ソードアート・オンライン〜なりきれなかった者〜 作:木曾星仙
ー切る
ーー避ける
ーーー切り切り
ーーーー避けて避ける
そんな単純な作業を大量にログインしてから今の今まで続けていた。
「はっ!」
いい加減飽きてきた。そんな思考を何処かにやる為に掛け声の如く大きな声を出す。
そうでもしないとやってられないのだ。幾らこれからの為に必要とは言え面倒臭い。
結構作業には慣れているはずなのにな。と色々考えられることがあるだけまだマシなのかも知れないけれど。
「…いや、そろそろ退散するか」
そう呟いて街の方を向き歩く。
そして街の中に消えようとした瞬間に
「なあ、ちょっといいか?」
と後ろから少し控えめに声をかけられた。
まあ、大方先ほどの戦いをみてレクチャーして欲しいとかそんな感じだろう。
断ってもいいがこのゲームの性質を考えれば人助けは積極的に行うべきであろう。
「嗚呼、なんだ?戦闘技術絡みなら講師料を貰うが」
「すげぇな、わかんのか。って金とんのかよ!」
「無論だ。時間は無料ではない。まあ、其れ程多く取るつもりはない」
適当にモンスターを狩りながらその手に入れた端数を貰う程度だ。
実際動きは悪くないし恐らく攻略に参加出来るランクにはなれるであろう。
「其れでどうする?某は何方でも構わないが」
「某ってやっぱり関羽に似せてんのか…。そんなに金がかかんないなら頼む」
「了解した。其れでは貴殿の力をまず見させて貰おうか……丁度良い。彼処にいるあの豚を斃してみたまえ」
「おう!」
彼の動き自体は良くも悪くも初心者のそれだった。
この世界の動き方自体は中々に上手いものの剣の振り方、重心の移動、距離の取り方。なにを取っても普通で平凡だった。
「…まあ、だからこそ見る意味があるのだが」
「うわっ!そこでなんかブツブツ呟いてるくらいなら助けてくれよ!死んじまう!」
「別に今死んだとしてもあまり難点はないだろうが…まあ、待つ時間が面倒か」
そういいながら豚に向かい全力で一撃を叩き込む。
彼がある程度HPを削っていたようでその一回の攻撃だけで敵は四散し霧消した。
「今は機能の一つである《剣技》などには頼らない方がいい。自身の間合いがわからない状態で動きが固定されるような技は確定的な隙を生む。まだ敵が弱いからいいもののこれからは隙をみせないようにしないといけないからな」
「剣技….?ああ、《ソードスキル》のことか。なるほどな。適当にぶっ放せばいいって訳でもないのか」
「有無。まあ、某の考えではとなるがな」
これ自体はβテスト時から思っていたことではある。ネームドモンスターの類いなどでは別だが所謂雑魚モンスターに関してはソードスキルを使うとオーバーキルになってしまう場合がある。ーー無論序盤ではソードスキルの威力は低いし武器の攻撃力も弱い。ステータスも貧弱でソードスキルを使う意味は無い訳ではないがーーだから最初の最初であるそれこそ中々死なない敵であり死んでもあまり不利益が無い序盤にこういう練習をすべきだと考えていた。
ただし、使う武器によると言えるが。
この場合元々の威力が低いレイピアなどの武器は積極的にソードスキルを使うべきではあろうが。
そして、この戦い方だとスキルの熟練度があまり上がらなかったりする。スキル自体を使わないから当たり前と言えば当たり前なのだろうけど。
と思考をしていると近くにまた豚がポップした。
「次はあれを今度こそ一人で斃して見せよ」
「おう!まあ、大体のコツは掴んだしいけると思うぜ!」
そう彼が意気込んで向かって行った瞬間に鐘の音が聞こえてきた