来ないね……」

 

「ん? あぁ……まぁ混んでるし仕方ないだろ」

 

ミクの言葉にそう返したものの、徐々に、でも確実にストレスがたまっていくのを感じていた。そんな俺の所にようやく

 

「大変お待たせいたしました! カツカレーになります!」

 

と店員さんが俺の分のカレーを持ってきてくれたので小さく挙手して自分だと示す。

 

「ようやく来たよ……さて、俺も食うとするか」

 

誰に言うでもなく、そう呟いて俺はカレーを食べ始めた。

 まぁ他の誰よりも待たされてしまったが、それを十分チャラに出来るほど美味いカレーだったからよしとするか。

 

「ん~! おいしい!!」

 

「ほんと、ここのカレー美味しいね!」

 

ミクとリンがそう幸せそうにそう言う。っていうか適当に選んだ店だったけどここ、結構美味いことで知られている店みたいだ。外すげー並んでるし……道理でカレーが来るの遅い訳だ。これだけうまくて安い店なんて、そうそう無いもんな。

 そんなことを考えながら、何気なく自分の手元に置いてある水を飲む。その途端、それを見たリンが

 

「あ~! 駿兄水飲んだ~!」

 

と大声を上げた。一体何かまずいことでもしたのかと、一瞬硬直する。すると

 

「カレー食べる時は食べ終わるまで水飲むの禁止ってルール決めたじゃん!!」

 

となんか叱るような口調でリンに言われた。しかし、そんなルール決めをした記憶など俺には無い。とりあえず確認するか。

 

「なぁレン、そんなルールいつ決めたんだ?」

 

「……駿兄がイヤホンつけてカレーを待ってる間に決めてたけど? ま、駿兄は聞いてなかったから覚えてなくても無理ないでしょ」

 

……こいつ、まぁだジェットコースターのこと引きずってんのか。どんだけ嫌味たっぷりに言うつもりだよ。だが俺はそれに関して後悔もしてないし反省もしていないッ!

そんなことはどうでもいいがとりあえずまた喉が乾いたから水を飲み、そして残っているカレーを一口ほおばった。刹那俺の口の中にすさまじい辛さが広がる。

 

「がっ!? かかかか、辛っ!?」

 

突然のことに動揺している俺のそばで

 

「「やーいやーい!! 引っかかった引っかかった!!」」

 

と嬉しそうに双子が喜んでいるのが見え、殺意が沸いたがそんなことよりもまず水分補給の方が大切だ。ということでコップを探すが、見当たらない。

机の上のどこにも見当たらない。

 

「お、おい……誰か俺のコップ……」

 

「カレー食べ終わるまで水無しだよ? 駿兄」

 

「そうそう、ルールはしっかり守らないとね!」

 

こんのクソガキどもめ……こういう時だけ仲良くしやがってぇ……! こうなったら……

 

「み、ミク! とりあえず水をくれ!!」

 

ミクならきっと俺に味方をしてくれるはず。まぁそんな幻想はミクの一言でいとも簡単にぶち壊された訳だけども。

 

「え……ま、まぁルールはルールだからさ? 私もずっと飲まないように我慢してるし……」

 

「俺の味方は誰もいねぇのかよ!?」

 

そう叫ぶものの、それでこの状況が変わる訳でもない。とりあえず、さっさとカレーを食い終わって水を受け取らねば……!

そう思って残りのカレーに手をつけるものの……

 

「……!!? さ、さっきよりあからさまに辛い!?」

 

待っていたのはさらなる地獄だった。

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リンちゃんに駿君の話題を出されてパニックになった私がとりあえず夕飯と言ったらカレーじゃない? って言ったらそのままの勢いでカレー屋さんに行くことになった。

なんだか他のお店より明らかに混んでいて、待っている時間も長かったけれどそこに出てきたカレーはすごくおいしかった。こんなにおいしいカレーは久しぶりかもしれない。

ちなみに、カレーが出てくるのを待っている間皆で……って言うかリンちゃんとレン君で勝手に『カレーを食べ終わるまで水飲み禁止』っていうルールを決めていた。

流石に、ルールを破る訳にもいかないから私も頑張って我慢してカレーを食べてたんだけど……そんな私の目の前で駿君が普通に水を飲んじゃった。

 まぁその後は当然リンちゃん達に色々されちゃったわけで……って言うか私もリンちゃん達に協力しちゃったけど……カレーを食べ終わる頃には駿君はぐったりしていた。

ごめん……ほんとにごめん駿君。あ、でも後悔はしてるけどあんまり反省はしないかも。だってもともと話聞いてなかった駿君が悪い訳だし……

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「……まだかなぁ~」

 

 そんな退屈そうな声を出しながらリンちゃんが遠くを見つめる。

ちなみに今は遊園地の醍醐味とも言えるパレードを見るために場所取りをしながら待っているところだった。

 

「まぁ、当分来ないだろうなぁ。パレードがここを通るのは最後の方みたいだし」

 

リンちゃんの言葉にレン君がそう答える。

 

「え~……もっと前の方に行ければ良かったのに……」

 

そう言ってリンちゃんが目線を向けた先には、ぐったりとした表情でチョコレートアイスを食べる駿君がいた。……ほんとに大丈夫かな?

 

「もう……だらしないなぁ。これくらい普通でしょ」

 

パレードが早く見れないことが不満なのか、頬を膨らませながら駿君の方を睨むリンちゃん。でもこれは駿君のせいじゃないと思うから

 

「い、いやリンちゃん……あそこまでやる人はそんなに……」

 

って駿君をフォローしようとした途端、リンちゃんが呆れたような表情で必殺の一言を言い放った。

 

「お姉ちゃん……いくら駿兄が……」

 

「わーっ!! ごめん!! 分かったからそれだけは言わないで!!」

 

これだけは駿君に知られたくないから慌ててリンちゃんの言葉を遮る。するとリンちゃんが意地の悪い顔でにやりと笑った。……これは反則だよぅ……

 そんな意地悪なリンちゃんにこれ以上何か言われないように、とりあえずちょっと距離を取って座る。……そこがちょうど駿君の隣だったりしてドキッとしたのは私だけの秘密。

 

「……まだこねぇな、パレード」

 

「うん……そうだね」

 

隣から聞こえた駿君の声に何気なくそう返事をする。っていうか駿君もう大丈夫なのかな?

 

「ねぇ駿君」「なぁミク」

 

駿君の名前を呼ぶとちょうど彼も同じタイミングで私の名前を読んで綺麗にハモる。お互いに譲り合いをしたけれど、結局私が先に聞くことになった。

 

「もう大丈夫なの? カレー」

 

「……あのガキどもの共犯者のお前がそれ言うか?」

 

「だ、だって……」

 

た、確かにリンちゃん達に協力したのは事実だけど……別に本気で駿君を困らせたかったわけじゃないもん、とは言えなかった。だって言ったところでただの言い訳だから……

でも、駿君は

 

「ま、その気持ちだけは受け取っといてやるよ」

 

って言ってくれた。ちょっとだけ、それで気が晴れる。やっぱり、本当は駿君は優しい人なんだと心のどこかでそう感じた。

 

「で、今度は俺の番だけど……ミク?」

 

「え? あ、ああ、何?」

 

ちょっとボーっとしてたみたいで、駿君に質問されていることに気が付いて慌てて返事をする。そんな私を見た駿君は小さくため息をつきながら

 

「体の方は大丈夫なのか?」

 

って聞いてきた。きっと、昨日のことがあったから心配してくれているんだと思う。いきなり思ってもみない質問に面喰ったけど、何気ない彼の気遣いが嬉しくて

 

「うん、大丈夫だよ。心配してくれて、ありがとう」

 

そう笑顔で返す。そしたら駿君は

 

「べ、別に。ぶっ倒れられたら運ぶのは俺だし。そんな面倒事になるのは嫌だからな」

 

ってぶっきらぼうに言ってそっぽを向いちゃった。なんだか駿君の顔が赤くなってるように見えたけど、追求するのはやめておこう。

 そんな私達の前でリンちゃんが指を指して声を上げる。

 

「あ、パレード来たよ!!」

 

言われて指の指された方向を見ると、今まさにパレードが私達の方に来ようとしているところだった。

 それからはあっという間に時間が過ぎていった。遊園地のキャラクター達が次々と登場して、踊ったりお客さんに手を振ったりしていた。

そんな中

 

「わぁ~!キャティこっち向いてくれた~!!」

 

とリンちゃんはおおはしゃぎだったり

 

「たまには遊園地も悪くないな」

 

と隣で駿君がしみじみと呟いたり

 

「あの着ぐるみの中の人、大変なんだろうな…」

 

とレン君が夢のないことを言っていたり

 

「うわぁ…踊ってるエキストラの人達、皆綺麗だなぁ」

 

と私は私で呟いたりしてパレードを楽しんだ。

     ・

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「あ~楽しかったぁ!!」

 

「ほんと、楽しかったね! また皆で来よう?」

 

「まぁ、しょっちゅうは嫌だけどたまに来る分にはいいかもな」

 

それぞれが、今日一日を振り返って各々の感想を口に出す。そんな中、レン君だけは黙っていた。

 

「あれ? レン、どうしたの?」

 

レン君の異変に気が付いたリンちゃんがレン君に声をかける。するとレン君は

 

「……腹痛ぇ……」

 

とお腹を押さえながらそう言った。それを見たリンちゃんが呆れたように

 

「も~っ!! 何でそう言う空気の読めないことになるの!?」

 

ってレン君に行ったけれど、レン君も負けじと言い返す。

 

「う、うるさい!! 俺だって好きで腹痛くなってる訳じゃないんだ!! ……あたた……」

 

そう言い返すレン君だけど、やっぱりお腹が痛いのかすぐに静かになっちゃった。

 

「まぁ近くにトイレもあることだし、帰る前に一度トイレに寄っとこうぜ?」

 

どうするべきか分からない雰囲気の中、駿君がそう提案したから皆とりあえずトイレに行くことにした。

     ・

     ・

「全く……レンったらこういう時に限ってお腹痛くなったりするんだから……」

 

 トイレに入って順番待ちをしているとリンちゃんがレン君のことでまた愚痴っていた。でも、そんなリンちゃんもさっきからもじもじしていたりするのはきっとリンちゃんもトイレに行きたかったんだと思う。だから

 

「でも、そういうリンちゃんだってさっきからトイレ行きたかったんでしょ?」

 

って言ってあげた。すると

 

「ち、違うもん!! 別にトイレに行きたくてもじもじしてた訳じゃないもん!!」

 

って顔を赤くして言い返してきた。

 

「あれぇ?当たってたかな?」

 

さっきの仕返しのつもりで、ちょっと意地悪に言ってあげると

 

「~~~っ!!」

 

リンちゃんは悔しそうな表情をした。

 

そんなことをしている内に個室が二つ同時に空いたので、私達は用を足すために個室に入った。

     ・

     ・

 用を済ませ個室から出る前に身だしなみを整えていると

 

「お姉ちゃん、先に外に出てるね!」

 

というリンちゃんの声が聞こえたので

 

「うん! 私もすぐに行くね!」

 

そういって身だしなみを整えて外に出た。

 外に出てすぐの所に駿君達が待っていたけれど、そこにリンちゃんの姿は無かった。

 

「あれ? リンちゃんは来てないの?」

 

そう駿君に聞くと

 

「見てねぇけど……ミクこそ、リンと一緒だったんじゃないのか?」

 

そう返されたから

 

「ううん。リンちゃん、先に外に出てるって言って出てっちゃったから……」

 

って答える。そしたらレン君が面倒くさいと言わんばかりの表情で

 

「あ~あ……またリンの奴は迷子か……」

 

そうぼやく。そこに駿君が

 

「レン、リンは携帯とか持ってないのか?」

 

そう問いかけるけど帰ってきた答えは

 

「僕らは携帯を共有してるんだ。今は俺が携帯を持ってるからリンには連絡つかないよ」

 

って言うものだった。それを聞いた駿君が出した結論は

 

「ならやることは一つだな。プロジェクト虱プレス、もとい虱潰し作戦しかねぇだろ」

 

こういうものだった。それにレン君が声を上げて反論する。

 

「そんな! 無理だよ、探すには広すぎるしもう真っ暗だからいくらリンの髪が特徴的でもこれじゃあ……」

 

「だからって待ってても状況は変わらないさ。どうせあいつはここには戻ってこないだろうし。それはお前が一番良く分かってるだろ?」

 

「…………」

 

「じゃあ私、もう一度トイレ見てくる!!」

 

そう言って探しに行こうとした私を駿君が引きとめる。

 

「待てミク! リンを見つかったら即時連絡、見つからなくても30分後にゲート前集合だ。いいな?」

 

「うん! 分かった!!」

 

そう返事をして私はトイレに向かって走り出した。

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 ミクお姉ちゃんより先に出てきたのは良かったんだけど、どこに皆がいるか分からなくて適当に辺りをうろついていたらいつの間にか迷ってた。

 

「ミクお姉ちゃ~ん!!」

 

お姉ちゃんの名前を叫んでみたけど、返事は返ってこない。それが、すごく私をさらに不安にさせた。

 

(皆、私のこと置いてきぼりにして帰っちゃったらどうしよう……)

 

 そう思うと、なんだか涙が溢れてきた。

 

(泣いちゃダメだ。泣いちゃ……)

 

泣くのを必死で堪えようと下を向いて歩いていると、誰かにぶつかった。

 

「きゃっ!!」

 

「おっと!!」

 

相手の方が体が大きかったのか、私の方がはじかれて尻餅をつくけどそんなことは気にせず慌てて謝る。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「いやいや、君の方こそ大丈夫かい?」

 

そう声を掛けられてふと見上げると、そこにはあの青い髪をした男の人が立っていた。

 

「また会ったね。どうしたの?」

 

その人の質問の意味が分からなくてボーっとしてると

 

「ハンカチ、使うかい?」

 

とハンカチを差し出してくれた。

 そこで初めて、私は自分が泣いてることに気づいた。

 

「あ、ありがとう……」

 

かろうじてそれだけ言って、ハンカチを受け取る。

 

「いやいや。それで、どうしてそんなに泣いているの?」

 

男の人が私に問い掛けてくる。

 

「えっ……と、皆でトイレに行って、出てきたら暗くて迷っちゃって……ひっく……それで……えぐ……皆を探してたんだけど……ぐずっ……」

 

泣かないように我慢してたけど、事情を話してる内に堪えきれなくなって気が付いた時には

 

「う……うわぁぁぁん!! お姉ちゃん達とはぐれちゃって……!!」

 

もう大声で泣いてちゃってた。止めようにも泣くのを止められず、泣き続ける。

 

「そっか……お~いルカ! メーちゃん!」

 

男の人は連れの二人を呼んで

 

「俺達も一緒に探すよ。だからそんなに泣くな」

 

と言ってくれた。

 

「うん……ありがとう……ございます」

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 それからいろいろ歩き回ってみたけどお姉ちゃん達は見つからなくて、もう歩くのも辛くなってきた。

 

「やっぱり皆、私のこと置いて帰っちゃったのかな……」

 

そう呟くと

 

「そんなことないわよ。皆きっとリンちゃんのこと探してるわ」

 

とピンク色の髪をした女の人、ルカさんが言ってくれた。

 

「そうだな……出るにも入るにもゲートは一つしかないから、ゲート前で待つのが一番確実じゃないか?」

 

とカイトさんが提案すると

 

「そーねぇ……それがいいんじゃないかしら?」

 

と茶髪の美人、メイコさんが同意した。

 

「じゃあ決まりだな」

 

そういうことで、ゲートに向かうことにした。

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 30分、ひたすら園内を走りまわったが収穫はゼロに等しかった。レンの前ではああ言ったものの、確かにこの広い園内で、しかも夜にたったひとりの人間を探すなどほぼ不可能だ。

しかし、だからと言ってあきらめる訳にもいかない。とりあえずまた作戦を立て直すために、一旦集合場所のゲート前に向かった。

 ゲートに到着すると、ミクとレンが既にいたがそこにリンの姿は無い。予想はしていたがやっぱ無理か……

 

「あ、駿君! どうだった?」

 

ミクの問いに無言で首を振る。するとミクは

 

「ごめん……私がもっとしっかりしてたら……」

 

と唇を噛みながら苦い顔をした。だが、流石にゼロとは言えないが、まぁミクに過失は無いだろう。

 

「大丈夫だ。遊園地に迷子はつきものだろ?」

 

とりあえず、ミクを励まそうと冗談を言ってみる。それでもミクの表情が晴れることは無く、どうしたものかと考えあぐねていると

 

「お姉ちゃ~ん!!」

 

聞きなれたあの声が聞こえてきた。……探す手間が省けて何よりだ。

 

「!! リンちゃん!!」

 

リンの声を聞いたミクが何かにはじかれたように走り出す。

 

「「よかったぁ!!」」

 

 ミクとリンがその場で抱き合う。お前らは親子か。

ふと誰かの視線が俺達の方へ向けられていることに気付き、そちらを向くとそこにはリンがぶつかった人とその連れが立ってこちらを見ていた。

恐らく、状況的にリンをここまで連れて来てくれたのはあの人たちなのだろう。

 

「すいません、連れが迷惑をかけて。それと、ありがとうございます」

 

とりあえず建前上だけでも、と思い礼をする。

 

「いやいや、ちゃんと再会できて何よりだよ」

 

全くだ。このまま閉園時間まで見つからなかったらと考えると、ぞっとする。

 

「あ、そうだ! みんなに紹介するね!!」

 

いつの間にか俺の横に来ていたリンが彼らを紹介してくれた。

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 一通り、お互いの自己紹介が終わったので俺達は帰ることにした。ちなみに、青い髪の人……カイトさん達もどうやら有賀島町に住んでいるらしいので一緒に帰ろうということになった。

 リンとのいきさつを聞いて、改めてお礼と謝罪をする。最も、当のカイトさん達は大丈夫だと笑ってくれたが。

 

「そうだ、機会があったら今度は僕達も誘ってもらえるかな?」

 

冗談か、それとも本気か分からないその質問にどう答えるか困った俺は

 

「まぁ、それはミクやリン達に聞いてくださいよ。断られることはまず無いと思いますがね」

 

とだけ返しておいた。

 ふと、ここで気付いたことがある。ミクに出会ってから、知り合いが一気に増えたのだ。増えたと言ってもまだ5人くらいなもんだが……俺からすればこれは異例だ。

 思えば、全部ミクがきっかけだったりするような気がする。ミクのわがままでリン達と知り合って、そのリンが迷子になってカイトさん達と知り合って……。

その出来事の原点は全て『ミクと春休みに出会った』ことの様な気がする。それは偶然か、それともミクの他人を引きつける力のおかげか。

 いずれにしても、ミクには不思議な力がある気がする。こいつの周りにはいつも誰かがいるのだ。それは俺の時もあるし、リンの時もあるし、クラスメートの時だってある。とにかく、こいつはいつも一人ではないのだ。

 すごいとは思わない。そんな人、きっと世の中にはたくさんいるだろうから。でも、少しだけ……ほんの少しだけ羨ましかった。

 

(一体俺は何考えてるんだ……)

 

また柄でもないことを考えている自分がおかしくなって電車の外の景色を眺める。

 でも、そんな気分とは逆に車窓から眺めた街の光はいつもより明るく、そして綺麗に見えた。

 




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