Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜   作:フジ

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ゼスティリアを知らない人の為の簡単な世界観説明会part①+今後の方針についての説明回。

書いてる内にランドンが木崎さんみたいなポジションになり始めてる気がする……

では、どうぞ!


11話 決意と会議と再出発 後篇

「待たせてしまっただろうか? 申し訳ない」

 

日が沈み、月が昇った時間帯。

広場での話を終え、マーリンドの宿『ウォンティガ』の客室へ戻ったアリーシャと晴人。そこには、ランドンとルーカスが待っていた。

 

アリーシャは会議に遅れたと思い謝罪の言葉を口にするが、ランドンは首を横に振る。

 

「一々、謝罪などしなくても結構だアリーシャ姫。会議なら今から始める所だ問題無い……では、まずは、参加する人選についてなのだが……」

 

会議を仕切るランドンは部屋を見渡しながら言葉を続ける。

 

「戦場で起きた『憑魔』による混乱についての真相を知るアリーシャ殿下と『憑魔』に対抗する力を持つ、『魔法使い』ソーマ・ハルト……」

 

アリーシャと晴人へと視線を向けたランドンは次にルーカスへと視線を移す。

 

「そして、ハイランド軍の協力者である『木立の傭兵団』のリーダー、ルーカス。 この会議は無用な混乱を防ぐ為に、私を含め、『憑魔』とやらの存在を見た者に数を絞り行うことにする」

 

未だ、戦場で起きた異常事態に対して半信半疑な兵士達を混えると、話し合いが進まなくなるだろうと配慮したランドンは、憑魔を知覚し、その存在を理解した面子での話し合いの場を設けた。

 

「ん? じゃあ、そこの人はどちらさんなんだ?」

 

ランドンの言葉通りなら、この会議は4名で行う筈だ。だが、晴人は部屋の隅にもう1人の人間がいる事に気付き、ランドンへと問いかける。

 

部屋の隅には、ハイランド軍とは対照的な白銀と赤を基調とした鎧を纏う男がいた。恐らくは、一般の兵士より位が上なのだろう。纏った鎧は、軽装の一般兵よりも、しっかりしたもので、右肩には羽を模した大きな装飾がなされている。

 

「! 貴女は!」

 

その男はアリーシャの姿を見つけると歩み寄り、まるで感謝の意を伝えるように頭をさげる。その唐突な行動にアリーシャは困惑した。

 

それもその筈、アリーシャへ頭をさげた人物はハイランド軍の人間ではなくローランス軍の人間だったのだ。本来敵側である筈の人間にいきなり感謝されると思っていなかったアリーシャは当然、呆気に取られる。

 

「突然、ご無礼を……ですが、本来敵である筈の私の命を救ってくれた貴女にどうしても、直接、お礼を言いたかった」

 

頭を下げた男は、敵意を微塵も見せることなくアリーシャへ礼儀正しく感謝の言葉を告げる。

 

そんな男の言葉を聞きアリーシャは何かに気づいたようにハッとした表情をする。

 

「貴方は……グレイブガント盆地での戦いの時の……」

 

「はい、貴女に正気を失った兵から助けていただいた者です」

 

晴人がランドンと戦っていた時に憑魔に襲われていた兵士をアリーシャは守った。そして、その中には何名かのローランス兵がいた事をアリーシャは思い出す。

 

「いえ……あの時はただ、必死で……」

 

感謝の言葉を告げる男に対して、アリーシャはしどろもどろになりながら返答する。あの時は、憑魔により混乱した戦場で、一人でも多くの命を救いたいと必死で行動したが、まさか本来、敵であるローランスの兵士から感謝を伝えられるとは考えておらず、どう返したら良いかわからないのだ。

 

そんな二人のやりとりを見ながらランドンはローランス軍の兵士について説明する。

 

「その男はローランス軍の『白皇騎士団』の団員だ。アリーシャ姫に助けられたこともあり、捕虜の中で比較的に友好な態度だった事からこの会議に連れてきた。『憑魔』や『天族』とやらについても、ある程度の説明はしている」

 

「信じてくれたのか? かなり突拍子もない話だろ?」

 

「ローランスの皇都『ペンドラゴ』は、ローランス教会の総本山と聞く。ハイランド同様、天族への理解と信仰は殆ど失われているらしいが、あの男が所属する騎士団の団長は両国の関係改善を訴え、一方で天族の信仰にも理解のある男だそうだ。その影響もあるのだろう」

 

憑魔という、目に見えない存在を説明された所でいきなり信じられるものかという晴人の問いかけにランドンは説明を交えながら答えていく。

 

 

「未だ、半信半疑ではあるが戦場で起きた事が異常だったのは私達も理解している。それに、あの男も私もお前やアリーシャ姫が、妙な力を使って戦う姿を見ているのだ。そして、その力で救われた以上は安易に全てを否定することもできんだろう」

 

「そっか……。ま、アンタ達やローランス側にも話がわかってくれる奴がいるってだけでも朗報だよな」

 

この数日でアリーシャから伝えられた『憑魔』や『天族』についての情報に関して、ランドンはまだ全てを信じている訳ではないのだろう。だがそれでも実際にその目で、見て、感じたことから目を逸らす程、彼は臆病でも愚かでもなかった。

 

今はそれでいいと晴人は思う。目に見えない『憑魔』に対して、一定の理解をしてくれる人間がいるだけでも十分な進展だ。

 

「取り敢えず、その人の事情はわかったよ。けど、なんでこの人を会議に参加させるんだ? 師団長さん。 アリーシャに礼を言ってもらう為だけって訳じゃないんだろ?」

 

 

そんな中、晴人はランドンがなぜこの会議にローランス軍の人間を参加させたのかその真意を問いかけた。

 

「当然だろう。この男を参加させたのは、捕虜にしたローランス兵から得た情報の中に気になるものがあったからだ」

 

「気になる情報?」

 

「あぁ…今回のグレイブガント盆地での戦いは導師の力を利用した一斉攻勢だった事は知っているな?」

 

「あぁ、バルトロとかいう大臣様がアリーシャを人質にしてスレイ達の力を利用しようとしたんだよな」

 

「そうだ、そして本来なら導師の戦場への配置を終え準備が出来た状態となる正午に一斉攻勢をかける手筈となっていた。だが……」

 

その言葉にアリーシャと晴人は、開戦に間に合わなかった事を思い出す。

 

「開戦の時刻が早まり、私達は間に合わなかった……」

 

「そうだ。前線にいた兵士によると、いつの間にかハイランド陣営内に現れたローランス軍が攻撃を仕掛けてきたことが原因だという事なのだが、これが少し妙でな……」

 

「妙とは?」

 

アリーシャの問いかけを受けたランドンは視線をローランス兵へと向ける。そして、視線を受けたローランス兵の男が口を開いた。

 

「開戦の直前、私は最前線で一部隊を率いて警戒してました。その時、突如、ローランス陣営内に、まるで幻のように現れたハイランド軍に奇襲を受けたのです。それで止む無く反撃に転じたのですが……」

 

その言葉にルーカスが驚きの声をあげた。

 

「はぁ? なんだそりゃ? 話が完全に食い違ってるじゃねぇか。適当な事をいってるだけじゃ「嘘ではありません!」」

 

ローランス兵の言葉にルーカスは疑いの眼差しを向けるが、男はそれを強く否定した。その瞳は真剣そのもので、いい加減な事を言っているようには見えない。

 

「……」

 

その男の態度に晴人は何かを考え込むような仕草を見せる。それに気付いたアリーシャは晴人にどうしたのか問いかける。

 

「どうしたんだハルト?」

 

「少し気になることがあってさ……アリーシャはあの男の言う事をどう思う?」

 

「……正直、嘘を言っているようには見えない。だが、話が食い違っている以上どちらかの証言が間違っているということに……」

 

「いや、案外そうでもないかもしれないぜ」

 

その晴人の言葉に部屋にいる者達の視線が彼に集まった。

 

「ハルト、それはどういう……」

 

その言葉の意味を問いかけるアリーシャに晴人は返答する。

 

「アリーシャが人質に取られて、スレイは初めて戦争に参加したんだろ? そしてそこに『災禍の顕主』が現れた……少しばかり、出来過ぎだと思わないか?」

 

「ッ! それは……」

 

「そして、俺たちが開戦よりも早く戦場に到着できるのを見越したように開戦が早まった。両軍ともが相手の軍の謎の部隊に奇襲を受けて……」

 

「まさか……『災禍の顕主』が戦争そのものに介入を!?」

 

両軍の大規模な激突が仕組まれたものかもしれない。その可能性に気付いたアリーシャは思わず声をあげた。

 

「それなりに頭は回るようだな。やはり、お前もそう考えたか……」

 

一方のランドンは冷静に晴人の意見を受け止める。

 

「これでも、回りくどい手で人を嵌める奴らと戦ってきたもんでね……ん? お前もって事は師団長さんもそう考えたのか?」

 

「あぁ、少なくとも、今までの小競り合いであの様な事態が起きる事はそうそう無かった。それが、導師が参加した戦いで、いきなり起これば疑いもするだろう」

 

そう言ったランドンの言葉に疑問を覚えた晴人はランドンへと問いかける。

 

「そうそう無かったって事は過去にも今回と似たような事があったのか?」

 

「あぁ、憑魔とやらが関わっている確証は無いが、十数年前の両軍の大規模な、激突の際に似たような事が起きたという証言がある。当時は与太話と鼻で笑ったが、今回の事を考えれば、その『災禍の顕主』とやらが現れた可能性があるかもしれん……まぁ、今はその件については置いておく。問題は……」

 

「今後、両軍が大規模な激突をしようとすれば、そこに再び『災禍の顕主』が何かしらの形で介入してくるかもしれないってことだな」

 

その言葉に部屋の空気が重くなった。仕方ないだろう、大勢の兵士が怪物となり、正気を失い殺しあう光景を見たのだ。それが再び繰り返されると聞いて明るくなれるはずがない。

 

「導師という戦力が失われたからには、バルトロ大臣も安易に攻勢には出ないだろう。だが、今回の戦いで勢いを得た以上、準備さえ整ってしまえば……」

 

 

「もう一度大規模な一斉攻勢に出る。それを迎え討つローランスも全力で反撃するだろうな。そうなったらヤバイぜ」

 

憑魔という存在が絡んでくる以上、もはやこの戦いは単純な勝ち負けの二元論では語れない。戦いを初めてしまった時点で人間の負けのようなものだ。

 

「なぁ、確かハルトはこの前の戦いで大量の憑魔を何とかしたんだよな? その力は使えないのか?」

 

アリーシャから話を聞いたのだろう、ルーカスは先日の戦いで晴人が行った大規模な浄化について、可能なのか問いかける。

 

だが、晴人は首を横にふった。

 

「……いや、期待に応えられるなくて、悪いけど、あの力は今は使えなくなってる。もう一度、同じ状況になったら今度こそどうにもならない」

 

「そうか……ま、そう都合良くもいかないよな」

 

申し訳なさそうに答える晴人だが、ルーカスは気にした様子も無く、その話を打ち切った。

 

そこに、アリーシャが口を開いた。

 

「それなら、バルトロ大臣に直接、憑魔の事を説明するのは? ハルトが私に与えてくれた力を使えば、ランドン師団長やルーカス殿の様に、協力してくれるかもしれ「それは難しいだろう」…な、なぜですか!?」

 

 

ランドン達と同様にアリーシャが触れる事で憑魔を知覚できる特性を利用すれば、バルトロも協力してくれるのでは無いか。そんな考えを述べたアリーシャの言葉はランドンにより否定された。

 

「その理由は俺も気になるな。俺はこの大陸や国の情勢について詳しくないし」

 

一方の晴人もランドンの言葉の意味を問う。

 

「フン……ならば丁度いいか。まず、お前に現在のハイランドについて簡単に説明するぞ」

 

今後の話に必要と判断したのかランドンは晴人に対して国の成り立ちから説明を始めた。

 

「元々、ハイランドとローランスは1300年前に大陸を統一していたアスガード王家が分裂してできた国だ。ローランスが成立したのは600年前の『マオテラスの時代』で、その後に再興したハイランド王家によりハイランド王国が成立している。以降、武力衝突は繰り返され、グレイブガント盆地は度々戦場となった」

 

「ライラ様が言うには200年前が『デス・エイジ』と呼ばれる時代の始まりだったそうだ。それらの災厄は嘗ての導師により鎮められたらしい。何故か理由はわからないが導師の存在は公式の語録からは消滅しているが……」

 

ランドンが国の成り立ちを説明し、それに合わせ、アリーシャが天族から得た『憑魔』関連の補足をしていく。

 

歴史の授業みたいで懐かしいなと頭の隅で考えながらも、今後に必要な事ということで、晴人はその説明に耳を傾ける。

 

「そして、約20年程前から大陸の気候の激変により両国共に政情が悪化し、それに伴い、2国間の関係性も悪化、紛争が頻発している。これがこの大陸の現状だ」

 

ランドンは一度話を区切ると次にハイランドの説明を始める。

 

「そして、我がハイランドについてだが、現国王は幼く、実質的にはバルトロ内務大臣を始めとする『官僚派』が政治の実権を握っている」

 

「なるほどね。けどなんでバルトロの協力を得るのは難しいんだ?」

 

「アリーシャ姫の立場の問題だ」

 

「アリーシャの?」

 

ハイランドの内情が把握できていない晴人は疑問の声をもらす。

 

「バルトロ大臣は、ローランスとの戦争に意欲的な立場の人間だ。対して、アリーシャ姫は、王位継承権は最下位だが、それでも王族の人間であり、今までも『官僚派』とは逆に国民への負担を強いる戦争への反対やローランスとの関係改善を訴えてきた」

 

「現国王を傀儡に政治の実権を握っているバルトロ達にとって王家の人間でありながら戦争に反対するアリーシャは目の上のタンコブ……嫌がらせで済ませられない、今迄のアリーシャへの仕打ちもそれが原因って訳か……ハァ、どうにも俺が出会う大臣ってのは碌な奴がいないな」

 

一人の人間が抱える苦悩と絶望、それを利用し嘲笑い、喜劇と評す、嘗て倒した悪の魔法使いを思い出した晴人は思わず顔を顰める。

 

「そうだ。だからこそ難しいのだ。もしアリーシャ姫の主張を認めれば、ローランスとの戦争に積極的だった『官僚派』は今までの方針が間違っていたと認める事になる。それをきっかけにアリーシャ姫を中心とした『王政派』の主張が勢いを取り戻すかもしれん。そうなれば自身の立場を脅かされるかもしれないとバルトロ大臣は考えるだろう」

 

「そんなっ! 私は権力争い(そんなこと)がしたい訳では!」

 

ランドンの言葉にアリーシャは思わず声を荒げる。バルトロのやり方に対してはアリーシャは確かに否定的な立場を取っているが、彼の政治家としての手腕は理解しているし、彼の排斥を目論んでいる訳ではないのだ。

 

 

「それはわかっている。だが、忘れた訳では無いだろう? マーリンドへと向かう前に、城に呼ばれた導師がバルトロ大臣への協力を断った結果どうなったのか」

 

「それは……」

 

城内で襲い掛かってきた兵士に対して神衣を使用したスレイの姿にバルトロは恐怖していた。兵士の大群をあっさりと蹴散らした導師の力をバルトロは恐れていたのだろう。だからこそ、アリーシャを人質にとる事で、スレイの力を手中に収めようとしたのだ。

 

「もし、アリーシャ姫が導師と同様の力を手に入れたと知ればバルトロ大臣は確実に姫を排除しようとするだろう。少なくとも大臣にとっては、真偽が定かては無い『憑魔』という存在よりも特別な力を手に入れた姫の方がよっぽど自分の地位を脅かす脅威に見えるだろう。先日の戦場で戦果をあげる為に命令を聞かない導師の存在を疎ましく思い、挙句には穢れに飲まれた私の様にな……」

 

 

 

それは、今まで憑魔という存在を知らず、人間社会での権力争いを見てきたランドンだからこその意見なのだろう。だからこそ、ランドンは憑魔の視える人間と視えない人間の考え方の根本的なズレを理解し、指摘した。

 

「私が『憑魔』についての、姫の話を信じたのは、あの戦場を直接視たからだ。兵達が正気を失い暴れる様を見ていない大臣が、『憑魔』の事を聞いた所で、信じてもらえるかは厳しいだろう……。例え、姫の力で『憑魔』を視せたとしても、下手をすれば姫が妖しげな力で何かしたと言い掛かりを受ける可能性すらある」

 

「オイオイ……なら、どうすんだよ?」

 

「それは……」

 

ランドンの言葉に対して、ルーカスは思わず声を上げるがランドンは、その問いかけに答える事が出来ない。彼もまた明確な答えを持ち合わせている訳では無いのだ。

 

ランドンはハイランド王国騎士団の中では戦場の指揮を任さられる程の地位にいるが、官僚派に意見を変えるまでの力は持っていない。どうしたものかとアリーシャ達が考え込む中、その空気を破るように晴人が口を開いた。

 

「なぁ、バルトロの説得が難しいならローランスの方はどうなんだ?」

 

唐突に話の方向を変えた晴人はローランスの兵士へと問いかける。

 

「どうなんだ……というと?」

 

ローランスの騎士は晴人の言葉の意味がよくわからないのか、その意味を問う。

 

「いや、師団長さんが言うにはアンタが所属してる『白皇騎士団』の団長さんは、天族の信仰に理解がある奴なんだよな? なら、ならローランスのお偉いさんの中にも『天族』や『憑魔』に理解のありそうな奴はいないのかなって思ってさ。もしかしたら、戦争を止めるのに連携できるかもしれないし」

 

そんな晴人の問いを受けた騎士は、どこか微妙な表情で応え始めた。

 

「……現皇帝のライト様は、王族の中でも天族信仰に理解のある方です。身分の低い者にも別け隔てなく接する方で将来は素晴らしい王になると期待されています」

 

「マジか! それなら……って『将来は』?」

 

素人なりに出した意見で少しの光明が見えたと晴人は喜ぼうとするが、騎士の言葉に引っかかりを覚える。

 

「はい……ローランス王家は前皇帝であるドラン様を始めとしてご子息の長男であるレオン様と次男のコナン様が亡くなっており、ライト様は幼くして即位したので……」

 

「えぇっと、その子は今、何歳位の……」

 

「……今年で11になられます」

 

「……マジで?」

 

まさか、ローランス側の皇帝も、そんな幼い子供だとは予想していなかった晴人は思わず間の抜けた声をもらす。

 

「マジだ。ローランス王家の血生臭い御家騒動は結構、有名だぜ? なんせ、正室であるローランス王妃の息子が二人が立て続けに死んだからな、側室の子供であるライト皇子は王妃一派に疎まれてるってのもよく聞く噂だな」

 

傭兵という立場上、様々な噂に詳しいルーカスが晴人の問いに答える。

 

「あー、って事はもしかして、その王妃様がバルトロみたいに実権を握っているとか?」

 

ローランスが抱えている実状を聞かされた晴人は、ローランスの実権を握っているのもバルトロと同じ類の人間なのかと考え、内心、溜息を漏らした。しかし、騎士は首を横に振るとそれを否定する。

 

「いえ、確かに現状でローランスの実権を握っているのはライト皇子ではありませんが、それは王妃ではありません」

 

「ん? じゃあ誰が実権を握ってるんだ?」

 

「……ローランス教会の枢機卿、『リュネット・フォートン』……彼女が現在、皇子の補佐を行っており、帝国の実質的なトップです」

 

「教会の?」

 

国の実質的なトップが教会の人間と聞かされたアリーシャは少しばかり驚いた表情を浮かべた。ハイランドの官僚派にもハイランド教会のトップであるナタエル大司教が属しているが、立場としてはバルトロの下の人間であり、トップとまではいかない、ましてや、女性の身でそんな重責を伴う地位にいるという人物にアリーシャは内心、興味を持った。

 

「はい、フォートン枢機卿は元々、教会の内務や財政の再建で功績を残しローランス教会のトップである『マシドラ教皇』に次ぐ地位まで上り詰めた方です」

 

「お、それならイケそうじゃん。教会のトップってことは『天族』や『憑魔』にもある程度は理解を示してくれそうだし」

 

表情を明るくするがそれに反比例するように騎士の表情は曇る。

 

「確かに、枢機卿は、しっかりとした信仰心を持っているかもしれませんが……」

 

言葉を濁した騎士に晴人達は疑問を覚える。

 

「え? 何かマズイのか?」

 

「……明確な証拠がある訳ではないのですが、フォートン枢機卿には幾つか怪しい点が……」

 

「怪しい点とは……?」

 

「……一年前、ライト様の補佐を務めていた『マシドラ教皇』が突如、失踪しました。ローランスの為に尽力し王家や騎士団からの信頼も厚い教皇が何の言伝もなく姿を消したのです」

 

「……それに枢機卿が関わっているかもしれないと?」

 

「はい……そしてそれこそが、私がこの場で貴方達にローランスの情報を提供している理由のひとつでもあります。戦場の混乱を鎮めた特別な力を持つ貴方達の力をお貸し願いたいのです」

 

そう言った騎士はアリーシャと晴人に視線を向ける。

 

「ハルトと私の力を? 」

 

「……憑魔絡みの話ってことか?」

 

「確証はありません。ですが、我々には理解出来ない人知を超えた力が関わっている事は間違い無いかと……」

 

「と言うと……?」

 

「『マシドラ教皇』の失踪と同時期の事です……ローランスの皇都『ペンドラゴ』の一帯に大雨が降りました。それ自体は珍しい事ではありません。ローランスは元々、厳しい風土の土地ですから……ですが、その長雨は一度も止むことなく、既に1年も降り続いているのです……」

 

「ッ!……それは!」

 

「確かに普通じゃないよな……」

 

異常気象で済ませられないレベルの長雨。しかも、それが教皇の失踪と同時期に始まったと聞き晴人とアリーシャは枢機卿への疑惑を強めた。

 

「長雨による作物の不作で国民の不安は強まりました……そんな時です。枢機卿が人知を超えた力を振るい様々な奇跡を起こし始めたのは……」

 

得体の知れない不安を抱えた民の前に奇跡を起こす存在が現ればどうなるか答えは決まっている。

 

「人々はそれを見て枢機卿を支持し教会に縋るようになりました。そして教会の内外から支持を得た枢機卿はマシドラ教皇の後を継ぎ、ライト皇子の補佐を務め、実質的なローランスのトップとなったのです」

 

その言葉を聞いたアリーシャは深刻な表情で自身の意見を告げる。

 

「……それらの出来事に枢機卿がどれだけ関わっているのかは、まだわからないが、確かに、様々な出来事が重なり過ぎている以上、裏に何かあるのかもしれない……」

 

「特別な力か、もしかすると、その枢機卿ってのは憑魔か、あるいは導師なのかもしれないぜ。それに、止まない雨ってのも気になるな。何か特別な力が関係してるのはら確実だしな」

 

ローランスの裏側で何かが起きていることをアリーシャと晴人は確信する。そんな2人の言葉を聞いて騎士は再び頭を深々と下げ2人の力を貸して欲しいと願い出た。

 

「敵国である我々がこのような事を頼むなど都合が良すぎると思われるかもしれません! ですが、どうかあなた方の力を貸して頂けないでしょうか! 勿論、皇子への謁見に関しては、此方で可能な限り協力させていただきます!」

 

「あぁ! 私の力で良ければ……」

 

そう言った騎士の熱意に押され、アリーシャは、すぐ様その願いを聞き入れようとする。しかし、その声はランドンにより遮られた。

 

「姫、優しいのは結構ですが、あまり安請け合いはしないことです」

 

「え?」

 

バッサリと切り捨てるようなランドンの言い分にアリーシャは思わず固まる。

 

「冷静に考えていただきたい。先の戦いの影響で現在の2国間は緊張状態です。大っぴらにハイランド側の人間として、ローランスへ行く事は難しいでしょう。となれば、身分を偽り、非公式にローランスへ進入するしかない。ですが、交渉が上手く行かなければ最悪、捕らえられ処刑される可能性すらある。あまりに危険です」

 

「……それは」

 

現実的なランドンの意見にアリーシャは思わず言葉が詰まってしまう。

 

彼の言うように、ペンドラゴを目指すのが簡単な事では無いのはアリーシャにも理解できる。成功する保証など何処にもないし下手をすれば命を失いかねない。

 

ネガティヴで現実的な考えが頭をよぎりアリーシャは俯いてしまう。

 

そんな彼女を晴人は何も言わず見つめ続ける。

 

そして、少しの間を空けて、顔を上げたアリーシャはゆっくりと口を開く。

 

 

「私は……」

 

 

 

その言葉に迷いは無い……

 

 

 

「僅かでも可能性があるなら、それに賭けてみたい! どれだけ困難でも希望は捨てない!」

 

 

そうして、迷いなくハッキリと言い切ったアリーシャを見て晴人は静かに微笑むと、その言葉に続くように口を開く。

 

 

「決まりだな。次の、俺達の目的地はローランス帝国の皇都『ペンドラゴ』だ」

 

 

彼もまた迷いなくアリーシャに同行する意の言葉を言い放つ。アリーシャへの協力は晴人からすれば先程の広場で改めて誓ったばかりの事だ。彼女に同行する事に異論は無い。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

2人の、その言葉を受け、ローランスの騎士は喜びの表情を浮かべた。

 

一方のランドンは神妙な顔つきのまま言葉を紡ぐ。

 

 

「……希望的観測通りにはいかんぞ?」

 

「知ってるよ。希望は縋り付く為の物じゃない。だからこそ、いつだって、自分に出来ることを全力でやるしかないんだ。信じた希望を掴む為に……」

 

だから、操真晴人のやる事は何一つ変わらない……

 

 

 

「……危険な真似を無理強いしたくなかったのだが、余計なお世話だったようだな」

 

2人の言葉を聞いたランドンは観念したように声を零した。

 

「……師団長、では貴方も?」

 

その言葉にアリーシャはランドンもまた、自分達と同じ事を考えていたことを察した。

 

「姫の得た力を活かすには確かにローランス側の説得に向かう方が上策だろう。ハイランドにいれば大臣の監視が付く上に、マーリンドの時のような嫌がらせを受けて、蚊帳の外で身動きを取れなくされる可能性が高い……」

 

バルトロ達が、今までアリーシャにしてきた仕打ちを知っているランドンもまた、現状のハイランドにいてもアリーシャの得た力を活かせない事を理解していた。

 

「それに、触れる事で天族を知覚させる力を得て、尚且つ、王族という立場を持つ姫ならば、少なくともライト皇子に和平を目的とした交渉を行う為の最低限の条件は満たせている。加えて、ローランス国内には導師と天族もいるのだろう? 合流出来れば、和平交渉にもプラスになる筈だ」

 

 

アリーシャの力を使えば天族の言葉を皇子達に聞かせる事もできる。他ならぬ不可視の存在であった天族の口から『憑魔』についての警告聞けば信憑性も少しは高まるだろうというのがランドンの考えだ。

 

 

「だが、枢機卿の件と言い不確定な部分も多い。間違いなく危険を伴う。かなりの重責だ、本当に宜しいのか? アリーシャ姫」

 

最終確認の意味を込めてランドンはアリーシャに問う。

 

「はい、両国の和平の為に私に出来ることがあるのなら、どんなことでも行う覚悟です」

 

ランドンから視線を逸らさず返答したアリーシャの言葉を聞き、ランドンは瞳を閉じる。

 

「ならば、大臣の目を誤魔化す役は私が引き受けよう。明日、マーリンドを発ちレディレイクへ戻るぞ。少しばかり手間だが、まずは姫が脱走した件を誤魔化す必要があるからな。ローランスへ向かうのはその後だ。詳しくはレディレイクへ戻ってからだ」

 

アリーシャとハルトをローランスに送り飲む為に、何かしら考えがあるのか、ランドンは一度、レディ・レイクへ戻る事を告げる。

 

「了解。でもいいのか? バレたらアンタの立場が危ういだろ?」

 

晴人は協力してくれるというランドン自身が大丈夫なのかと問う。

 

その問いにランドンは顰めっ面で返答する。

 

「大丈夫な筈が無いだろう。大臣にバレたら確実に私は処断されるだろうさ。だがな……だからと言ってこのままで良いと思っている訳でも無い。今更、掌を返して、都合良く、天族を信仰する気などないが、先日の戦場を見た上で、あの惨劇を繰り返す程、愚かな人間に私はなりたくない……それだけだ」

 

それが、今のランドンの『軍人として』ではなく『人として』の譲れないプライドなのだろう。

 

「ふっ……そうかい」

 

その言葉を聞いた晴人は、これ以上は野暮だと感じ、それ以上の事は言わなかった。

 

 

「さて、では今日はここまでにしておこう……明日の早朝、我々は一度レディレイクへ発つ。各自自室で休息をとれ」

 

 

その言葉と共に会議は終了し解散となった。

 

晴人達は休息の為、各自の部屋へと戻り、夜は更けていった。

 

 

 

 

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そしてマーリンドでの会議から数日後、アリーシャ達は無事、レディレイクへと帰還したのだが……

 

 

 

 

 

 

「確かに私は、私に出来ることならなんでもやると言った……言ったのだが……」

 

 

自身の屋敷の一室で全身が映る程の大きな鏡の前に立ったアリーシャは、とても微妙そうな表情を浮かべていた。

 

「とても、お似合いですよ。アリーシャ様」

 

そんな、アリーシャの横に立ったメイド服を着た女性が満面の笑みでアリーシャに声をかける。

 

「すまない……やはりもう少し地味なものにしないか?」

 

どこか必死そうにアリーシャはメイド服を着た女性に語りかける。

 

「何を仰るんですかアリーシャ様! 貴方はディフダ家を継いだ者として、それに見合ったお召し物をするべきです!」

 

だが、メイド服の女性はアリーシャの頼みを一蹴する。

 

「だ、だが私はこれから長旅をするのだから「ダメです」……う」

 

メイド服の女性はアリーシャの細やかな抵抗を容赦なく叩き潰す。

 

その威圧感に怯むアリーシャ。その時、部屋の扉がノックされる。それに気づいたアリーシャは慌てて返事をした。

 

「あ! 待たせて済まない! 入っても大丈夫だ」

 

彼女の返事の後に扉が開かれ、アリーシャの見知った男性、操真晴人が部屋へと入ってくる。

 

入室した晴人はアリーシャの姿を見ると一瞬固まり、目をパチクリさせた。そんな彼の反応を見てアリーシャは思わず焦ってしまう。

 

 

「ど、どうしたんだハルト? この服はあまり着慣れていないのだが、どこかおかしいだろうか!?」

 

テンパるアリーシャ。そんな彼女の反応に晴人は思わず笑みをこぼす。

 

「いや、いつもの騎士服も似合ってるけど、そっちはそっちで似合ってるなと思ってさ」

 

調子を取り戻し気障ったらしい言葉を言い放つ晴人。そんな彼の言葉にアリーシャは戸惑いながらも、鏡へと再び視線を移す。

 

「身分を隠す以上、騎士服がダメなのはわかる……わかるが、何もこの服じゃなくてもいいだろう……」

 

 

普段の騎士服ではなく、胸元の大きく開いた白い服、深緑色のベスト、黒いレースのついた丈の短めの白いスカート、白の長手袋、黒のニーソックス、ベストと同色の羽飾りのついた白い大きな帽子、耳と首元には其々赤い宝石をあしらったイヤリングどペンダントという、普段の彼女とは真逆な印象を受ける服装。

 

 

鏡には典型的な貴族のお嬢様と言うような服装を纏ったアリーシャの姿が不満そうな表情と共に映されていた。

 




てなわけで、アフターエピソードネタを使っていくスタイル。テイルズといえば衣装ネタは鉄板ですしね。

アフターエピソードを思い出して心に負った傷を抉られたという方がいたらゴメンなさい

以下、最近の友人との雑談ネタ

友「アニメゼスティリアPVに登場した新キャラの衣装の模様と最新作のベルセリアのスクリーンショットに映ってる雪の国の旗の模様が一致したらしいな」

フジ「ま、まだベルセリアがゼスティリアの続編と決まったわけじゃないし」(震え声)

友「消えちゃうよ……20回目の誕生日に(ry」ウンメイノー

フジ「タイムベント探さなきゃ」(使命感)
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