宇宙海賊キャプテン茉莉香 -銀河帝国編- 作:gonzakato
その中で、新しい弁天丸のクルーになりたいと言って、茉莉香の回りに、人が集まってきます。帝国軍は、茉莉香の腕を見込んで、新装備の試験をさせて欲しいという依頼をしてきましたが、そのクルーとして10人の若者を送り込んできます。三年生のヨット部員からも、弁天丸に乗りたいという者が現れます。
そして、茉莉香は、卒業記念ダンスパーティに招待した五人の男性に、新しい弁天丸のこと、そして弁天丸船長としての自分の考えを説明します。
茉莉香は、自分の将来の姿について、自分なりの答えが次第に見えてきます。
26-1 加藤茉莉香邸(新奥浜市)
翌日、つまり白鳳女学院高等部の卒業式の前日の午前に、茉莉香は、海明星の自宅に戻った。
自宅に戻ってすぐに、茉莉香を、ギルバートが訪ねてきた。
「おはようございます。茉莉香さん。」
「おはようございます。ギルバートさん、海明星に到着されたんですね。」
「はい。今朝ほど、到着しました。
お聞きになっているかと思いますが、新しい弁天丸に乗る、帝国軍の技術スタッフの人事について、ご説明したいのですが。」
「わかりました。」
茉莉香は、ギルバートから、新しい弁天丸に乗り組むエンジニアのスタッフの人事について、ひとりひとり、説明を受けた。
メンバーは、若い軍人たち10人で構成されていた。チーフはもちろんギルバート・モーガンであった。
そのうち、ギルバートを含め、5人が茉莉香と帝国軍参謀本部で模擬戦を戦った『仲間』たちだった。さらに、ブラウン中尉が加わっている。この6人の男性の他、新しいスタッフには、女性が4人加わっていた。
「4人の若い女性たちも、みんな茉莉香さんのファンですよ。
この3人もエンジニアですが、みんな軍人ですから、射撃や剣道もうまいですよ。女海賊もできると言って、楽しみにしていました。」
「ナハハハ・・・。それはちょっと・・・。」
「それから、この4人目のこの女性ですが、茉莉香さん、見覚えがあるんじゃないですか。」
ギルバートが言った。
「あっ。ケイコだ、間違いないです。ケイコ・サトー。惑星ライセで友達になった子ですね。
しかし、帝国軍の方はこの子をメンバーに加えて良いのですか?
この子は、レオニーニ家の一族でしょう。」
「ええ、ヒガン共和国軍の推薦がありますし、本人が弁天丸に乗りたいと言っているようですから、その点は大丈夫でしょう。
私たちだけのナイショ話ですが、このコも海賊の娘ですし・・・。」
ギルバートがそういって笑い、茉莉香も微笑んだ。
「それに、私としては、彼女の経験を評価しています。
子供の頃から、旧宇宙マフィアの船に乗って、銀河系外延部の未開拓惑星の調査に同行していたそうなので、船乗りとしても経験豊富だそうですから。」
「なるほど、アンドロメダ航海には必要な人材ですね。
それにブラウン中尉も加わるのかぁ。ウルスラが何と言うのかなあ・・・フフフ。」
「それから、茉莉香さんの警備隊のメンバーも引き続いて乗船します。この家に住み込んで守ってくれたジェーンさんも加わっています。」
「楽しみですねえ。
ジェーンさんまで加わってくれて、みんなのお母さん役までいるんですね。」
「そうですね。人事はこれで船長の了解を得たと報告してよろしいでしょうか。」
「了解です。参謀本部にそう報告してください。
ギルバートさんも加わってくれるので、心強いです。」
「ありがとうございます。」
「それから、ギルバートさん、ちょっと、教えてください。
帝国軍の考えている時空トンネルの『新しい使い方』って、何ですか?」
茉莉香が聞いた。
「それなんですが、・・・
経緯から言うと、最近、時空トンネルを航行していた帝国軍の船が、不思議な事故に遭遇しまして、その事故の原因を探ろうと調査が進められました。
でも、その調査を進めるうちに、時空トンネルには別の使い方があるのではないか、この事故はそれを偶然に実行したのではないかという仮説が浮かび上がってきたのです。
そこで、その仮説を実証する実験ができないかと言うことなんです。」
そう言って、ギルバートは真剣な眼差しで茉莉香を見つめた。
「やっぱり、とても危険そうですね。」
「リスクはありますが、仮説通りの航海に成功すれば、宇宙航海の概念が変わるかもしれません。少なくとも、その入り口を開くことができるかもしれません。」
「ギルバートさんがそこまで言うなんて、すごい話になってきましたね。
それで、その事故と言うのは、どんなものだったのですか?」
茉莉香は、少し真顔になって、更に質問した。
「はい、その軍艦は、ミルキーウエイを利用せず、自力で時空トンネルを形成して、ある辺境惑星までロングジャンプをしました。
そして、タッチダウン後に、目的地の惑星の中継ステーションと連絡を取ろうとしたのですが、連絡が付きませんでした。
困惑しているうちに、コンピューターが警報を発しました。目的地と違うところに着いたと言うのです。タッチダウン地点の星座を観測したところ、目的地の星座とは一致しないというエラーがでていたのです。
しかし、目的地の惑星の外見はかなり特徴があるので、光学映像を経験のある船乗りが見れば、間違えるはずはないと思われました。
ますます困惑していたところに、コンピューターから、ここまで通ってきた時空トンネルを閉鎖して良いかという確認メッセージが出たので、不安を感じた船長は出発地に戻ろうと思い、時空トンネルの中に戻りました。
その結果、もとの出発地に無事に帰還しました。
こういう事故でした。」
「通信機とか、複数の機器が同時に故障していたのでしょうか?」
「茉莉香さんもそう思われますね。最初は、みんなそう思っていたのです。
しかし、調べてみると、故障はどこにもありませんでした。」
「でも、それと、時空トンネルの新しい使い方とどう結びつくのですか?」
「今のところ分かっている事故に関する情報から言いますと、
実は、その船は、時空トンネル航法の開発された初期の頃に建造された船でして、コンピュータープログラムも現在の船と違って、完全マニュアル制御方式でした。しかも、このプログラムは、いろいろと不具合を起こすと評判の悪いもので、近々アップデートの予定でした。
おまけに、航海士はこの船に初めて乗船して、初めてこのプログラムを操作した者でした。そのため、旧式のマニュアル制御方式に不慣れで、行き先の座標の入力などを間違ったためにこういう結果になったと考えられています。」
「まだ、おっしゃっていることの意味が、よく分かりません。
では、その船が実際に経験した事故は、どこが『不思議な』のですか?」
「さすが、茉莉香さんです。
そこが、問題を解くポイントなんです。
航海の記録を精査した結果、信じられないことが分かりました。
まず、目的地の惑星の光学映像は、99%以上の一致点があり、目的地の惑星で間違いありませんでした。船乗りのカンは、正しかったわけです。
そして、観測された目的地の星座ですが、コンピューターの星座シミュレーターで類似の星座を探したところ、なんと約1万5千年前の目的地の星座と一致しました。
それから、出発地と目的地の距離は、約1万5千光年、離れています。」
「そこからは、私に言わせてください。・・・」
ギルバートの話を茉莉香が遮った。興奮して、黙っていられなくなったのだ。
「航海士の入力した座標は、1万5千年前の目的地の座標、つまり出発地からの見かけ上の目的地の座標だったんでしょう?
だから、その船は、1万5千年前の時空に飛んだのではないかということですね。」
「その通りです、さすが、茉莉香船長。お見事です。
現在の最新のプログラムでは、見かけ上の座標でも、真の座標でも、どちらを入力しても、コンピューターが判別して、間違いなく飛んでくれますからね。こんなことは起きないはずなんです。」
「ということは、時間を超えた航海をするというのが、時空トンネルの新しい使い方ですか?
それじゃあ、弁天丸が、タイムマシンンになるのですか?」
茉莉香は、笑顔で言った。茉莉香は、未知の世界を経験できるという期待感で胸がいっぱいだった。
「ハハハ・・・。茉莉香さんなら、そう言って目を輝かせると思っていました。
私も、そう言いたのですが、実は、その船が本当に1万5千年の時間を超えた航海をしたと言う確証が十分ではないのです。航行記録は、さらに詳しく調査する必要があります。 今のところ、わかっているのは、星座の観測記録だけですから。」
「確かにそうですね。確証はありませんね。
では、弁天丸で、どうやって、調査、実験をするんですか? まさか、いきなり・・・。」
「いえいえ、いきなり1万5千年前の宇宙を目指して弁天丸で飛んでみるようなことは、しませんよ。
それは、実験でも調査でも、もちろんも冒険でもありません。無謀と言うヤツです。」
「なるほど・・・ナハハ。言われてみればそうですね。
船長は、乗組員の安全を確保する責任もありますからね・・・。」
「ですから、実際には、基礎的なところから科学的に検証できる仮説を立てて、一歩一歩着実に、調査と実験を積み重ねようと言うのです。」
「それは、そうですね。
でも、未踏の『広い宇宙(うみ)』と言うのは、外宇宙のアンドロメダ銀河方面だけじゃなくて、時空を超えたところにも広がっているかもしれませんね。
なんか、楽しくなってきたなあ。」
「そうですね。
だから、帝国軍のエンジニアたちも、この調査にみんな興奮しているんです。」
茉莉香も、未踏の広い宇宙に対する興奮を抑えきれず、叫んだ。
「未踏の宇宙を駆けるのも海賊の仕事。
さあ、弁天丸。行きましょう。
全速前進。」
26-2 ランプ館(海明星新奥浜市)
この日の夕方、加藤茉莉香は、学校の制服姿でランプ館にやってきた。
茉莉香は、警備隊の人たちに手伝ってもらいながら、自宅から大きな鍋を運んできた。
卒業式を前日に控えるこの夜に、ランプ館を借り切って、夕食会を主催するためである。
もちろん、夕食会の主賓は、卒業記念ダンス発表会に、自分の来賓として招待した人たち、つまり銀河聖王家のアレクサンドル王子、ブルック王国の3王子、そしてギルバート・モーガンの5人である。
この他の出席者は、チアキ、グリューエル、ヒルデ、ブルック王国のアメリアの四人の王女、そして主催者の茉莉香である。夕食会はこの10人で行われる。
「カンパーイ!」
茉莉香の挨拶もそこそこに、和やかな会食が始まった。ただ、男性たちは、少女たちに気を使ってノンアルコールの飲料を飲んでいる。
「茉莉香さん、昨晩は最後の女子高生海賊ショーだったんでしょう?
どうでしたか?
私も、先輩の海賊ショーを見たかったです。
できれば、一緒に出演したかったです。」
アメリア王女が、真っ先に茉莉香に話しかけた。
「だめですよ。あれは、海賊のお仕事です。お姫様のお仕事ではありませんよ。」
「だって、ヨット部の先輩たちは、一緒に出演されたんでしょう。みなさん、そのお話をなさるときは、本当に楽しそうですからね。」
「ナハハハ・・・あの時は、乗組員が病気で入院している間に海賊免許の期限切れを防ぐため、選択の余地がなかったというかぁ。・・・」
「で、どうでしたの?茉莉香さん。」
グリューエルが聞いた。
「いやあ・・・・昨晩の船は、まず、クイーン・エメラルダス号でしょう。
その次、つまり最後に乗ったのは、プリンセス・アプリコット号だったんだ。
そこで、海賊の名乗りを上げる時に、
『女子高生の海賊も、今宵限りでついに見納め』
なんて、口上を言ったものだから、大歓声で盛り上がったよ。」
「茉莉香さん、本当に、残念でしたよ。
私たちも見に行こうと思って、プリンセス・アプリコット号に予約を申し込んだら、売り切れだと断られてしまって・・・。
それなら、私たちも海賊して、乗り込んでやろうかと思ったくらいですよ。
ハハハ・・・」
ブルック王国のジョージ王子が笑った。
「プリンセス・アプリコット号かぁ。なつかしいなあ。
海賊ショーは一年生の時だけど、つい昨日のように思えるね。」
チアキが言った。
「ほんとうですわ。
もう、明日で卒業なんですものね。」
グリューエルが言った。
その時、三人のメイド服姿のウエイトレスたちが、料理を運んできた。
「お待ちどうさま。どうぞ召し上がれ。」
「あれぇ! マミに、リリイに、サーシャまで。一体どうしたの?」
茉莉香が言った。
「ウフフフ・・・・みんないるわよ。ウルスラ以外はね。」
サーシャが笑った。
「『どうしたの?』、じゃないわよ。
茉莉香を助けてあげられるのも、今夜限りかなと思って、私たち、手伝いに来たのよ。」
リリイが言った。
「ええ? 手伝い?
私、引越しの準備も済んだし、今は、余裕だよ。
みんなに海賊ショーで助けてもらった時のようなピンチには、追い込まれていないよ。」
「何、言ってるのよ、茉莉香。
このあいだの部室での『大報告会』。聞いて、アキレタわよ。
あれじゃあ、やっぱり、この私が手伝ってあげないとイケナイ、と思ってさぁ~~。」
「茉莉香さん、何か講演会でもなさったのですか?」
アレックス王子が茉莉香に聞いた。
「いえいえ、なんでもありません。ただの女子高生のおしゃべりですから。」
茉莉香はあわてて否定した。
「それより、お料理が冷めないうちに、召し上がってください。
今日は、加藤家秘伝のレシピで私が作ったポトフもご用意しましたので、ぜひ召し上がってください。」
「へえ~。これがあの加藤家秘伝のお料理ですか。いただきます。」
ギルバートが言った。
食事をとりながら、白鳳女学院での楽しい思い出話や出席者の男性たちから、最近の身近な出来事の話がつづいた。みな話題が豊富で、楽しい会話が続いた。
そして、思い出したように、ブルック王国のジョージ王子が茉莉香に聞いた。
「そういえば、茉莉香さん。
弁天丸は新しい船になるという噂話を聞いたんですが・・・。どうなんですか、」
「はい。そのとおりです。
今、新弁天丸の設計を進めているところです。
実は、それを皆さんにお見せしようと思って、今日、持ってきたんです。」
茉莉香は、そう言って、手元の携帯端末から立体映像をテーブルの上に投影した。
「茉莉香さん。これって、今の弁天丸と同じではないですか?」
グリューエルが言った。
いつのまにか、ヨット部員たちもメイド服姿のままで、テーブルの周りに集まって来て、立体映像を眺めている。
「違うよ。デザインは同じだけど、大きさが1.5倍になるんだ。
つまり、長さが300メートルになるんだよ。だから、船の体積は、3倍になるんだ。」
「なるほど。ずいぶん大きくなるのね。
それじゃあ、新しい弁天丸も、チアキちゃんの船のように、重力制御推進方式の船になるんでしょ。」
ハラマキが聞いた。
「そうだよ。それが新造船を作る最大の理由だもの。」
「ふーん。それでさあ、茉莉香の部屋はどうなるの?
それに、弁天丸の船室って、4人相部屋だったよねえ。あれはそのままなの?」
リリイが聞いた。
「私たちが乗った時は、あれはあれで、楽しかったけどねえ。
練習航海とか、強化合宿みたいだったから・・・。」
サーシャが言った。
「新しい弁天丸の船員室は、できるだけ家族で暮らせる部屋をたくさん設けるプランを考えているよ。
私もねえ、自分の子供の頃のことや、みんなの話を聞いて考えたんだ。
船乗りも家族を持つべきだし、家族は一緒に暮らすべきだと思うんだ。
だから、新しい弁天丸は、それができる船にするんだ。」
「なるほど、それが、茉莉香さんが望む自分の将来の姿と言う訳ですね。」
アレックス王子が言った。
「はい。私は、これからも船乗りを続けたいと思っています。海賊をやめるつもりはありません。
私はそういう人間だと言うことを理解してほしいと思います。」
「僕たちも乗りたいなあ。弁天丸。」
ブルック王国の3王子たちが、口々に言った。
「茉莉香、帝国軍からの依頼で、乗り込む人たちの話も言っておかないと、フェアじゃないかも。フフフ・・・・」
チアキが、ギルバートの方をちらりと見て、笑った。
「チアキちゃんは、あの話を知ってるんだね。
そうだね。ご披露します。
みなさん、この新しい弁天丸では、帝国軍からの依頼でいろいろな新装備のテストをします。そのために10人の軍人さんが、エンジニアとして、新しい弁天丸に乗り込む予定です。ほかに警備の人もいますが、新しい弁天丸に関してお話ししておきたいのは、この10人のことです。」
「誰ですか? さては?」
「ええ、ここに居る、ギルバート・モーガンさんをチーフとして10人の若い人たちです。」
「へえーーーーー!」
部屋の中の人たちが、一斉に声を上げた。
「僕たちも乗りたいなあ。弁天丸。」
また、ブルック王国の3王子たちが、口々に言った。
「私の気持ちは、お話した通りですよ、茉莉香さん。」
アレックス王子は、平然と言った。すでに知っていたのかもしれなかった。
「新しい船の乗組員については、まだ考え中です。今の乗組員もいますし・・・。
それから明日のことですが、明日、私が着るドレスは、こちらにいるマミが作ってくれました。ご紹介します。
すごく、きれいなドレスですよ。お楽しみに。」
「どうも・・・・。」
マミがぺこりと頭を下げた。
その後は、この一年の思い出話や明日の卒業式やダンス・パーティについて、話が弾んだ。
そして、楽しい夕食会もお開きになり、茉莉香は、9人のお客様を見送った。
「はあ~~。終わった、終わった。
みんな、どうも今日はありがとうね。」
茉莉香が、テーブルの上を片付けているリリイたちに、お礼を言った。
「・・・・・・・」
しかし、みんなの様子が少し変だった。
茉莉香の言葉に対して、何も言わず、黙々と片付けている。
やがて、片付けが済むと、リリイたちが言った。
「茉莉香。あなた、そこに座りなさい。」
椅子に座った茉莉香を、みんなが取り囲んで、座った。
「そうよ。聞きたいことがあるんだけど。」
「私、やっぱりなあと、思ったよ。」
「茉莉香も、同じ女子高生だから、私たちと同じで、そういう話はまだ早いだろうと思っていたけど、違ってたね。」
「やっぱり、茉莉香は外の世界では弁天丸の船長として、一人前の大人として扱われているんだね。よくわかったよ。」
「私も、分かったよ。」
「あなた、隠していたでしょ! 」
みんなが口をそろえて言った。
「ええ!? 私、何も隠していないよ。」
茉莉香が言った。
その時、チアキとグリューエルとヒルデがランプ館のドアを開けて入ってきた。
「やっぱり、そういう話になっていましたわね。
戻ってきてよかったですわ。」
茉莉香を囲んで、皆が座っているのを見て、ヒルデが言った。
「ねえ、あなた達は、知っていたんでしょ?」
リリイが少し尖った口調でチアキたちに言った。
「お察しの通りよ。茉莉香、観念しなさいよ。」
チアキが言った。
「それで、茉莉香。
あなた、今晩、お客様として呼んだ5人の男性から、結婚申し込まれていたでしょう。
隠していたわね。」
「もう、あなたの天然な笑顔に、すっかりダマされていたわ。」
「私、ダマしたりしていないよ。黙っていただけだよ。」
「何、言っているの。そんな子供ダマシの言い訳、私たちに通用すると思うの?」
「ナハハ・・・。私たちは、その『子供ダマシの言い訳』に丸め込まれたことがありましたわね。」
グリューエルは、茉莉香の苦笑いを真似て、ヒルデの方を見てつぶやいた。黄金の幽霊船での出来事を思い出したのだ。
「みんなが、気を悪くしてるなら、ごめんなさいね。
だって、いきなり大人の人から結婚申し込まれても、私はまだ高校生だし、どうしていいか、自分でも分からなかった事だったんだもの・・・。」
茉莉香は、みんなにお詫びを言った。
「まあ、それはそうね。
それじゃあ、あの弁天丸の話が、今のあなたに出来る、最大限のお返事ってことね。」
マミが言った。
「あれって、茉莉香は、
『自分は弁天丸の船長を続けたい。結婚して相手の家に入って、お城の奥方様や、お屋敷の奥様にすんなり収まる気はない。』
って、言いたかったのよねえ。」
ハラマキが言った。
「結婚するなら、そういう茉莉香さんと、一緒に弁天丸に乗って、広い宇宙(うみ)の果てまで仲良く一緒に行って頂ける殿方が理想だということですね。
茉莉香さんらしい、とても、ロマンティックなお話ですわ」
グリューエルが言った。
「でも、茉莉香さん、本当に、よく頑張って、あそこまで言ったわよね。」
サーシャが言った。
「それで、誰にするの?
やっぱり、ギルバートさんに決めたの?
だって、今度は、彼、弁天丸に乗るんでしょう? ということは・・・・。」
リリイが突っ込んで聞いた。
「いやあ、まだ高校生の私には、そんなことは何も決められないと言うか・・・・。」
茉莉香は、口ごもった。
「そこのところは、相変わらずかぁ。
それじゃあ、新しい弁天丸での茉莉香の部屋、プライベートルームはどうするの?
まさか、今の弁天丸の船長室みたいに、オジサンくさいのを考えているんじゃないでしょうね。」
リリイが再び聞いた。
「ええ!? あれでイケナイのかなあ?」
「茉莉香、あなた、『女子力』が無さ過ぎだよ。あれじゃあ、男の子の部屋だよ。」
リリイが言った。
「そうはいっても、茉莉香さんにとって、今の弁天丸の船長室は、お父さまのお部屋だから、大事になさりたいお気持ちは分かりますわ。
でも、新しい弁天丸は、茉莉香さんの作る船、茉莉香さんが暮らす船なのでしょう?」
グリューエルが言った。
「そうよ。茉莉香、あなた、いずれその部屋で家族を持つことになるのでしょ。
つまり、その部屋は、いずれ新婚夫婦の部屋になるわけでしょ。」
サーシャが言った。
「だったら、当然、ベットは天蓋付きの御姫様ベッドだし、部屋の壁紙とか、布団のシーツとか、鏡台とか、その他みんな、う~~んと、ロマンティックで、可愛いものにしないといけないわよ。」
ハラマキが言った。
「チアキちゃんの船の部屋を見たでしょ。理想を言えば、あのくらい、可愛くしないと・・・。
これって、夢見る乙女の常識よ。」
リリイが言った。
「ええ!? そうなの?
マミはどう思うの? チアキちゃんは?」
「マミ、どう思う? 相変わらず、これだよ。茉莉香は。」
リリイは言った。
「やっぱり、この私がついて行ってあげないと、イケナイのかなあ。
宇宙では、チアキちゃんがマミの代わりだよって、頼んでいたんだけど・・・・。
チアキちゃんも忙しくなりそうだし・・・ねえ。」
マミは、そう言ってチアキの方を見た。
「そうねえ。『女子力』の方は、茉莉香が女子大生の内に、なんとかしようと、思っていたんだけどねえ。」
チアキが言った。
「マミは、船乗りには向いてないよ。無理することないよ。
う~~~~ん。
ここは、やっぱり、この私がそばにいてあげないと、イケナイのかなあ。
ねえ、茉莉香。私を弁天丸に乗せてよ。」
突然、リリイが言った。
「ええ? リリイは、家政学部のお嬢様コースに進学するんじゃなかったの?
突然、どうしたの?」
茉莉香が言った。
「正直言うと、それもつまらないなぁって思って、迷ってたのよ。
それに比べたら、一年生で海賊船に乗った時の、あのワクワクした気持ちは、忘れられないわよねえ。
私、やっぱり、船乗りに憧れてたのかなぁ。
今、決めたわ。
私、看護学部に転部して、看護師になる。
それに、自慢じゃないけど、私、結構かわいい方で、男の子にすごく人気あるんだ。通学の時にラブレターもらうなんて、しょっちゅうだよ。
だから、弁天丸に乗せてよ。
茉莉香、新しい弁天丸のような大きな船には、私のような、美人で人気の看護師も必要でしょ? ねえ!」
「なんか、少し、セールス・ポイントがずれているような気もするけど、リリイも真剣なのね。」
ハラマキがつぶやいた。
「・・・ええ!? うう・・・・」
茉莉香が口ごもっているときに、ランプ館のドアが、音を立てて勢いよく開いた。
「茉莉香! 聞いたよ。どうして、教えてくれなかったの!?」
大きな声を出して、ウルスラが店に飛び込んできた。
「ウルスラ、どうしたの?」
「今日は、ご両家の両親と顔合わせの食事会だったんでしょ?」
「ウルスラさんは、私たちより一歩先を、着々と、進んでいらっしゃるのね。素敵ですわ。」
「実は、茉莉香も結婚を申し込まれていたらしいのよ。この話、あなた、どこで聞いたの?」
皆が口々に言った。
「いや、その話じゃなくて、新しい弁天丸に、うちのダーリンも乗るって話が決まっているんだって!?」
「ええ~~~!? さっき、茉莉香は、そんなことは言わなかったよ。」
みんなが、また声を上げた。
「いやあ~~~。帝国軍の人事の話だから・・。
それに、私は、今朝、正式に了承したところで、まだ内定しているだけだし・・・。」
茉莉香は言い訳した。
「それなら、私も弁天丸に載せてよ。
ダーリンと一緒にさあ。
私、今でも予備役の帝国軍人だよ。
自慢じゃないけど、パイロットとしての腕前は、帝国軍のSクラスだよ。
重力制御推進の大型戦艦も、操縦できるよ。
あのグランドクロスⅡだって、操縦したよ。
小型の戦闘機も操縦できるよ。
大型戦艦でも小型の戦闘機でも、タッチ・アンド・ゴーができるよ。
実戦経験もあるよ。
私、海明星を守ったよ。
実戦での射撃の命中率は、95%以上だよ。『こんな奴見たことない』って、ミニッツ大佐も誉めてくれたよ。
重力波砲だって、発射した経験もあるよ。
だから、私、茉莉香の役に立つよ。
それに、これから頑張って、士官学校を卒業するからさあ~~~~。
ねえ~~~~お願いだからさぁ・・・・。」
ウルスラは、必死になって、茉莉香に頼み込んできた。
その顔は、すこし涙ぐんでいるようだ。
そして、ウルスラの言葉を聞いて、ヨット部員たちはこの一年にウルスラがどんなに頑張ってきたか、改めて思い知らされた。
白鳳女学院のヨット部員のなかでは茉莉香やチアキやサーシャの陰に隠れて目立たなかったが、ウルスラのやってきたことは、普通の女子高生では到底できない、すばらしい功績の連続だった。
「茉莉香さん、先ほどあなたは、
『船乗りも家族を持つべきだし、家族は一緒に暮らすべきだ。
新しい弁天丸は、それができる船にする。』
と、おっしゃいましたよね。」
グリューエルが、にっこり笑って言った。
「そうなの。茉莉香!
ありがとう!!
やっぱり、茉莉香はすごい船長さんだねえ。」
ウルスラは、茉莉香の返事も聞かず、大喜びして、茉莉香の腕を握って、振った。
「ナハハハ・・・」
茉莉香は、ウルスラの喜ぶ顔を見て、照れ笑いをするしかなかった。
すでに、この章で投稿した卒業式の場面は、次の章に移して、卒業の章として、ひとつにまとめました。すでに読んで頂いた方には、お詫びします。
また、タイトルを改題しました。