宇宙海賊キャプテン茉莉香 -銀河帝国編- 作:gonzakato
翌日、茉莉香は引っ越しの荷物を、弁天丸に乗せます。
弁天丸では、シュニッツアーから、茉莉香の腕を見込んで、帝国から、設計中の新しい弁天丸に、いろいろな新装備の試作品を乗せて、テストして欲しいという依頼が来ていると言う話を聞きます。
そして、ミーサとシュニッツアーは、新しい弁天丸のクルー選びは、今のクルーに気を遣うことなく、船長である茉莉香のこれからの人生にとって、ベストの選択をするよう、アドバイスします。そのためなら、自分達は身を引く用意があることをわざわざ言ったのです。
そして、茉莉香は、女子高生最後の海賊営業のため、お得意様のプリンセス・アプリコット号に海賊します。
いよいよ、高校卒業、そして帝都への出港の時が近づき、茉莉香の周りの人々も動き出し、弁天丸の進む道も見えてきます。
25-1 加藤茉莉香邸(新奥浜市・海明星)
ピンポーン、ピンポーン。
白鳳女学院高等部の卒業式まで、あと三日と迫った3月のある日の夕方、加藤茉莉香邸の玄関ドアホンが鳴った。
帰宅して、ようやく一息ついた茉莉香は、玄関の応対に出た警備隊員から来客の名前を告げられた。
「加藤梨理香さまです。」
『ええ!? お母さん! 今ごろ、どうしてこの星に戻ってきたの?』
茉莉香はつぶやいた。
すぐに、リビングルームに加藤梨理香が現れた。
「いよ~~。茉莉香、久しぶりだね。」
「お母さん、久しぶり。いったい、どうしたの?」
「それはごあいさつだねえ。
三日後は、お前も、いよいよ高校卒業だろう。
だから、お前の卒業式に出席しようと思って、やって来たんじゃないか。」
「ええ!? ありがとう。うれしいよ。
あんなに遠いところから来てくれるとは、思っていなかったもの。
この前の電話で話したのが、最後になるかと思ってたんだ。」
「ごあいさつだねえ。何が『最後』だよ。私がもう死んでるようなことを言わないで欲しいね。」
「でも、どうやって帰ってきたの?」
「ミルキーウエイのおかげさ。
M-9801(星団)からヒガン(星団)まで行けば、あとはミルキーウエイを通って、ビュンと飛んできたよ。
だから、卒業式に、なんとか間に合ったわけだよ。」
「そうだね。あれを使えば早いものね。
それで、パラべラム号に乗って来たの?」
「いいや。あのロクデナシの船なんか、乗るもんかい。
ブルック星系に寄って、あそこの王子さんたちの船に同乗させてもらったんだよ。」
梨理香は相変わらず元気そうだったが、無理に元気よく装っているようにも見えた。
「エエッ! それは、どういう訳なの。お母さん、急に海明星に戻ってくるなんて。
私の卒業式以外に、なにか理由があったんじゃないの?」
茉莉香は、少し茶目っ気のある笑顔を作って、母に聞いてみた。
しかし、梨理香は、茉莉香の質問に答えず、家の中を見回して、独り言のようにつぶやいた。
「この家も、すこし留守にしている間に、警備の軍人さんたちが住みこんだりして、様子が変わっているねぇ。
やっぱり、お前の家になっているんだねぇ。」
「いやぁ、私は、高校の卒業式が済んだら、女子大のある帝都の方に引っ越すので、そしたら、元の静かな家に戻ると思うんだけど。」
「そうなんだよなぁ。
私が戻ってきても、茉莉香はすぐに出て行ってしまうんだよなぁ。」
梨理香は、少し寂しそうな声で答えた。
「でも、お母さんも、私の卒業式が終わったら、M-9801星団に戻るんでしょう?」
「いや、しばらく、ここに居ようかなと思ってるけど・・・。」
「あれ? お母さん、パラべラム号のクルーを辞めたの?」
茉莉香は、また作り笑いをしながら、母に聞いた。
「いや~~。辞めてないけど、正式には・・・・。」
茉莉香は、母が無理に平静を装っているのを見逃さなかった。
「やっぱり、何かあったんだね。
さては、おと・・いや『鉄の髭』さんとか、ケンカでもしたのかなぁ。」
茉莉香はカマをかけてみた。
「別にケンカなんかしてないよ。
私は、あのロクデナシとなんか、何の関係もないし、何とも思っちゃいないからね・・・。」
梨理香は、口では何ともないと言っているが、茉莉香の言葉に動揺していることは隠しようがなかった。
茉莉香は母のこんな一面を見て驚くとともに、攻め方を変えた。
茉莉香は、ヨット部の友人たちが自分を質問攻めにして追い詰めるやり方を真似て、何気ない話題に切り替えた。
「ふーん。それで、M-9801星団の開拓はうまくいってたの? 何か、問題が起きたの?」
「開拓そのものは、順調だよ。
ただ、人手不足でねえ。これからも大変だ。
そこで、あらかじめ、マンチュリアのアルファ4、つまりニュー・アトランティスに潜入したついでに、行き場の無かったクーロン人間の子達を、これ幸いと大勢乗せて行ったんだ。」
「お母さん、クローン人間の子たちは、美男美女で気立てのいい子ばかりなんだってね。だから、旧宇宙マフィアの人たちは、あの子たちを自分たちのパートナーにしてきたそうだね。」
「へぇ~~、お前、そういう船乗りの『大人の事情』を分かるようになったんだねえ。」
「遠征の時に、いろいろヒガンの話を教えてもらったからね。」
「そこまで知ってるなら、大人の話を言おうか。
その通りさ、ここへ来る途中にもその噂でもちきりさ。」
「へえ~~。どういう噂なの?」
「帝国軍のニユー・アトランティス駐留部隊の話さ。
まず真っ先に、海賊たちにも名前の知られた古参軍人で、『アイツだけは絶対に結婚できない』なんて言われていた奴らが、男も女も、クローン人間の子たちと次々と結婚したそうだ。
しかも、顔なじみの海賊たちにツーショットのニヤケた写真をメールで送りつけてきて、結婚祝いをよこせと言いやがったそうだ。
海賊たちは、酒場でその写真を見ながら、みんなで、大笑い、大騒ぎさ。」
「ナハハ・・・・。やっぱり本人は結婚してうれしいんだ。」
「それに影響されて、駐留部隊の若い兵士らも、クローン人間の子たちを自分の嫁や婿に するって、次々に言い出して、あちこちで大騒ぎらしいよ。
例えば、恋人として故郷に連れて帰るために軍艦に密航させた奴がいたとか、
あそこは公式にはまだ戦場にもかかわらず、突然ハネムーン休暇届を送りつけてきて仕事を長い間、休む奴がいたとか、
夫婦として住む部屋にすると言って、兵舎で同居する同僚兵士を強引に追い出してしまう奴がいたとか、
帝国軍を辞めてニュー・アトランティスに残って結婚すると言って、突然出て行った奴がいたとか・・・。
いろいろ自分たちの勝手な都合を言い出して、人事担当の士官を困らせているそうだ。
とにかく、遠征に参加した兵士たちの間では、結婚ブームらしいよ。」
「ナハハハ・・・
へえ~~。そうなの。
じゃあ、パラべラム号も結婚ブームなんだね。」
茉莉香は、本題に切り込んだ。
「まあ、若い奴はなあ、くっついちゃうヤツも出てくるだろうねえ。」
「へえ、それじゃあ、鉄の髭さんもモテるんじゃないの。船長だし・・・。」
茉莉香は核心に触れる質問をしてみた。
「へっ! あんなヤツ、クソくらえだよ。
かわいい女の子たちに囲まれて、『船長、船長』とか言われて、すっかり鼻の下伸ばして、ニヤついてやがるんだよ。
まったく、あのロクデナシは、やっぱりロクデナシなんだよ・・・。」
「まさか、浮気とか、ヤバイ展開になったの・・・?」
茉莉香がそう言うと、梨理香はいきなり、壁に向かって右手を銃の形に組んで、言った。
「バキューン!」
「そういうことなら、話が早いんだけどなあ。
あのロクデナシなんか、一発ぶっ放して、風穴開けてやるよ。」
「ナハハハ・・・」
茉莉香は、母の「女」としての激情を見て驚くとともに、それだけ今も彼に惚れていることが分かって、子供として、少しうれしかった。
「まあ、そんな甲斐性のあるロクデナシじゃないことは、確かだね。」
「ナハハハ・・・」
茉莉香は、苦笑いするしかなかった。
「それって、お母さん。『ヤキモチ』と言うんじゃないのかなあ・・・。」
「なんてこと言うんだい。茉莉香。
それじゃ、全部、私が悪いみたいじゃないか!
悪いのは、あのロクデナシだよ。」
「じゃあ、許してあげなよ。気が済んだところで・・・。」
「何を言うんだい。茉莉香。
私は別に怒ってなんかいないし、許すも許さないも・・・。」
「ナハハハ・・・・」
ここまで聞くと、茉莉香は、『夫婦ゲンカは、犬も食わない』という古代の格言を思い出して、これ以上この話をするのをやめようと思った。
「・・・ところで、お前、帝都ではどこに住むのか、決めたのかい?」
梨理香が話題を変えた。
「うん、決まっているよ。
警備のことも考えて、帝国軍の基地の中にある、士官用の単身寮に住むことにした。」
「一人暮らしかい?」
「そうだけど。なにか。」
「いやあ、ひょっとすると、王宮とか、モーガン家の御屋敷に住むのかなぁ、と思ってたものでね。」
「確かに、チアキちゃんや、モーガン家の人たちからは、そうしてほしいと勧められたんだけどねえ。
でも、そうすると、自分の進路を決めたと誤解させたり、期待させたりするかもしれないでしょう。
だから、丁重にお断りしたよ。」
「そうかい。お前らしい、けじめだね。」
その晩は、加藤梨理香、茉莉香の親子は、これまでのお礼を兼ねて、警備隊の女性たちと楽しく食事をした。
25-2 弁天丸(海明星衛星軌道上)
次の日、つまり白鳳女学院高等部の卒業式の前々日、加藤茉莉香は、朝から忙しかった。
まず、朝早くから、引越し荷物をまとめ、午前中にそれを衛星軌道上にある弁天丸へ運び込んだ。
「ふう~~。これで、引越しのメドがついたかな。
あと、残ったのは手荷物だけだから、ひと安心だね。
・・・・
でも、なにか、あっけないなあ。
故郷を出るって、もっとドラマティックな事件だと思っていたんだけどなぁ~。」
茉莉香は、弁天丸のブリッジで、ひとり言のようにつぶやいた。
その時、ミーサが近づいてきた。
「茉莉香、おつかれさま。いよいよ『出航』が近いわね。
それで、忙しいところに悪いんだけど、新しい船のことで、シュニッツアーが船長に話したいことがあるそうよ。」
「ええ!? 新しい船のことで?」
「そうよ。新しい船のことで、なにか、帝国軍から秘密の依頼が来ているそうよ。」
「へえ~~~。なんだろう。
あれ? シュニッツアーはどこにいるの?」
「もうすぐ、資料をまとめて、こちらへ来ると思うわよ。
船長室で聞いたらどうかしら。」
「船長室? その方が良いの?」
その後、茉莉香は、ミーサと一緒に船長室でシュニッツアーの説明を聞いた。
「船長。帝国から難しい依頼が来ている。
どう対応したらよいか分からず、私も船長に意見をどう言おうか迷うくらいだ。」
「そんなに大変なことなの?」
「ああ、これを受ければ、弁天丸自身がまったく違う船になってしまうかもしれない。」
「ええ? どんな依頼なの?」
「帝国からの依頼は、簡単に言うと、重力制御推進航法に通じた船長の腕を見込んで、新しい弁天丸に、開発中の様々な最新鋭装備を搭載させてくれないか、ということだ。」
「最新鋭装備!? なんか面白そうじゃない。」
「簡単に言わないでよ、茉莉香。
それって、結構、危険な話じゃないの?」
ミーサが言った。
「そうだ。帝国軍の奴らですら、
『弁天丸のクルーほどの腕があれば、新装備のテストなんか、簡単、簡単。大丈夫ですよ。』
なんて、見え透いたオベンチャラを言うくらいに、ヤバイ話だ。
だから、ミーサの心配はもっともだ。
もちろん、新装備の開発に協力するのだから、弁天丸の運航費用は払うといっているし、開発や試験担当のスタッフも帝国軍から派遣するので乗船させてほしいと言っている。」
「それで、帝国軍は、どんな最新鋭装備を載せたいって言ってるの?」
茉莉香が興味津々で聞いた。
「動力系は、複数の重力波発生装置が付いた新型エンジンの試作機を載せたいと言っている。
武装系は、そのエンジンの生み出す重力波を使った武器の試作品だ。例の重力波ビーム砲もあるが、物体を他の空間へ吹き飛ばす重力波砲の最新型の試作品もあるそうだ。
センサー系は、今の時空ナビをさらに超える、画期的なものを入れたいと言っている。 空間の位置、歪みや運動ベクトルだけでなく、時間の流れの速さを図るセンサーの試作品を極秘に開発したらしい。
新装備では、実は、これが一番の目玉だと言っている。
こいつを使って、時空トンネルの新しい使い方を実験、開発してほしいと言っているんだが・・・。
あとは、亜空間での戦闘能力を持つ小型の艦載機とか・・・・。」
「なに、それ!
これじゃあ、新しい弁天丸全体が、新しい装備の実験場になってしまうじゃないの。」
ミーサが言った。
「そんなに新しい機械ばかり詰め込んで、宇宙船としてのバランスが壊れないの?
エンジンのパワーとか、エネルギーの消費量とか、居住性とか、いろいろ考えなきゃいけないことが、あるんでしょ。」
茉莉香が聞いた。
「その点は、ブラウン中尉が大丈夫と言っている。
むしろ、無理な改造を重ねてきた、今の弁天丸の方が、よほどバランスが悪いと言っている。」
「ブラウンさんって、時空トンネル切断の実験に付き合ってくれた技術士官の人ね。
まあ、あの人が言うのなら、大丈夫かなぁ。」
茉莉香が言った。
「ウルスラちゃんの婚約者と言った方が、茉莉香には分かり易いかも・・・。」
ミーサが微笑んだ。
「ナハハハ・・・」
「ブラウンだけでなく、ギルバート・モーガンをチーフとする帝国軍のエンジニアチームが、ステープル重工業が作った設計図を見直しているから、その点は任せておいて、大丈夫だろう。」
「へえ、ギルバートさんが手伝ってくれているんだ。」
茉莉香は、目を見張った。
「彼だけじゃなく、この前の演習で船長とチームを組んだエンジニアたちが、大勢参加して、毎日楽しそうにやっているそうだ。」
「ナハハハ・・・。あの人たちかぁ・・・あの演習、楽しかったなぁ。」
「それに、新しい弁天丸は、長さが今の1.5倍、体積なら約3倍もあるので、これだけの新装備を積んでも、船体の機関部に楽々収まるはずだ。」
「そうだったね。
船体の形、デザインや色彩が今までの弁天丸と同じと言っても、ずいぶん大きくなるんだったね。」
茉莉香は、新しい弁天丸の設計図を見ながら、つぶやいた。
「それで、こういう船にしても、海賊営業を続けるうえでは、問題は無いの?
私、海賊はやめないよ。」
茉莉香が念を押した。
「私は、問題ないと思う。船長が船に居てくれさえすれば、ね。」
シュニッツアーが、この頃、茉莉香が船を空ける時が多いことへの皮肉を言った。
「ナハハハ・・・。
でも、ひとつ、引っかかるなあ。
こんな船って、完成すればグランドクロス以上の巨力な新兵器でしょ?
なぜ、いまどき、帝国軍の人たちは、こんな船が必要だと思うのかしら?」
「船長。軍人って『人種』はいつも新兵器の開発をやりたがるものでしょう。」
ミーサが言った。
「でも、宇宙マフィアとの和平も実現して、いっそう平和になったでしょう。
だから、帝国軍の人たちを、ミルキーウエイの実施要員に振り替えることで、『民間経済を発展させるインフラ整備と事実上の軍縮』の一石二鳥を狙うと言うのが、宰相さんのお考えだと聞いているのよね。
そういう方向性とは、明らかに違うよねえ。」
「なるほどねえ。
でも、茉莉香。そんな帝国の極秘情報を良く知っているわねえ。」
ミーサが言った。
「エヘヘ・・・。宰相さんとも最近、仲良くなってねえ。いろいろ私に教えてくれるんだ。」
「茉莉香、あなた、すごいわねえ。
あの、腹黒いタヌキオヤジと評判のリシュリュー閣下にも、気に入られたわけね。
フフフ・・・」
ミーサが微笑んだ。
「本題に戻ると、
私は、たぶん、未知の宇宙(うみ)への不安とか恐怖が、開発の動機だと思う。」
シュニッツアーが言った。
「それって、アンドロメダ銀河への大航海のことを言っているの?」
「そうだ。未知の宇宙(うみ)。未知の生物。未知の文明・・・。
何が起こるか、まったく予測できないから、不安を押さえるために何かしようとするのだろう・・・。
だから、この試験の結果を基に、大航海に乗り出す船の標準設計案を作るつもりだろう。」
「そうなのかぁ。
じゃあ、みんなの気持ちを少しでも明るくするために、弁天丸が、がんばりましょう。
この話、受けるって返事して。」
「決断、速いわねえ。」
「私のトリエだもの。」
「じゃあ、続いて、新しい船の居住区の設計をどうするかという、相談なんだけど。
今の弁天丸じゃ、そこが一番貧弱だったのよねえ。何せ、昔の船だったからね。」
ミーサが言った。
「そうだね。一般船員は、四人部屋が普通なんだものね。」
「でも、新しい船は広いから、船乗りが家族で暮らす居住スペースをたくさん設けることもできるのよ。
これは、新しい弁天丸での船乗りの暮らしをどんなふうに考えるかと言うことね。
まずは、シュニッツアー、船室プランの二案を、船長にみせて頂戴。」
「わかった。」
シュニッツアーは、船乗りが家族で暮らす区画をたくさん設ける船員室のプランと、今のような単身者主体のコンパクトな船員室と広い共用スペースを持ったプランを説明した。
「なるほど、どちらも面白いねえ。
でも、この話については、私の気持ちはもう決まっているんだ。
家族の居住区画をできるだけたくさん設ける案でいきましょう。
私ねえ、自分の子供の頃を振り返って思ったんだ。それに、チアキちゃんだけでなく、サーシャやウルスラから、宇宙船で生まれ育ったあのコたちの子供の頃の話を聞いて、やっぱりそうだって思ったんだ。つまりねぇ、・・・・
船乗りも家族を持つべきだし、
家族は一緒に暮らすべきだと思うのよね。」
「これも、決断は速いのね。ふーん。
じゃあ、船長のお相手を誰にするか、もう心の中では決まっているのかしら。」
ミーサが微笑んで、言った。
「いえいえ、そんな。
高校生の私には、そんなこと、決められませんよ。まだ、まだです。」
茉莉香は、顔を赤くし、両手を強く振って、答えた。
これに対して、ミーサは真剣な表情で言った。
「船長。この際だから、ハッキリ言っておくけど、新しい弁天丸のクルー選びをするときに、今までのクルーに気を使う必要はないわよ。
あなたの船乗りとしての人生にとって、ベストな選択をしなさい。」
「ミーサの言うとおりだ。船長。
みんな、一流の船乗りだから、弁天丸以外でも、乗って欲しいと言われる船はいくらでもある。後のことなど、心配無用だ。」
シュニッツアーも言った。
「・・・・うん。よく考えるよ。
ありがとう。」
茉莉香も、その表情から、ミーサとシュニッツアーがわざわざこんなこと言って、念を押した意味は分かっているようだった。
いや、むしろミーサとシュニッツアーは、茉莉香にこれを言うために、三人だけで新しい船の話をしたのかもしれなかった。
「それに、私だって、いろいろ道はあるのよ。
この際だから、梨理香みたいに地上に降りて、貴方みたいに可愛い女の子でも産もうかしら・・・。
そういう道も、面白いでしょ・・・。フフフ・・・」
「え・・・!?」
茉莉香は、ミーサの言葉に絶句した。
その時、クーリエから、艦内電話を通じて連絡があった。
「船長。そろそろ、お客さんが待つ宇宙空間へ到着するわよ。
海賊営業の準備、よろしく。」
「了解。」
茉莉香は船長服に着替えて、元気よく、ブリッジへ向かった。
「今晩が最後の『女子高生海賊』よ。
弁天丸、いきましょう。
さぁ、海賊の時間だぁ!」
この夜、弁天丸は一晩に二つの船で海賊営業を行う予定だった。加藤茉莉香の女子高生海賊としての最後の営業をぜひ見たいと言うお客さんが多かったからだ。
25-3 大宴会場(豪華客船プリンセス・アプリコット号)
この夜、弁天丸は、クイーン・エメラルダス号での海賊行為を終えて、さらに、プリンセス・アプリコット号に向かった。普段ならお断りする無理なスケジュールだったが、このお得意さんからの依頼は、茉莉香も断れなかったからだ。
いつもなら、ショービジネスとしての海賊の襲撃は、予告なしに突然に始まる。
しかし、今夜は違った。
そもそも、旅行社が、プリンセス・アプリコット号の航海クルーズ募集時から、『航海中の3月某日、女子高生海賊・キャプテン茉莉香、最後の海賊営業!』をうたい文句にしていたからだ。
船の大宴会場に集うお客さんたちには、夜が更けるとともに、しだいに期待と興奮が高まってきた。
突然、ライトが消えた。
「キヤー」
「ウワー」
黄色い悲鳴がして、興奮がさらに高まる。
やがて、闇に隠れて、数人の人影が大広間に入り、宴会場の正面扉の前に整列した。
そして、中央の人影にスポットライトが集中する。
もちろんスポットライトの中心に立つのは、茉莉香であった。
「お待たせしました。宇宙海賊船、弁天丸船長、加藤茉莉香です。
海賊しに来ました。」
「キャー、茉莉香様!」
「待ってました。」
大広間には、歓声が飛び交う。
茉莉香が海賊の名乗りを上げると同時に、左右に並んだ弁天丸のクルーたちにもスポットライトが当てられていく。
ぼろぼろの船員服に、派手な色のバンダナ、手に手に大きく輝く蛮刀や古式ライフルを持った船員たち、片手・片目のおとぎ話に出てくる海賊のような姿に扮装した船員、腰に二丁拳銃をぶら下げた女海賊・・・。みな、それぞれに古代からの海賊というイメージを大事にした、いつもの格好である。もちろん、今日は、メタルボディーのシュニッツアーもいるし、露出度の多いいつもの海賊服を着たミーサもいる。
それぞれに歓声があがり、興奮が増してゆく。
海賊たちは、茉莉香を先頭に大広間に進み出た。
そして、いきなり、船員たちが船の天井めがけて、ビーム・ガンを発射した。
「ひやーー!」
悲鳴とそして歓声があがる。
「いまのは、もちろん威嚇です。船の安全には支障はありません。」
加藤茉莉香は、大広間のスポットライトを浴びながら言った。
「では、いつもの注意ですから、よく聞いてください。
我々の指示に従って頂く限り、皆さんの安全は保障いたします。おとなしくこちらの言うことを聞いていただければ、無事な身体と宇宙海賊キャプテン茉莉香の女子高生としての最後の日に襲われたという、本当に珍しい自慢話を持っておかえりになれます。
さあ、命が惜しければ、金品財宝、よこしなさい。
さあ、さあ・・・。」
ここまで、いつの通りの進行だった。この後、事前に潜入した船員のサブローと組んだ剣劇ショーに入るはずだった。
しかし、茉莉香の前に、一人の青年が乱入してきた。
「待った、待った、このオンナ白波。お前は誰だ。
本当にキャプテン茉莉香なのか。
もし、本物のキャプテン茉莉香なら、由緒正しい名乗りを上げてみろ。」
「困ったわねえ。命知らずの人ねえ、後で命乞いしたって知らないわよ。
でも、良いわ。今日は大サービス。
聞かせてあげましょう、女白波、キャプテン茉莉香の名乗りを。」
『この人、どこかで見た顔だ』と思いながら、茉莉香は前に進み出て、右手を青年の方に出しながら、語り始めた。
「知らざぁ、言ってきかせましょう。
浜の真砂とゴンザエモン、歌に残せし海賊の、
種は尽きねえ新奥浜、その白波の一粒種、
生まれた家は母一人、海の明け星世を忍び、
定めの星を知らされず、お嬢様よと育てられ、
それでもヨットで星の宇宙(うみ)、出たいと願う船乗りの、
血は争えぬ十六歳、急な知らせで親の跡、
百年続くこの家業、女子高生で受け継いで、
腕に覚えの乗組員、お客様に支えられ、
辺境宇宙で大繁盛、船から船へ駆けまわり
ついに目出度く十八歳 女子高生の海賊も
今宵限りでついに見納め 」
茉莉香がここまで言うと、
「やめないで~!」という悲鳴や、
「続けろ!」という掛け声が上がり、
場内の興奮は一層高まった。
「皆様、ご安心を。
私、女子高を卒業しても、海賊、辞めません。
これからもよろしくお願いいたします。」
そう言って、茉莉香は口上を続けた。
「百年続くこの看板 途切れさせては名がすたる
この春からは女子大生 続いて演じる海賊の、
名せえゆかりの、弁天お嬢、
加藤茉莉香たぁ、このわたし~~~~。』
「いよ! 宇宙一」
「茉莉香様ぁ~~~!」
大きな拍手と共に、大歓声が上がった。
「どうやら、本物だね。
さあ、キャプテン茉莉香、勝負だ。
私が勝てば、手下の海賊たちは、さっさとお引き取り願おう。」
飛び入りの青年は、彼の近くに立っていた弁天丸のサブローから剣を取ると、茉莉香に向けて剣を構えた。
「どこのだれだか、知らないけど、ほんと、命知らずねえ。
さあ、来なさい。」
茉莉香が堂々と言った。
こういう時の茉莉香は、予定外の事態にも落ち着き払っていた。
むしろ、剣を構える茉莉香が、いっそう華やかに、輝きだしたように、お客様たちには、感じられた。
「ヤアーー!」
青年が切り込んできた。
カシーン、カシーン
剣と剣がぶつかり合う甲高い金属音がして、二人が剣をふるっている。
『この人、自分から飛び込んでくるだけあって、なかなか剣道がうまいわね。
男として、剣のパワーもある。
でも、私は負けない・・・。』
二人は、一方が技を繰り出し、他方がこれを受けとめるという展開で、激しい攻防を繰り返して、大宴会場のお客様を興奮させた。
「がんばれ、キャプテン茉莉香!」
「茉莉香様~~~!」
もちろん、お客様は、茉莉香を応援する声ばかりだ。
二人の勝負は、茉莉香が青年を壁際に追い詰める形で進んでいった。
そして、もう少しで茉莉香が青年を壁に追い詰めると言う時に、茉莉香の剣が青年の剣を払い飛ばして、青年は壁に崩れて座り込んだ。
「ワー、やった~~」
「キャプテン茉莉香の勝ちだ~~~!」
その後は、興奮した観客が茉莉香を取り囲んでしまい、ショーは自然に終わってしまった。
そこへ、プリンセス・アプリコット号のハーレー船長が現れた。
「みなさま。
ただいまから、船長主催のパーティを始めたいと存じます。
いま、シャンパンやソフト・ドリンクをお配りしますので、グラスをお取りください。
まず最初に、私たちみんなで、キャプテン茉莉香の高校卒業を祝って、乾杯いたしましょう。」
剣劇に興奮した乗客たちの気持ちを落ち着かせようというベテラン船長の知恵だろうか。たちまち、宴会場はいつものような和やかな雰囲気に包まれた。
「グラスは、行き渡りましたでしょうか。よろしいですか。
では、キャプテン茉莉香の高校卒業を祝って、乾杯!」
「乾杯!」
乗客たちが唱和した。
こうして、二人の船長を囲んで華やかなパーティーの始まりとなった。
茉莉香は、その後、お客さんたちと話したり、記念撮影を頼まれたり、プレゼントを受けたりして、夜遅くまで、プリンセス・アプリコット号に留まった。
その間にクルーは、弁天丸に引き上げて、船長の帰りを待っていた。
25-4 弁天丸船内
ようやく弁天丸のブリッジに戻った茉莉香は、言った。
「ああ~~~、疲れた。疲れた。
長い間、立ちっぱなしだったので、足が棒のよう。・・・」
「お疲れ様。船長。」
クーリエが言った。
「じゃあ、海明星へ帰るとしますか。
出航!」
「了解。」
弁天丸は、プリンセス・アプリコット号から離脱して、メインエンジンに点火した。
そして、全速で航行を始めた。
「そう言えば、あれぇ~~。ミーサはどうしたの?」
「茉莉香ちゃん、聞いてないの?
剣劇に出演したエキストラの人を、治療中よ。
あの人、船長の知り合いだって、聞いているわよ。」
「ええ~~~! 本当なの?」
茉莉香は、あわてて医務室へ向かった。
茉莉香が、まだプリンセス・アプリコット号でお客様のお相手をしている頃、弁天丸のクルーは、ミーサの指示で、茉莉香との剣劇で倒れた青年を弁天丸の医務室に運びこんだ。
クルーが医務室から出て行ったのを確かめてから、ミーサが青年に言った。
「もういいわよ。気絶したふりしなくても。」
「バレてました?」
「フフフ・・・。
でも、貴方の剣の腕前もなかなかのものだったわね。誉めてあげるわ。
茉莉香と真剣勝負で渡り合って、お客さんは、とても喜んでたわね。」
「お誉めにあずかって、光栄です。
剣道は、大学の下級生の頃に、結構やったんですよ。」
「でも、私が、あそこで消音ブラスターを撃ってあなたを痺れさせなかったら、その後、どうするつもりだったの。
あの雰囲気では、茉莉香を倒してしまう訳にはいかないでしょ。」
「そうなんですよ。まあ、何とかなると思って、飛び入りしたんですけどね。
やってみると、実は、どうやって終わろうかと困っていました。
もちろん、手加減してワザと負ければ、かえって茉莉香さんを怒らせるでしょうからね。」
「フフフ、アドリブって、結構難しいでしょ。」
「そうですね。想像以上に難しかったですね。
でも、なんとか、お客さんに喜んで頂けるように、茉莉香さんに負けることができたのも、先生のおかげですよ。
ありがとうございました。」
「ホホホ・・・でも、これを知ったら、茉莉香はなんというかしらねえ。
そういえば、茉莉香は、貴方だって気付いているのかしら。
その様子は無かったけど。」
「そうですねえ。気付いてないかもしれませんね。私も白衣を着ていたわけじゃないし。 それにしても、茉莉香さんは、なかなか船に戻ってきませんね。」
「そうね。まだ、お客さんに囲まれているのじゃないかしら。
今夜は記念興業だからねえ。」
「じゃあ、気長に待ちましょう。」
「そうね。それで、茉莉香に会ってどうだったの?」
「はい、予想以上に素敵な女の子で、本当にうれしかったです。
グランドウッド先生。今日の茉莉香さん、とても綺麗でしたねえ。
また会えて、うれしかったなあ。」
「それは、よかったわね。」
「はい。やっぱりテレビで見るのと違って、本物の方がはるかに美しくて、かつキュートですね。
健康診断で初めて会った時にも、思わず、見とれてしまって・・・・。」
「それで、採血に手間取ったのね。」
「恥ずかしい話です。
でもね、茉莉香さんの素敵なところは、容姿だけじゃないんですよ。・・・・」
「フフフ、茉莉香のことをずいぶん気に入っているみたいね・・・。」
こうして、ミーサは、茉莉香のことを熱く語り続けるホワイト医師の話を聞いていた。
やがて、医務室のドアをノックする音が聞こえた。
「茉莉香です。ミーサ、入って良い?」
「どうぞ、船長。」
茉莉香は、医務室に入ってくると、ベッドにいる青年の顔を見た。
「やっぱり、ホワイト先生でしたね。
どこかで、お会いしたような気がしてたのですが・・・。」
「アハハ、ついにわかってしまいましたね。」
「おケガは無いのですか?」
「大丈夫です、軽い打撲だけで、怪我はありませんでしたから。」
彼は、ミーサの放ったブラスターのことは言わなかった。
「そうですか。よかった
でも、どうして、あんな危ないことをされたのですか? 海賊の剣劇では、真剣を使いますよ。」
「実はね、こう見えても、私、剣道はけっこう得意なんですよ。」
「先生の腕前は、剣を打ち合って、わかりましたけど・・・。」
「認めて頂いて、ありがとうございます。
それで、ご質問に対するお答えですが、私が飛び入りした理由は、私も一度、弁天丸の海賊行為を経験してみたかったからなんですよ。」
「それって、あの~~、例のお話と関係があるのですか?」
「はい、そうです。そのことで、ダンスパーティの前に貴方とお話をする時間も頂きたかったんですけど・・・。」
そう言って、彼は、ベッドから離れ、立ち上がって一礼し、言った。
「加藤茉莉香さん、私も、改めて、名乗らせていただきます。
私は、アレクサンドル・ホワイトローズと申します。」
彼が、茉莉香を見つめて、静かに、自分が、銀河聖王家、白薔薇家の王子であることを示す本名を名乗るのを聞き届けて、ミーサが言った。
「茉莉香、私はちょっと席を外すから・・・。」
「ミーサ、ちょっと待って。話はすぐ済むから・・・。」
しかし、ミーサは茉莉香が止めるのにもかかわらず、部屋を出て行ってしまった。
「あああ・・・」
茉莉香は緊張し、困ったことになったという思いで、頭がいっぱいだった。
「加藤茉莉香さん、そんな困った顔をしないでください。
誤解のないように、最初に申し上げると、私も聖王家も、王室の権威や力によって、あなたに無理やり結婚を迫るようなつもりはありませんよ。
もっと言えば、もし仮に聖王家がそのつもりでも、私はそんなのは嫌です。」
「ええ? どういうことですか?」
「そんなことをしても、私にとって何の価値もないからです。私は、そういう性格です。」
「はあ~~~。」
茉莉香は、納得していないようだった。
「だって、あなた自身もそう思っているでしょう。
自分の人生、結婚は、自分の意志で決めたい、他人に押し付けられるのは嫌だと思っているでしょう。」
「それは、まあ、そうですが・・・・。」
「王族の私だって、同じ気持ちです。
私だって、自分の意志で王族の家に生まれた訳では、ないんですからね。」
「先生は、そう思われるかもしれませんが・・・・。」
茉莉香は、まだ納得していないようだった。
「しかし、自分の意志で王族の家に生まれた訳ではないにもかかわらず、王族として生まれると、いろんな制約が直ちに課されます。
例えば、自分の人生や結婚などが、自分で自由に決められないんです。
結婚のことで言えば、結婚相手を選ぶどころか、女の子に近づくことすら自由にできません。誤解させてはいけないと言われてますから。
これって、結構、理不尽だと、思いませんか。」
「ナハハ・・それはそうかもしれませんが・・・。
う~~~ん。
でも、そういえば、亡くなられたアンドレア公爵様も同じようなことを、おっしゃっていましたね。」
「それだけじゃないんですよ。
王族の人間は、王族以外の人々からも、特別扱いされるというか、仲間に入れてもらえないと言うか、同じに扱ってもらえないんです。
これって、結構、孤独感を味わうんですよ。」
「孤独感ですかぁ。」
「私は、医者の世界ならそういう事は少ないと思って、医者になったんです。
でも、ちょっと、見込み違いでした。」
「どうしてですか?」
「実は、今度、海明星で銀河宇宙医学会があり、そこで私が発表をするんです。
でも、実績のある大学教授や研究者を差し置いて、私が発表者に選ばれたのは、なぜだと思いますか。しかも、遠征に参加した大勢の医師や研究者と分担した『ヒガン回廊の星々の病理学的調査』の発表ですよ。
私、自分の業績がどの程度のものか、ちゃんと自分で分かっているつもりです。
だから、このこと一つみても、なにか、王族だから学会発表の業績を上げさせてやるという特別扱いというか、別枠に棚上げされているようで、悲しい気がするんですけどね。」
ここまで彼の話を聞いて、茉莉香は言った。
「先生も、そうなんですね。
もちろん私の場合とは比べられませんが、同じ仲間として扱ってもらえないという、先生のお気持ちは、よく分かります。
実は、私も、海賊の娘、それも女子高生を売り物にした海賊ショーをやる女ということで、船乗りの人たちから、キワモノ扱いというか、厳しい視線を向けられたことがありました。
帝国軍人になってからも、私を特別な目で見る人はいますし・・・。」
「そうですか。あなたも同じような経験をなさったことがあるんですね。
ありがとうございます。加藤茉莉香さん。
そう言っていただけるあなたは、やっぱり、私の思っていた通りの人ですね。」
「あ、気が付きませんでした。私、失礼していました。ゴメンなさい。
改めて、私も名乗ります。
弁天丸船長、加藤茉莉香です。茉莉香って、および下さい。」
「ありがとうございます。私のことも、アレックスと呼んでください。
では、茉莉香さん。
できれば、先生と呼ぶのも、避けて欲しいのですけど・・・。グランドウッド先生のことをミーサと呼んでいるように、私も扱ってほしいんですけど。
もちろん、敬語を使うのもやめて欲しいです。」
そう言って、アレックスは、嬉しそうに微笑んだ。
「わかりました。アレックス。」
「うれしいなあ。やっと、そう呼んでもらえましたね。
これで、初対面の挨拶がやっと済みましたね。」
「そ、そうですね。本当に失礼しました。」
茉莉香は、少し落ち着いた気分になった。
「それで、茉莉香さん。
私、貴方にお願いがあってきました。」
「え!? なんですか?」
茉莉香は、結婚の申し込みだと予想して、身構えた。
「あの~、茉莉香さん。
私を船医として弁天丸に乗せてもらえないでしょうか?
ぜひ、お願します。
弁天丸船長であるあなたは、王族だからって私を特別扱いしない、素晴らしい上司です。私は、茉莉香さんのもとで、船乗りとして働きたいのです。
あの話とは、関係ありません。必要なら、王族からも脱走します。
もちろん、海賊行為もしますよ。海賊としての名前も付けてください。
お願いします。
私を、船医として弁天丸に乗せてください。」
「ええぇ~~~!!!」
茉莉香は、大声を出して驚いた。
内容が膨らんできたので、最初に投稿した題を、見直しました。