「あはははっ! お姉ちゃんまだ顔真っ赤だ~!」
あたりにリンちゃんのよく通る声が響き渡る。
「リ、リンちゃん……お願いだからもっと声小さくしてよぅ……」
そう懇願すると
「あっ、ごめんごめん」
そういってリンちゃんは舌をペロッと出した。
「それにしてもミクちゃんは見かけによらず恋ばなが苦手なのね。すぐ顔真っ赤になるもの。私も何度かそういう話はしたことはあるけど、そんなに顔を真っ赤にする人は初めて見たわ」
隣にいるルカお姉ちゃんもくすくす笑いながらそういう。
「皆の意地悪ぅ……私こういう話、したことないのに……」
恥ずかしさで熱く火照った顔を下に向けながら私はそう呟いた。
ファミレスでみんなのジュースを取りにいって席を離れているうちに恋ばなをしていたリンちゃんに戻って早々
「ミクお姉ちゃんは今恋愛真っ最中だもんね~」
ってさらっと爆弾を落とされた。あまりの恥ずかしさに完全に思考が停止しちゃってそこから今に至るまでの記憶はほとんど思い出せない。分かっているのは今私達はいつもの丘の上公園にいることだった。
この公園に来るまでのことを思い出そうとしても、頭に浮かぶのは駿君のことばかりでその度に顔が火照り頭が真っ白になる。さっきからずっとこの繰り返しだった。
「それにしても、ほんとにいい場所よね。この公園。私も小さな頃よく来たわ」
顔を真っ赤にしている私の横でルカお姉ちゃんがしみじみと言う。
「でしょ? 私達とミクお姉ちゃん達が出会った場所でもあるんだよ!!」
そう自慢げにルカお姉ちゃんに言うリンちゃん。
「あら、そうだったの。そっか、ここはあなた達の思い出の場所でもあるのね」
そう私達のほうを向いて微笑みながらルカお姉ちゃんが言った。
「そうだよ!! それにここ景色綺麗だからさ、お姉ちゃん達も、今度デートコースに使いなよ!」
そうリンちゃんに言われて、思わず駿君と二人で並んでここを歩くことを想像してしまい、また顔が火照ってきちゃったけど
(な、並んで歩くことなんて、今まで何回もあったじゃん! 全然恥ずかしくないよ! 何考えてるんだろ……私)
そう考えて頭を左右に振った。
「……ちゃん? ミクお姉ちゃん?」
呼ばれていることに気づき、慌てて返事をする。
「あっ……え、な、何? リンちゃん」
「何じゃないよーさっきから呼んでるのにちっとも返事してくれないんだもん。さてはまた……」
呆れたような表情で確信つく言葉を言おうとしているリンちゃんをさえ遮ろうとして
「わーっ!! お願い言わないで!!」
と思わず叫んでしまっていた。
「あらあら、そんなに隠そうとしなくたっていいじゃない。別に近くに人がいるわけじゃないんだし、私はミクちゃんの好きな人を聞いたからって人に言いふらしたりはしないわよ?」
叫んだ私の隣で、ルカお姉ちゃんが微笑みながらそういう。
「大丈夫だよお姉ちゃん。私だって誰にも言ってないからさ」
慰めてくれているのか、リンちゃんもそう言ってくれる。でも正直全然慰めになってない。
「ねえミクちゃん。よかったらミクちゃんの好きな人教えてくれない? 何かアドバイスしてあげられるかもしれないわよ?」
優しくルカお姉ちゃんがそう声をかけてくれる。
「そうだよ!! 経験豊富なルカお姉ちゃんにアドバイスしてもらえばいいじゃん!」
リンちゃんもルカお姉ちゃんに便乗してそういった。……その言葉に若干ルカお姉ちゃんの顔が引きつったような気がするけれどきっと気のせいだよね?
「うぅ……わ、私は……」
二人の説得に思わずそこまで言いかける私。でも……
「………やっぱり恥ずかしくて言えないよ!!」
そういって顔を伏せた。だっていくらルカお姉ちゃんとリンちゃんだからといっても、恥ずかしいものは恥ずかしんだもん!
「あらあら、じゃあ私の予想をちょっと言ってみましょうか」
そうルカお姉ちゃんが言い、そして
「ずばり、ミクちゃんは駿君のことが好きなんでしょ?」
とぴったり当ててきた。
「え……あ……うん……あたり……」
一発で当てられたことに対して驚きを抱くどころか、むしろ恥ずかしさが勝って今日何度目になるか分からないけど、まるで顔から火が出るんじゃないかっていうくらいの熱さまで顔が火照った。
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「くそ~!! 全っ然勝てねぇ!!」
今日何度目かの素晴らしく悔しそうな表情をして、レンが言う。
「ったく……何度言ったら分かるんだ。お前行動パターンが読みやすいんだよ」
そういって俺はコップに入れたジュースを飲み干す。
「え~……さっきから結構使う技変えたりしてるんだけどなぁ」
腕を組んでレンが唸るように言った。
「使う技を変えれば良いってもんじゃないだろ。避けて攻撃、一撃入ったら大技に移る。お前さっきからこれしかやってこねぇんだからなぁ……」
呆れたようにそういった時、俺の携帯がなった。
「……ミクから電話? ……もしもし?」
電話に出ると、ややテンパった声のミクがスピーカーから聞こえてきた。
《あっ……もしもし? 駿君? ミクだけど》
「なんだ? 電話するなんて珍しいな。何か急ぎの用でもあるのか?」
《ううん。そうじゃないけど……実は今から皆で駿君の家に行こうって話になっちゃって……》
「どういう話をしたらそんな展開になるんだ?」
《ご、ごめん……でも他にもう行くとこないしさ……お願いできる?》
(そういやリンも一緒って言ってたな。丁度いいや、レンをお持ち帰りしてもらおう。見送りめんどいし)
「あぁ、いいよ。ただし菓子やジュースはないから来るなら買ってこい」
そういうと
《ほんと!? ありがとう! じゃあ後20分くらいで行くね!》
と喜んだような声を出して一方的に電話を切られてしまった。
「はぁ……やっぱり理解できん」
思わずそう呟きつつ、俺に勝つ戦法を考えているのかうんうん唸っているレンに向かって
「おいレン、部屋掃除すっぞ。女子会の皆さんが来るらしいから」
と言ってそこら辺に散らかった菓子のゴミを拾い始めた。
・
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それから約15分後……
《ピンポ~ン》
「あ、来たみたいだよ」
家のチャイムがなったので、玄関に向かう。
「へ~い」
いいながら、ドアを開けると
「おじゃましまぁす!!」
と言うより早くリンが部屋に入ってこようとした。
「おいリン、お邪魔しますをいえば勝手に入っていいわけじゃねぇぞ!」
そう言ってリンの頭を押さえつける。
「むぅ~……いいじゃんそれくらい」
頬を膨らませてリンが言ってきたが、スルーした。
「……で、ミク」
「はっ、はいっ! 何?」
いきなり呼ばれて驚いたのか、若干上に飛び跳ねたミクにさっきから疑問に思っていたことを聞く。
「お前らは俺ん家に何しに来た?」
「え? 何って、遊びに来たんだけど……」
平然と答えるミクに
「……明らかに人数とジュースとか菓子の量が比例してないと思うんだが?」
と言った。
というのも、リンは手ぶらだったがミクは両手に袋からあふれそうなくらいの量の菓子を、ルカさんは両手に一本2リットルは入っているペットボトルをぱっと見6本は持っていたのである。
「え、そうかな? これくらいないと足りないと思って」
ミクが菓子を見ながらそういうのを見て俺は大きくため息をつき、それ以上言及するのをやめた。
・
・
「やった~!! 私一番乗りぃ!」
で、さすがに俺の持ってるゲームでは皆で遊べないので、トランプを引き出しから引っ張り出して皆で大富豪をやっていたのだが
(くそっ……今日はやたらと負けるな……)
さっきからずっと大貧民から抜け出せず、逆にずっとリンが大富豪の座に居座り続けていた。
「リンちゃん強いねぇ……」
リンの強さに驚いてしみじみとミクが言う。
「まぁね! これでも私、中学では幸運の女神って呼ばれてるからさ!」
胸を張って言うリンに
「あれ? 雨女って呼ばれてなかったっけ?」
と、すかさずレンが突っ込むが、その直後リンの鉄拳制裁を喰らって倒れた。
「レンは余計なこと言わないで!」
倒れたレンに少し顔を赤くしながら言っていたリンだったが、俺にはそんなことどうでもよかった。
さっきから自分だけ負け続けていて、しかもリンばかり勝ち続けていることが気に食わなかったし、ムカついていたからだ。
(皆でグルになってイカサマしてんじゃねぇのか?)
そう思うことは確実に逆ギレであり自分勝手な考えであることは頭では分かっていたが、あまりに負け続けていたのでそう思わずにはいられなかった。
「もっかいやろー!」
そんなことを考えている俺の耳にリンの元気な声が響いた。
(こいつ、調子乗りやがって……)
普通に聞けば一緒にもう一度やろうと思うような声のだろうが、今の俺には耳障りな音でしかなかった。
「俺はパスするわ」
これ以上負けてストレスを溜めたくはないし、皆に八つ当たりしたりして場の雰囲気を壊したくはなかったので、そういって席を離れた直後
「え~っ!? いーじゃん! もっかいやろうよー」
と後ろからリンの声が聞こえた。
「別に俺がいなくても十分人数たりんだろ。やるなら俺抜きでやれよ」
言った後で自分が明らかに刺のある言い方をしたことに気づいたが、訂正しようにも既に遅かった。
「そんなにきつく言わなくてもいいじゃん! ……もしかして駿兄、さっきから負けてばっかりだから嫌になったんでしょ?」
「なんだと……」
リンの的を射た言葉とその挑発的な態度に怒りを爆発させそうになったものの、かろうじて理性でそれを押さえ込んだ。しかし俺の声は誰が聞いても分かるくらいにいつもよりトーンが低く、怒っていることが丸分かりだった。
「ちょっ、ちょっと二人とも! 落ち着いてよ! せっかく皆で集まったんだからさ、楽しく遊ぼうよ。ね?」
リンと俺の一発触発の空気の中、ミクが慌てて仲裁に入ってきたが今更皆と機嫌よく遊ぶなど到底できなかったし、そんなことしたくもなかったので
「そんなに遊びたきゃ勝手にやってろ。俺はやらんぞ」
そういってその場を離れ、テレビゲームを起動した。その直後
「ちょっ、リ、リンちゃん! それはダメだって……あっ!!」
というミクの慌てた声が聞こえたと思ったら、背中に何か冷たいものがかかった。
「ッ!! 何すんだ!!」
怒鳴りながら振り返ると、そこには怒りで顔を真っ赤にしたリンが立っていて
「最低っ!! せっかくお姉ちゃんが仲直りさせようとしてくれたのになんなの!? その態度!!」
と怒鳴ってきた。
「うるせぇな!! ここは俺ん家だ! 俺が何しようと俺の勝手だろ!!」
もうここまでされてはこっちも怒りを抑え切れなかった。
怒りに任せてリンに怒鳴り返す。
「自分の家だったらお客に対してどんな態度とってもいい訳!? ありえないでしょ!!」
「いきなり人ん家押しかけといて何が客だ!! ふざけたこといってんじゃねぇぞ、このガキ!!」
「私はガキなんかじゃない!! ガキなのはお兄ちゃんの方だよ!! それにちゃんとお姉ちゃんが連絡したでしょ!!」
もう一歩も引くことなどできなかった。ここで負けを認めるのはプライドが許さなかったし、まして相手が年下で、それも女ときたら何があっても引くわけにはいかなかった。
「家に着く15分前に初めてアポとっといて何言ってんだ!! 普通そんなことしねぇだろ!! 礼儀を欠くにもほどがある! そんなことも……」
そのままリンをたたみかけようとした時
「もういいよ!! 二人とももうやめて!!」
というミクの悲痛な叫びが聞こえ、俺もリンも硬直した。
「もういいよ……いくら隣に住んでるからっていきなりお邪魔しても大丈夫って思った私がいけなかったんだよ……」
そういったミクの声は震えていた。だがさっさと家から出て行ってほしい俺は
「ならさっさと出てけ。邪魔くせえんだよ」
と心無い言葉を言い放つ。
「ちょっと……!!」
俺の言葉に一瞬怒りを爆発させそうになったリンだったが
「リンちゃん。私なら大丈夫だから。今日はもう帰ろう? また皆で遊べばいいんだからさ」
というミクの言葉に衝撃を受け、黙り込んでしまった。
「駿君……ごめんね。お邪魔しました……」
そう一言だけ言って、ミクはリン達を連れて部屋から出て行った。
……否。一人だけ玄関で立ち止まっていた。
「駿君。あなた自分が何をしているか、分かってる?」
玄関にいたのはルカさんだった。
「ちっ……お説教なら聞きませんよ。早く出てってください」
説教など聞きたくもないのでそういってルカさんを追い払おうとした。
「そう……でもひとつだけ言わせてもらうわ。あなた、今のままだと友達いなくなるわよ」
「結構だね。友達なんて必要ない。それに元から居ないんでね、そんなもの」
「そう。余計なお世話だったみたいね。じゃあ、さようなら」
そういってルカさんも部屋から出て行った。
(どいつもこいつもうっとうしい……だから人と付き合うのは嫌いなんだ)
改めて、自分は一人でいることのほうが好きだということを実感した。だが
『あなた、今のままだと友達いなくなるわよ』
というルカさんの言葉が頭から離れなかった。
(俺が友達を欲しているとでも……? 馬鹿馬鹿しい、そんなことあるわけねぇだろ)
忘れようとしても、頭から離れないその言葉とあの時のルカさんの顔を思い出し、腹立ち紛れにゴミ箱を思いっきり蹴飛ばす。
そしてイライラしながらミクたちが食べ散らかしてそのままにしていった菓子の残骸と蹴飛ばして散らかったゴミの片付けに取り掛かった。
相変わらずの不定期更新で申し訳ございません……ですが、やりたいこともたくさんあるのでしばらくは不定期になると思います。