今回もあきらの心の中に焦点を当てていきます。
「はぁ・・・」
あきらは甘味処たちばなのテーブル席に座り、頬杖をついていた。
今日の昼間、明日夢とひとみの前から突然逃げ出してしまったことを後悔していたのだった。
「どうしたの?」
「大丈夫ですか、あきらくん?」
客が少なくて暇なのか、あきらの表情を察してか、店の看板娘である立花香須実と日菜佳の姉妹が、あきらの向かいの席に着いた。
「私、わからないんです・・・」
「わからない?」
「何がですか?」
「・・・安達くんのことです」
重い口を開いて呟くように答えたあきらに、立花姉妹は顔を見合わせた。おお、いよいよそういう展開になってきたか。そういった顔だ。
「今日、安達くんと持田さんが付き合ってないって、安達くんから聞いたんです」
「うんうん」
「それでそれで?」
立花姉妹は興味津々な様子で話を促す。
「私、安心したっていうか、ホッとしたっていうか・・・。そんな気がしたんです。でも、それが何故だかわからなくて・・・」
落ち込んだ様子で溜め息を吐くあきらに、立花姉妹は口を揃えておおと唸った。
「お二人は、どうしてだと思いますか?」
「そりゃあ、恋ですよ」
うーんと考える香須実に対し、日菜佳は軽い口調でサラッと答えた。
「あきらくんは明日夢くんのことが好きだから、ひとみちゃんとの関係を知ってホッとしたんですよ」
やっぱり、か。自分でも少し考えていたことだ。
しかし、それは同時に否定していた説でもある。
「私も、そうかもしれないって思いました。でも、私は1年前まで鬼の弟子だったわけですし、普通の女の子とは違うから、恋なんて・・・」
「別にいいんじゃない?」
口を開いたのは、香須実だった。
「鬼が恋をしちゃいけないなんて、誰が決めたの?大体、アナタはもう鬼とは関係ないじゃない」
「えっと、それは・・・」
「でしょう?トドロキくんは修行中の頃から日菜佳と付き合ってたじゃない」
「姉上とイブキさんも、ね」
日菜佳の言葉に少し頬を赤らめた香須実だったが、コホンと咳払いをして元通り。
「それにしても、あきらが明日夢くんのことをねぇ・・・」
「イブキさんみたいな人がタイプなのかと思ってたんですけどねぇ」
お茶を啜る立花姉妹は、何処か嬉しそうな、複雑そうな表情をしている。
「えっ、いや、私、まだ安達くんのこと好きとか、そんなことを・・・」
立花姉妹の話の流れに違和感を感じたあきらは、慌てて言った。
「ねぇ、さっきから思ってたんだけど、どうして明日夢くんのことを好きかどうか、自分自身でわからないわけ?」
「確かに確かに」
香須実の質問に、日菜佳もうんうんと頷く。
すると、あきらは少し俯いて答えた。
「実は私、ちゃんと人を好きになったことないんです・・・」
あきらの回答に、香須実はやっぱりかと頷き、日菜佳はあちゃ~と額に手を当てた。
「あの、それってやっぱり、よくないことなんでしょうか?普通の女の子なら・・・」
まだ幼い頃に両親を魔化魍に殺されて以来、心に大きな穴を抱えて生きてきたあきら。
普通の少女ならとっくに初恋を経験している年齢に達したあきらは、そのことについて思い悩み始めていたのだ。
「確かに、あきらくんの年で恋をしたことがないのは珍しいかもしれないですけど、それって全然、いけないことじゃないと思いますよ」
日菜佳が答えた。
少数派が悪と捉えられがちな社会だが、それは必ずしも悪とは限らない。
「そうね、日菜佳の言う通りだわ。だからね、あきら。無理に明日夢くんのことを好きだと思い込む必要もないのよ?」
「えっ・・・」
香須実の言葉に、あきらは思わず顔を上げた。
「いい?人を好きになることはとってもいいことだし、その権利は鬼にも元鬼にも等しくある。でも、恋に興味があるからって、自分でもよくわからない感情を恋だと決めつけるのは、危ないわ」
安達くんのことを、好きだと思い込む・・・。
確かに、恋に興味がないわけではない。
「まだよくわからないなら、わかるまで待てばいいんですよ。今以上にもっと明日夢くんのことを知って、その上で好きかどうか判断すればいいんです」
そのとき、そんな日菜佳の言葉を聞いて、ひらめいたように香須実はポンと手を叩いた。
「よし、決めた。あきら、明日は土曜日だから、学校は休みよね?」
「えっ、ああ、はい」
「フフッ、いい?明日、明日夢くんとデートをしなさい」
「ええぇっ!?」
あきらの大きな瞳は更に大きく見開かれ、ニヤニヤした香須実と日菜佳を写した。
恋愛経験が少ないので、この作品に自信がなくなってきました(汗)
女の子の気持ち、難しいです。
是非、感想としてご指摘などいただけたら幸いです。
閲覧有難うございました。