宇宙海賊キャプテン茉莉香 -銀河帝国編- 作:gonzakato
そのさなか、海賊狩り事件についての、帝国海賊と私掠船免状の海賊達との手打ち式が、帝国海賊の要塞型宇宙船、パイレーツキャッスルで開かれます。
その後、白凰女学園のヨット部員も出演した「海賊ショー」が開かれます。
その中で茉莉香は帝国海賊のキャプテンに任じられ、帝国海賊名門出身の従者(帝国軍では秘書官)がつきます。
そして、チアキも女王自身から帝国海賊のキャプテンに任じられます。
二人とも、王女の側近として華々しくデビューします。
その祝宴の中で、反乱の開始を告げる暗殺者の魔手が、迫ってきます。
6-1 弁天丸ブリッジ
弁天丸ブリッジでは、昨日から、ミーサやシュニッツアーが、仕事で付き合いのある銀河帝国第七艦隊の艦長やクルー達からの、お祝いの通信で忙殺されていた。
帝国軍の首脳会議でクリスティア王女が登場したこと、その副官として茉莉香が現れたことは、帝国軍内部でも口コミで伝わっていたからだ。
「茉莉香は、とうとう銀河帝国にデビューしたわね。それも、派手にねえ。
先日の宇宙大学のコスプレ・ショーとは、インパクトが違うわね。」
少し興奮気味に、ミーサが言った。
「そうだ。帝国軍の大佐、しかも17歳だから、史上最年少の高級士官。
さらに、クリスティア王女の副官ということは、王族並みの扱いだ。
帝国軍の連中が『キャプテン茉莉香も王女なのか?』と聞いてくるのも無理はない。」
シュニッツアーは、感情を表さずに、淡々と言った。
「マスコミには、まだ公表されないのねえ。」クーリエが言った。
「帝国軍の連中によると、しばらくの間、非公表らしい。」百目が言った。
「ねえミーサ、茉莉香ちゃんは、本当に王女じゃないのよねえ。」
「ゴンザエモンと梨理香の娘に間違いないわよ。」
「だったらすごいことね。でも、海賊稼業はどうするのかなあ。」
「何も言ってこないから、やめるつもりはないでしょう。
帝国軍の副官より海賊の方が、あの子の性格に合っているはずだしねえ。」
「お取り込み中、済みませんが、まもなく、レッドクリスタル星系の目的空域にタッチダウンします。」ケインが言った。
通常空間に復帰した弁天丸は、レッドクリスタル星系の外延部、巨大な外惑星ブルー・クリスタル周辺に姿を現した。
惑星ブルー・クリスタルは、水素、窒素その他の炭化水素を主成分とする巨大惑星である。その名の通り、輝くように青い大気に包まれた星である。
帝国海賊の旗艦パイレーツ・キャッスルの姿はまだ見えないが、すでに、3隻の私掠船免状を持つ海賊船が到着していた。予定では、今日中にすべての海賊船がそろい、明日が手打ち式となっている。
「うわー。すごい星空。核恒星系の海は、やっぱり、星が多いねえ。」
「そして、あれが、銀河のネックレスか。これは、どうみても、白、青、もうひとつ青の宝石をつけたネックレスだよねえ。キレイだねえ。」
「なるほど、ここでは、母星のレッド・クリスタルは遠すぎて大きく見えないから、ネックレスの宝石もレッド・クリスタルの赤じゃなくて、惑星ブルー・クリスタルの青になっているのかぁ。惑星ブルー・クリスタルの青色って、ほんとにキレイ。」
「やっぱり、ここは、宇宙の中心だよねえ。う~~~ん。」
壮大な星空の姿に、弁天丸のクルー達が声を上げていた。
翌日、私掠船免状を持つ海賊船10隻が勢揃いしている前方に、巨大な宇宙船が静かに姿を現した。現れた船は、全長1キロ程の、戦艦と言うより宇宙要塞であった。
「うわ、大きな船が出てきたわ。こんなものが、本当に超光速飛行してきたの?
プレドライブ反応が殆ど無く、重力異常もわずかだったので、もしかしたらと思ったんだけど。この反応は、茉莉香ちゃんを乗せた『おれのばあさん号』の時と、同じねえ。
・・・・
えーっと、トランスポンダー確認。船籍、銀河帝国、船名、宇宙海賊船パイレーツ・キャッスル。」
「すごいわね。こんなに大きな船、銀河系のどこに潜んでいたのかしら。」
「パイレーツ・キャッスルから、通信、来ました。
港湾区域にドッキングするように誘導すると言ってます。」
「了解すると返事しておいて。あと、ケイン、操舵お願い。
それにしても、茉莉香は、遅いわねえ。何処で何やっているのかしら。学校じゃないんだから、海賊に遅刻はなしよ。」ミーサが言った。
「あ、また、同じような反応。もう一隻、亜空間から船が出てくるのね。
今度のは、うわ~~、パイレーツ・キャッスルよりさらに大きいわ。
全長2キロ以上、特大の移民船並みの大きさね。」
クーリエが言った。
「トランスポンダー確認。船籍、銀河帝国宇宙軍第一艦隊。
船名、機動空母グランドマザー、だって。
・・・シュニッツアー、この軍艦、知ってる?」
「いや、初めて見る名前だ。新型艦だろう。それにしても、大きい。」
「ミーサ、機動空母グランドマザーから通信が来た。茉莉香ちゃんからミーサ宛てよ。」
「そろそろ来ると思ってたわ。モニターに出してちょうだい。」
「やあ、ミーサ。遅れてゴメン。今、着いたところ。」
モニターに、帝国軍の新しい制服を着た茉莉香が現れた。
「遅いわよ。茉莉香。今、パイレーツ・キャッスルにドッキングして、海賊宮殿の大広間に集まるよう案内があったところよ。
あなた、間に合うの?」
「それは、みんな一緒だから大丈夫。私も、船長として手打ちの儀式は出席するわよ。
でも、そのあとの儀式にも出るので、準備に忙しいのよね。」
「わかったわ。手打ち式のあとは私が代理出席しておくわ。
その『あとの儀式』というのも、拝見させてもらうから。
それから、加藤大佐殿。
その帝国軍の制服、よく似合ってるわ。こんなかわいい制服を採用するなんて、帝国軍も見直したわ。」
「いやぁ・・・ありがとう。ミーサにそんなにほめられると、少し恥ずかしいなあ。」
「で、やっぱり、あの帝国海賊の女は、銀河帝国の王女だったのね。」
「そうよ。クリス先生は、秘密の王女様だったの。
それで、私、チアキちゃんと一緒に王女様の副官、つまり第一艦隊司令官の副官になったの。
あー、だからと言っても、弁天丸の船長はちゃんと続けますから。ご心配なく。」
「へえー、あの女と命がけで戦って、手打ち式も済んでいないのに、もうあの女の副官になるなんて、気持ちの切り替えが早いのねえ。」
「そこが私のトリエだもの。エヘヘ・・・。
ねえ、ミーサ。私、この間、夢を見たんだよ。その夢の中で、自分がこれから何をしたいのか、少しわかってきたよ。
私、もっと広い宇宙(うみ)に出てみたいんだ。もちろん、弁天丸のみんなと一緒だよ。」
「そう言ってくれると思ってたわ。」
ミーサは、弁天丸のクルーの顔を見渡した。
ケインと、クーリエと、シュニッツアーと、ルカと、百目と、三代目とも、ミーサと目があった。みんな同じ気持ちなのだ。
6-2 海賊宮殿大広間(パイレーツ・キャッスル船内)
パイレーツ・キャッスル艦上の、海賊宮殿の大広間では、細長い巨大なテーブルを挟んで、二組の人たちが席についている。
一方は、私掠船免状の海賊船の船長10人であり、テーブル中央がカーン伯爵とケンジョー・クリハラ。茉莉香は、今日は末席に並んでいる。
他方は、帝国海賊8人。中央の2席は空席であった。彼らは、黄金の髑髏を肩につけ、黒を基調にしたきらびやかな海賊船の船長の制服に身を包み、大半の者は仮面をつけている。
やがて、帝国海賊の船長たちが起立した。それに合わせて、私掠船免状の海賊船長たちも起立した。そして、中央の空席に、二人の女性が現れた。
深紅の生地に黄金の装飾も鮮やかな海賊服に身を包んだ二人のうち、一人はクリスティア王女だった。王女は仮面をつけていなかった。
もう一人の女性は、仮面をつけていたが、その圧倒的な迫力、存在感からその人が誰であるか、明らかだった。
『銀河帝国の王は、海賊の王』
それは、おとぎ話にも詠われている常識だった。そのことは、一般の人々にはおとぎ話の世界のことと思われている。わずかに帝国宇宙軍の旗艦が「クイーン(キング)・オブ・パイレーツ」という名前であることが、その名残だとされている。
しかし、銀河帝国の宇宙海賊たちにとっては『銀河帝国の女王は、海賊の女王』ということは、現代でも真実であった。
船長たちは、膝まづいて臣下の礼をした。
その人は、一堂に座るように促し、自らも着席した。
「みなさん、遠くからよく来てくれた。礼を言う。私が帝国海賊の王である。
こちらはわが子クリスティア、
そして副将のヴァイシュラ。
七長老のインドラ、
アグニ、
ヤマ、
ラークシャ、
ヴァルナ、
ヴァーユ、
イシャーナだ。
これが、銀河系の八方面を治める帝国海賊、八氏族の長だ。
私も含め、故あって仮面をつけている者がいるが、昔からの習わしと理解してほしい。」
「海賊船迦陵頻伽の船長、カーンでございます。
今日は、陛下からお招きをいただき、このように、陛下と同席する光栄を賜り、一同、深く感謝、感激いたしております。
それでは、私から、各船長をご紹介いたします。
バルバルーサの船長、ケンジョー・クリハラ。
ビラコーチャの船長、カチュア・ザ・レディ。
エル・サントの船長、ウィザースプーン。
シャングリラの船長、マスター・ドラゴン。
ロウ・オブ・ウォーの船長、コジャ。
ラブマシーンの船長、スリーJ。
ダークスターの船長、ザ・ピース。
村上丸の船長、スミコギ。
弁天丸の船長、加藤茉莉香。
以上でございます。」
船長ひとりひとりが、紹介されるたびに改めて礼をし、女王がそれにこたえた。
「では、本題に入ろう。
そして、このたびはクリスティアが皆さんと戦いをはじめ、大きな被害を与えてしまった。そのことを陳謝し、改めて契約を結びたい。
クリスティア、お前からも謝罪しなさい。」
「心から謝罪したい。本当に自分の至らなさを恥じている。」
「いえいえ、我々も海賊。海賊が海賊として自分の判断と責任で戦っただけのことでございます。
勝敗の如何にかかわらず、その結果は、すべて各々が自分で責任を負うものであって、陛下や殿下がお気に召されることはないと存じます。」
と、カーン伯爵が言った。
「伯爵、そのことばには、母としても感謝する。
では、さっそく契約の調印を始めよう。内容はすでに示した通りだ。」
重々しい皮の表紙がついた書類が二つ用意され、女王とカーン伯爵が、交互にサインをした。
調印式はあっけなく終わった。
そして、銀河帝国の女王が次のように語った。
「ありがとう。無事に話を収めることができて何よりだ。改めて礼を言う。
さて、このたびの戦いで、私掠船免状を有する海賊たる、お前たちの実力は十分にわかった。私は、お前たちを、一流の海賊と見込んで、私の望みを述べたい。
今日から帝国海賊となり、私のために働いてくれないか。
知っていようが、銀河帝国は、今、銀河を縦横に貫くミルキーウエイ計画を進めている。
これが実現すれば、銀河系内は今の星系内航海のように安全かつ短時間で結ばれ、交易や経済開発は大いに進むだろう。ほどなく宇宙の海は大きく変わり、大航海時代の名残は一掃されるだろう。
だが、銀河系の辺境開発はこれで終わりではない。
銀河系外延部の惑星開拓や銀河系近傍の星団・星雲への航路開拓など、ここ二百年ほどの間、銀河帝国が放置してきた仕事を片付けなければならない。
そして、その先には、わが念願のアンドロメダ星雲への大遠征が控えている。
このためには、一流の船乗りというだけでは足りない。帝国の先駆けとして、恐れることなく未踏の宇宙を駆ける、お前たちのような一流の海賊が必要だ。
お前たちも私の夢の実現に力を貸してほしい。」
その時、海賊の若者が、黄金の髑髏を私掠船免状の船長たちの前に置いた。もちろん、黄金の髑髏は、帝国海賊の船長の証である。
私掠船免状の海賊の船長たちは、緊張し沈黙している。
茉莉香も他の船長の気配を察して、黙っていた。
沈黙を破って、真っ先に、ケンジョー・クリハラが黄金の髑髏を手に取り、席を立った。
ケンジョーは、左手で左肩に黄金の髑髏を当て、右手を床につけて臣下の礼をとり、言った。
「おれは、女王陛下、あなたのために命を懸けることを誓う。」
それを機に、ほかの船長も彼に続き、同じように誓った。
「ありがとう。私は、お前たちを新しい臣下として歓迎する。
さあ、今日の良き日に、海賊王子指名の儀礼を行う。支度を始めよ。
新たに帝国海賊としてわが臣下となったお前たちも同席し、祝ってほしい。」
海賊王子指名の儀式は、銀河帝国の王位のもう一つの側面、海賊王の次の継承者を明らかにする、海賊だけの秘密の儀式である。
海賊宮殿の大広間では、女王が玉座に座り、海賊達が女王に向かって立ち並んでいる。
海賊宮殿の玉座に座った女王が立ち上がり、宣言した。
「私は、我が子クリスティアを海賊王子に指名する。」
やがて、大広間に、クリスティアを先頭に、茉莉香とチアキ、そして白鳳女学院ヨット部たちが続いて現れた。
王女は、深紅の海賊服である。茉莉香も黒を基調とした、チアキも青を基調とした、ヨット部員も黄色を基調とした、きらびやかな黄金の装飾をつけた海賊服に身にまとっていた。みな、腰に剣を帯びていた。
先頭のクリスティアが叫んだ。
「パイレーツ・キャッスルに集いし海賊共よ。われを見よ。われの声を聞け。
われは、クリスティア。地上に降りた神の子孫、この世の光、銀河聖王アンの娘なり。」
続いて、白鳳女学院ヨット部の皆が叫んだ。
「地上に降りた神の子孫、この世の光、銀河聖王の娘!」
「われは、クリスティア。王の中の王、銀河の万物の主(あるじ)たる、銀河聖王アンの娘なり。」
続いて、白鳳女学院ヨット部の皆が叫んだ。
「王の中の王、万物の主、銀河聖王の娘!」
「われは、クリスティア。銀河の海をわが海とする、帝国海賊の八氏族を治める海賊の王、銀河聖王アンの娘なり。」
続いて、白鳳女学院ヨット部の皆が叫んだ。
「帝国海賊の王、銀河聖王の娘!」
「われは、クリスティア。今、この日、この時、われは、銀河帝国聖王の継嗣にして、帝国海賊八氏族に君臨する海賊の王の継嗣たることを宣言する。」
続いて、白鳳女学院ヨット部の皆が叫んだ。
「銀河聖王の継嗣、海賊の王の継嗣!」
「異議のあるものは、名乗り出よ。
わが剣にかけて、われが銀河の万物の王を継ぐにふさわしいことを、明らかにせん。
異議のあるものは、名乗り出よ。
いざ、名乗り出よ。」
そう言って、クリスティアは、腰の剣を抜いて、高く掲げた。
続いて、白鳳女学院ヨット部の皆が叫んだ。
「いざ、名乗り出よ。いざ、名乗り出よ。」
そう言って、ヨット部の皆は、腰の剣を抜いて、高く掲げた。
さらに続いて、茉莉香とチアキが、叫んだ。
「われは、加藤茉莉香なり。」
「われは、チアキ・クリハラなり。」
「われら、銀河聖王の娘クリスティアに付き従うものなり。
わが剣にかけて、われらの主が銀河の万物の王を継ぐにふさわしいことを、明らかにせん。
異議のあるものは、名乗り出よ。
いざ、名乗り出よ。」
そう言って、茉莉香とチアキは、腰の剣を抜いて、高く掲げた。
「待て、待て。待たれたい。」
そう言って、三人の若者が現れた。いずれも黒を基調とした、きらびやかな海賊服に身を包んでいる。
一人目は、30歳前後の男であった。
「われは、帝国海賊、八氏族のひとり、キャプテン・ヴァイシュラ・キッドの長子、フレッドなり。
王女クリスティアよ。御身が、われらの主、銀河の万物の王を継ぐにふさわしいことを、わが剣にかけて、明らかにせん。
いざ、立ち会わん。」
「もとより、望むところ。」クリスティアが答えた。
二人目は、20代半ばの若い男であった。
「われは、帝国海賊、七長老のひとり、キャプテン・ヴァルナ・モーガンの長子、ギルバートなり。
加藤茉莉香よ、御身に問う。
御身の主が、われらの主、銀河の万物の王を継ぐにふさわしいことを、わが剣にかけて、明らかにせん。
加藤茉莉香よ、いざ、立ち会わん。」
「もとより、望むところ。」茉莉香が答えた。
三人目は、30歳前後の女性だった。
「われは、帝国海賊、七長老の一人、キャプテン・インドラ・クキの長子、スカーレットなり。
チアキ・クリハラよ、御身に問う。
御身の主が、われらの主、銀河の万物の王を継ぐにふさわしいことを、わが剣にかけて、明らかにせん。
チアキ・クリハラ、いざ、立ち会わん。」
「もとより、望むところ。」チアキが答えた。
そして、三組の若者は、剣を抜いて戦い始めた。一方が攻め、一方が受ける。次は、攻守が逆になる、という形だった。それが何度も繰り返されたが、儀式としてやっているとは思えないほど、剣を打ち合う音は鋭かった。
「えいっ!」
「えいっ!」
「えいっ!」
やがて、クリスティア、茉莉香、チアキの剣が、それぞれ相手の首筋に突き付けられ、相手の三人が剣を投げ捨て、言った。
「御身の力、いま、思い知りましてございます。
貴方を疑ったこと、一生の不覚にございます。
この上は、わが命、いかようにも処断ください。
願わくば、わが生涯にわたり御身に仕え、この恥を雪ぐ機会をお与えください。」
「フレッド・キッド、お前の願い、聞きとどけた。生涯にわたり、我に仕えよ。」
「ギルバート・モーガン、お前の願い、聞きとどけた。生涯にわたり、我に仕えよ。」
「スカーレット・クキ、お前の願い、聞きとどけた。生涯にわたり、我に仕えよ。」
フレッド、ギルバート、スカーレットの三人は、それぞれ自分の剣と用意された「黄金の髑髏」をクリスティア、茉莉香、チアキに献上した。そして、クリスティア、茉莉香、チアキは、これを改めて三人に授けた。
女王臨席の場で黄金の髑髏を与えられることは、この三人が帝国海賊の船長(キャプテン)に叙せられた栄誉を示している。
これに対して、フレッド、ギルバート、スカーレットの三人は、それぞれに用意された花束をクリスティア、茉莉香、チアキに献上した。クリスティアには青く輝く奇跡の薔薇の花束、茉莉香には深紅の薔薇の花束、チアキには奇跡の薔薇の花束だった。
クリスティア王女を中央にして、茉莉香、チアキの三人は、その後ろにフレッド、ギルバート、スカーレットの三人の従者を伴って、女王の玉座の前に進み出て、一礼をした。
「クリスティア、御身を祝福する。海賊王子の証として、我が宝剣を授ける。」
クリスティア王女は、女王から宝剣を受け取った。宝剣は、白銀の鞘に赤青黄白など色鮮やかな宝石をはめ込んだ美しいものだった。
六人が女王の前から下がろうとしたときに、女王が言った。
「待て。チアキ。御身はまだ帝国海賊の船長(キャプテン)ではなかったな。
では、今ここで、御身を船長(キャプテン)とする。近くに寄れ。」
「あああ・・・はい!」
予想外の女王の言葉に驚いたチアキは、あわてて女王に近づいて、片膝をつき、頭をたれた。
女王は、自らの肩にあった黄金の髑髏を手に取って、チアキの肩に授けた。
そして、再び、クリスティア王女を中央にした六人は女王に一礼した。
「女王陛下万歳!」
「王女殿下万歳!」
それまで大広間で黙って儀式を見つめていた海賊たちや白鳳女学院ヨット部員から、大きな歓声が沸きあがった。
「さあー! 祝宴だ。
皆、大いに飲んで食べ、今日の日を祝ってほしい。」
女王が言うと、テーブルが運ばれ、飲み物や料理が次々と並べられた。
白鳳女学院ヨット部の皆も、用意されたテーブルに案内されたが、そこにはすでにグリューエルとヒルデが座っていた。
「私たちは、また、コスプレをさせて頂けませんでしたわ。」
「私も、儀式に参加させて頂きたかったです。」
二人は、少しふくれっ面だった。
「まあまあ、そんなに怒らないでよ。ねえ」
ヨット部員達が機嫌を直そうと言葉を掛けた。
しかし、グリューエルは、厳しい表情で言った。
「かくなる上は、深い悲しみに陥った女性が自らを癒すために行うという、例の儀式を行うしかありませんわ。」
「??? 何のこと??」
「お姉さま、私も同じ思いの言葉を知っております。」
「グリューエル、ヒルデ。 何のことを言っているの?」
「その儀式とは、『ヤケグイ』と呼ばれているそうですわ。」
「それから、同じような意味で、そういう精神状態の女性は『グレテヤル』と叫ぶそうですわ。」
「ええ??・・・・・」
「また、アイツだ!」
ヨット部員たちは、グリューエルたちにこんな変な言葉を教えたのは、きっと、また、マミに違いないと思った。
ヨット部員達の脳裏に、いつものように笑うマミの顔が浮かんだ。
「マスター、マスター!
海賊たちの心を甘く溶かしたという伝説のデザートを二つお願いいたします。大至急ですわ。」
「それから、ケーキにプリンにアイスクリーム・・・とにかく甘いものをこのテーブルが一杯になるまで、お願いいたします。」
グリューエルとヒルデの注文の様子を呆然と見ていた白鳳女学院ヨット部の皆も、あわてて続いた。
「あのう、えーっと、私たちも伝説のデザートをお願いしま~す。」
やがて、伝説のデザートが運ばれてきた。スイーツもテーブルに溢れるほど並べられた。
「さあ、皆様、銀河帝国中の様々な草花を蜜に漬けた五百年物の甘露、我が親父自慢のデザートでございます。至高の味を、どうぞ召し上がれ。」
どうやらマスターは、例の五人兄弟の一人のようだった。
「いただきまーす!」
白鳳女学院のヨット部員たちは、いっせいに伝説のデザートと言われる氷菓子を、ものも言わずに食べ始めた。
「うわー、おいしい!」
「心にしみわたるねえ。」
少女たちはあっという間に器を空にして、言った。
「おかわり~~!!」
すぐに運ばれてきた伝説のデザートのおかわりを食べながら、リリイが言った。
「そういえば、茉莉香たちはどうしてるの?」
「茉莉香とチアキはあそこ。茉莉香は赤いバラの花束を贈ってくれたギルバートさんや大勢の船長さんたちと楽しそうに話してる。チアキは、スカーレットさんと一緒。」
「ねえ、茉莉香だけ赤いバラの花束って、どういう意味なんだろう。」
「まさか、プロポーズだったりして・・。」
「キャハハハ。でも、本当だったら、茉莉香、すごーい!」
「ねえ、あのギルバートさんって、かなり良い線いってると思わない。」
「私も、そう思う。素敵な大人って感じよね。あのひと、包容力があって、頼りがいがありそうで。」
「思いっきりわがまま言って、甘えたいって感じ。」
「でも本当はどんな人なんだろう。普段も、海賊なのかなあ・・・」
「グリューエル! かき氷ばかり食べていると、おなか壊すわよ。」
チアキがそう言いながら、スカーレットを伴って皆のところへ来た。
「ご心配ありがとうございます。チアキさん。」
グリューエルが微笑んだ。
伝説のデザートは、グリューエル達のふくれっ面も溶かしたようである。
「チアキちゃん、おめでとうございます。船長さんですね。」サーシャが言った。
「ありがとう。ほんと、茉莉香についていくと、予想外のことばかりでね。」
チアキは、ちょっと照れて微笑んだ。
「ヨット部員のみんな、本当に今日はありがとう。」
クリスティア王女がそう言って、皆のところへ来た。
「先生!すてきでした・・・」
「その衣装、すごく綺麗です。」
ヨット部員たちは口々にそういって立ち上がり、王女の周りに集まっていった。
王女は、先生の表情に戻り、みんなと言葉を交わしていた。
「そうだ、皆で、母上のところにあいさつに行こう。」
王女はそう言って、ヨット部員の皆を連れて、女王のもとへ行こうとした。
その時、後ろからついてきたサーシャが、何かに気づいて突然走りだした。
「やめて!
もう、やめて!」
そう言って、サーシャが女王に近づいたときに、光の幕が女王とサーシャを包み、同時にブラスターの光が女王の周辺で折れ曲がって、床やテーブルを焦がした。ビーム兵器対策用のバリヤーが機能したようだ。
「あそこだ!」
「撃て!」
「殺すな!捕えろ!」
女王への襲撃で、大広間は大騒ぎになっていった。
この時、茉莉香とチアキは、クリス王女の周りで自分の体を盾にして、剣を抜いて構えていた。三人の周りを、フレッド、ギルバート、スカーレットの三人の従者が固めている。
女王を襲撃した賊は三人組だった。ウエイターやメイドの服を着て近づいたようだが、狙撃手ともうひとりのウエイターが男、あとの一人はメイド服を着た女のようだった。
逃げていく彼らを狙ったブラスターの光は、折れ曲がって届かなかった。彼らもバリヤーを張っているようだった。
ブラスターの光線では効果がないとみて、ケンジョー・クリハラが古式拳銃を放った。轟音が響き、弾丸は賊の狙撃手の体に命中したが、狙撃手は倒れなかった。
そして、三人は大広間から逃げて行った。
「旦那様、ここは私が食い止めます。どうかお逃げください。
私は傷ついて、もう長くはありませんから。」
廊下を走りながら、狙撃手が言った。
「すまん。ヒガンの世界で先に待っていてくれ。俺たちもすぐに行くから。」
「お待ちしております。」
狙撃手は、廊下の曲がり角に立ち止まって、追っ手に反撃した。激しいブラスターの射撃に警備兵がひるんで、追跡が止まった。
すると、今度は、警備兵に変わって、白兵戦用の重装防護服に身を包んだ海賊の猛者たちが、分厚い蛮刀や斧を振り上げ、うなり声をあげて狙撃手に突進していった。
勝負は一瞬でついた。
だが、狙撃手は既に毒を飲んでいた。自分の命を犠牲にして、あとの二人を逃がしたのだった。