宇宙海賊キャプテン茉莉香 -銀河帝国編-   作:gonzakato

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 海明星では高校卒業は大人への門出。白凰女学院も、卒業記念のダンスパーティは盛大に祝います。ただし、女子校なので、共学高校のダンスパーティとはちょっと違います。
茉莉香とグリューエルがワルツを踊るシーンをアニメで見たいと言う一念で、この章を書きました。ダンスパーティでも茉莉香は人気者です。
それから、サーシャです。アニメ版では美少女キャラで、家族や生い立ちなどのプライバシーが出なかったのですが、この小説のストーリー展開では、最後までとても重要な役割を演じてもらうことにしました。
 チアキは、ジェニー先輩のワガママに付き合った結果、一人の男性と知り合い、一緒にダンスを踊ります。これって、運命の出会いになるのでしょうか。結末にご注目下さい。


第二章 卒業記念ダンスパーティ

2-1 ステープル家の邸宅(海明星)

 

 5月のとある土曜日の夕方、いつもは静かなステープル家のお屋敷は、大勢の訪問客で溢れていた。次々と横付けする高級車や自家用車から降りたった来客は、使用人に出迎えられ、広大な玄関ホールに入っていく。

 玄関ホールの頭上では、銀河系をかたどった巨大なシャンデリアが輝いている。

 我々の銀河系は直径10万光年、紡錘型の中心核から、渦巻き状に多数の光の腕、つまりオリオン腕、ペルセウス腕、ノーマ腕、サジタリウス腕などが、広範囲に伸びていく形をしている。この壮大な銀河の形を模した輝きが、訪れた人を照らしている。

 玄関正面の中央階段の両脇には、星座となった神話の人物や動物を表現した、大理石の彫刻が立ち並んでいる。来客はこれらの大理石の彫像に導かれ、二階右手の大広間に進んでいく。廊下の壁や大広間の天井にも、宇宙の神話をモチーフにしたユーロ・クラシックと呼ばれる表現形式による、壁画が描かれている。

 こうして、ステープル家の玄関から大広間までの空間は、銀河系宇宙を表現している。

 

 大広間では、パーティの主催者であるダンス部員達や白凰女学院の教師達とならんで、屋敷の当主、ステープル夫妻と娘のサーシャが、次々と到着する父兄や招待客に挨拶していた。

 そんな来客のようすを、ダンスに出演する三年生達は、大広間を一望できる三階の廊下から眺めていた。

「うわー、華やか。今年は参加者が多いらしいわよ。招待客のみなさまもほぼ全員ご出席らしいわよ。

 こんなの始めてと、ダンス部の子が喜んでましたわ。」

「見て見て、ほら、あちらのお兄様達。すてきな方が大勢いらっしゃるわ。都会的な大人の雰囲気ねえ。すてき。

 クリスタルスターから、いらしたのかしら。」

「『クリスタルスター』っていう名前を聞いただけでワクワクしちゃうね。

 銀河帝国の首都かあ、私も行ってみたいわ。」

「それにしても素敵な大広間ね。シャンデリアの輝きとか、壁や天井のクラシックな壁画とか、ほんと素敵だわ。

 これが本物のセレブのお屋敷なのね。」

「サーシャって、この家の娘なんでしょ。

 普段は、他の子を引き立てる側に回って、自分がセレブってところを見せないわよねえ。賢いのねえ。」

「あれ? そのサーシャさんは今日は男装じゃなかったのかしら。白いドレス着てらっしゃるわよ。」

「あれは、お母様のお望みだそうよ。ダンスが始まるまでにお着替えになるって聞いたわ。

 ほら、ご覧なさいよ。お母様がサーシャをお客様に紹介するときの、本当にうれしそうなお顔。」

「今夜のパーティは、まるでサーシャさんの社交界デビューが目的みたいですね。」

「あっちの人だかりはなんでしょう? 校長先生にご挨拶かしら。」

「それは口実かしら。お目当ては、クリス先生ですわよ。きっとそうよ。」

「先生のロングドレスも素敵。キラキラしてる。」

「私は、あなたのドレスの方が素敵だと思うけどね・・。」

「あら、ありがとう。

 でも、私は、あなたのドレスの方が素敵だと思うわ。」

「ありがとう。ハハハ」

「やっぱり、美人は得ねえ。注目されて。

 でも、あの先生、美人でスタイルも良いけど、性格は残念系じゃないかしら。」

「そうよねえ。負けず嫌いで、オテンバだからね。チアキちゃんと剣道の稽古するときなんか、本性が出るって言うか、スゴイらしいよ。」

「もしかして、先生も海賊の娘だったりして。」

「まさか、それはないでしょう。ハハハ・・・・。」

「でも、誰にも媚びたりしないところは、私、好きだなあ。」

「そうそう、それにお話してみると、本当はやさしい方でいらっしゃるのよね。」

「ところで、今夜、茉莉香さんと踊るのはどなたなの。」

「今夜の分は、ダンス部の方で決めてるよ。希望者殺到だから。

 でも、この後、何回もパーティをやるので、希望者全員が必ず踊れるって、ダンス部の部長が言ってたわ。」

「すごいね。さすが茉莉香さま。」

「ハハハ・・。」

 

「ハイハイ、皆さん。ご準備はよろしいですか。そろそろ始まりますよ。」

 ダンス部員の指示で、生徒達は二階の控え室に集合し、スタート順に並び始め、衣装や髪をチェックしたりと、それぞれがダンスパーティの入場行進の準備をはじめた。

 この日ばかりは、いつもはミニスカの生徒達も白いロングドレスである。

 もっとも、男性役の生徒達は、残念ながら、黒の燕尾服だが・・・。

 

「失礼します。」

 そう言って、セレニティ王宮の正装のドレスに身をつけたグリューエルが現れると、パアッとその場に光が差したようだった。

「本日は、わたくしの願いをおきき頂いて、パーティへの参加をお認め頂いたこと、御礼を申し上げます。」

「いいのよ。お礼なんか。私たちだって、グリューエルが来てくれて、とてもうれしいわよ。」

 そこへ茉莉香がやってきた。

「やあ、みんなー。」

「茉莉香。遅いわよ、今夜の主役なのに。」

「いやあ~~~、お仕事、お仕事。ごめんね。今、ようやく帰ってきたところ。」

「わあ~~~茉莉香!

 なに、その衣装。本物の海賊服でそのまま来たの?」

 茉莉香の衣装を見た生徒達から歓声が上がった。

「違うわよ。ダンス部と手芸部の子達が、どうしても、これを着ろっていうから・・・。」

 茉莉香の衣装は、どくろマークこそ付いていないが、古代の船乗り風の黒の帽子に、シルクが黒く輝く、礼装の軍服のような形の上着に、大きな金ボタン、肩章に金モール、胸に七色にキラキラする勲章のようなものまでぶら下げた、本物の海賊服よりも派手で、海賊らしいコスプレ衣装だった。もちろん下は、深紅に輝くシルクのミニスカート。

「茉莉香の衣装は、手芸部のマミが仕切っているんでしょ。」

「でも綺麗なコスプレ衣装ね。マミのヤツ、腕が上がったね。」

 

「みなさま、本日はお忙しいところ、私たち白凰女学院高等部のダンス部が主催いたします卒業記念ダンス発表会においで頂き、・・・」

 ダンス部の部長カトリーヌ・クレソンが、形通りの開会の挨拶を述べると、校長が父兄や招待客に日頃の支援に対する感謝の言葉を述べた。

「それでは、生徒の入場でございます。」

 ダンス部の司会者の言葉を合図に、大広間の角に陣取った指揮者がタクトを振り、楽団が入場行進曲をゆっくりと優雅に演奏し始めた。

「この曲、知ってますわ。ヒット曲のアレンジですね。大好きです。」

 

  (注:アニメ版の最終回エンディングテーマ曲「未来航路」のメロディが流れる)

 

「そうだよね。この曲、今の私たちの気持ちにぴったりだね」

「さあ、グリューエル行こう。」

「はい。」

 加藤茉莉香とグリューエルが、入場行進の先頭だった。茉莉香はグリューエルの右側に立って並び、手を取り合った二人は足をそろえて優雅に進みはじめた。

 

 広間に入ってきた加藤茉莉香とグリューエルの二人の姿をみつけると大広間の父兄達から、歓声と拍手が寄せられた。

 音楽に合わせ、その後から次々と二人づつ手を取り合った生徒達が続く。列は父母の前を通って、時計回りに大広間を一周する。父母に娘の晴れ姿を見せるため、女性役が左側に並んで行進しているのだ。

 さらに列が長く続くので、一周した先頭から順に内側に回り込みながら、行進は進んでいく。

 全員の入場が終わると、楽団の曲がワルツに変わった。

 そして、先頭の茉莉香とグリューエルの二人が大広間のセンターに立った。

 センターは光のステージである。大広間のセンターの頭上には、アンドロメダ銀河を模した巨大なシャンデリアが輝いており、センターの床には、タウ星の輝きをイメージした七色のガラスのタイルがはめ込まれ、シャンデリアの光を反射して輝いていた。

 その光のステージの上で、二人は、互いに一礼する。そして、茉莉香が右手をグリューエルに差し出した。

「お手をどうぞ。」

 

 グリューエルも白い手袋をした左手を茉莉香に預ける。

 手を取り合って近づいた二人は、向き合って腕を組み、ステップを踏みだし、ワルツを踊り始める。

 二人は、たがいに微笑みを交わしながら、ワルツのリズムに乗って、軽やかに体を回転させ、大広間のセンターで踊っていく。

 茉莉香もなかなかダンスが上手いが、やはりグリューエルの立ち振る舞いは、美しい。彼女の踊った後の空間は、妖精が飛び去った後に光の粉が広がるように、銀河の星々の光の粒が広がっていくように、輝いていた。

 まるで、おとぎ話の王子様とお姫様のような、茉莉香とグリューエルのダンスに、周りの生徒達もしばらく見とれていた。

 

 やがて、生徒達は、同じように、それぞれが一礼して、茉莉香とグリューエルのステップに合わせて、ワルツを踊り始めた。

 グリューエルにリードされて踊りはじめたためか、全員が、華やかな王侯貴族の舞踏会に参加しているような気分に浸っていた。ワルツの調べに乗って、大広間全体に、踊りの輪が広がっていった。

 

 楽しい時間がいつまでも続くように思われたが、やがて、曲が変わった。

 茉莉香の場合は、希望者が殺到しているため、曲ごとに、ダンス部から指定された新しいパートナーと踊ることになっている。

 二人は、向き合い、一礼して踊りはじめた。

「素敵なドレスですねえ」

「いえいえ、茉莉香さまの海賊服も素敵です。」

「いや、これは海賊服ではなく、ダンス部指定のコスプレ衣装で・・・ナハハハ。」

 茉莉香の相手となった生徒は、本当にうれしそうな笑顔を振りまいて、踊っている。

 そういう二人を見ているだけで、周りの生徒達も楽しくなる。

 だから、みんな、茉莉香と踊りたがるのだろう。

 

 他の生徒達も踊り始めた。

 ヨット部の面々は、今夜は男役である。茉莉香の他、三年生であるサーシャも、チアキも、ウルスラも、リリイも、二年生であるヤヨイもアイもナタリアも、燕尾服で踊っている。一年生まで、男役で出演している。

 

 皆、少し緊張がほぐれたせいか、まわりの様子が見えるようになってきた。

「あれ、ジェニー先輩がいらっしゃるわよ。

 わざわざ帰国して、パーティに参加されたのかしら。」

「あなた、何か事情を聞いていらっしゃる?」

 

 さらに、グリュンヒルデも、ダンス部のリクエストに応え、セレニティ防衛軍のきらびやかな礼服姿で、男役を務めている。

 今夜のグリュンヒルデも、茉莉香同様に希望者が多いため、ダンス部に指定された相手と踊っている。

 

「踊って頂いて私は本当にうれしいのですが、ご迷惑をおかけしたのではありませんか。 グリュンヒルデ様も、お姉様のように、ドレスを着て踊りたかったのではありませんか。」

「お気遣いなく。姉は姉、私は私です。

 それからヒルデとお呼びください。

 先輩こそ、ダンス、お上手ですね。」

「いえ、いえ。ヒルデ様にお褒め頂くなんて、本当に光栄です。」

 

 二曲目に入った頃から、周りの父母、兄弟、姉妹や招待客達も、カップルで踊り始めた。

 生徒達は、クリス先生がブレスレット型の「舞踏会の3D手帳」の立体映像を見ながら相手を探し、指定された男性と踊り始めたのを見逃さなかった。

「先生のお相手は、どんな人だろうかねえ。」

「ひょっとして、お見合いかもね。」

「私もああいう男性と踊ってみたいなあ。紹介してくれないかしら。」

 華やかに「舞踏会」は進んでいった。

 

 チアキは、自分も踊りながら大広間で踊る生徒達を見渡していた。

 

『あの子のドレスが、一番素敵ねえ。私も、ああいうのを着てみたかったなあ.』

 

 チアキは、さらに踊りながら、大広間の周囲に集まっている人たちも観察した。

 華やかなシャンデリアの光の下で、着飾った大勢の人々が、踊る生徒達を眺めていた。その中に、一人の男性が壁に寄りかかって、少し離れて立っているのが目に入った。

 

『なに、壁のシミ?たよりない男(やつ)ねえ。

 いかにもセレブっぽくて、背も高く、美形のくせに。』

 

 そう思って見ていると、当の男性がチアキの方を向き、二人の目が合った。

 自分が悪口を云ったのを聞かれた気がして、あわてて、チアキは目をそらした。

 

 何曲も続いた音楽がとまり、司会が休憩時間であることを告げた。

 参加者は、ホールで立ち話を続けたり、お茶や軽食のため隣の大食堂に向かおうとしていた。大食堂も、頭上に、大小マゼラン銀河を模した二つのシャンデリアが輝く、豪華な部屋だった。

 チアキは、大食堂にも向かおうとするところを、ジェニー・ドリトルに呼び止められた。

「チアキちゃん、久しぶり。今日はヨット部は男役ね。ごくろうさま。

 ところで、頼みがあるんだけど。」

「お久しぶりです、先輩。なんでしょうか、ご用は。」

「チョット、こちらの部屋へ来てくれないかなぁ。案内するから、付いてきて。」

 ジェニーは、チアキを連れて、屋敷の廊下を右に左に曲がって、階段を上がって下がって、どんどん奧へ歩いていった。本当に迷路のような大きな屋敷である。

 そしてジェニーとチアキは、とある小部屋に入った。その部屋には、衣装掛けに、美しいドレスがずらりと並んでいた。

 そのなかで、ひときわ輝く、白いドレスに、キアキの目が吸い寄せられた。

『こんなドレス、着てみたいなあ.』

 チアキは、自分がこのドレスを着て、舞踏会で踊っている姿を思い浮かべた。

 

 一方、ジェニーは、並んだドレスを指さして言った。

「見てよ。こんなに沢山のドレス。私のために親が用意したのよ。私の機嫌を取って、今夜のパーティで絶対にお見合いさせるつもりなの。

 でも、もうイヤ。VIPにもご挨拶だけは済ましたから、あとは、さっさと抜け出すわ。」

「いいんですか?」

「いいのよ。そこで、チアキちゃん、お願い。私の代わりに踊って。」

「本当に、いいんですか。」

「いいのよ。どうせ向こうもヤッピーのお坊ちゃまだから、テキトーなヤツよ。パーティが済んだら、誰と踊ったか、顔も名前も覚えてないようなヤツよ。」

「ね、お願い。それで、ドレスなんだけど・・え~~っと」

 ジェニーは、ズラリと並んだドレスを見て、

「そうだ。チアキちゃんには、このドレスがぴったりだと思うわ。これどう?

 靴とか手袋、アクセサリーもそこにあるから、好きなのを使ってちょうだい。」

 

 そういって、ジェニーが示したドレスは、先ほどチアキが見とれていた白いドレスだった。このドレスを着られると思うと、チアキは断れず、着替え始めた。

「思った通り、ドレスはこれがぴったりだわ。」

 ジェニーは、着替えたチアキの姿を、上から下まで見て言った。

「う~~~ん、チアキちゃん、正装すると一段と可愛いわねえ。シンデレラ姫よ。」

「そんなに誉めて頂くと・・・。」チアキは顔を赤らめた。

「えーっと、私は、そろそろ、リンが車で迎えに来る頃だから・・。」

 と言いながら、ジェニーはドアを開けて、部屋の外を見た。

 

「あ、ちょうど良いところに来たわ。

 ねえ、エド、このコを大広間へ案内してあげてよ。

 それで、私もう抜け出すから。」

「また脱走ですかあ。」と、廊下の方から男性の声が聞こえた。

 チアキが廊下へ姿を現すと、ジェーンが言った。

「こちらは、エドワード・ドリトルさん。私の親戚、若いけど、ヒュー&ドリトル星間運輸の取締役よ。

 こちらはチアキ・クリハラさん。私が部長をしていたヨット部の三年生よ。

 この子に代役を頼んだの。」

「チアキ・クリハラです。」

 とチアキはまず挨拶してから顔を上げたが、男性の顔を見て、驚いて固まってしまった。

 

 なんと、先ほど大広間で視線の合った「壁のシミ」男が、そこに立っていた。

「初めまして。エドワード・ドリトルです。エドとお呼びください。

 ところで、どうかされましたか?なにかご心配のことでも?」

 エドワードは、キョトンとした表情で、チアキを見た。

 

『どうやら、先ほどのことは気づいていないらしい。』

 と思い、チアキは少しホッとして、表情をゆるめた。

 そうこうしているうちに、ジェニーは行ってしまい、二人が残された。

「いえ。初めまして。チアキとお呼びください。」

「では、チアキさん。大広間へ参りましょうか。」

 エドワードは、チアキを連れて屋敷の廊下を右に、左に曲がって、元の大広間へ向かった。

 

 いや、その筈だったが、いくら歩いても二人は元の大広間へたどり着かなかった。

「あのー、さっきから、同じ所を回っているような気がするんですけど。」

 見かねたチアキが、それでもかなり遠慮がちに言った。

「やっぱりそうですかねえ。なんか変だと思ってはいたのですけど。」

 エドワードは、チアキの方を見て、苦笑した。

『なんと頼りないヤツ!』

 と口には出さないが、チアキは腹が立った。しかし静かに淑女らしく言った。

「こちらの方に行ってみては、いかがでしょうか。」

 チアキは、自分の思う方向を示して、二人はその方向へ歩いた。

 しかし、またまた、行けども行けども同じ廊下が続いて、いつまで歩いても元の大広間へたどり着かないような気がした。

 チアキは、自分が大広間に案内して、その上でエドワードにひとこと、文句を言ってやりたかったのだが、すっかり目論見が外れてしまった。

「エドワードさん、ごめんなさい。私も迷ってしまったようですね。」

「ハハハ。そもそも私が迷ったのが悪いんですから。チアキさんのせいではありませんよ。」

 そう言ってエドワードは微笑んだ。

『このひと、笑顔が素敵なんだなあ。ちょっと頼りないけど。.』

 チアキは、エドワードの顔をじっと見てそう思った。

 

 この時、チアキは慣れないハイヒールを履き、急いで歩いて来たため、足が痛くなってきた。思わず顔をしかめて歩いていると、それにエドワードが気がついた。

「チアキさん、大丈夫ですか。確かベランダには、ベンチがあった筈です。少し休みましょう。」

 二人はベランダに出て、ベンチに並んで座った。空には、満点の星が輝いていた。

 エドワードは星空を見上げて言った。

「ああ、この星の星空はなかなか綺麗ですね。小惑星帯が帯状に白く輝いて、明るいんですね。

 いいなあ、明るい星空は。

 帝都はねえ、核恒星系だから星の密度は高いのですが、母星が赤色巨星であることと大気の影響もあって、星空はここよりも暗いんです。

 そうだ、チアキさん。この星の星座にはどんな名前が付いているんですか。

 ご存知でしたら教えてください。」

「私もこの星の生まれじゃないから、よく知らないんですけど、

 あの中央の明るい五つ星が父羊座、あっちが子羊座、その横が母羊座。星座の動物たちにも家族がちゃんとあるんですね。

 それを囲む暗黒星雲にも名前があって、右が犬座、左が羊飼い座。開拓惑星だから、星座も牧場なんですね。馬や牛の星座もあります。・・・。」

「キアキさん、星座の話がお好きなんですね。私も、小さい頃から、星や星座の話が大好きなんですよ。」

 二人とも小さい頃から星の話が大好きと分かって、チアキは少しうれしかった。と同時に、

『この人も、小さい頃から、ひとりぼっちで寂しかったのかも知れない。』

とも思った。

 

 チアキ自身は、生まれたときから宇宙海賊船で暮らし、しかも父子家庭であり、何かとひとりで過ごす時が多かったからだ。そんなチアキを見て、副長のノーラや船員達が星の話をしてくれた。星座の話、星の神話、宇宙旅行の冒険談や昔話・・・。

 こうして、チアキは宇宙海賊船の窓から星を眺めて暮らし、星座や星座の物語について関心を持つようになった。

 船が可住惑星の中継ステーションに着くと、父に星座や星の神話などの本を買ってくるようにせがんだ。

 宇宙時代でも、星座はその星の地上で暮らす人々の目線で名付けられるので、星座と星の物語は、星々で違うからだ。

 チアキは、

『この人が寂しさを抱えて育ったのは、どうしてなのかなあ』

 と、エドワードの生い立ちについて考え始めた。

 

 その時、突然、ベランダのはるか向こうでドアが開き、明るい部屋の中が見えた。

 開いたドアの向こうに大広間が見えた。

 そして部屋から漏れた光であたりが照らされ、ベランダは大広間の前まで続いており、ベランダを歩いて向こうへ行けば、大広間に戻れることがわかった。

 と同時に、チアキはたいへんなことに気がついた。

 ベランダのベンチは、カップルシートだった。

 あちこちのベンチに着飾った男女が座って楽しそうに話していた。そもそも、ドアが開いたのも、カップルが外に出てきたためだった。

 そして自分達もベンチに座る一組のカップルとして見られている。

 

 それに気がつくと、チアキは恥ずかしくて、顔から火が吹き出そうだった。

『どうしよう。二人でいるところを見られたら。』

 来週の月曜日には、教室や部室で、

『チアキちゃん、いつもと顔色が違うけど、何か悩みがあるんじゃないの。

 話を聞いてあげるからさあ。・・・ダンスパーティの彼氏のことかな・・・。』

 などと親切そうに言いながら、近づいてくるヤツラの顔、具体的にはリリイの顔が浮かんできた。

 いや、それ以前に、今夜のTV電話攻撃が恐ろしい。

 

 その時、エドワードが言った。

「チアキさん、今夜はすみませんでした。

 廊下で迷ったときから、今にもチアキさんが怒って一人で行ってしまうんじゃないかって思ってました。

 これ以上、ご迷惑をおかけするのも、申し訳ないです。さあ大広間へ戻りましょう。

 自分でも分かっているんです。頼りないって思われてるのが・・・。」

 その少し寂しそうな声を聞いていると、はっとして、いつもの世話焼きで、意地っ張りなチアキが戻ってきた。

 そして、こう思った

『そうね、幾つになっても男の子は男の子。

 男の子に自信をつけさせる方法は、ただひとつよ。ジュブナイルのお約束どおりにね。

 私に任せなさい。.』

 それを自分の役割と思い込むと、チアキは、ちょっと上から目線でエドワードに言った。

「さあ、エド!私を舞踏会に連れて行って。

 一緒に踊りましょう。」

 そして、チアキは自分からエドワードと腕を組んで、彼を引っ張るように勢いよくベランダを歩き出した

 大広間の前まで一気に歩くと、ドアの前で立ち止まって、彼に言った。

「あなた、ダンスは踊れるんでしょう?」

「はあ、小さい頃から習ってますから。」

「じゃあ大丈夫。

 あなた、見栄えは良いんだから、あとは自信のあるフリをするだけよ。

 いいわね、『王子様の笑顔』のまま表情を変えず、周りを気にせずに落ち着いたフリをする。そうして、私をリードして大広間に入りなさい。さあ。」

「はい。

 でも、それで良いんでしょうか。」

「それで良いのよ。

 あなた、もともとカッコイイんだから。

 そうして堂々と振る舞っていれば、向こうの方から勝手に貴方のことを、力と自信に溢れた男と思い込んでくれるわよ。

 相手がそう思えば、それがあなたの実力。」

 チアキは、ひとつ深呼吸して、力強く言った。

 

「さあ、舞踏会の時間よ! 」

 

 エドワードは、チアキとともに大広間に入った。

「さあ、姫様、お手をどうぞ。」

 チアキはエドワードにそう言われて、気持ちがちょっとトキメいた。

『私も素敵な彼に伴われて、一緒に舞踏会に行くのが夢だったのよね。』

 二人は、ワルツを踊り出した。

「エド、良い調子よ。ほんと、素敵ね。」

 エドワードは周りの人々を気にせず、ずっとチアキを見て微笑んでいる。

 チアキも、ジュブナイルのお約束通りに、彼を見て微笑んでいる。

「あなた、ほんとにダンスが上手ね。」

 これも、ジュブナイルのお約束通りである。

 こうして、チアキは彼をほめ続けていた。

 踊ってる女の子たちは、見知らぬ美男美女が入ってきたかと眺めていたが、しばらくすると小声で話し始めた。

「あのコ、誰?」

「もしかして、チアキちゃんに似てない?」

「ホントに、キアキちゃんかな?」

「チアキちゃんなら、白いドレスじゃなく黒い燕尾服のはずよ。」

「でも、チアキちゃんじゃないのかなあ・・・?」

 このささやきを小耳に挟んで、チアキは思わず言ってしまった。

 

「『ちゃん』じゃない!」

 

 この声を聞いて、生徒達が一斉に気づいた。

「やっぱり、チアキちゃんだ!」

「チアキちゃんに間違いない。見違えちゃったよ。」

 チアキは『しまった』と思ったが、もう遅い。チアキの言葉を聞いたヨット部のメンバーが、踊りながらチアキに近づいてきた。

 

『このままでは、つかまってしまう。でも、まだエドを一人前にする仕事が終わっていないから、すぐに逃げられないし・・・。』

 

仕方なく、ヨット部のメンバーと視線を合わせないために、エドワードを見つめた。

そして、ヨット部のメンバーから逃れるために、こう言った。

「エド、私をセンターに連れて行って。シャンデリアの銀河の中心に。」

「はい、チアキさん。」

 エドワードは、満面に笑みをたたえて踊りながら、大広間の真ん中の方へチアキをリードしていった。

 

 大広間のセンターは、ダンス全体をリードするため、ダンス部の部長が踊るのが慣例である。今夜も、始めこそグリューエルに敬意を表して譲ったが、その後は部長カトリーヌ・クレソンのペアが踊っていた。

 そこへ、エドワードが踊りながら近づき、部長のカトリーヌに笑顔で会釈した。

 カトリーヌは、その笑顔にポッと顔を赤くして、思わずセンターを譲ってしまった。

 しかし、これからエドワードとチアキがセンターで踊ろうとしたその時、曲が終わってしまった。

 どうやらこれが最後の曲だったらしく、広間のあちこちから声がした。

「アンコール」

「あと一曲」

 楽団長がセンターに立つエドワードを見た。ダンスの進行を指図してもらうためだ。

「クリスタル・ワルツをお願いします。」

 エドワードは迷わず楽団長に言った。楽団長は笑顔で答え、楽団の方に向き直った。

 

 クリスタル・ワルツは、この時代のダンス音楽としては一番の人気曲だった。

 いつの時代も政治・経済の中心となる都市が、文化の中心になる。そして、その華やかな中心都市の雰囲気を写し取った音楽が生まれる。

 クリスタル・ワルツは、銀河帝国の帝都クリスタル・スターが繁栄する時代に、生まれるべくして生まれてきた名曲だった。

 そして、この曲は、舞踏会の最後を締めくくる定番の曲でもある。

 華麗なクリスタル・ワルツの曲が流れてきた。

 

「さあ、チアキさん、お手をどうぞ。」

 

 エドワードとチアキの二人は、見つめ合ったまま、ワルツのリズムに乗って、回転しながら踊っていった。

 それに合わせて、皆が踊り出し、ワルツの輪が広がっていく。

「エド、すごいじゃない。あなたがセンターのリーダーよ。大成功ね。

 それに、あなたの笑顔って素敵ね。ホントよ。」

 チアキは、ジュブナイルのお約束通りに、彼をほめ続けていた。

 

 その時、チアキの耳にまたリリイ達の声が聞こえてきた。

「やっぱり、チアキちゃん、ノリノリじゃない。」

「ノリノリだよねえ。」

それを聞いてチアキは、

『ノリノリじゃない!』

と、言い返したかったが、ぐっと我慢した。

「どうしたんですか、チアキさん?」

「いえ、なにも。ホホホ・・・」

 舞踏会の夜はふけていった。

 

 

 ダンスパーティの後、チアキに対する白凰女学院の女子高生達の反応は、彼女にとって全く予想外だった。

 そもそも、チアキとエドワードをお似合いのカップルだと思う生徒は全く無かった。そのことは、チアキもそう思っていないのだから、別に『問題』ではないのだが・・・。

 問題なのは、大多数の生徒達は、

『ジェニー先輩のワガママに振り回されて困っていたチアキを見かねて、エドワード・ドリトル様がダンスを踊ってあげた』

 と理解していたことだった。

 例えば、チアキは、ダンス部長カトリーヌ・クレソンから、次のように言われた。

 

「ジェニー先輩が、そのうち脱走するだろうとダンス部も予想していたのよ。

 だから脱走を確認したとき、直ちにジェニー先輩と踊る予定のお客様の相手をダンス部員がお勤めすることができたの。

 なせなら、そういう代役をお勤めしたことがご縁で、玉の輿に乗った先輩がいたというのが、ダンス部の伝説でね。

 みんな、待ち構えてたわけ。フフフ。

 それにしても、チアキちゃん、よかったねえ。

 『壁の花』で終わらず、エドワード様に踊って頂いて・・・・」

 

『アイツ、ほんとムカつく。

 ナニが壁の花よ。

 踊ってやったのは、ワタシの方なのに。』

 チアキは、ダンス部の部長カトリーヌだけでなく、そしてなぜか、エドワードに対しても怒っていた。

 

 

2-2 新奧浜市 高速道路上

 

 ダンスパーティから数日後。

「イヤッホー。風が気持ちイイねえ。飛ばすよーーー。」

 クーリエは、ミーサから借りたピンクのオープンカー型コミューター車のアクセルをめいっぱい踏んだ。

 車はぐんぐん加速してゆく。

 クーリエと百目の二人は、茉莉香の様子を偵察するため、白凰女学院に向かっている。 高速道路には他の車もいないため、ピンクのオープンカーは、制限速度を遙かに超えて走っていった。

「やめてくれ、傷つけたら俺の給料が・・・。」

「百目、ケチなこと言ってないで、アンタも、この風を楽しみなさいよ。

 ああ、気分爽快。たまには地上もいいわねえ。」

 外回りの格好をしたクーリエは、金髪を風になびかせて言った。

「そういえば、クーリエ、さっきから警告信号が鳴ってるぞ。減速、停車しろって。」

「おかしいわね。コミューターのコントロール・センターのコンピューターに弁天丸からアクセスして、この車は制限速度なしの緊急車だって教えておいてあげたんだけど。」

「おまえ、警察のコンピューターにハッキングしたのか。」

「そういう言い方、しないでよ。」

「どういう言い方しても同じだよ。早く減速しろよ。」

「どうせ、そのうちに減速するわよ。もうすぐ、インターチェンジを降りて、白凰女学院へ向かうから。」

 

 インターチェンジを降りた途端、車内の二人は激しい衝撃を感じた。

 車が、急停車したのだ。

「ああ、事故っちゃった。ああ、俺の給料が・・・。」

 百目は目をつぶって、天を仰いだ。

「百目、違うわよ。周りを見なさいよ。」

 

 周りから数人の迷彩服を来た者が音もなく近づき、二人に銃口を突きつけた。

 その中の隊長風の男が言った。

「このピンクのスポーツカーが、消防自動車ですってかあ?

 お嬢、やってくれるじゃねえか。でも、お前が運転してなかったら、射ってたよ。

 オイラ、美人さんは大切にするんだ。感謝して欲しいね。」

「さあ、チョット来い、車を降りろ。」

 いかにもガラの悪そうな連中が、軍用の高性能ビームガンを百目の頭に突きつけた。

「あのー、皆様方は警察の方ではないんでしょうねえ。まさか、強盗さんとか・・・。」

 百目が、遠慮がちに言った。

「ハハハ。もしそうならお前さんの命は、今頃もう無いゾー。・・・。」

 

 その時、そばにいたガラの悪い兵隊風の男が通信を受けた。

「ボス、セレニティのキャサリンから連絡です。

 そいつらは弁天丸のクルーだそうです。」

「ほう、キャプテン茉莉香の手下か。

 オイラ、美人さんの言うことは信じるんだ。じゃ、問題は無いな。」

 迷彩服の男達は、銃を下げた。そして、離れ際に言った。

「言っとくが、この車は、こっちの用が済むまで動かないぜ。コミューターの管理者権限で強制停車中だ。

 あと、電子機器も動かすな。レーダー照射を感知されると無警告で狙撃の的になるぞ。

 今から30分くらいの間は、おとなしくしてろ・・・」

 

 本当かどうかは分からないが、狙撃手まで配置して警戒していると通告されたため、二人はその場で停車せざるを得なかった。

 

 十数分後、数台の車が反対車線を通って、白凰女学園のある方向から新奥浜空港の方に向かって走ってきた。

 こんな大げさな警備をさせるVIPとは誰なのか。百目は、車に乗っている人物を見極めるため、軍用光学補正眼鏡をつけた。

「こいつは、照準用レーダーじゃないからな。これをつけると車の中の人物まで、自分の目ではっきり見える。やっぱり最後は、生身の体を使うのが、一番確実さ。」

 その結果、まず最初の車には、ヨット部のメンバーが車に乗っている姿を見つけ、さらにその次の黒塗りの車にグリューエルとグリュンヒルデが乗っていることを確認した。

 警備対象はこの王女たちかと思った瞬間、次の黒い車に乗る茉莉香ともう一人の女が目に入った。

 

「ああ、クオーツ・クリスティア!

 あの女海賊が船長やヨット部の部員達と一緒にいるぞ!」

「どうして? まさか」

「あいつも、海賊教師になってるの?」

 

2-3 海明星 中継ステーション

 

 そのころ、海明星の衛星軌道にある中継ステーションでは、二組の男女が広場のベンチに並んで座っていた。

「本当に久しぶりだねえ。」

 ジョージ・ステープルが、もう一人の紳士に懐かしそうな笑顔を向けた。

「済まないねえ。わざわざ出国手続きをして、出国エリアまで来てもらって。

 でも、私たちが入国拒否されるとは予想外の厳しさだったねえ。せっかく定期便に乗って、目立たないように静かに来たのに。」

「こんなことになるとは、私も予想外だよ。」

「まあ、何はともあれ、会えてよかったわ。ミーシャ」

「私もうれしい。もう会えないかと諦めていたのに。

 姉さん。」

 そこで、もう一人の紳士が言った。

「ところで、ああ、本当に済まないけど、私たちのせいで、この会話は、監視され録画録音されているから、そのつもりで話してくれ。

 それから、ここに居られるのも、あと一時間くらいかな。

 次に出発するオリオン星系方面行きの定期便に乗って、たう星系をすぐに出ろと当局に言われているからね。」

「それでは、まず私から、これを渡しておこう。

 君たち二人の宇宙大学の卒業証書と卒業式用の角帽とマントだよ。

 それに、卒業パーティで友達みんなから君たちへのメッセージを録画した立体映像記憶チップ。これを君たちに渡してくれって、私たちに託されたんだよ。

 卒業式の一週間前のあの日以来30年、やっと再会できた。

 そして、やっと君たちに渡せるよ。

 チップは、当時のままだから旧式だけど、何とか再生できるだろう。あとで見てくれ。」

ジョージ・ステープルが、それらの品物をもう一人の紳士に渡した。

 

「私からは、近況報告。

 この間ねえ、卒業記念というにはチョット早いけど、特別にうちの家で、サーシャの通う白凰女学院高等部のダンスパーティーがあったの。

 その時の映像をお見せするわ。」

 

ミーシャ・ステープル夫人の手の上で、ダンスパーティの立体映像が再生された。

まず最初に、白く、それでいて縁のレースが虹のように輝くドレスを着たサーシャの姿が、大きく映し出された。

 皆がその美しさを誉めている声が聞こえる。

 天使の輪も輝く美しい金髪を揺らし、碧眼の瞳を輝かせて、微笑しているサーシャの立体映像が、全身を回転させながら映し出された。

 

 次に、ステープル邸の大広間で、ステープル親子三人が並んで次々と大勢の来客に挨拶をしている映像が写し出された。

 遠景からでもひときわ美貌の目立つサーシャが、ミーシャから紹介された来客の男性達に作法通りの正式な挨拶をして、笑顔を振りまいている姿が映し出された。

 それを見守るミーシャ夫人の笑顔も映し出された。

 まるでサーシャの社交界デビューのような華やかなパーティの雰囲気が伝わってくる。

 

 三番目は、一転して燕尾服を着たサーシャの立体映像が大きく映し出された。

 「恥ずかしいから、撮らないで」と言って、少しすねた表情をしている。

 

 続いて、ダンスパーティの映像。茉莉香とグリューエルを先頭に大広間に生徒達が入場していく映像が続く。そして、輝く銀河のシャンデリアの下で、皆がワルツを踊ってゆく。サーシャのペアが踊る姿も映し出された。

「ハハハ、サーシャはダンスの男役じゃないか。それで燕尾服を着ていたのか、ハハハ・・・」

 もう一人の紳士が吹き出した。目に涙を溜めて笑っている・・・。

 

 最後に、パーティ終了後に、宇宙ヨット部のみんなで記念写真を撮ろうと呼びかけて、集まっている映像が映し出された。

 クリス先生、グリューエル姫、グリュンヒルデ姫を中心に、サーシャ、茉莉香、チアキ達が並んでいる。来賓の男性達も並んで、一緒に写真を撮ろうとしている。

 しかし女の子達は、みな、パーティの興奮が収まらず、おしゃべりが止まらない。

 しかも、ウルスラが、

「小話その1。

 『明日からステイプル家の屋敷の周りに塀を作る工事が始まるんだってね。』

 『へえーー。』

 小話その2・・・  」

 などと、おかしい小話を連発して笑わせ、なかなか皆のポーズが決まらない。

 

「たのしそうねえ。

 それに、サーシャは、本当に美しくなったねえ。

 これでステープル家の娘として大人の仲間入りね。お姫様達にもお近づきになれたようだし。あの子の夢もかなったようね。

 おめでとう。

 それにしてもパーティの出席者の華やかなこと、まるで銀河帝国の離宮みたいね。」

「本当に、こんなパーティが自宅で開けるなんて、ステープル家にとっても名誉なことです。」

「ミーシャも、本当に幸せそうで、私もうれしいわ。」

「それもこれも、みんな姉さんのおかげです。私がこんな幸せな日を迎えられるなんて。」

 二人の女性は並んで座って、目立たないように手を握り合っていた。

「この映像も持って行ってください。」

「いいえ。これで十分。サーシャや貴方に迷惑がかかるといけないから。」

 

「では、そろそろ時間だ。」

 もう一人の紳士が、立ち上がった。そしてジョージ・ステープルと握手をした。

「君たちの変わらない友情に本当に感謝するよ。会えてよかったよ。」

「私も会えてよかった。」

 二人の女性は立ち上がって、何も言わずに手を握って、そして離れた。

 そして、二組の男女は中継ステーションの人混みの中に分かれて、消えていった。

 

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