今回は千夜との戦いです
それではどうぞー!
「どう?傷の具合は」
「凄いな、ちゃんとくっついてるよ」
紫による応急措置のおかげで腹の傷は塞がった。やったことが無いと言っていたので不安だったが、上手くいってよかった
「でもだいぶ深い傷だったからひょっとしたら傷が開くかもしれないから気を付けてね?」
「へいへい」
「まったく、本当にわかってるのかしら…ヒヤヒヤするこっちの身にもなってよ」ハァ…
「悪いな、でも次で最後だから応援宜しくな」ナデナデ
「ちょ、ちょっと、いきなり頭を撫でないでよ!」
「ははは、ごめんごめん」
「もう…」
「…文さんが怒りますよ?」
「なんでだ?」
「なんでもありません…」
「?」
美華になぜか文が怒ると言われた、何か怒らせるようなことしたかな?
「準備はできたか?」
千夜が話しかけてきた
「ああ、万全とはいかないがなんとかなるだろ」
「では構えろ上条、妾の子供達を打ち倒したのだ、お主がどこまで強くなったのかしかと見させてもらうぞ」
「俺もあの時とは違う、そう簡単に負けてやるつもりは無いからな」
「減らず口は相変わらずか」
「ほっとけ」
端からみれば軽口を叩き合ってるようにしか見えないが、二人の周りは妖力や殺気で空気がピリピリしているのがわかる
一陣の風が木葉を巻き上げ、睨み合う二人の間を遮った瞬間に戦いは始まった
「いざ参る!」 「行くぞ!」
「始まりましたか…」
「勝てると思う?」
「普通に考えれば無理でしょう、勇儀さんにあれだけやられてたのですから」
「…」
「そうでしょうか?」
不意に後ろから声をかけられたので振り返ってみると
「文さん、もう怪我の方はいいのですか?」
「はい、問題ありません」
「で、勝てると思う根拠は?」
「ありません」
「そんなことだろうと思ったわ…」
「ですが…」
「?」
「上条さんは意地でも勝ってくれると思います」
「フフッ、そうね」
「今は待ちましょう、上条さんが勝ってくれると信じて」
「そらそらどうした!」
「くそっ!」
逸らす、逸らす、逸らし続ける。千夜の攻撃は先程闘った勇儀よりも激しいもので、上条は逸らし続ける事で精一杯であった
「っらぁ!」
「む?」
「もらった!」
炎を発生させ、距離を取るために攻撃をやめた千夜の懐に上条が潜り込んで鳩尾に一発喰らわせようとしたのだが甘かった
「遅い!」
「がっ!?」
一瞬で横に回り込まれて顔面に回し蹴りを喰らい、倒れそうになったがなんとか堪えた
「やっぱ、一筋縄じゃいかねぇか…」
(まずいな、あいつの能力もわからねぇし下手に動いてもやられちまう)
「ふむ、やはりか」
「?」
「お主、随分と妖力が減ったな」
「なんのことだ?」
「気づいていないのか?いや、気づいているはずだ、最近、能力が上手く発動しなかったり傷の治りが遅かったり力が抜けていく感じがあったのではないのか?」
「っ!なんでその事を知ってるんだ」
「その話は闘いが終わってからな、ほれ、余所見していると…」
一瞬で千夜が目の前から消えたかと思うと誰もいないはずの後ろから濃密な妖力と殺気を感じた
「死ぬぞ」
ゾワッ
「…!?」
上条は飛び込み前転で千夜の拳を回避したが逃げた先にはもう千夜が待ち構えていた。突然の事で反応が遅れた上条は横腹に蹴りを喰らって数十メートル吹っ飛ばされた
「がっ!ごほっ!ぐぇほ!」
「お主の行動は妾には筒抜けだ、諦めろ」
「…随分と、勘が鋭いじゃねぇか」
「妾程になると相手の行動を先読みすることぐらい他愛もない事だ」
「…」
(くそっ!このままじゃ…待て、行動を先読み?そういえば…)
ふと上条は昔の千夜の言葉を思い出した
『鬼は嘘が嫌いなのだ、その程度の嘘などすぐに『見破れる』のだぞ』
(『見破る』?まさかあいつの能力は予知系の能力か?)
そこで上条は気づいた
(そうだ、よくよく考えてみれば妖力についてはバレるかもしれないけど話してもいない事はいくら先読みできたとしても解るわけがない)
そう考えてみるとこれまでの勘の鋭さ、先回りしての攻撃などとも辻褄があう
(だけどどうする?何もかも見透かされてるなら不意をついた攻撃も通らない、そうすると予知でも見破る事ができないほどの何かが必要になる)
上条は今も目の前で睨み合う千夜を見て思った
(出し抜けるのか?この俺が、千夜を…)
「ハァッ!」
「うわっ!」
千夜は拳を振るう訳でもなく接近して蹴りを入れてくるわけでもなく、手を突きだして妖力弾を飛ばしてきた。とっさに右手で受けたがそれは間違いだった、不意をついた攻撃に乗じて千夜が接近、足払いで左足のバランスを崩されてそのまま顔面を殴られてまた数十メートル吹っ飛ばされた
(危ねぇ…とっさに頭を引いて勢いを殺してなかったら今頃頭が無くなってただろうな)
先程払われた左足がかなり痛む
「タネがわかったんださっさと逆転して…?」
なぜか上手く立ち上がることができなくて、これまでのダメージが足に来ているのかと思ったがそうではなかった
「その体ではもう闘えまい、上条よ」
「何を…言ってるんだ」
千夜は上条の下半身を指差して
「足」
「?」チラッ
「一本、無いぞ?」
「う…うぁぁあぁああぁあぁあぁぁ!?」
足を払われた時に消し飛んだのだろうか、左足が股関節辺りから綺麗に無くなっていた。今さら痛みが込み上げてくる、まるで高温に熱せられた鉄を傷口に押し当てられているかのような痛みが上条を襲う
「あがっ…がぁっ…!」
「勝負あり、だな」
「待て…よ…」
千夜はその場を立ち去ろうとしたが上条が話しかけてきたので立ち止まった
「なんだ?まだ闘うというのか?」
「当たり…前…だ、まだ…闘え…る…!」
上条は近くの木に手をつけてなんとか立ち上がった
「…ならば最後に一つだけ聞く、お主にはそこまでして守りたいものがあるのか」
「…あぁ、美華や紫、にとりや文、俺を迎え入れてくれたこの山の皆が俺の守るべきものだ、この山はあの臆病だった美華が天狗達を指揮して造り上げ、そこに惹かれて集まってきた河童や他の妖怪がいたから今ここで俺達が出会えたんだ。それは多くの妖怪達の努力の結晶だと言っても過言じゃないと思う、それを『面子』なんていう理由でこの山を奪い、今まで努力してきた皆の事を否定するってんなら、まずはおまえのふざけた幻想をぶち殺す!!」
上条から今まで感じられなかった力が溢れ出す
「っ!?なるほど、真の力は『大切な仲間を想う事』ということか…いいだろう、来い上条!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
上条は左足がないので走ることはできないので背中から炎を噴射させて千夜に接近する。一方通行のように能力の扱いが上手いわけではなく、細かいコントロールができないので封印していたがなりふり構ってられない
「喰らえ!」
千夜は一発一発に必殺の威力を誇る妖力弾を大量に上条に飛ばす
「うらぁぁぁぁぁぁ!!!」
対して上条は右手を振るい、妖力弾を打ち消していきながら千夜に近づいていく
「もう少し…!?」
上条があと少しで千夜の元へたどり着くというときに千夜が特大の妖力弾を放ってきた
「…」
(恐らく上条は右手で打ち消して真っ直ぐこちらに向かってくるだろう、妖力弾が消えた瞬間に上条の頭に一撃決めて叩き落とす!)
しかし千夜の予想は外れ、上条の右腕から召喚された竜の幻影が妖力弾を飲み込んだ
「なに!?」
(幻影が邪魔で上条が見えない!)
だがチラリと右手を引き戻すのが見えた
(あの右手も吹き飛ばす!)
千夜は上条の右手を封じれば勝ちは確定すると踏んで右手を潰すことにした、上条は攻撃を潜り抜けすぐそこまで迫ってきている
(見破ったとおり、右手を構えている!)
千夜は迷うことなく渾身の一撃を上条の右手目掛けて振るった
「千夜ぉ!!!」
だが上条は構えていた右手をあえて出さずに『左手』を振るった
「左手!?」
ドガッ!!
凄まじい音と共に上条の左腕が肩から消し飛んだ、その代わりに千夜の体制も崩すことに成功した
「お主まさか、妾の攻撃を利用して!?」
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ゴガン!!!
「ぐぁっ!!」
「……」
ドチャッ
上条の必殺の一撃が千夜の顔面を捕らえ、千夜は気を失った。上条も遂に力尽きて自分の血でできた水溜まりに倒れた
(なん…だ…体が…動かない…)
確かに上条の妖力は何故かはわからないが千夜の言ったとおり少なくなっていた、だが何故ここまで体がボロボロになっても再生が始まらないのかというと残り少ない妖力に加えて無意識のうちに『生命力』まで攻撃にまわしてしまったのだ。生命力とはいわば生きるために必要不可欠な力、それを大量に使ってしまった
(あ…れ…勝った…のか?)
朦朧とする意識の中、上条は千夜に勝利した事を確信した
「上…さん大…夫で…か…?」
「…麻!し……りし…なさい……文…な………でき……の!…」
「……こう…の……門外………!紫……こそ…キ…で…………できな……………か…?」
「二………落……い…………い……さ………とり…ん………で……………い!」
「…………!」
(なんだ…皆…聞こえねぇよ…)
そこで上条の意識は完全に闇の中へと沈んだ
今回はここまでです
次回はこの続きです
それではまた次回!