まぁ、電車の中でリンとレンが色々騒がしかった訳だがその後はとりあえず飯でも先に食おうかと言う話になった。
で、その飯は一体どこで食べるのかって言うことでまたリンとレンが揉めそうになったのをミクが止めると言うもはやテンプレな光景が広がったりした訳だが、結局先に遊園地に入ろうと言うことになった。
「皆~! 早く早く~!」
腹が減っていようがレンに文句を言われようが、まるでそんなことはどうでもいいと言わんばかりに遊園地へと入っていくリン。……あいつあんなんで今日一日体力持つのか?
そんなことを疑問に思っている俺の横で投げやりな口調でレンが
「リン! あんまり離れるなよ!!」
と声を上げる。……ツンデレですかこれ。なにこれ、レン君あなた実はシスコンですか? さっきまで散々リンに対しての愚痴を言っていた人の言葉とは思えないんですが。
「きゃっ!!」
レンの不思議な言動について思考を働かせていると、リンが何かにぶつかったようだ。レンがまた走って文句を垂れているところを見ると誰かほかの客にでもぶつかったんだろう。
「ご、ごめんなさい!!」
直後にリンの慌てた声と大丈夫だよ、という落ち着いた声が聞こえそちらを向くとそこに居たのは……
(……マフラー? この時期に? つかアイスでかいなおい)
まず目を引くのはその青い髪。その次に見るからに優男な雰囲気の顔立ちと物腰。そして極めつけは右手にある特大のアイスと、この時期には似つかわしくないようなマフラーした大学生くらいの男の人だった。こんな人、この国中走り回って探したってそうそういないだろう。
そんな不思議な大学生くらいの男の人が、数メートル先に居た恐らく彼の連れであろう女性に呼ばれていた。連れが女二人って、結構あの人もてる人なのか? どうでもいいけど。
「カイト! 何してんの、置いていくわよ!!」
「はいはい、今行くよ~。それじゃあね」
「あ、はい……」
カイトと呼ばれた男性は、リンに一言別れの言葉を言うと颯爽(さっそう)と女性達の方に向かって歩いていった。
「……………」
さて、声をかけられたリンはと言えば何故か若干放心気味な様子だった。一目ぼれでもしたんかね?
そんなリンを見て若干レンが不機嫌そうな顔をしながらリンを呼ぶ。……やっぱシスコンかあいつ?
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遊園地に入ってすぐ男の人とぶつかっちゃって、怒られるんじゃないかとちょっとびくびくしてたら思いのほか優しい人だった。
(カッコ良かったなぁ……あの人)
どうしてだかわからないけどあの男の人はもう春も終わりに向かい始めるこの時期にマフラーをして大きなアイスを食べていた。そんなあの人を見た瞬間、なんだかドキッとしちゃってしばらく上の空になってた。そんな私を見て、レンが何だか怒っているような気がするんだけどどうしてだろう?
そんなこともあったけれど、席が混む前に遊園地の中のレストランに入って皆で楽しくお昼を食べた。店員さんを呼ぶボタンを私とレンのどっちで押すかでちょっと言いあいになったけれど、結局じゃんけんで私が勝ったから私が押すことになった。レンが私にじゃんけんで勝つのなんて10年早いもんね!!
で、今はお待ちかねジェットコースターの目の前に私達は来ていた。やっぱり早めにお昼ご飯を食べたのがよかったのか、あまり人は並んでいなくてちょっとラッキーだな。少なくとも、私にとっては。
「うわぁ……結構並んでるね……」
でも、お姉ちゃんや駿兄にはそうじゃないみたい。ジェットコースターに並んでいる人の列を見て、二人とも少し圧倒されているようだった。
「……50分待ちか。結構待つな」
「え、50分も待つの? 私、久しぶりに遊園地に来たからこんなに並ぶんだってことすっかり忘れてたなぁ……」
そんなげんなりしている二人に私はジェットコースターの並ぶ時に恐ろしさを教えることにした。
「もう! 二人ともこのくらいでげんなりしてちゃダメだよ?」
「はぁ? 50分も待つのにこのくらいって何言ってんだお前?」
あぁ、やっぱり駿兄はあんまりそう言う列に並んだりしない人みたいだね。50分なんで全然空いてる方なのに。
「駿兄、50分ってまだ空いてる方だよ? 普通は90分とか100分とかなんだから!」
するとその私の言葉を聞いた二人が
「「そんなに待つの!?」」
と綺麗にハモった。……この二人、もしかしてくっついてるのかな? 息ぴったり過ぎでしょ。
そんなこんなでいつの間にか私達がコースターに乗る順番が近づいてきて、コースターに乗る時の注意アナウンスが辺りに響く。でもまぁ、ジェットコースターの注意アナウンスなんて何百回も聞いてるから聞くつもりなんてさらさらないけどね。
そして、私達の番が回ってきた。
「さぁ、お姉ちゃん行こう!」
「う、うん……」
お姉ちゃんの手を引っ張るようにコースターの座席に腰をおろす。やっぱり大好きなアトラクションだから興奮してドキドキしちゃうなぁ!
そんな興奮を抑えきれないままふとお姉ちゃんの方を見ると、お姉ちゃんはなんだか不安そうな表情をしていた。
「お姉ちゃん、怖い?」
不安そうなお姉ちゃんにそう声をかけると、お姉ちゃんは顔を強張らせて
「う、うん……だって、さっきからなんか悲鳴みたいのが……」
って答えた。悲鳴って……そりゃそうでしょ。だってこれ絶叫系アトラクションだもん……とは流石に言えないので
「大丈夫! 私が手を繋いでいてあげるからさ!」
と言ってお姉ちゃんの手を握る。お姉ちゃんもそれに合わせて私の手を強く握りしめてきた。
そんなやり取りをしているうちにコースターが動き始める。まずは小手調べと言わんばかりに軽めの下り坂やカーブを連続して通過したコースターは、小休止なのかちょっとずつスピードを落としてきた。
「も、もう終わり?」
なんだかもう限界を迎えていそうな声色でお姉ちゃんが私に聞いてくる。……っていうかこんなので悲鳴を上げる人がいないんだから終わりなわけないでしょ……とはやっぱり言えない。言えないけれど終わりじゃないことだけは伝えよう。
「ううん。これからが本番だよお姉ちゃん? これから急降下だから」
その私の言葉を聞いた途端にお姉ちゃんの顔がもっと強張る。……っていたたたた! お姉ちゃん私の手、強く握りすぎ!!
そんな私の手をにぎりつぶすつもりなんじゃないかと思いたくなるくらいの勢いで私の手を握っているお姉ちゃんを励ます。
「大丈夫だって! 私が付いてるからさ!」
そんな私の声にお姉ちゃんはもう返事も出来ないみたいだった。でもせっかく乗ったんだからジェットコースターの楽しみ方を教えよう。って言うか私がやりたい。
そしてコースターは今まさに上り坂を登り切ろうとしていた。私の手を握るお姉ちゃんの力がもっと強くなる。……だから痛いってば……
「それじゃあお姉ちゃん、手を上に挙げるよ!!」
これこれ。やっぱりジェットコースターはこれをやらないとね。
「えっ……!? ちょ、ちょっとリンちゃ……きゃあああ!!」
お姉ちゃんに反論をする時間も与えないで、コースターは急降下を始めた。う~ん、やっぱりこの急降下の時がたまらないなぁ!! 空を飛んでるみたいで最高!
そんな私の後ろから、レンの絶叫が聞こえた。
「うぎゃぁあぁぁああ!!」
うわ……すごいビビってるじゃん。もしかしてレンがジェットコースターに乗りたがらなかったのは怖かったから? ……よし、後でいじってやろうっと。
「おいレン! そんな下ばっかり向いてるなよ!! もっと前向きに行こうぜ!?」
「嫌だ! 僕はこの体勢が気に入ってるんだ!!」
うわ、ほんとに情けない……姉として恥ずかしいじゃん!
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「あ~楽しかったぁ!!」
「こ、怖かったけど……楽しかったな!」
「…………………」
「おいレン、お前そろそろ戻ってこいよ。逝ったまま遊園地は歩くもんじゃねぇぞ」
無事にジェットコースターを乗り終えた私達は各々のリアクションをしながら外に出た。
「で、次はどこに行くんだ?」
「……じゃあ、コーヒーカップ?」
お、お姉ちゃん……何でその発想に……? そして疑問形なのは?
そんな訳でコーヒーカップに来たけれど、レンはジェットコースターのせいで当分まともに動けなさそうだった。だから、駿兄を見張りに置いておいて私達二人で乗りに行くことに。
まぁ、結果として調子に乗りすぎて二人とも目を回してふらふらになりながらアトラクションから出る羽目になったけど。駿兄がすごく冷たい目でこっちを見てきたのが何だか納得いかない!
「……駿兄達だって子供じゃん!」
そんな私達を冷たい目で見てきた駿兄は、今レンとゴーカートで大いにはしゃいでる。これじゃあどっちが子供なんだか……
「ふふっ。駿君達も楽しそうだね」
「私はあっちの方がよっぽど子供に見えると思うなぁ」
「り、リンちゃんまだそれ気にしてんだ」
そりゃ気にするでしょ! と言う私の言葉にミクお姉ちゃんはちょっと困ったような笑みを浮かべた。
「まぁ、たまにの遊園地だからさ。駿君もきっと楽しいんだよ」
え……? 何その駿兄をかばうような発言。やっぱりこの二人って……!?
「お、お姉ちゃん?」
「ん~? どうしたのリンちゃん?」
私はさっきから思ってたことをジュースを飲みながらこっちを見たお姉ちゃんに思いきって聞いてみることにした。
「……お姉ちゃんって、駿兄と付き合ってるの?」
刹那、ぶーっ!! っていう音と一緒に思いっきりお姉ちゃんがジュースを吹き出す。
「なななななな、何言ってるのリンちゃん!!? わ、私達はそんな関係じゃないってば!!」
否定はしてるけど、その顔は真っ赤に染まっていた。とりあえず追撃かけてみよっか。
「じゃあ、お姉ちゃんは駿兄のこと……好きなの?」
「え……えっと……好きって言うか……その……気になってるって言うか……」
あ~……これは完全に好きなんだな。こんなに真っ赤になっちゃう人もそうそういないと思うくらいに顔真っ赤だし。
「あはっ! お姉ちゃん、それは好きって言うんだよ?」
そんな風にちょっとからかい半分、アドバイス半分で私がそう言うと
「えっ……!? いや……そんなこと……あぅぅ……」
否定しようとして、やっぱりためらったのか顔を真っ赤にしたままうつむいちゃった。そんなところに
「お、いたいた。お待たせ……ってミクどした?」
お子様二人……もとい男子二人組が帰って来た。駿兄の方はすぐにミクお姉ちゃんの方に気付いて、お姉ちゃんの方に声かけた。かけちゃった。
「え、え……? う、うん……だ、大丈夫?」
「いや、何故に疑問形? そして質問に対する答えになってないぞ」
「大丈夫大丈夫! とりあえず次どこに行く!?」
うわ……お姉ちゃんすごい露骨に話題を逸らそうとした。パニくり過ぎでしょ……
「………はぁ……とりあえず飯でも食いに行くか。もう夕方だし」
お姉ちゃんの露骨な話題の逸らしっぷりに、呆れたようにため息をつきながら駿兄が次の提案をする。……意外と駿兄って大人なの? 普通はそこ突っ込みそうなものだけど……。聞かないでスルーしたよ。
「そうだね、そうしよう!! それじゃあしゅっぱーつ!」
「おー! ……ってお姉ちゃん待って!!」
そんなこんなで夕飯を食べに行くことにした私達だった。……それにしてもお姉ちゃん、もう少し落ち着いたほうがいいんじゃないかな……
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