宇宙海賊キャプテン茉莉香 -銀河帝国編-   作:gonzakato

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 宇宙海賊キャプテン茉莉香、いよいよ大詰めです。
 グリューエルの人生は、急展開していきます。

 なお、グリューエルだけでなく、「ヒロイン達にそれぞれのエンディングを」と考えていくと、長くなってしまいました。そのため、「その1」として、いったん、投稿させていただきます。


第四十七章 千年の王国 その1

 

 

1 スクープの裏側(ミーサ夫婦の自宅・帝都クリスタルシティ)

 

「クラーク、また、面白いスクープね。

 ネタは、弁天丸から仕入れたの?」

 マタニティ・ドレス姿のミーサが、『クリプトン星の連邦政府が、グリューエル姫のセレニティ旧王朝遺跡訪問を拒否した』というスクープ報道について、夫の銀河テレビ社長、クラーク・ケントに聞いた。

ミーサは既に産休で弁天丸から降り、近頃、お腹も目立って大きくなってきたので、帝都の自宅で過ごしている。

「もちろん、それは違うね。

 弁天丸は口が堅くて、お客様の秘密厳守だってことはミーサも承知しているだろう。

実は、セレニティ政府のコルベール首相から極秘情報を提供するので、スクープ報道してくれと頼まれたんだ。」

「なに、それ!? 首相自ら自国の外交機密を漏らすなんて!」

「首相は、重要な情報を国民に公開するためだと言っていたがね。

『センシティブな情報』なので、政府から公開するわけにはいかないけれども、国民が知る必要があるそうだ。」

「そのためにマスコミを使うなんて、ずいぶん腹黒いタヌキ・オヤジね。

 何が本当の狙いなの?」

「首相の本音は、『聖地復興運動』に国民や王族がどういう反応をするか探りたいのだろう。」

「ええ!? 『聖地復興運動』って、クリプトン星にセレニティ王国を再建しようというアレのこと。いくらなんでも、千年前に滅んだ王国を再建しようなんて、時代錯誤よね。」

「私もそう思うよ。

 しかし、王制を敷くセレニティ星系では、国の威信や今後の国政の方向を決める大問題になると考えているようだね。」

「ふ~ん。でも、モノの弾み(はずみ)って怖いからね。下手をすると大人のケンカ(戦争)になったりして・・・フフフ。」

「さすがに、戦争は無いだろう・・・千年前の恨みといっても。」

「それにしても、この問題の発端がグリューエル姫自身ですものね。

 あの賢い子が問題をどう収めるか、お手並み拝見かしら。」

「そうだね。

 ところで、お腹の子供の名前はどうするんだい?

 私としては、女の子なんだから、クリスティアとか、チアキとか、銀河聖王家のお姫様と同じ名前でもいいと思っているんだけどね・・・。」

 二人は、女の子の名前を考えていた。この時代の帝都では、父母が出産前に胎児の性別を知るのは、当然のことだった。

「なにを言っているのよ。マリカに決まっているでしょう。

 私が何のために結婚したと思っているのよ。」

「ハハハ・・・そうでしたね。」

 ミーサは、弁天丸の同僚だった加藤梨理香が茉莉香を生み、立派に育てたことに深く共感しており、自分も同じことがやってみたくなって結婚したからだ。

 

 

2 セレニティ民主政府の迷走

 

「それで、例の報道に対する王族や国民の反応はどうだね。」

セレニティ民主政府の閣議において、予定の議事が終了した後、コルベール首相が話題を変えた。

「それが、意外と国民は冷静ですねえ。

 もちろん、『聖地回復運動』の提唱者・ベルナール卿は、マスコミのインタビューに答えて、烈火のごとく怒っておられましたがね。ハハハ・・・

 『無礼千万であり、世が世なら軍事制裁も加えるべき』だと・・・」

 ポアンカレ教育大臣が答えた。

「彼は老いてますます頑固、というか過激になっているなあ・・・・フフフ。

それで、王族の方は、どうなのかね?」

「特に御意見を述べられた方はおられません。

 皆さん、国民の議論に任せる姿勢を守っておられます。グリューエル姫についても同じです。」

「そうか。では何事も無く終わりそうだなあ・・・。」

「ところが、同時に公表した『宇宙総合開発計画(素案)』の方は、御存知のように賛成派と反対派の間で激しい議論になっておりまして・・・。」

 ローマン公共事業大臣が言った。

「予想通りじゃないか。

 反対派は、健全財政派、増税反対派と環境原理主義派。

これに対して、賛成派は、積極財政派と開発賛成派だろう。」

 コルベール首相が答えた。

「はあ、議論の大勢は、そうですが・・・。

 でも、我々の予想よりも、国民の間に、星系外への拡大進出に好意的な意見が多かったのは意外でした。

『フロンティア(辺境)開発を進める銀河帝国に後れを取るな』とか・・・。」

「私に言わせると、そういう国民の意見は、ホンモノの覇気が足りない気がします。

『銀河帝国と同じ事をやっていれば、間違いはない』というのでは、『バスに乗り遅れるな』というビジネスマンの処世術と変りませんなぁ・・・。」

ポアンカレ教育大臣が言った。

「ハハハ・・・。先生は厳しいですなあ。」

ポアンカレ教育大臣は、前職が王立大学の経済学の教授であり、当時から著名人だった。このため、いまでも、首相を始め閣僚は彼のことを先生と呼んでいる。

「それで、例の巡礼コースに宇宙空港を整備するという話はどうだね。」

「はあ、国民の反応は特に無く、当然のことと受け止めていると思います。

いままでの不便が解消されるのですから・・・。」

「ああ、それで思い出した。忘れるところだったが、クリプトン星の連邦政府や連邦議会の反応はどうかね。」

「『宇宙総合開発計画』については、予想通り、批判的なトーンに終始しています。

 『セレニティは、ついに領土的な野心をむき出しにした。』とか、

 『セレニティは、第二の銀河帝国になるつもりなのか。』とか・・ですね。」

「ええ? 我々セレニティ星系が更に発展して、『第二の銀河帝国』になることが、イケナイことなのかね。ハハハ・・・。」

 コルベール首相が笑った。

「そうですなぁ。自分たちが征服されると怯えているのでしょうか。ハハハ・・・」

「しかし、姫の御訪問を拒絶した連邦政府の判断には、あちらでも批判があるようです。」

「そうだろうな。連邦政府は、何を怯えていたのか。情けないヤツラだ・・・。」

 セレニティ民主政府の閣僚たちですら、「旧宗主星」ともいうべき歴史的関係にあるクリプトン星に対して、否定的な感情をもっていた。それは良くて「軽視」、悪ければ「蔑視」だった。

 

「それで、公共事業大臣は、『宇宙総合開発計画』を進めるつもりなのかね。」

「はい。次期会計年度の予算が議会で承認されれば、まずは、宇宙航路の調査と、開発候補である可住惑星の環境改造に関する調査を進めたいと思っております。

これなら金額も小さく、最終判断を下すために計画全体の経費をより正確に見積るための調査だと説明できますから。」

ローマン公共事業大臣が言った。

「お役所は、何事も、まずは調査、調査ですなあ。

しかし、調査に時間を費やしていると、税金を浪費していると批判されますぞ。」

ポアンカレ教育大臣が、また皮肉を言った。

「それならば、巡礼コースの三惑星の衛星軌道上に中継ステーションを新設することからはじめたらどうでしょうか。

これは『宇宙総合開発計画』とは切り離して建設しても問題ないでしょう。

中継ステーションだけなら、早期に建設可能で国民も便利になるし、地上の宇宙空港と違って環境派からの抵抗も少ないでしょう。

なにより、これで我々が『聖地回復運動』に消極的と批判を浴びる恐れはなくなります。」

 ミラボー国防大臣が言った。

「う~む。なるほど。・・・では、それでいこう。我々には、実績が必要だ。

 いつまでも何もしないというのでは、政府は無能だと批判されるからな。

 もちろん、引き続き、国民世論の動向には注意しよう。」

 そう言って、コルベール首相は閣議を終えた。

 

 コルベール首相らセレニティ民主政府のメンバーは世論の動向を踏まえて国政をリードしているつもりだった。

しかし、世論の批判を受ける事態を回避することを優先するあまり、確固たる信念も無いまま、『聖地回復運動』の支援とも受け取られる中継ステーション建設に踏み出してしまった。

 

 

3 グリューエルの「博士論文」

 

「ねえ、グリューエル。宇宙物理学って、本当に面白いねえ。」

 茉莉香が、グリューエルに言った。

 今日の惑星開発学ゼミナールのテーマは、宇宙物理学だった。

 ゼミが終わって、茉莉香、チアキ、グリューエルの三人は並んで帝国女学院の校舎の廊下を歩いていた。

「そうですねえ。

 茉莉香さんは、宇宙物理学のどんなところに興味がおありですか?」

 グリューエルが、いつもの丁寧な言葉で茉莉香に聞いた。

「だって、さあ、母星の周りを回る惑星の並び方と、原子核の周りを回る電子の並び方が同じルールで出来ているなんて、驚きだよ。

 それも、「素数倍の間隔」つまり、惑星の公転軌道の場合、母星系の振動波長の素数倍の間隔で惑星の公転軌道が並ぶという、私でも分かる簡単なルールなんだよ。

 私、白鳳女学院(高等部)の数学の授業で『素数』ってものがあるって聞いたとき、そんなものに何の意味があるのかって思ったけど、宇宙の真理とつながっていたんだよね。

 感動しちゃったよ~~~。」

 茉莉香が興奮して答えた。

「そうですね。本当に興味深いですね。」

 グリューエルは、微笑んで答えた。

「あの~、茉莉香。

 『感動中』のところ悪いんだけど、その理解、間違っているところがあるわよ。」

 チアキが言い出した。

「ええ!? 違うの~。」

「そうよ。

 茉莉香。あなた、今、『原子核の周りを回る電子』って、言ったでしょ。

 そこから間違いよ。

 母星を回る惑星の軌道と違って、原子核の『ボーア・モデル』が真実の姿だと思っちゃダメって言われたでしょ。量子力学の世界では、電子の運動と位置は確率的にしか捉えられないわよ。

 だから、電子の軌道じゃなくて、原子核のエネルギー準位という考え方があって、・・・」

「チアキちゃん、しつこいよ。

 わたしは『だいたい』のことを言っているのよ。」

「だから、『だいたい』で済ませちゃ、ダメなのよ。茉莉香。」

「言われなくても、私、惑星の楕円軌道だってランダムにずれるってこと、ちゃんと知っているよ。

弁天丸で超光速跳躍からタッチダウンしたときに、自分の船がタッチダウンした実際の位置とフライトプランの位置とのズレをチェックするだけじゃなく、近くの惑星の現在位置と海図の示す軌道とのズレもチェックするよ。」

「だから惑星の軌道は、『だいたい』そういうイメージだけど、原子の運動は・・・。」

「チアキちゃん、ひどいよ。

さっき、『だいたい』で済ませちゃダメって私に言ったじゃないの。

ねえ、グリュール。私の言ったこと間違ってないよね。」

「茉莉香、違うわよ。私の言うことが正しいわよ。ねえ、グリューエル。」

「ウフフフ・・・。

 お二人の言うことはどちらも間違っていませんわ。

 『だいたい』のところは・・・。」

 グリューエルはそう言って微笑んだ。

「あら、まあ、ヘーゲル先生の宇宙歴史学研究室の前まで来てしまいましたわ。

 私、博士論文の草稿を先生に見ていただくので、ここで失礼いたしますわ。」

 グリューエルは、二人に一礼してドアをノックすると研究室に入っていった。

 

 その後、茉莉香とチアキは、大学のカフェテリアでお茶を飲んでいた。

「あ~ぁ、やっと落ち着いて、大学生らしい勉強が出来るようになってきたね。」

 チアキが言った。

「そうねえ。

それにしても、グリューエルって何でも知っているんだね。

 あれじゃあ、大学で勉強する必要なんて無いんじゃないかなぁ・・・ナハハハ。」

 茉莉香はジョークを言ったつもりだったが、チアキの返事は違っていた。

「そうよ。

そもそも、グリューエルがなぜ帝国女学院へ進学したと思っているの?」

「ええ!? 勉強するためじゃないの?」

「違うわよ、忘れたの? 茉莉香の傍(そば)にいるためよ。」

「そういえば、そんなことを、昔、言っていたよね。

 でも、それって、『一緒に勉強したい』っていう意味じゃないの?」

「違うわよ。

ハッキリ言うと、グリューエルは、茉莉香の傍にいて、『茉莉香と遊びたい』から、この大学に来たのよ。自分のための勉強なら、王族らしく家庭教師を呼ぶわよ。」

「ナハハハ・・・。そこまでハッキリ言わなくても・・・。」

 茉莉香は苦笑いした。

 

「それより、茉莉香。さっきのグリューエルの言葉を聞いた?」

「聞いたよ。『博士論文』ってどういうこと?

私たち、まだ家政学部の学生、それも一回生でしょう?」

「まあ、私たちの在籍する特別コースは何でもアリだから、博士号の取得も可能なのだけどねえ・・・。

 そのせいか、このごろ、王宮でもグリューエルの勉強は凄まじいのよねえ。」

 チアキは、ため息混じりにつぶやいた。

「う~ん、どうしてそんなに急いでいるのかなあ?」

「ええ!? グリューエルが『急いでいる』って言うの?」

 茉莉香の言葉にチアキが驚いた。

「うん。チアキちゃんの話を聞くと、グリューエルは、なんか、生き急ぐというか、シメキリに追われているというか・・・そんな雰囲気だよねえ。」

「ふ~ん。そういう見方も出来るわね。でも、どうしてなんだろう。」

「そうだね。どうしてなんだろう。」

 二人は、グリューエルがいる大学の研究棟の方を見ながらそういった。

 

 

4 千年の墓

 

「グリューエル。

 建国記念日の大切な御公務、大公陛下の英雄記念碑への参拝には、入院している私の代わりにあなたが同行してください。 」

 セレニティ王国のマリーナ大公妃は、超光速回線を通じて、銀河帝国の帝都にいるグリューエルにそう告げた。

「ええ!? 私が、・・・ですか?

 代行のお役目でしたら、皇太子殿下はじめ、私より高位の王族の方が、大勢いらっしゃいますが・・・・」

「私は、あなたにお願いすると言っているのですよ・・・。」

 大公妃の言葉には、有無を言わせない強い響きがあった。

「はい。・・・承知いたしました。」

 このため、グリューエルは、急遽、セレニティ王国へ帰国した。

 

 セレニティ王国の「建国記念日」は、セレニティ星系の中心となる惑星「青の姉」の大地に新王朝の始祖アレクサンダー一世が降りたった日とされている。毎年、この日に大公夫妻が「英雄記念碑」に参拝し、祖先と功臣の偉業に感謝する。

セレニティ王国の英雄記念碑は、歴代セレニティ大公夫妻の墓である大きな緑の丘と、それを幾重にも取り巻く英雄の墓のある王立墓地に設けられている。もちろん、英雄とは、殉職した将兵や功臣たちである。

英雄の墓石は、まったく同じ形の墓石が並べられている。これは、王国のために命を捧げた貢献の価値は等しく同じだという、アレクサンダー一世の言葉に基づいている。

 したがって、公式行事としての参拝は、両陛下のきわめて重要な公務とされてきた。グリューエルが知る限り、他の王族が代行、又は随行したことはない。

 

「どうして、他の王族方を差し置いて、私が指名されたのでしょうか・・・・」

 グリューエルはしばらく考えて、つぶやいた。

「・・・・やっぱり、そうでしょうね。

英雄の墓には、薔薇の泉の復活をめぐって私と戦って死んだ将兵も眠っているのでしたね。バルデン伯爵様も、両陛下のご意向に沿って、英雄の一人として、そこに眠っておられるのでしたね。

私が選ばれた意味も、そのあたりでしょうか・・・・。」

グリューエルは、そうやって自分を納得させた。

 

セレニティ大公による英雄記念碑の参拝は、毎年の慣例どおり、厳かに行われた。

首相の司会にそって、国歌演奏、英霊に対する大公陛下の献辞、献花、そして英霊の遺族による献花が続く。

グリューエルの役割は、大公陛下の献花のお手伝いであった。二人で大きな花輪を持って、記念碑に捧げたのだ。

一連の儀式が終わった後、グリューエルは、大公陛下とともに、バルデン伯爵の墓を訪ね、献花し、祈りを捧げた。

「グリューエル、あの子のために祈ってくれてありがとう。礼を言います。」

 そして、大公は緑の丘のほうを眺め、言った。

「この地に来た機会に、あなたにぜひ会わせたい人々がいます。

私についてきてください。」

「はい。」

 二人は、歴代大公夫妻の墓所である緑の丘にやってきた。

 もちろん、玄室など墓の本体施設は地下にある。

 二人はエレベーターに乗って降りていった。

 

 地下に降りた二人は、内部の通路を通って、新王朝千年の間に即位した歴代三十一組の大公夫妻の棺を納める玄室にやってきた。

玄室の内は暗く、玄室全体は見渡せなかった。

しかし、大公とグリューエルが歩くと、足元の床が少し明るくなってきた。

その明かりで玄室の奥を見ると、中央に細長い通路があり、その左右に歴代大公夫妻の等身大の石像が立ち、その傍にそれぞれの棺が置かれているようだった。

大公は、歴代大公夫妻の石像の前に立つとその名前を読み上げた。そして、グリューエルは一人ひとりに礼をしつつ、通路を進んでいった。

そして、二人は、通路の行き止まり、つまり玄室の最も奥の空間にたどり着いた。

そこには複数の女性の石像に囲まれる男性の石像があった。その姿はまるで天女に囲まれる神のようであった。

また、奥の壁には王と王妃が向かい合う姿でその横顔が彫られていた。

その前まで来ると、今までと違って、大公は沈黙した。

「・・・」

「これは・・・どなたですか?」

たまらず、グリューエルは、大公に尋ねた。

玄室の奥には、始祖アレクサンダー一世とその妃の大きな石像があるとばかり思っていたからだ。

「奥の壁に彫られたレリーフは、旧王朝のアレクサンダー十三世陛下とその妃(きさき)エリザベス陛下です。

 手前の男性像は、もちろん我らが始祖アレクサンダー一世陛下であり、その周りを囲む天女のような女性たちは、王妃陛下と薔薇の泉の花嫁たちです。・・・」

 大公は、静かに告げた。しかし、それ以上何も言わなかった。

 

『セレニティ王室が、公式の王統譜では存在を認められていない薔薇の泉の花嫁(人工子宮にセットする卵子の提供者)を秘かに敬(うやま)い、祭っていたことは、驚きです。

でも、大公様は、なぜ、私を帝都から呼び寄せてこの玄室を見せたのでしょうか・・・・。』

 

グリューエルはそう考えながら、石像に深い祈りを捧げた。

 

 

5 グリューエルの論文発表(帝都・宇宙歴史学会)

 

「ねえねえ、学会の論文発表というから、もっと地味なイベントかと思って、気楽な気持ちで来たんだけど・・・。

 こんな大きなホールが満員。こんなに大勢の人が詰め掛けてくるなんて・・・。

なんか、大変なことになっているわね~。」

 茉莉香がチアキに小声で言った。

「そうね。おまけに、マスコミがこんなに大勢、取材に来るなんて・・・。」

「それはそうと、チアキちゃん。そろそろ壇上の貴賓席に移ったほうが良いんじゃないの?」

「イヤよ、あんなところ。

私が見世物になるだけじゃないの。」

 

 今日は、茉莉香とチアキは、帝都クリスタルスターで開催される王立宇宙歴史学会にやってきた。グリューエルから、学会で博士論文を発表するからぜひ来て欲しいといわれたためだ。

もちろん、壇上の貴賓席にはグリューエルの分の他に、もうひとつ席があった。

しかし、恥ずかしがりやのチアキにとって、銀河帝国の第二王女として、貴賓席に座って出席者の注目を集めるのは御免だった。

 

 学会は議事を次々終え、最後の記念講演としてグリューエルの論文発表が行われる。

 司会の紹介に続いて、グリューエルが拍手を浴びながら、登壇した。

 

「本日は、私に、歴史と伝統ある宇宙歴史学会における発表の機会を与えていただいたことに、深く感謝いたします。・・・」

 グリューエルは壇上で簡単な謝辞を述べたあと、博士論文の概要について、発表を始めた。

「この論文は、これまで行われた諸人類のさまざまな宇宙開拓事業を分析し、今後の宇宙開発のあり方について考察したもので、『惑星開発学』の分野において博士号を頂いたものです。

しかし、審査の際に、宇宙開拓事業の歴史的考察を踏まえた今後の宇宙開拓の方向に関する提言について評価を頂きました。

このため、本日、発表の機会を頂くことになりました。

従いまして、本日は、この宇宙歴史学会の趣旨に沿って、論文の歴史学的な考察と今後の提言に関する部分を中心に、発表したいと存じます。」

 最初に、グリューエルは、論文発表のねらいを説明した。

 

 グリューエルは、ひと呼吸おいて、さらに話しつづけた。

「人は生まれ故郷を愛し、住みなれ土地に末永く暮らしたいと願うものです。これは宇宙時代の今も変らないと思います。

にもかかわらず、その土地を離れ、未知の惑星に移り住むという大きなリスクのある行動をするのは、それ相応の事情があるからです。

その事情とは、資源の枯渇や貴重資源の獲得など経済的な動機や未知の世界への冒険など知的好奇心もありますが、宇宙時代においても『政治的迫害』から逃れるためという場合もあります。

そして、このような宇宙移民、特に政治的迫害を逃れるための移住では、移住者が開発のために利用できた資源は極めて少ないものでした。当然、移住先の惑星開拓は過酷な状況の中で行われました。

わが故郷、セレニティ星における宇宙移民を例にとって、その経過を話しましょう。

・・・  」

グリューエルは、祖国の移民船クイーンセレンディピティが旅立つ経過を簡単に話し始めた。それは、薔薇の泉の起源とも重なるセレニティ旧王朝の激動の歴史だった。

(第四十一章 薔薇の泉 参照。)

 

「え~! 『阿呆船』なんて、ヒドイ言葉があるんだぁ。

あの『黄金の幽霊船』の旅立ちの裏に、そんなドロドロした出来事があったの~!

あの船は金色に輝くすごく立派な船だから、さぞかし、みんなから祝福されて旅立ったのかと思っていたよ~。」

 セレニティ星系への宇宙移民の裏事情を知って、茉莉香は驚いた。

 

「このように政治的迫害による宇宙移民は、苦難の連続となることが多いのですが、悪いことばかりではありませんでした。

その過程では人々は助け合い励ましあって、困難を乗り越えていきます。もう後戻り(帰国のための宇宙航海)は出来ず、自分たちで助け合う以外に選択の余地が無かったからです。

 宇宙時代の王政復古も、このような困難な事態に対処できるリーダーが求められたことから生まれたものといわれます。個々の利害損得を超えた公正無私の判断が出来るリーダーは、王政だからこそ世代を超えて次々に生まれるものだと私も信じています。

 わが故郷、セレニティ星系が七つの可住惑星をほぼ同時に開拓し、今日まで団結を保って一体の国家として成立した理由もそこにあります。七つの星に王族の兄弟姉妹が別れ住んでそれぞれの星のリーダーとして、ともに助け合い尊敬しあってきたからこそ、国としての一体性を保ちつつ、目覚しい経済発展を遂げることが出来たと信じます。」

 

「なるほどねえ。宇宙時代に王政がなぜ復活したかって、教科書にも載っている話だけど、改めて聞くとすごいことなんだねえ~。」

 茉莉香は感心して、つぶやいた。

 

「なお、立憲君主制においても、同じように公正無私のリーダーシップが実現できると私は信じます。

なぜなら、憲法に、君主である王に奏上(説明)するという手続きが定められていることには、大きな意味があるからです。

たとえば、現在のセレニティの憲法では、王には国政の実権がないのですが、首相が王に国政の話を奏上することにより国家の意思決定手続きが完了するという仕組みになっています。 

私はこれでも十分に意味があると私は考えます。

それは、国政の実権を握ったリーダーが王に対する奏上を行うに当たって、彼に自己抑制を促し、公平無私の正しいリーダーとなることを促すからです。」

 

「これは、今のセレニティの政治状況を踏まえての分析でしょうねえ。

少し皮肉が効いているけれどもね・・・。」

チアキがつぶやいた。

 

「 他方、政治的迫害が無いケース、たとえば経済的な理由が中心となった宇宙移民においては、開拓が成功し植民星が豊かになるなど経済的な事情が変化することにより、人々の心も変化していきます。

 その典型例が、植民星の独立問題です。

 この問題については、これまで宇宙歴史学会で多くの議論が交わされてきました。

学問的な分野において、私がそれに付け加える知見はほとんどないでしょう。

しかし、私は、多くの植民星の歴史を学んでいくうちに、『宗主星も、植民星も、同じ文明、同じ歴史を共有している。』という意識をもっと強く持つべきではないかという思いを抱きました。

 植民星としても宗主星の文明に感謝と尊敬を忘れてはなりません。

他方、宗主星としても植民星の発展に祝福と尊敬の念を持つべきです。

 いま、改めてそのことを訴えたいと思います。」

 

「なるほど~。言われて見れば、もっともだよね~。

相互に尊敬しあうかぁ~。海明星(うみのあけぼし)の場合でもそれが足りないから独立戦争になったのかなあ。

 それにしても、グリューエルって、すごいんだなぁ。」

 茉莉香は、素直に感心していた。

「これも、セレニティ星系とクリプトン星の現状を踏まえたコメントね。

 ・・・なるほど、これがグリューエルの狙いなのね・・・。

 これを聞いて、クリプトン星のような民主共和制の政治家たちはどういう反応するかしら。」

 チアキは、王族の一人として、グリューエルが民衆をリードする手腕に興味を持った。

 

「 さて、発表の時間も限られておりますので、もうひとつ、宇宙植民事業の歴史を踏まえながら、今後のあり方について、思うところを述べたいと思います。

これまでの宇宙植民のための航海は、本当に苦しいものでした。

 超高速跳躍航法が開発される以前は、何世代にも及ぶ長期の宇宙旅行を行う必要がありました。そのために、セレニティでも全長23キロにも及ぶ巨大な移民船が建造されました。

また、可住惑星を探す事前調査も十分な正確さが無く、実際に行ってみないと移住可能かどうか確定的な判断はできない有様でした。再度の移住という悲劇すらありました。

また、超光速宇宙船はその運航コストも高く、輸送力には経済的限界があるとされてきました。

このような宇宙航海上の制約から、これまでも、現在でも、宇宙移民においては出来るだけ出発地から近い星に移住するのが常識とされてきました。

実際、諸人類は、各々の宗主星から少しずつその版図を広げてきました。宇宙移民の歴史は、宗主星周辺星域の開発の歴史といっても過言ではありません。

しかし、これからの宇宙移民においては、新しい科学技術の発展を踏まえ、この常識は、抜本的に見直されるべきだと考えます。

具体的には、時空トンネル航法が今後、実用化されることを考慮すべきです。

時空トンネルは、御承知のように低コストで大量の物資を運べる、超光速輸送システムです。そして銀河帝国はこれを銀河全体に張り巡らせる『ミルキーウエイ計画』を進めています。もちろん、この計画は民生利用も想定しています。ですから、今後の宇宙開発においても、大いにその利用を前提とすべきです。

 

では、時空トンネルの活用を前提にして、私たち諸人類は、どのようなフロンティアを目指すべきでしょうか?

今日の常識では、宇宙開発の目的地は、旧宗主星の周辺宙域だけでなく、銀河系外延部の辺境星域も対象とすべきでしょう。これは、みなさんご承知のとおりです。

しかし、本当にそれだけでしょうか?」

 

このとき、グリューエルは合図して、演壇の背後のスクリーンに巨大な銀河系の絵図を映し出させた。それを見ると、中心に紡錘状星雲を抱えた渦巻き銀河系の絵図上に、銀河帝国はじめ主要国の母星の位置が示されている。

「おお~!」

学会の聴衆から声が上がった。彼らにはこれからグリューエルが言おうとしていることが分かったのだ。

同時にマスコミのカメラがグリューエルの演壇に集中した。

 

「もう、私の申し上げたいことがお分かりの方もおられると思います。

 ご覧のように、銀河系には膨大な未開発の宙域があります。

 すなわち、紡錘状星雲の帝都とは反対側の宇宙は、資源豊富な核恒星系にありながら、各々の母星からあまりにも距離が遠いという理由で未開発のままになっています。

そのため、この宇宙空間は、「裏宇宙」とすら呼ばれております。

これからは、この裏宇宙とよばれるこの宇宙空間にもっと関心を持つべきではないでしょうか。

・・・

以上で、本日の発表を終わります。」

 

グリューエルの公演が終わった後も、会場は興奮が収まらず、ざわついていた。

銀河帝国軍が管理する時空トンネルの民生利用を、銀河聖王家の王族でもあるグリューエル姫が推奨した意義は大きい。もちろん姫の個人的意見にとどまらないものと聴衆は受け取っている。

「よし。トップニュースはこれで決まり!」

 そう叫んでマスコミ各社は会場を飛び出していった。

 

「なるほどねえ。

私たちがサンタマリア星に行った経験が、この論文のネタになったのかなぁ。」

茉莉香はつぶやいた。

「ウフフ・・・打ち合わせどおりね。

 これをきっかけに、やがて姉上の遷都構想が浮上していくのね・・・。」

 チアキは、微笑んでいた。

(宇宙海賊キャプテン茉莉香-銀河帝国編・エピローグ1「銀河聖王家の伝説」及び 

第三十六章 名も無い星 参照)

 

 

6 アンドロメダ銀河航路調査隊の派遣

 

 今日、加藤茉莉香は、銀河テレビのニュース放送番組に、帝国軍大佐の制服を着て、ゲストとして出演した。

 

「加藤茉莉香隊長、本日発表された、銀河帝国の『アンドロメダ銀河航路調査隊』の派遣について、お話しください。」

 銀河テレビの男性ニュースキャスター、ジャクソン・スミスが、航路調査隊の隊長に任命された帝国宇宙軍大佐兼弁天丸船長・加藤茉莉香に聞いた。

「はい。調査の目的は、アンドロメダ銀河までの航路予定帯上にある星々及び高重力源の近くを実際に飛んでみて、それらの位置、質量、軌道などを調べることです。

この調査結果を元に、アンドロメダ航路の海図を作成します。

宇宙航海は『安全第一』ですから、まずは海図の作成からはじめます。

今回の調査は第一回目ですから、全航路の半分、約100万光年の宇宙(うみ)を実際に飛んで見る予定です。」

 

 茉莉香は、少し緊張した表情で、模範解答どおりのコメントを言った。

 今日の茉莉香は、とても張り切っていた。先日のグリューエルの学会発表を見て、自分も『大人の女性』として、あのような堂々とした発表をしようと思ったからだ。

 だから準備も念入りに行った。模範解答の内容を隅々まで勉強するだけじゃなく、軍の制服も新調し、銀河テレビの社長に頼んでテレビ出演時のメイクにも最高のスタッフをつけてもらった。

 その成果もあって、テレビ画像は、いつもどおりの華やかなオーラに包まれながらも、凛としたオトナの雰囲気を醸し出す茉莉香の姿をアップで映し出していた。

予定通りの順調な滑り出しだった。

 

 しかし、茉莉香が最初の質問に答えている間に、ニュースキャスター、ジャクソン・スミスは、自分がテレビカメラの映像から外れていることを確認しつつ、スタジオの隅に立って収録を監督していた銀河テレビ社長クラーク・ケントの方を見た。

 二人の目が合うと、社長は、そっと指を三本、立てた。

『指が三本か・・・・。フフフ、面白いなあ。キャラを壊して三枚目になれという指示だな・・・。』

 スミス・キャスターは、黙ってうなずいた。

 銀河テレビ社長クラーク・ケントは、ニュース報道の分野では「視聴率王」としてカリスマ的な人望があり、スタッフは彼の指示に喜んで従っていた。

 

「なるほど、安全第一ですかぁ~。

でも、正直言って、茉莉香さん、今回の調査航海は怖くないですか?

だって、海図を作るための航海は、当然、どこに危険が隠れているか分からない、誰も行ったことのない宇宙(うみ)を行くわけでしょう。」

 スミス・アナウンサーは、加藤茉莉香調査隊長を『茉莉香さん』と名前で呼ぶなど親密な口調で、予定されたシナリオから外れて、アドリブの質問を茉莉香にぶつけてきた。

「怖い!?

 いいえ。むしろ、私は、早く行ってみたい、どんな宇宙があるのか早く見たいって、ワクワクした気持ちでいっぱいです。

 それに誰かが最初に危険を覚悟して航海しないと安全な海図は出来ないわけですから。

その点、船団のメンバーは、ベテランの船乗りばかりですから、心強いです。」

 もちろん、アドリブに強い茉莉香は、さらりと答えを返した。

そして、そう答える加藤茉莉香の表情が変った。それは、見つめる人の心を明るくする、いつもの茉莉香の笑顔だった。

「その笑顔を見ると、茉莉香さんは、本当に宇宙の海を飛ぶのが大好きなんですね。

 宇宙の海を飛ぶって、そんなに気持ちが良いですか?

 実は、私も学生時代は『部活』が飛行部だったんですよ~。

飛行部は、バード・フライングをやります。重力軽減装置をつけて、鳥のように翼で羽ばたいて大気圏の空を飛ぶって、ほんとに気持ちいいですよね。」

「そうなんですかぁ~。その気持ち分かります。

 私も、高校の部活は宇宙ヨット部だったんですよ。

 衛星軌道から降下して、風を切って大気圏を飛ぶのは、本当に気持ちいいですよね~。」

 スミス・キャスターに話を合わせて、茉莉香は知らず知らずに脱線していった。

「そうなんですよ。

 だから、バード・フライングの編隊飛行をするときは、みんなで飛行部の歌を歌いながら飛ぶんですよ。無線通信でお互いの声が届きますからね。

盛り上がりましたね~え。」

「ええ!? スミスさんのところにも、部活の歌があるんですかぁ・・・。」

 

 このとき、テレビスタジオのディレクターが、両手でTの字を作りながら、ケント社長の顔色を伺った。「T」は、タイム、すなわち放送時間が迫っているというサインだった。

 それに対して、彼は右手の指と左手の指で二つの丸を作って並べた。

『マルがふたつで、∞(無限大)のマークか。

二人がノリノリになってきて、話が面白くなりそうだから時間延長しろという指示だな。

 この番組は、お堅いニュース番組なのに・・・。さすが、社長。やるなぁ・・・。 』

 ディレクターはニヤリと笑って、テレビの編成スタッフにニュース番組の時間延長を指示した。

 

「そうですよ。歌ってみましょうかぁ・・・・。

  白雲流るる 大空へ 翼広げて 風になる 

  見下ろす大地 どこまでも 濁世の巷(ちまた) 続くなり

  果てなき空を 往く先に われらの世界が拓けゆく

  我ら鳥人 帝大飛行部 まだ見ぬ国々へ 今、往かん~ ♪」

「うわ~・・・。ステキですねえ。分かります、その気持ち。

(パチ、パチ、パチ・・・と茉莉香は拍手した。)

鳥のように空を飛ぶときの、そのワクワクする気持ち、良くわかりますよ~。」

 茉莉香は、そう言って、満面の笑顔で拍手した。

その時、テレビ画面には、十九歳になったばかりの若さと、華やかな美しさに溢れた茉莉香の笑顔が映し出された。

「ありがとうございます。

 さあ、今度は、茉莉香さんの番ですよ。

あなたの母校、海明星(うみのあけぼし)の白鳳女学院高等部、宇宙ヨット部の歌を歌ってくださいよ。

(パチ、パチ、パチ・・・)」

 そう言って、スミス・キャスターは、拍手までして茉莉香の歌を催促した。

「いやあ~、私の母校を御存知なんですかぁ。まいったな。

でも、ヨット部の歌は、メロディーといい、歌詞といい、帝大飛行部の歌とよく似ているんですが・・・・。」

「似ているのは、当然ですよ。・・・だって青春の歌なんですから・・・。」

「青春の歌ですかぁ、ナハハハ・・・・ちょっと、恥ずかしいなぁ・・・。

 (ううう・・・でも、こんなところで尻込みできないよなぁ・・・)

 では、加藤茉莉香、いきま~す。

ヨット部の歌を歌いま~す。(第三章 練習航海1 参照)」

即断即決が、茉莉香の持ち味=お得意だった。

「 いよ~!待ってました~♪ (パチ、パチ、パチ・・・)」

そして茉莉香は、女子高生に戻ったような気分で歌いだした。

「 見送る人に手を振れど 古い世間に未練無し

たう星系に背を向けて 星の海原ひた走る

広い宇宙の 旅行く先に どんな出会いが待つのやら

われら 船乗り 白凰 ヨット部

まだ見ぬ 人々よ 今 往かん  」

 

 その後も、茉莉香は、スミス・キャスターに問われるままに、弁天丸で危険な宇宙(うみ)を航海した経験談を話し続けた。

ブラックホールの要警戒重力圏内にタッチダウンしたが、危うく脱出した話(第十四章 海賊の力 茉莉香、帝国軍を破る 参照)。

銀河系の外延部、アンドロメダ銀河まで続く星の海をヒガン星団まで遠征した際に、銀河の姿や未知の星々を始めて見て感動した話(第二十章 M-8801星団の包囲戦)

 銀河の外を取り巻くダークマターの宇宙(うみ)を人類で初めて航海した話(第三十九章 未踏宇宙の先駆け・弁天丸 参照)。

 マゼラン星雲へ細長く続く星々の宇宙(うみ)を何万光年も航海した話(第四十五章 大人の条件 )

・・・などなど、話題は尽きなかった。

 

航海の経験談を話すときの茉莉香の表情は、本当に生き生きと輝いていた。

 テレビを見ていたオトナの人々は、十九歳の茉莉香がとても経験豊富な『オトナの船乗り』であることに驚き、そして「アンドロメダ銀河航路調査隊長」に任命されたことに納得した。

 

「茉莉香サマ~~~!」

「今宵は、茉莉香サマの歌声が聞けたわ。幸せ~!」

 

もちろん、このように、テレビの前で叫んでいる少女たちも大勢いた。海賊ショーで有名な芸能タレントとしての弁天丸船長・加藤茉莉香の人気も、不滅だった。

おかげで、テレビの視聴率は驚異的な水準になった。

もちろん、事後にオンデマンドで有料配信される映像商品(もちろん目玉は、加藤茉莉香の歌声だった。)も驚異的な売り上げになった。

そして、現場で演出の指示を出したクラーク・ケント社長の「視聴率王」としての伝説がまたひとつ出来た。

 

 だが、白鳳女学院宇宙ヨット部の現役・OGの少女たちの反応は違った。彼女たちは茉莉香がヨット部の歌をテレビで歌ったのに驚いて、次のようにつぶやいていた。

 「うわ~~~! 」

「・・・なんというかぁ~~~~・・・・。」

「ヨット部の歌って、ヒトが歌っているのを見ると、結構~、恥ずかしいね~。」

「やっぱり、自分たちだけでノリノリで歌う歌だよねえ・・・・」

「あ~あ、 先輩(茉莉香)、 ヤッチマッタね~~~!」

 

 

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