日常何てものは存在しない。僕はいつもそう思って生きてきたけれど、今日ほど、この事を意識することはなかっただろう。そう....学校生活の醍醐味中の醍醐味。転校生である!いやー、わくわくするよね。男子が来たら女子が沸き立ち、女子が来たら男子の的。転校生というのはそういう点でとても優れてると思うんだ。
そんな考えをしながらもみんなの中でも転校生がどんな人なのかイケメンだといいね、やら美女だったいいね、なんて希望的観測をしている輩が多いみたいだ。なんだよそんなに綺麗な人が好きか、心を見なさい、心を。と思いつつも僕だって美人さんは嫌いじゃないが、どちらかといえば好きだけどね?
いつもならこういう俗世間的なことが好きな正義もはしゃいでいるはずなのだが珍しくなにか考え事をしているようだ。あの単細胞にしてはめずら…失礼なことを考えてしまった。反省反省……。
ふとみんなが静かになった、と思っているとちょうど担任が転校生を呼んだみたいだ。「入ってきなさい。」その声に応えるように扉が開くとそこには件……階段で困っていたあの女の子がそこに立っていた。
「はじめまして、私の名前は×峰一刻といいます。どうぞ、不束者ですがよろしくお願いします。」
単純で無駄のない挨拶にみんながポカーンとしていることに、大して興味がないような表情をしながらお辞儀をしている。……又、ノイズが僕の思考を邪魔をする。彼女の名前が切って散りばめられたように聞こえる。×、×、×、みね、×峰、一、一×……違う……彼女を彼女はもう……。
ドンッ‼︎突然何かが壊れたような音がして、僕は現実に引き戻された。その方向を見ると、正義が申し訳なさそうに「あー、ハエがぶんぶん煩くてさ?イライラしてさ?」と変な理由を述べながら人懐っこい笑みを浮かべて周りを見回していた。みんなも先生もやれやれといったような表情浮かべていた。……絶対ワザとだな…。理由はないがあれは嘘だ。付き合いが長いから、なのかは分からないが釈然としないのである。
正義の不可解な行動について考えていると、あの女の子の席がいつの間にか決まったみたいでそこは自分の席の隣であった。……気まずい。階段の件があったからかは分からないが、何故か苦手意識を持ってしまっているようだ。
「…はじめまして、ではないですよね。先ほど階段でお世話になりました。×波×歳君」
相手は気にしていないのか、平生と挨拶をしてきたので僕もどうも、と簡単に挨拶を返した。僕は…その後に続いた彼女の言葉に僕は、何かを無理矢理思い出させられる事になった。その言葉は脈絡があるようで全く脈絡がない言葉であった。
「……そう、×波×歳。いい名前じゃないか。ボクと同意義で対になっているようだ。」
【なんだい、君の名前は×歳君というのかい?苗字は?×波?いい名前だね、ボクと同意義で対になっているようだ。】
その子には不釣り合いな猫のような表情で言われた言葉に、何処かで誰かが言っていた言葉と合致した。遠い遠い×の底に置いてきたしまった彼女と。その瞬間、僕の世界は色が無くなった。どんどんと全ての色が黒く、そして×くなって消えた。
意識が無くなる直前に見えたその子の顔は……深い落胆を漂わせた瞳が僕を捉えていた。
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