Wish -王女の願う夢‐   作:ARCHERN後輩

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ウレシイ₍₍ (ง ˘ω˘ )ว ⁾⁾ウレシイ


第0話

 妾、ルーチェ・シトラスが最後に見た光景は、深々と自分の胸に突き刺さった長剣の姿だった。隙を突かれたのか、後ろのほうから激しい痛みが襲った後、心臓のある位置から銀色の血濡れの鉄が胸から突き出ていた。

 急速に、体中から血の気が無くなっていくのがわかる。頭がどんどん真っ白になり、ああ、妾はもうすぐ死ぬんだなというのを察する。

 

(……あっけないのう)

 

 落ちていく意識の中、感じたのはそんな簡単な気持ち。死を覚悟していた分、怖いとか嫌だとかという感情はあまり湧いてこなかった。

 

(……ま、妾も少しは頑張ったじゃろう)

 

 むしろ、妾にあった感情は一種の満足感だった。妾が城の前の荒野で大軍と張り合ったことにより、これ以上の進軍を防ぎ、民を逃がす時間を稼ぐことが出来ていた。敵の兵も多く倒すことが出来たし、後でクラウス殿の軍が来てくれれば、残りの兵士を一掃してくれるかもしれない。そんな期待感もあった。

 

(……十分じゃろ、うん、十分じゃ)

 

 そう納得し、妾は体中の力を抜いた。両手の剣を落とし、地面へと崩れた。眼は光を入れなくなり、暗闇の中へと妾を誘う。

 外では、妾を打ち取ったことによる歓声が聞こえてくる。この後、ゼロティスは回収されて自分の身体は実験に使われるのだろう。まあ、知ったことではない。生きたまま拷問されるよりはずっとマシだと思った。

 ……死が、すぐそこまで近付いてくる。

 

(……もう、会えないんじゃな)

 

 二度と会えないと、覚悟はした。でも、会えないという寂しさは最後まで拭うことが出来なかった。

 覚悟しても、所詮自分の心は、オリヴィエ殿たちがいなければ弱いままだということか。情けない、と苦笑しようとしてもすでに顔の表情すら動かない。

 

(……もし、あの世というものがあるなら)

 

 自分が行くのは天国かもしれない、地獄かもしれない。いずれにせよ、あの世というものがあるのならば、約束を守れなかったことをあの四人に謝りたい。

 謝って、また皆と、たくさんお話を……。

 そんなことを思いながら、妾の意識は深い闇の中へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚まして、最初に見たのは雲一つない真っ青な空だった。妾が以前、こんなに青い空を見たのはいつ以来だろうか。世界的な異常気象の影響により、近年のうちでこんなに晴れたことはヒークリア王国内ではなかったことを思い出す。

 いつまでも空の方ばかり見ているわけにもいかない。妾は身体を起こして、辺りを見渡してみることとする。記憶が正しければ、妾は先ほどまで城前の荒野で、敵の大軍と戦っていたはずだ。辺りを見れば、妾の城や万をも超える大軍が見えるはずなのだ。

 ……だが、妾の目に映った光景は、敵の大軍でも城の姿でもなかった。

 目の前に広がっていたのは、広大な草原だった。地平線のはるか先まで続く緑の絨毯。草原には天からの光が潤沢に降り注いでおり、地上の植物たちに多くのエネルギーを与えている。荒野にあったはずの、無数の石ころ、動物の死骸は、今となっては影も形すら見当たらない。

妾は、そっと胸に手を当てる。今は痛みがないが、先ほどの戦闘で致命傷となる傷を心臓に受けているはずなのだ。致死量の血があふれ出し、妾の身体は血まみれになっていたはず……。

 

「………………」

 

 ない、傷がない。胸に開いた大穴がない。それどころか、貫通していたはずの鎧は戦いに出る前の傷一つない状態でここにあり、戦っている最中にできた細かい傷すら今の妾からは見ることができない。返り血を受けた服は、新品同然の美しさを保っていた。

 

「…………ふむ」

 

 簡単に、一言で言うと、ずばり、妾は混乱していた。いや、混乱するのが正しい反応だと思う。戦場で死んだな、これは、と思ったら、起きた時には目の前に見たこともない草原が広がっていた上に、敵に切られたすべての傷が見当たらない。

 先ほどまでの悪夢が、すべて夢だったのではないかと思ってしまいそうになる。もしくは、あの世というものが本当に存在していて、今の自分はもう幽霊になってしまったのではないか。

 

(……いずれにせよ、動いてみないと、何も進展しないようじゃな)

 

 辺りには草以外には何も見えないが、一応探索でもしてみようか。妾は立ち上がり、身体を動かそうと大きく一息ついた。

 

『……こんにちは!』

 

「っ!?」

 

 突如、何も気配がなかった後ろの方から声がした。敵がまだいたのか!と思い、妾は急いで後ろの方を振り向き戦闘態勢へと移る……が、そこには誰もいない。

 一瞬、気のせいかと考えたが、すぐさまその考えを捨てる。耳の中にはまだ人の声がはっきりと残っている。敵が何らかの術を使っている真っ最中で、油断しているところをぐさり、など笑えやしない。短時間に身体を剣で二回も突かれるなど考えたくもなかった。

 

『……ふむふむ、なるほどなるほど。私の声が聞こえるということは、やっぱりあなたなんですね~』

 

 また、どこからともなく声が聞こえてくる。姿は見えないが、声の質感からして、幼い少女だろうか。かなり間延びした話し方から、あまり敵意は感じられないが、引き続き警戒しながら、辺りを見回し続ける。

 あと、今自分の手元に剣がないことに気付く。どこかで落としてしまったのか内心顔を顰めるが、探している暇などない。いざとなればエレミア殿から教わった技でなんとかするしかないだろう。

 

『んん~、顔はかなり好みですが、胸の大きさはもうちょっと大きいほうが好みですかね。まあ形がいいぶん、これ以上大きくなったらバランスが取れなくなるかもですし……。ふーむ、贅沢な悩みですね~』

 

「……おい、声の主よ。くだらないことを考えているくらいなら、ちと顔くらい見せてくれんかの? 妾も気を張り続けるのは、しんどいのじゃがな」

 

『ぬ? ああ、そうでしたそうでした。近頃は人間の形になる機会がなかったものですから。ちょっと待っててくださいね~』

 

 声の持ち主はそう言った途端、後ろの方に人の気配が現れる。急いで振り向き、そこにあったのは一人の少女の姿だった。身体はかなり小柄で、年齢の方はいっても十五歳前後だろうか。髪は金髪で地面に着きそうになっているほどでかなり長い。服装は、まるで喪服のような黒一色のドレスで、彼女の持つ金色の髪が、金と黒、互いに色を際立たせている。クルリとした愛嬌のある真ん丸な目、可愛らしく顔に笑顔を浮かべるその様子は間違いなく美少女であるといってもよいだろう。妾が普通の状況で目の前の子どもを見ていたら、惚れ惚れと見とれてしまっていたかもしれない。

 だが、今の状況は目の前にいる相手が何者なのかすらわかっていない。敵国の密偵が美しいものに化け相手を油断させ、相手を暗殺することなど日常茶飯事なのだ。

 武器の類は見ることはできないが、どこかに隠し持っているかもしれない。構えを解きつつも、少女から一歩引いて警戒しながら相手の様子を見つめる。

 

「ん~……なかなか怖がられてしまっていますねぇ。ま、しょうがないですけど。はてさて~、どうしたらあなたは警戒を解いてくれるでしょーか?」

 

「……ひとまず、お主が何者であるかを名乗ってくれんかのう。妾もいろいろありすぎて混乱していてな。少しくらい、落ち着かせてほしいのじゃ」

 

「……そーですね。自己紹介は大事ですよね。なら、私のほうから名乗らせていただくとしましょうか」

 

 少女はそういうと、妾の前で小さく一回お辞儀をして、笑顔でこちらの方を見つめ、こう続けた。

 

「私は【人格保有魔導師記憶収集端末】、わかりやすく言うのなら『人格を持ったロストロギア』ということですかね。名前を【ゼロティス】と申します。以後、お見知りおきを!」

 

 一瞬、自分の目が点になるのを感じた。頭を振り、冷静な自分を取り戻そうとするがうまくいかない。自己紹介をして落ち着こうとしたら、さらに混乱してしまうとは何の冗談だろうか。

 目の前の少女の会話、自己紹介で疑問を感じたのは二つの点だ。

 一つは、少女は名前を述べる前、自分の正体を『人格を持ったロストロギア』と紹介したことだ。ロストロギア、という言葉自体は知っている。過去に存在し、そして滅びた高度な文明の魔法や技術の総称であったか。どれも一つ一つが大きな力を持ち、それが原因で滅びた世界もあるとか。

 目の前の少女は、自らのことをロストロギアと呼んだ。人格保有型、つまりは人格を持つロストロギアということなのだろうか。妾が知る限り、ロストロギアに人格が宿るという話はあまり聞いたことがない。昔、『夜天の魔導書』というロストロギアには何体もの人格が宿るという話を聞いたことがあるが、実際目にしたわけではないので真偽のほどはわからない。

 二つ目、少女は自分の名を『ゼロティス』と名乗った。妾は、目の前の少女にあったことも、話したこともない。

 だけど、妾は知っている。『ゼロティス』、妾が物心ついた頃から、その名前は嫌というほど周りの家臣たちに聞かされてきた。

 

『いいですか、シトラス陛下。この宝石は、常にシトラス家と共にあったと、あなたの父、前国王陛下からお聞きしました。きっと、陛下のことを守ってくれるはずですので、大事になさってくださいね』

 

 幼い頃、ノーデラにそう言われて、宝石を渡された。漆黒に輝くその宝石、小さかった時の妾はその黒い闇に飲み込まれてしまうのではないかと思い込み、怖がっていたのを思い出す。

 その名を、【ゼロティス】。シトラス家に代々伝わる魔力補助装置。それが、目の前にいる少女だというのか。

 

「……どういうことじゃ、まるで意味がわからぬ」

 

 混乱がさらに深くなっていく。頭の中がぐちゃぐちゃになり、今にでも倒れてしまいそうだがそんなわけにもいかない。倒れそうになるのを必死に堪え考え続ける。

 

「ま、そうですよね。目が覚めたらわけわかんないとこで起きて、起き上がったら家の家宝と同じ名前の超絶美少女が目の前に現れる……うん、言葉にしてみましたけど、まったく意味が分かりません! やはは!」

 

 妾が混乱する様子を、腹を抱えながら笑い出す。見た目からは感じられない恐ろしいほどの気品のなさ。そんな少女に妾は青筋を立てつつも、怒りを爆発させないよう冷静さを保ち続ける。……が、いつまでもこの調子で笑われ続けると、このまま冷静にいられる気がしない。

 それに、この少女の口ぶり、ゼロティスという名前から、この状況についてなんらかの事情を知っているのだろうと推測する。ひとまず話をしてみないとこの先、進展はないままであろう。

 

「……お主は一体何を知っておる。記憶が正しければ、妾は戦いの後、息絶えて死んだはずじゃ。それが何故、身体に傷一つない状態でこの草原に立っているのか。……話してもらえんか」

 

「……そうですね、いいでしょう! そろそろ、私の方もちゃんと話しておかなきゃと思っていたところなのですよ。ではまず、あなたの今現在の状態なのですが……」

 

 少女、ゼロティスは笑うのをやめる。淡い青色の瞳が妾の顔をまっすぐ見つめてくる。

 

「……あなた、ルーチェ・シトラスはもうすでに死んでしまっています。戦の最中、後ろから剣でぐさりと。ほぼ即死だったようですね」

 

 ゼロティスが、自分がすでに死んでいることを明らかにする。

 ……まあ、ある程度、予想通りの内容であったが。

 

「おや? 意外ですね、自分の死に多少は狼狽えるものかと思っていましたけど」

 

「……今こうして自分の足で立っておっても、心臓を貫かれた痛みは忘れておらぬ。一瞬で血の気の引いたあの感覚も、倒れた時のあの冷たい地面の感触も、確実に妾の中に残っておる。お主の言うとおり、妾が死んだのは確かなのじゃろう」

 

 そう、妾は死んだ。おとぎ話で語られるような英雄の死に方ではなく、あっけなく無様に死んだ。それは確かな事実であり、すでに過ぎてしまったことだ。

 だからこそ、妾の今の状態は、おかしい、の一言に尽きるのである。何故、死者が草原に吹く風を感じ、言葉を発して、地に足をついているのか。普通ではありえない、異常なことなのだ。

 

「妾は一体どうなっておる。何故このような草原に、妾の持つ宝石と同じ名を持つお主と二人で立っておるのじゃ……妾は、あの世にいるとでもいうのか?」

 

 妾の問いかけに、首を横に振る。あの世でもない、死んでいて生きてもいない。ならば、ここは一体どこなのか。

 そんな疑問に答えるように、少女は続けて答える。

 

「……いいえ。ルーチェ、あなたのいるこの場所は天国でも地獄でもありません。この世界は……私、ゼロティスの内部なのですよ」

 

「……ゼロティスの、中?」

 

 ……ますます訳がわからなくなってしまった。どういうことなのか。何故、どういう原理で妾がロストロギアの中に入っているのか。妾の頭では、とても理解が追い付かない。

 

「う~ん、どこから話しましょうかねぇ。では手始めに、私のことについて詳しく説明してあげましょう!」

 

 ズビシッ!と妾に指を立て、ゼロティスは胸を張りながら説明し始めた。凹凸がはっきり浮き出るほど、彼女の胸は出ていないのだが。

 

「私こと、ゼロティスはあなたが生まれる前よりはるか昔、魔法文化が世界に浸透しようとしていた時代に、とある魔導師によって制作され、多くの優れた魔導師の生き方を観測することを目的にした人格を保有する偉大なロストロギアなのですよ。魔導師が生まれると同時に魔導師の魔力の源であるリンカーコアに寄生、もとい憑依することで、宿主が一体どんな人生を送ったか、どのような魔法の使い道を見出したか、生まれてから死ぬまでの出来事のすべてを記録することが私に課せられた使命なのです」

 

 魔導師の生き様を記憶するロストロギア。ということは、彼女ゼロティスは歴代の魔導師の生き方を綴った日記帳ということなのだろうか。

 

「それでは何故お主は妾に取りついたのじゃ? 妾の生きた時代、妾より優れた魔導師など山のようにいたであろうに」

 

 妾の生きた時代は数多くの優れた王が多くの国を統治していた時代。一人一人が優れた武芸、知略を持ち、隣国と激しくせめぎ合っていた。

 妾は客観的に見て、決して弱くはなかったとは思う。頭のほうも、昔エレミア殿に少々単純な思考をしていると言われたことがある以外、まともな方だと信じている。

 だが、結局それまでなのだ。諸国の王より強くはなかったし、軍略にも長けていなかった。強くはないが特別劣っているわけでもない凡才。それが、妾自身が下した自己評価だった。

 

「何、簡単な話です。あなたが持っていた宝石は、魔力の補助装置でもあり、憑依する者を定めるための目印でもあるのです。あなたのお父様が亡くなった後、その宝石を頼りにしてあなたのリンカーコアに憑依したという訳なのですよ」

 

「……全く偶然という訳じゃな」

 

 単純明快、わかりやすい答えだった。要するに、このゼロティスが妾の前に現れたのは、ただ単に一族に伝わる宝石がロストロギアであったというだけの話だ。

 ……なんと空しい理由だろうか。

 

「これを偶然と言うか必然と思うかは、あなたにお任せしますよ。でも、あなたはこの激動の時代で見れば平凡な王なのかもしれませんが、あなた個人の生き方は、私の見てきた多くの人々の生き方の中でも、より優れたものだと思っていますよ。少し先の未来、あなたの英雄伝が店に並ぶ日も来るかもしれませんね」

 

 ……妾の本が店の店頭に並ぶ、そんな冗談みたいな光景があるわけがない。オリヴィエ殿の残した武勇伝や多くの王たちの物語が歴史書に残されることがあったとしても、妾のような小物が本に残ることなどありえはしないだろう。

 

「……面白い冗談じゃな。妾は所詮、凡王じゃ。歴史に名を刻むなど、そんなことあるわけ、」

 

「見てみたいと思いませんか」

 

「……えっ?」

 

 ゼロティスは、妾の言葉を遮り唐突にそう告げる。

 

「あなたは、見てみたいと思いませんか? 今より少し先の未来、あなたの姿がどのように伝えられ、どのような活躍をしたと記されているのか。気になったりはしませんか?」

 

「……そりゃ少しはのう。もし本に妾が登場して、自分の半生がどのように脚色されておるかは、面白そうだし興味はある……じゃが、それよりも……」

 

 生あるものは、過去の物事を知ることが出来る。過去の出来事を知り、それを知識として吸収し、新しい代へと伝えていくことが出来る。

 だが死者は、未来の出来事を知ることが出来ない。自分の死後何があったのか、世界はどうなったのか、自分の大切な人はどんな生きたかを選択していったのか、何も得ることが出来ない。

 妾は、間違いなく後者だ。自国の国民がどうなったのか、将軍や大臣たちは無事逃げることが出来たのか。

 クラウス殿やエレミア殿、クロ殿。それに、オリヴィエ殿。

 妾は大切な皆のその後の生き様を、妾は知ることが出来ない。

 

「……皆は、妾が死んだ後にどんな生き様を描いたのか。それは……知りたかったかの」

 

 戦に出るとき、皆には会うことが出来ないと覚悟した。話したりすることもできないと決意した。

 だけど、皆の生き様を見ることが出来るなら見てみたい。贅沢な夢だと思う。妾には許されない行為だと思う。でも、それでも、少しでもいいから、皆の描いた物語を覗いてみたい。

 ……だが、それはもう叶わぬ夢だ。理由も分からず、妾はゼロティスの中にいるらしいが、いつまでもこうしている訳ではないだろう。彼女は、また次の宿主を探して、魔導師の生き様を記録し続けるのであろう。

 そうして、妾の精神ももうすぐ消えてしまい、妾の儚く贅沢な望みはあっけなく潰えてしまう。なんとも、妾に相応しい終末だろうか。

 終わりは、すぐそこに迫ってきている。

 

「……いいでしょう!」

 

 ゼロティスがそう叫んだ瞬間、周りの風景が消えた。青空も地面も草も風の音すらもなくなった。

 

「……へ?」

 

 あまりの突然の出来事に妾はあっけに取られる。突如真っ暗闇に放り込まれた妾の身体は、地面を失ったことで急速に落下していく。

 ゼロティスも同じように落下していくが、笑みを浮かべたまま表情一つ変えずに妾のことを見つめていた。

 

「お、お主、一体何をしっ……!」

 

 元々混乱の極地に達していた妾の頭が遂に限界を迎える。次の何をすれば良いのかという考えが出てこず、ぐるぐるとどうしてこうなったのかと自問自答するだけだった。

 

「ふふん、言質はすでに取っております! あなたの思い、あなたの夢、しっかりとこの耳で聞かせていただきました! ルーチェ! あなたはとっても面白いです! あなたは私があなたを手放すのではないかと考えていたようですが、そんなもったいないことできる訳がありません!」

 

 すでに妾には、ゼロティスの話を聞く余裕など存在しない。耳から耳へ話が通り抜けていく。もう完全に頭が回らなくなってきた。

 

「あなたの夢を、私が叶えてあげましょう! このゼロティスがあなたに、新しい世界を見せてあげましょう!」

 

 ……他のことは後でゆっくり話しましょう、とゼロティスが言葉を小さく続けた後、妾とゼロティスはこの世界から、完全に消失した。

 

 

 




次からなのは無印編に突入予定!たぶん


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―修正報告所―
2015/4/7:修正しました。指摘してくださったJAM様、本当にありがとうございました!
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