「うわ~~っ!! 遅刻する!!」
誰かがそれを聞いて突っ込んでくれるわけじゃないけど、そう大声を出しながら家を飛び出す私。
「あっ、家の鍵閉めないと!!」
家を出て三歩くらいのところで家の鍵を閉めていないことに気づき、回れ右をして鍵を閉める。
「どうしよう! 時間まで後20分だよ! 間に合うかなぁ……」
一人でそんなことを言いながら集合場所に向かって走る。
遊園地に行ってから2週間後……今日はリンちゃんとルカお姉ちゃんと私の三人で女子会をやることになっていて、駅前のカフェに1時に集合することになってたんだけど、昨日、ネットサーフィンに夢中で夜遅くまで起きていたせいなのか、今日起きたのが11時45分だった。
急いで用意して家を飛び出したけど、その時にはもう12時40分になっていて集合まで後20分しかなかった。
(走ればぎりぎり間に合うかなぁ……)
そんなことを考えながらカフェに向かって走る。
いくつもの信号を走り抜け、時には赤信号で待ちながら目的地に向かって走り続ける。
「はぁっ、はぁっ……」
私はもともと運動が得意じゃないから、ちょっと走っただけでもすぐに息が切れちゃう。靴だってお出かけ用のもので走りやすい靴じゃないのも響いてるけど、そんなことを言い訳にして遅刻することはできないから必死に走り続けた。
そんなこんなでしばらく走り続けていると、ようやく集合場所のカフェが見えてきた。
息を切らしながら腕時計を見る。
(ま、間に合った……)
時計の針は12時55分を指していて、なんとか時間に間に合うことが出来そうだ。
「あ! ミクお姉ちゃんこっちこっち~!」
私が来たことに気づいたリンちゃんが大きな声で私を呼ぶ。その隣には優しい笑顔を浮かべたルカお姉ちゃんがいた。
(わかりやすいんだけど、ちょっと恥ずかしいなぁ……)
大声を出せば当然周りの人の視線を集めることになるから、それにちょっとだけ恥ずかしさを感じながらリンちゃんの所に向かう。
「ごめんね。待った?」
「ううん。私達も今来たところだよ!」
笑顔でそう答えてくれるリンちゃんを見て、ほっと胸を撫で下ろした。
とその時
《ぐぅ~~》
何とも間抜けな音を立てて、私のお腹がなってしまった。
「~~~っ!!」
声にならない叫びをあげる私を
「あはははっ! お姉ちゃん、お腹なった~!」
と言ってリンちゃんが笑った。
「い、いや、これは……そ、その……」
必死にお腹がなった理由を言い訳しようとするけど、恥ずかしさで頭が真っ白になっちゃってて何も思いつかなかい。結局私がしていたのは、顔を赤くして口をパクパクするだけだった。
そんな私を見かねたルカお姉ちゃんが
「ふふっ! ミクちゃん、今日寝坊してお昼まだ食べてないんでしょう? じゃあカフェじゃなくてファミレスにしましょうか」
って言ってくれた。
そしてそれに便乗するかのようにリンちゃんが
「じゃあ私、パフェ食べる~!」
って言ったから、私達はカフェの近くにあるファミレスに行くことに。
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今日は昼前になってから突然隣の部屋が騒がしくなって、隣のドアが開く音がしたと思ったら
「あっ、家の鍵閉めないと!!」
というミクの声が聞こえ、そのままバタバタとどこかへ走っていったようだった。
(そういや今日女子会やるとか言ってたな……)
昨日の学校の帰りにミクが言っていた事を思い出し、先程起きたことに納得したがもっぱら俺には関係が無いのであまり気にしない。
とりあえずせっかくの休日だしまたゲームをするか……
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それから1時間余りした頃
《ピンポーン》
と家のチャイムがなった。
「はーい。今行きまーす」
そういってドアを開けると、そこには何やら挑戦的な表情をしたレンが。
「よぉ、レン。どうした?」
次に返される言葉を予想しつつそう聞くと
「駿兄! 僕とゲームで勝負だ!!」
とまぁ、びしっという効果音がつきそうな勢いで俺を指を指し、おおむね予想通りのセリフを吐いた。
「……いいぜ、かかってきな」
こちらも不敵な笑みを浮かべながら俺はそう返し、レンを中に招き入れる。
「で、レン。なにで勝負するんだ?」
「ん~……じゃあ最初は格ゲーから!!」
「へーい」
俺はさっきまでやっていたゲームをセーブして電源を切り、レンのリクエスト通り格闘ゲームのカセットに入れ替える。
ちなみに今から使うゲーム機は据え置き型のゲーム機の中ではほぼ一番新しいもので、ネット環境が整っていれば世界中の人たちと一緒にゲームを遊ぶことができるものだ。もちろんオフラインでの複数人数プレイもカセットによっては今までどおり可能だ。
だが、少々値が張るためそう簡単に手出しできる代物ではない。俺は入学祝で買ってもらえたのだが、どうやらレンはお年玉とずっと貯めてきた貯金を使ってようやく買うことができたらしい。
「そういえば今日はお前一人で来たな。リンはどうした? いつも一緒に行動してるもんだと思ったが?」
そう聞くと
「リンは今日ミク姉ちゃんとルカ姉ちゃんと女子会だよ」
と返してきた。
「あぁ……女子会ってそのメンバーか。女子会っていうより姉妹でお出かけって言う言い方の方があってるんじゃないのか?そのメンバー構成だと」
女子会のメンバーを聞いてそう思った俺がカセット入れながらレンに向かって言うと
「確かに。そういう言い方のほうが絶対しっくり来るよね」
とレンも同意した。
「よし、準備できたぜ。ハンデつけるか? レン」
一応確認のため聞いておく。するとレンは
「ハンデ? 兄ちゃん僕をなめないほうがいいと思うよ?」
と自信たっぷりの返事をしてきた。
「ほう……そりゃあ楽しみだ。じゃあお言葉に甘えて本気で行くぜ?」
「やれるもんならやってみろ~!」
そしてメニュー画面から対戦を選び、それぞれ使うキャラを選択し次にステージ選択画面になったが、すかさず俺がランダムを選んだ。
「あっ!! ちょっと! ステージくらい選ばせてよ!!」
レンがこっちをにらみながらそういってきたが
「ステージなんてどこも一緒だ。気にするなよ」
そういって受け流した。
(ま、ステージごとに若干戦術変わってくるけど)
そう思いながらロード画面を眺めた。
《レディー………ファイト!!》
対戦開始のアナウンスが流れる。それと同時に二人の雰囲気が変わる。
対戦が始まると、まずレンは出の早い技を繰り出して来た。
それを横にかわし、こちらも出の早い技で反撃する。
そのままコンボを繋ごうとした時、すかさずレンが防御体勢に入り、こちらの攻撃を全てガードした。
(レンの奴、なかなかやるじゃねぇか。こんなに戦えるやつは今までいなかったぜ……だがっ!!)
レンがどの程度の実力を持っているか少し防御に徹して様子を見ていたが、今まで対戦してきた誰よりもうまくなかなかの実力を持っていたので、少し本気を出すことにした。
俺の攻撃を全てガードしたレンは即座に反撃の体勢に入り攻撃しようとするが、それよりも早くレンの後ろに周り込む。
「しまった!」
そう叫んだレンに構わず怒涛のラッシュを食らわせる。
そして
《K.O!!》
と画面に表示され、レンのキャラが倒れる。
「ちくしょ~!! 負けたぁ~!!」
レンが頭を抱えて叫んだ後、悔しそうに
「いい線行ったと思ったんだけどなぁ……」
と呟いた。
そんなレンのつぶやきに
「まぁ、中学生にしちゃあなかなかの腕前だったな。でもまだまだ実力不足だな」
と素直な感想を言う。それに対してレンは少々ムッとした表情で
「駿兄ちゃんが強すぎるんだよ。これでも僕、近所で一番強いんだよ?」
と言い返してきた。
「上には上がいるんだよ。世の中もっと強い連中がいるぜ?」
「マジで!? 駿兄ちゃんでも勝てないような奴らが!?」
驚くレンに
「あぁ。前オンラインでやったけど何もできずに負けたよ。あれはもう清々しいくらいの完敗だったな」
そう自分の経験を話した。
「世の中にはそんな人がいるんだ……ちょっとやってみたいな」
そう呟くレンに
「やめとけ。いつもそういう実力のある連中とやっても負けるだけであんまり楽しくないと思うぞ?」
と忠告しておいた。
「どうして?」
不思議そうな顔をしてこちらを見返すレン。
「うまい奴らはほんとにうまいからな。流石に一度や二度くらいならいいが何度も負けると嫌になってくるぜ?」
「へぇ~……そうなんだ……」
少しがっかりした様子のレンに
「ま、今はそんなことより俺との対戦に集中したほうがいいんじゃないか?」
そういうと
「そうだね!! よーし、もう一回だ!!」
そうレンが言って、二回戦目をはじめた。
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「あ~おいしかったぁ!」
お昼ごはんを食べたミクちゃんが幸せそうな笑顔でそういった。
「お姉ちゃんまたネギたま丼だったね」
ミクちゃんの隣でリンちゃんがそういった。
「え~だってネギ大好きなんだもん!」
リンちゃんに向かってミクちゃんがそういった後
「ルカお姉ちゃんは好きな食べ物なぁに?」
と私に聞いてきた。
「そうねぇ……私はたこ焼きが好きだわ」
「へぇ~! たこ焼き好きなんだ~」
リンちゃんが興味津々な顔をしてそう言ってから
「私みかんとかオレンジとかが好き~!!」
と自己アピールをしてきた。
(まだこのくらいの年の子供達は可愛げがあっていいわね)
目の前で二人並んで楽しそうに笑い会話をするミクちゃんとリンちゃんを見ながらそう思った。
「ところでルカお姉ちゃんは大学でどんなことを勉強してるの?」
不意にリンちゃんが聞いてきた。
「私は教育学部にいるの。だから簡単に言えば学校の先生になるための勉強かな」
そう答えると
「へ~!! ルカお姉ちゃん学校の先生になりたいんだ~! すご~い!」
と感激したような様子でこちらを見た。
「でも、なかなか大変なのよね……人に物を教えるってことは、当然その人たちの知らないことを知っていなくちゃいけないから勉強も今までより大変になるのよ……おかげでなかなか休みがなくって」
「へ~……高校の勉強も正直結構大変なのに、大学になったらもっと大変になるんだね……」
すこしげんなりとした表情でミクちゃんが言う。
「あ、でもね大学は楽しいわよ! 高校よりもっといろんなところから人が集まってくるから、面白い人もたくさんいるし、サークルとかもたくさんあって退屈しないわ」
そういってあげると
「ほんと!? 大学かぁ……行ってみたいなぁ……」
とミクちゃんが呟いたので
「それなら夏休みとかに来てみるといいわ。高校と同じでオープンキャンパスとかもやってるから、一度来て見たらどうかしら? それに都合がつけば研究室や教室には入れてあげられないけど、大学を案内することもできるかもしれないしね」
と大学に関する情報を提供する。すると
「ほんと!? じゃあいつかお願いしていい?」
と目を輝かせながらミクちゃんが言った。
「ええ! いいわよ。その時は携帯で連絡取り合いましょうね」
「リンも行きたい~!」
「もちろん、リンちゃんも一緒においで」
そんなこんなで、私の大学を案内する約束をした。
「あ、私ジュース持って来るけど皆何か持ってきてほしいものある?」
そう言ってミクちゃんが席を立つ。
「私、オレンジジュースがいい!!」
「それじゃあ私はウーロン茶を頼もうかしら」
「オッケー! じゃあ持って来るね!」
そういってミクちゃんはドリンクバーのほうに歩いていった。そんなミクちゃんの背中を見ながらリンちゃんが
「ねぇねぇ、ルカお姉ちゃんは彼氏とかいないの?」
と突然そんなことを聞いてきた。一瞬、ある人の顔が浮かんでドキッとする。
「どうしたの? 突然そんなこと聞いてきて」
こちらの感情を悟られないように質問を質問で返す。するとリンちゃんは笑顔で
「ううん、別に深い意味はないんだ。でもやっぱり女の子ってそういう会話するでしょ?」
ってそう返してきた。よかった……あんまり根掘り葉掘り聞かれると辛いものね。
「そうね……私はあまりそういう話をしたことはないけれど、そうかもしれないわね」
とりあえず話題を終わることを期待してリンちゃんの言葉にそう返す。でも、リンちゃんはしぶとかった。
「でしょ! だから教えてよ~」
この子……意外としぶといわね……。でも、流石に恥ずかしくてあんまりカミングアウトはしたくない。だから、きわめて自然な口調で
「残念だけど、そういう人は私にはいないわ」
と微笑みながら答える。すると
「じゃあじゃあ、好きな人は?」
とさらに質問してきた。うっ……そう来たか……
「そうね……そういう人もいないかな。リンちゃんは? 彼氏さんとかはいるの?」
そこで私は必殺、さりげなく話題の中心を相手に変える作戦! を敢行することに。すると何とも予想外な答えが返ってきた。
「私にはレンがいるから大丈夫!!」
「あらあら、そうなの~。じゃあレン君を大事にしてあげてね?」
「うん!!」
異性との付き合いに関して何ともピュアな返事だ、と思う。この年頃の姉弟にしてはかなりレアなケースなんじゃないかな。なんだか微笑ましい。
するとそこに
「ジュース持って来たよー」
私達の分のジュースを持ったミクちゃんが帰ってきた。笑顔で私達にジュースを渡し始めるミクちゃん。こういうところを見ると、本当にまっすぐでいい子だと思う。
そんなミクちゃんをからかうように
「ミクお姉ちゃんは今恋愛真っ最中だもんね~」
とリンちゃんが言うとミクちゃんは飲みかけていたジュースを吹き出しそうになってむせた。
「リ、リンちゃん! こういうところでその話はやめてよ!!」
むせながら顔を真っ赤にしたミクちゃんがリンちゃんに向かってそう言う。
「あらあら、ミクちゃん、彼氏さんでもいるのかしら?」
「い、いや……彼氏はいないけど……じゃなくて! 彼氏もいないし好きな人もいないもん!!」
顔を真っ赤にしてミクちゃんが大声でそう言ったところを
「お姉ちゃん、声大きいよ? 周りの人見てるよ? それに思いっきり好きな人いるって言っちゃってるよ?」
とリンちゃんが止めの一言を言い放った。
「~~~~~っ!!!!」
真っ赤だった顔をさらに赤くして今日二度目の声にならない叫びをあげたミクちゃんだった。
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