試合の省略が強くなって、“なのは”の魔法要素が強くなっています。
次の相手、カタール代表“デザートライオン”戦に向けて一同は
特訓をしていた。
泥沼と化したグランドでいつも通りのトレーニングは、
「うわぁ!」
「っとと!」
「へぶっ」
・・・カオスだった。
ケガ人こそでないが、
「洗濯大変だよねー。」
「そうですねー。」
・・・とにかく皆泥まみれになっていた。
「・・・もはや誰が誰だか分からないひといるよー。」
或は冷静に観察する。
「「・・・わーほんとだー。」」
零奈と瑠生は棒読みで肯定する。
「・・・もうちょっとリアクション欲しいかな・・・。」
「「サーセン。」」
「あと、零奈ちゃん、監督に呼ばれてたよ?」
「はーい。今行きますねー。」
「「いってらー。」」
マネージャーたちは疲れていた。
・・・泥まみれのユニフォームを洗うことに。
「いやな予感がします・・・。」
零奈の予感は的中する。
「・・・。」
「お前には“円堂 零央”として代表になってもらう。」
“零央”(レオ)と聞いて引きつった笑みを浮かべる零奈。
帝国学園との練習試合の時男装してプレイした後、
色々な誤解を招き、噂が他校にも広がって、
“音速のレオ”とか“迅雷の獅子”とか“音速の獅子”とかその他様々な中二病的な二つ名を付けられてしまったため、
一部の者を除いては、誰にも正体を明かしていない。
「黒歴史なんですけどそれ・・・。」
一時の軽い判断で起こったことを本気で後悔している零奈。
「最初は入れるつもりだったが、記憶喪失だったから選抜の候補からも外していたんだ。」
“記憶喪失”の部分で久遠監督の表情が少し暗くなったが、
零奈は気づかなかった。
「さあ、十分に働いて貰うぞ、“音速の獅子”、円堂 零央。」
「(二つ名やめてええええええ!)
ハイ。微力をツクサセテイタダキマス。」
棒読みで返事をする零奈。
・・・そして、零奈の黒歴史は伝説となったのだ・・・。
「「・・・。」」
唖然とするFF地区予選以降の加入メンバー。
((懐かしいな・・・。一年も経ってないのに・・・。))
最初からいたメンバーは何かを悟ったような顔をする。
「・・・新たに代表に加えられた、円堂 零央です・・・。
背番号は25番、ポジション、MFおよびFWです・・・。」
目が死んでいる零奈・・・もといレオ。
「・・・いやいやいや、零奈チャンだよね?」
不動が真っ先に正気に戻った。
「・・・いえ。僕はレオです。」
もう完全に腹を括ったレオ。
「零奈姉さんは急用でメンバーから外れました。」
((更に下っていう設定だったのかー。))
もはや悟りを開いた初期メンバー。
「・・・ま、よろしくな、零央クン?」
レオの肩を抱く不動。
「僕にさわんじゃねえええええええっ!」
「がっ!」
レオは自分の拳に電撃を纏わせて、不動に渾身のアッパーを食らわした。
((南無・・・。))
一同は不動の冥福()を祈った。
「勝手に殺すな!」
「「サーセン。」」
「棒読みかよ?!」
ここに新たな勇者(ツッコミ要員)が誕生した。
「よし、練習開始だ。」
監督の指示により、練習開始。
試合形式の練習時。
虎丸はゴール前に攻めあがった。
後はシュートを打つだけ。
「・・・。豪炎寺さん!」
何を血迷ったのか、後ろの豪炎寺にパスを回した。
「?!」
違和感を感じる豪炎寺。
でも彼はシュートを打った。
「ナイスです豪炎寺さん!」
「・・・ああ。」
(なんでコイツはFWなのにシュートを打たない・・・?)
豪炎寺の中に疑問が浮かんだ。
しかし、一人を除いて、虎丸が一瞬だけ何かへの恐怖と、寂しさを滲ませた表情をしていたことに気づかなかった。
(虎丸くんも何か抱えているのかな・・・?)
藍は気づいた。
虎丸がシュートを打たない・・・打てないのには理由があることに。
その日の夕方。
商店街にてコソコソしている影が4つ。
「あ、あの店に入りましたよ!」
「なぁ・・・これってストーk・・・」
「円堂、気にしたら本当にストーカーになるぞ・・・。」
「・・・そういえば剣城は?」
上から春奈、守、豪炎寺、鬼道である。
そして、鬼道が言うとおり、先ほどまで一緒にいた藍がいない。
「ど、どうする?!」
「・・・そうか、わかった!」
「円堂、誰と話してんだ?」
「ん、藍とだけど?」
「・・・電話もなしでどうやって・・・?」
「・・・念話っていう魔法。れいn・・・レオに教わったんだ。
なんか魔法の素質はあるらしいんだよ。」
「・・・念話?オレも使えるが・・・?」
「「・・・」」
超次元すぎる内容にぽかんとする鬼道兄妹。
「・・・と、とりあえずなんて言ってたんだ?」
戸惑いながらも質問する鬼道。
「・・・“しばらく虎の屋という店で待っていてください。”って
言ってた。」
円堂は聞いたままのことを言った。
「・・・待つか。」
4人は指示通りにすることにした。
「探しましたよ虎丸くん。」
「あ、藍さん?!」
出前を終えた直後の虎丸の前に藍が現れた。
「少し、気になることがあるので。
・・・お話しましょうか?」
藍の鋭い金の瞳に威圧され、頷く虎丸。
近所の公園で話をすることにした。
「・・・なぜFWなのにシュートを打たないんですか?」
「・・・それは。」
目を伏せる虎丸。
「・・・正確には、“なぜ打てない”んですか?」
「・・・!」
目を見開いて、藍を見た。
金の瞳は鋭さこそ減ったものの、なにもかもを見透かすような、
まるでたくさん悲しいことを見てきた老人のような、
“達観している人の目”をしていた。
(藍さんなら話してもいいかも・・・。)
なぜかそんな気分になり、口を開く。
「・・・オレ、ほんとはクラブチームのエースストライカーだったんだ。
いっぱい、いっぱい、シュートを決めてチームのためにがんばったんだ。」
「・・・それで?」
「・・・ある日の試合の前、陰口を聞いちゃったんだ。
“虎丸ばっかしかシュート打ってないからつまんない”って。
しかも、チームのみんながそう思ってたみたいで・・・。
すっごいショックで・・・。」
「・・・。」
この先が読めてしまった藍。
「それからパスを回すことぐらいしかできなくて、
シュート打とうとしたらいろんなものが怖くなっちゃって・・・。
体が動かないんだ・・・。」
今の話で鮮明に思い出してしまったのだろう。
虎丸は体がブルブル震えている。
(・・・そうか、虎丸くんは自分を犠牲にしすぎたんだ。
だから、彼には、自分を貫く意志が・・・勇気が足りないんだ。)
「話してくれてありがとうございます。
・・・対象法、思いつきましたよ。」
藍は自信に溢れた声で言う。そして、
「こうすればいいんです。」
「ひゃぅあ?!」
藍は虎丸を抱きしめた。
「え、・・・あの、藍さん?!」
いきなりのことに驚き、情けない声しか出せない虎丸。
「こういう時は、人の温もりが必要なんです。
あとは、人からのわかりやすい信頼の感情表現ですかね?」
(私もなんやかんやでこういう風に炉蘭さん・・・スオウに助けらたしね・・・。)
藍はいまいちわかって無かった。
同じことを異性にしたらどうなるか。
・・・とくに、
「はわ・・・。」
虎丸は思考回路がオーバーヒートして固まった。
顔は真っ赤だ。
「虎丸くん?!」
・・・お年頃の異性にした場合について。
「・・・あの、大丈夫ですか?」
「あー、うん・・・。ごめん・・・。」
しばらくして、虎丸は復活した。
「でもありがと!今ならなにも怖くない!
次の試合、絶対シュート決めて見せるから!」
にかっと、年相応の笑みを浮かべる虎丸。
その、無邪気な笑みに、藍はドキッとする。
「・・・期待、してますね。」
やっとのことで絞り出した言葉はそれだった。
「・・・あ!早く帰らないと店がやばい!」
「そうでしたね!ごめんなさい!
手伝わせてもらってもいいですか?」
「えっ?!本当?ありがと!」
二人は急いで“虎の屋”に向かった。
・・・行った先に守たちがいて、虎丸が驚きまくったのは言うまでもない。
なんやかんやで試合当日。
前半は順調に点を重ねられたが、
「・・・!」
やはり、虎丸はシュートを打てないでいた。
そして後半。
「もう、・・・無理だ・・・。」
「うあ・・・」
次々に倒れる選手たち。
「・・・そういえば、・・・今日、・・・ものすごい、暑、いです・・・。」
そこまで言って、零奈(レオ)も倒れる。
MFがほぼ全滅したため、前にいた藍がMFに下げられる。
「はっ、チョロいもんだぜ!これぐらいの暑さでくたばるなんてよ!」
さすが砂漠という厳しい環境で生きてきただけある説得力大のセリフ。
デザートライオンに試合の流れが傾く。
「“ミラージュシュート”!」
「“ストームライダー”!」
「うああ!」
全く勢いの弱まらない攻撃に、点を入れられてしまう円堂。
「ぜぇ・・・。これじゃジリ貧ですね・・・。」
顔色の悪くなってきた藍。
「もう1点決めさせてもらうよ!」
「っ!行かせない!絶対!」
藍の鋭い金の瞳が相手MFを睨みつける。
「“セイレーン・ディフェンダー”っ!V2ぅっ!」
進化した必殺技で相手からボールを奪う藍。
「絶対、つなげるんだ!
うおおおおおおおおっ!」
雄叫びをあげて攻め上がる藍。
「虎丸くんっ!」
ほぼ悲鳴のような声で虎丸の名を呼ぶ藍。
(次こそ・・・!)
しかし、ゴール前、
体が動かない虎丸。
「パスを・・・!」
パスを出そうとするが、豪炎寺はDFにマークされていて、他は遠すぎる。
(どうしよう・・・!)
悩む虎丸。
「なにをやっている!」
豪炎寺が怒鳴る。
「豪炎寺さん?」
「早くシュートを打て!」
「無理ですよ!」
「やる前から無理と言うな!別に決めろとは言っていない!
“打て”と言っているんだ!」
「そういう問題じゃ・・・」「虎丸!」
守が呼びかける。
「思いっきりぶつかれ!それが今のおまえにできることだ!」
「そうだ。まずは立ち向かえ!全部それからだ。」
「豪炎寺さん、円堂さん・・・。」
虎丸は後ろを見た。味方が全員目に入る。
『期待、してますね。』
「虎丸くん・・・!」
藍は祈るような面もちで虎丸を見ていた。
「藍さん・・・。」
虎丸は、覚悟を決めた。
ゴールを真っ直ぐ見据え、ダンッと前に踏み込む。
「いくぞ!“タイガードライブ”っ!」
獰猛な虎が、目覚めの雄叫びをあげた。
「え?うあああっ!」
シュートを打ってこないと高をくくっていたGKはなすすべもなく
失点してしまう。
ここで試合終了のホイッスルが鳴る。
2対3でイナズマジャパンの勝利である。
「やったあ!勝ったぞぉ!」
「虎丸、おまえすごい奴だったんだな!」
「まだまだいけますよ?」
どや顔で言う虎丸。
「でも、なんでこんなすごいシュート打てるのにFF出てないんだ・・・?」
「「あ。」」
鬼道の言うことはもっともだった。
「あ、それはですね・・・」「私と虎丸くんは小学生なので。」
虎丸の言葉に続き、藍がカミングアウトした。
「「えええええええええっっ?!」」
驚く一同。
「まぁ、ルール上、15歳以下は出場可だからな・・・。」
鬼道は納得する。
「あ、エースの座は渡しませんから!」
宣戦布告をする虎丸。
「ふ、望むところだ!」
「というか、いつから自分がエースだと思っている?」
「僕もまけないよー?」
「おい!オレを忘れんな!」
「わt・・・僕だって一撃のスピードなら負けません!」
「私も負けるつもりは毛頭ありませんよ?」
ストライカー陣が勝負を始めた。
しかし、“それ”は突然だった。
「あれ・・・?」
藍がふらっと傾く。
「藍さん?!」
それを虎丸が受け止める。
「熱っ?!」
藍は熱を出していた。
「なんで・・・?」
そうつぶやいて、藍は意識を手放した。
「救急車を呼べ!」
藍は病院に搬送された。
不安を大量に残して。
「ん、うぅん?」
藍は病院のベットの上で目を覚ました。
「姉さん!」
「姉ちゃん!」
「ユウ、キョウ・・・。」
ベットの横には優一と京介がいた。
「うわーん!よかったよお!姉ちゃん死んじゃうとおもったよぅ!」
京介は泣きじゃぐっている。
「泣かないの、キョウ。私はちゃんとここにいるから、ね?」
「うん・・・。」
「そうだぞ京介。ただの軽い熱中症だったからな。
あ、姉さん、お医者さんによると今日1日入院で、絶対安静だって。」
「そう・・・。そういえば、イナズマジャパンの皆さんは?」
「んーと、今日はオフだからみんな出かけたりしてるんじゃないかな?
あと、姉さんはただの熱中症だってことは言ってあるよ。」
「そう。ならいいか。」
ほっとする藍。
「じゃ、オレ達約束あるから。」
「姉ちゃん、無茶しないでね?」
「わかってる。いってらっしゃい。」
「「いってきます!」」
弟2人は藍の病室を去っていった
「・・・兄ちゃん、ほんとにやるの?」
「・・・しょうがないだろう?姉さんに頼んだところで魔法の使い方教えてくれるわけがないし。」
「・・・だね。」
「あと、協力することがコイツらを完全になおしてもらう条件だしな。」
優一は自分の首にかかっている“相棒”を手に取る。
「それに、オレ達がフツーに生活出来るようになるために必要だもんね。」
「ああ。・・・週1で不審者に襲われる小学生はそうそういるもんじゃないし。」
遠い目をする優一。
「兄ちゃん・・・。おつかれ。」
悟った京介。
「じゃ、行こうか。
・・・スオウさんのところに。」
「うん。」
弟二人は姉に内緒で、
普通の日常を手に入れるための戦いに身を投じた。
「ふんふふーん♪」
神童家のとある一室。
なにやら電子工作をしている幼女がいた。
小さな手に工具や小型端末はミスマッチすぎる。
「これをこーして・・・。できた!」
幼女・・・スオウはニヤリと笑う。
「あとは微調整だけだな!」
スオウが作っていたのはデバイスだった。
黄緑の宝石のついた腕輪が待機形態のようだ。
「坊ちゃん驚くだろうなー。」
できたてのデバイスを持ってスオウは部屋から出て行った。
「坊ちゃーん!」
「なあに、スオウ?」
ピアノの練習をしていた拓人は、練習を一旦やめてスオウの方を向く。
「坊ちゃんのデバイスできたぞー。」
「本当?!」
ぱああっと顔を輝かせる拓人。
「おう!ま、まずはマスター認証からな?外行くぞー。」
「うん!」
拓人の足元に黄緑のベルカ式の魔法陣が現れる。
「えっと・・・
マスター認証、神童 拓人。
術式は・・・えっと・・・。」
疑問の眼差しをスオウに向ける拓人。
「ベルカ式な。」
視線の意味をちゃんと読み取って答えるスオウ。
「ありがとう。・・・術式、ベルカ式。
デバイスの個体名称は・・・。」
少し考えこむ拓人。
「ん・・・マエストロ、かな。」
『認証完了。マスター、神童 拓人。デバイス個体名称、マエストロ。承認します。』
「あり?」
「どうした姉貴?」
実は最初からいた蘭丸がスオウに聞く。
「いや・・・。あれ、ストレージデバイスのハズだからしゃべるのはおかしいなー。なんて・・・。」
「・・・?デバイスはしゃべるもんだろ・・・?」
キョトンとする蘭丸。
「ちげえよ?!しゃべるのはインテリジェンスだけだ!
AI作るの大変なんだぞ・・・?
・・・というか、お前の時も同じ現象が起きたような・・・。」
ぶつぶつ言い始めるスオウ。
「マエストロ、セット、アーップ!」
『Stand by ready.
Set up.』
拓人は“マエストロ”をセットアップした。
「わあ・・・!」
拓人は感激で目をキラキラさせている。
バリアジャケットは、赤紫に金のラインが入った上着に、黒のアンダースーツ、白のハーフパンツ、黒金のグリーブ。
そして白地に黄緑のラインが入った大きなマント。
マエストロ本体は、短剣のようなタクトになっている。
「これで僕も強くなったかな?」
「いや、全然。
強いて言えば防御力しか上がってない。」
「えー。」
「でも、いっぱい練習すれば強くなれるさ。
必ずな。」
「うん、僕がんばってスオウや蘭丸と並んで戦えるようになって、
みんなを守れるようになる!」
ぐっとガッツポーズを決める拓人。
「何年かかるやら・・・。」
苦笑いするスオウ。
『マスター、お客様がお見えのようです。』
クレイモアが知らせる。
「おう。・・・さぁ、始めるか。スオウさんの魔法教室。」
スオウはニヤリと獰猛な笑みを浮かべた。
この章のメインテーマ、ちびっこが(戦力的に)最強というのが明らかになるフラグ()を建てました。
というわけで設定↓
神童のデバイス:マエストロ
種別:ベルカ式インテリジェンスデバイス
形態:タクトフォルムのみ。(もう一つぐらい形態を追加できるぐらいの容量はある。)
化身がデバイスになったパターンです。礼儀正しく紳士的な男性型AI。もともとスオウはストレージ型で作ったのだが、神童の中にいたマエストロさんが憑依した。そのせいか、最初から人間味のあるインテリジェンスデバイスになった。