Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜   作:フジ

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知ってるかな? 夢っていうのは呪いと同じなんだ。途中で挫折した者はずっと呪われたまま……らしい。
貴方の……罪は重い……!

〜仮面ライダー555 第8話 夢の守り人 より〜
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仮面ライダー555で木場勇治/ホースオルフェノク役を演じた泉政行さんが亡くなったそうです。35歳という若さだったそうです。自分にとってファイズは平成ライダーで一番好きな作品でかなりショックでした。

一話から最終話まで、怪人になってしまった存在として主人公と並行して描き続けられる、裏の主人公といえるポジションを演じ印象に残る役柄で、当時の自分にはとても衝撃的なキャラクターでした。ご冥福をお祈りします……


さて、暗い雰囲気を引きずってもしょうがないので、切り替えていこうと思います。では最新話をどうぞ!

あと、IS×SWORDに関しては、現在、少しばかり難航中で遅くなっています。申し訳ありませんが、もう少々、お待ちください。




13話 恩師 後篇

「ああ、済まない。まずは名乗るべきだな。私の名は『マルトラン』。ハイランド王国の軍顧問にして、騎士団の教導騎士を務めている者だ」

 

 

アリーシャの屋敷に現れた女性、『マルトラン』の自己紹介に晴人は内心、彼女を警戒した。官僚派から疎まれているアリーシャの境遇から、晴人は彼女がバルトロからの回し者かと考えたのだ。

 

だが……

 

 

「マルトラン師匠(せんせい)!」

 

 

その疑いは、現れたアリーシャの喜びの声に霧散した。出発の準備を終えたからなのか、アリーシャの服装は普段の騎士服に戻っている。

 

「えぇっと……アリーシャ、この人は?」

 

 

戸惑いながらも晴人はアリーシャとマルトランの関係を尋ねる。

 

「前に話した事があっただろう? 私には尊敬する人がいると。私に騎士の在り方と槍術を教えてくださったのが、マルトラン師匠なんだ」

 

その言葉に晴人はアリーシャと出会った日の夜に交わした会話を思い出す。

 

 

『『騎士は守るものの為に強くあれ。民の為に優しくあれ』……私の尊敬する人の言葉だ』

 

 

誇らしげな表情で語るアリーシャの姿を思い出した晴人は、マルトランがその人物であった事を理解したと同時に、先程、マルトランとアリーシャをイメージを重ねた理由を理解した。

 

「(なるほどね……アリーシャの口調や騎士への憧れは、この人の影響って訳か)」

 

内心で納得する晴人。そんな彼にマルトランがもう一度問いかける。

 

「あまり持ち上げられると困るのだがな……それで、君は?」

 

「ん? あぁ、俺は操真晴人。アリーシャの友達……でいいのか?」

 

改めて考えると何と言えば良いのかわからないのか、歯切れの悪い答え方をする晴人にアリーシャは苦笑しつつも頷くと、マルトランに彼の事を紹介する。

 

「師匠、彼は、先日出会った際に、困っていた私に手を貸してくれた恩人なんです」

 

「ほぉ、それならば感謝しなくてはな。礼を言おう、ソーマハルト。アリーシャは、一度思い込むと止まらなくてな。師としては気が気でないんだ。真っ直ぐな事は良い事と思うが、私としてはもう少し頭の堅さをなんとかして欲しいと思っているのだが……」

 

「せ、師匠!」

 

感謝の言葉の後に、困り顔で弟子の短所を述べるマルトランに、アリーシャは恥ずかしそうに声をあげる。

 

「あ、それはわかるかもな。結構、無茶するもんなアリーシャは」

 

「は、ハルトも! そ、そもそも君にだけは、無茶云々は言われたくないぞ!」

 

続いて、マルトランの言葉に乗っかる晴人に、アリーシャは心外だとばかりに声をあげ詰め寄っていく。

 

「待った待った! 冗談だってアリーシャ 」

 

「……それは、どうだろうな」

 

「ホントホント! マジで冗談だって」

 

「……ふん」

 

むくれるアリーシャの機嫌をなおそうとする晴人。どこか親しげな二人のやり取りに、マルトランは薄く笑みをこぼす。

 

「心配になって、任務を手早く終わらせ、切り上げて来たが、どうやら杞憂だったようだな」

 

「師匠、それはどういう……?」

 

「なに、バルトロ大臣が、マティア軍機大臣を介して私に命令を出し、レディレイクから遠ざけてきたからな。また、何かしらの形でお前に危険が及ぶと思ったのだが、その様子を見る限り、無事に切り抜けたようだな」

 

アリーシャに近しい立場の人間という事もあり、マルトランは、アリーシャがマーリンドに向かわされる数日前に、レイクピロー高地にある廃村の調査、及び、最近になって増加してきた遺跡を荒らす盗掘者の捕縛を命じられ、レディレイクから遠ざけられていた。普段から、大臣達がアリーシャへ行ってきた悪辣な行為を知っているマルトランは嫌な予感を覚えつつも命令に従いレディレイクを離れるしかなかったのである。

 

「それに、マーリンドの件も耳にしたぞ? 導師と共に疫病の蔓延したあの街を救ったそうだな? 良く頑張ったなアリーシャ……」

 

そう言ったマルトランの言葉にアリーシャは慌てて首を横に振り否定する。

 

「そ、そんなことはありません! マーリンドを救ったのはスレイ達のお陰で私は大した事は……」

 

そんなアリーシャの言葉にマルトランは一度、苦笑すると優しい声で語り掛ける。

 

「そうやって謙遜する所は、姫の美点だと思うが、こういう言葉は素直に受け取っておくものです。特にこれは、ハイランドの騎士としてではなく、マーリンド出身のひとりの人間としての感謝なのですから」

 

その言葉にアリーシャはハッとした表情を浮かべる。

 

「そうでした。師匠はマーリンドの出身でしたね」

 

「あぁ、だからこそ、ひとりの人間として、そして姫の師としても、今回の事を誇りに思うよ」

 

そう言って凛々しい表情を崩し、優しい笑みを浮かべたマルトランにアリーシャもつられて笑みをこぼした。

 

「あ、ありがとうございます! マルトラン師匠!」

 

憧れの存在である師からの賞賛の言葉。それが嬉しく無い筈も無い。喜びの表情を浮かべて礼を述べるアリーシャにマルトランはまたしても苦笑する。

 

「礼を言っているのは私の方なのだがな……」

 

「いいんじゃないか? そういう所もアリーシャらしいと思うぜ?」

 

少しばかり呆れ気味のマルトランに晴人はフォローをだす。その言葉をマルトランは薄く笑みながらな肯定した。

 

「ふっ……そうかもな。さて、姫の無事も確認できた。私は王宮に今回の任務の報告に向かうとしよう」

 

どうやら、マルトランはレディレイクへ帰還し、すぐにアリーシャの安否確認に来たらしい。本来ならいち早く王宮にいるマティア軍機大臣へ報告しなくてはならない立場なのだが、それを曲げて此処へ来たようだ。

 

「も、申し訳ありません! 師匠には師匠の立場があるというのにお手数を…… 」

 

「アリーシャ、頭を下げる必要はない。これは私の独断だ。姫が気に病む事はない」

 

「……はい」

 

軍顧問と教導騎士の立場を持つマルトランはハイランド騎士団の中でも、高い地位の人間だ。様々な問題を抱える現在のハイランドにおいて、彼女のような優秀な人材を必要とする事は多く。多忙であるマルトランの手を煩わせてしまった事にアリーシャは表情を暗くする。

 

尊敬する師に心配をかけ手を煩わせてしまった自分の未熟さを痛感したのだろう。そんな彼女の考えを察したのか、マルトランは優しい声でアリーシャに語り掛ける。

 

「そんな顔をするなアリーシャ。貴女はまだまだこれから幾らでも伸びる、焦る必要はない。そうだな……暫くは多忙な身だが、時間ができた時に久しぶりに稽古をつけよう。師として、弟子の成長を確かめておきたいからな」

 

「! ……はい! 楽しみにしています!」

 

そんなマルトランの言葉にアリーシャは表情を明るくする。傍でそれを見る晴人には、そのやり取りがまるで親子や姉妹のように見えた。

 

アリーシャの返事を聞くとマルトランはフッと短く笑みを浮かべると、別れの挨拶を告げ、王宮に向かうために踵を返そうとするが何かを思い出したのか振り返るとアリーシャへと問いかけた。

 

「そういえば、此処に来るまでに耳に挟んだが。ランドン師団長の直属になったというのは本当なのか?」

 

アリーシャとランドンとの和解と協力関係の事を知らないからだろうが、アリーシャがバルトロの手先であったランドンの下につくことを心配したのか、マルトランはアリーシャへと事の真偽を問う。

 

その言葉を受けたアリーシャは間を空けずにその問いを肯定した。

 

「はい、事実です。明日にはランドン師団長の命でレディレイクを発つ予定になっています。長期の任務になりそうなので暫くはレディレイクへと帰れないと思います」

 

「そうか……マーリンドの件が片付いたばかりだと言うのに」

 

弟子の身を案じたのか表情を曇らせるマルトラン。だが、アリーシャは首を横に振るとマルトランに告げる。

 

「大丈夫です師匠。私はハイランドの為に自分にできる事をするだけです。そこに不満はありません。師匠も昔に仰っていたでしょう? 『故郷を背負い戦えることは自分の誇りなのだ』……と。私も同じです。それに、私を支えてくれる者もいます」

 

一瞬、アリーシャが晴人へと向けた視線に気付いたのかマルトランは、そうかと呟くと晴人へと向き直る。

 

「ソーマハルト、出会ったばかりの人間にこんな事を言われても困るだろうが、どうかアリーシャが傷付いた時は、力になってやってほしい。私の弟子は何かとひとりで抱え込む質なのでな……」

 

「師匠……?」

 

唐突なマルトランの言葉に困惑するアリーシャだが、マルトランは気にせず晴人の目を真っ直ぐと見つめたまま視線を逸らさない。

 

そんな彼女に対して晴人は、同じく視線を逸らさずに応えた。

 

「そのつもりだよ。約束もしたしな」

 

「約束?」

 

「あぁ。もしアリーシャが夢の途中で絶望しそうになったら、その時は俺が『最後の希望』になるってね」

 

堂々と言い放った晴人にマルトランは少しだけ驚いたように目を見開くと笑い声を漏らした。

 

「フフフ……最後の希望か。この前の導師の青年といい、最近のアリーシャは出会いに恵まれているらしい。では、最後の希望殿? これからもアリーシャを宜しく頼む。アリーシャも無茶は禁物だぞ? 現実という物はいつだって厳しいものだからな」

 

「わかっています。『今、見えている物こそが現実であり事実』。目を背けるだけでは何も変えられない……ですよね!」

 

「ふっ、わかっているのならそれでいいさ」

 

そう言って踵を返したマルトランは、今度こそ立ち止まる事なく去っていった。

 

 

 

__________________________________

 

 

「ん? どうしたんだハルト?」

 

夕焼けに染まるヴァーグラン森林。

ラストンベルの付近にまで辿り着いた晴人とアリーシャはバイクから降り、徒歩でラストンベルへと向かっていた。

 

バイクの存在しないこの世界の町にマシンウィンガーを持ち込むのは、どうしても目立ってしまう行為であり、正体を隠す必要がある今回の任務においては、それは避けたいという事から、ラストンベルにある程度まで近づいてからは移動手段を徒歩に切り替えた。

 

そんな中、数日前の出来事を思い出していた晴人の様子に気付いたアリーシャが晴人に声をかけたのだ。

 

 

「ん? いや、数日前のレディレイクでの事を思い出してさ。ほら、アリーシャの師匠と会ったときのさ」

 

「マルトラン師匠の?」

 

「あぁ、あの時、アリーシャの事を頼まれたろ? いざローランスの領地に潜入するとなると思い出しちゃってさ」

 

「あの時の事か……マルトラン師匠があの様に笑うなんて珍しいとは思ったが」

 

「え? そうなの?」

 

「あぁ、厳しくも優しい方だが、あの様に笑うのは本当に珍しいんだ。師匠とは10年の付き合いだが、あの様に笑う事は殆ど見た事が無い」

 

何気無い会話。その中で晴人はアリーシャとマルトランの付き合いがとても長い事を知る。

 

「10年? 随分と長い付き合いなんだな」

 

その言葉にアリーシャは何処か遠い場所を見る様な目をしながら口を開く。

 

「あぁ、7歳の頃に両親を亡くし、1年程過ぎた頃だろうか、ひとりだった私の下に警護と指南役として配属されたのがマルトラン師匠だったんだ」

 

「……」

 

『両親を亡くした』という、その言葉に、一瞬、晴人の脳裏に一つの光景が過る。

 

 

ベットに横たわる男性と女性

 

 

今にも力尽きそうな弱々しく繋がれた手

 

 

最初の『絶望』の時であり、同時に『希望』を託された瞬間……

 

 

 

 

脳裏に過った、どこか懐かしさすら覚えるその光景を胸にしまい込みながらも、晴人はアリーシャの言葉に耳を傾ける。

 

「私は小さい頃から本を読むのが好きでね。マルトラン師匠も学問の街と呼ばれるマーリンド出身ということもあって、そういった知識が豊富で様々な話を私に聞かせてくれたんだ。お陰で、小さかった私は師匠にすぐに懐いてしまった」

 

昔の事を懐かしそうに語るアリーシャ。幼くして両親を失った彼女にとって、マルトランの存在が、どれほど大きかったのかは想像に難く無い。

 

「それから、私は少しばかり歳を重ね、王族という立場から否応なしに貴族や政治家が抱える負の面を見る様になっていった。災厄の時代の中で日増しに悪くなっていくハイランドの情勢や民の苦しみから目を逸らし、媚を売り自分の保身の事しか考えていない者は決して少なくなかったんだ」

 

幼くしてアリーシャは、人の世の抱える汚さを見てしまった。純粋な子供にとって大きな衝撃だった。

 

「毎日繰り返される、貴族や政治家達の腹の探り合いに嫌気がさして、ある日、溜め込んでいた不満を吐き出した時、師匠は言ったんだ……『目に見えているものが現実であり、事実。嘆くだけでは、現実は変わらない。世界を変えたければ、まずは自分が変わらなければならない』……とね」

 

 

その言葉が、今のアリーシャを形作る切っ掛けとなった。

 

「それでアリーシャは騎士を目指したんだな。いつか穢れのない故郷を取り戻す為に」

 

「あぁ、それから私は騎士を目指し、マルトラン師匠に槍術の指南を本格的に受け騎士団へ入団したんだ」

 

 

「そうか……それがアリーシャの希望(ゆめ)の始まりなんだな」

 

アリーシャの希望の始まりを知った晴人はそう言って優しい笑みを浮かべる。それを見たアリーシャは、照れたのか頰を、書きながら視線を逸らす。

 

「か、語り過ぎてしまっただろうか? 少し恥ずかしくなってきたな」

 

「恥ずかしがることはないさ。そうやって託された希望は大きな力になる。どんな絶望的な現実にだって立ち向かえる大きな力に……」

 

胸の内に宿った希望の力。操真晴人はその強さを誰よりもを知っている。

 

『忘れないで、晴人。あなたはお父さんとお母さんの希望よ』

 

『晴人が生きてくれる事が俺たちの希望だ……今までも……これからも』

 

 

今もなお、心に強く刻まれた言葉。

それがあったからこそ彼は『二度目の絶望』を乗り越え『希望の魔法使い』になったのだから……

 

「あ、ありがとうハルト。そう言って貰えると自信になるよ」

 

アリーシャは、まだ照れ臭そうだが礼を言う。

 

「氣にしなくていいぜ? 俺は思った事を言っただけだしな。所で、気になるんだけどアリーシャの師匠って事は、あの人ってかなり腕が立つのか?」

 

アリーシャの槍術の腕を知る晴人としては、その師であるマルトランの実力というものに多少なりと興味があった。

 

「あぁ、教導騎士という立場にある事から想像できるかもしれないが、マルトラン師匠の槍術はハイランドでも最強と謳われている。師匠は若くして家を継ぎ、20年前のローランスとの戦いの時には既に『蒼き戦乙女(ヴァルキリー)』という勇名が敵味方問わず知れ渡っていたとの事だ。10年前のローランスとの大規模な戦いでは、一人でローランスの一部隊を壊滅させたと聞く」

 

まるで、昔話できく様な英雄の逸話のようなマルトランの肩書き。それには流石の晴人も驚きの表情を浮かべる。

 

 

「それはスゲェな。アリーシャの槍の腕も良くなるわけだ……ん? 20年前? 」

 

関心する晴人だが、アリーシャの言葉に違和感を覚える。

 

「ん? どうかしたのかハルト?」

 

「いや……アリーシャの師匠ってさ」

 

神妙な顔つきで言葉を紡ぐ晴人。思わずアリーシャも真剣な表情になる。

 

そして……

 

 

 

 

 

「齢、幾つなんだ?」

 

「……は?」

 

間の抜けた声が溢れた。

 

「いや、20年前に既に騎士として名を馳せていたんだろ? あの人の外見、20代後半でも通用するレベルだったから気になってさ……」

 

その言葉にアリーシャをジト目で晴人を見る。

 

「ハルト……女性の年齢の話をするのは失礼だと思うぞ?」

 

「いや、でもさ……」

 

「でもも何もない。特に師匠の前で年齢の話は禁句だ。痛い目を見るぞ」

 

「え? なんかあったの?」

 

「その……だな……悪気は無かったんだが昔、師匠に『まるで母親の様』と言ったのだが、そうしたら、物凄く険しい表情で『まだ、そのような年齢ではない』と返されてね……その後の槍の稽古が明らかにいつもより苛烈になった……ははは」

 

 

余程、キツかったのか乾いた笑いを漏らすアリーシャに晴人は思わずドン引きながらも内心で、この話題をマルトランの前ではしないことを心に誓った。

 

「あはは……俺も気をつけよう……ん? アレは……」

 

そんな会話を交わしながらも森林を、歩き続ける二人の目に、樹木以外の光景が飛び込んでくる。

 

大きな石造りの巨大な城壁。そこに備え付けられた巨大な門の前には商人と思わしき者達が並んでおり、見覚えのある騎士服を纏った者達の検査を受けている。

 

「漸く到着だな」

 

「あぁ、アレがローランス領の街。ラストンベルだ」

 

 

__________________________________

 

 

 

「お久しぶりです。無事到着できたようで何よりです」

 

ラストンベルの大通り。様々な商人達が行き来するその場所で晴人とアリーシャの二人はマーリンドで協力を依頼してきた白皇騎士団の男と再会した。

 

当初の予定通り、ラストンベルの検問に関しては白皇騎士団に手回しがされており、二人は問題なく通過できた。今後の通行に関してもたった今、騎士から正規の通行証を渡された為、よっぽどの事がない限りは、今後の通行にも支障は無いだろう。

 

アリーシャは早速、今後についての話をしようとしたが、騎士の男は申し訳無さそうに、それは明日の朝にして欲しいと言った。

 

「明日の朝に? それはどういうことだろうか?」

 

 

事情が気になった二人は、その理由を尋ねる。

 

「誠に申し訳ありません。実は7日程前から、このラストンベルでは妙な事件が発生していまして……」

 

「妙な事件?」

 

「はい……夜間に、街の住人が襲われるという事件が多発しているのです。幸いにも死者は出ていませんが、襲われた者の中には重傷を負った者もおり、街の住人達の不安が増しています。民の安全を考慮し私達、白皇騎士団も夜間の警備を増強し、事態の解決を図っているところでして……」

 

「これから、街の警備のお仕事ってわけか……それならしょうがないか」

 

「……申し訳ありません」

 

心底申し訳無さそうに謝罪の言葉を告げる騎士。

 

「いやいや、大切な事だろ? 謝ることはないって」

 

「その通りです。民の安全を守るのは騎士の務めです。胸を張ってください」

 

そんな男に二人は、気にすることは無いと応える。

 

「お気遣い感謝します。お二人ともお疲れでしょう。宿に部屋をとってありますので、今日はお休みください」

 

「いえ、此方こそ、お気遣い頂き助かります」

 

「そんじゃ、お言葉に甘えさせて貰おうかアリーシャ」

 

「あぁ、そうしよう」

 

そう言って二人は騎士に別れを告げ、大通りに面したラストンベルの宿屋『ランドグリーズ』へと向かおうとする。

 

 

そこに突如として大きな音が鳴り響いた。

 

 

「な、なんだ?」

 

「鐘の音?」

 

この街について知らない二人は思わず驚き固まってしまう。そんな二人の疑問に騎士の男が答える。

 

「あぁ、お二人は、この街に来るのは初めてですから知らないのは無理もありませんね。これは、日が沈むのを告げる鐘です」

 

そう言って上を見上げる騎士につられて二人も上を見上げる。そこには大きな二つの建築物の間をつなぐ様に備え付けられた大きさの異なる計6つの巨大な鐘楼があった。

 

「これが、今の音の正体か」

 

「はい、このラストンベルは優秀な職人が集まる街で街の建築物には、様々な意匠がなされています。その中でもこの大鐘楼は職人達の技術を集めた物で、ラストンベルの名所と言われています」

 

「へぇ……惜しいな。任務じゃなかったら、ゆっくり観光したい所だ」

 

「む、ハルト。あまり気を抜き過ぎるのは「わかってるさアリーシャ。さ、宿屋に行こうぜ」……それなら、いいが……」

 

軽口を叩く晴人を注意しようとするアリーシャだが、晴人は、それをのらりくらり躱し、宿屋にむけて歩き始め、アリーシャはそれを追った。

 

 

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「ごちそうさま! ……いやぁ、上手いなここの料理」

 

「あぁ、初めて食べる料理だったが、とても美味しかった」

 

宿屋『ランドグリーズ』の食堂。

晴人とアリーシャの二人は、ラストンベルの名物料理である、豚の角煮と牛肉の赤ワイン煮込みを食べ終え一休みしていた。

 

「とりあえず、今の所は順調だな」

 

「だが、結局ラストンベルではスレイ達とは合流できなかった」

 

「そればかりは仕方ないさ。俺が意識不明だった期間やレディレイクで時間を食っちまったからな。下手すりゃ10日以上前にはラストンベルを出発しているかもしれない。騎士さんが何か知っているかもしれないし詳細は明日を待とうぜ」

 

「そうだな……しかし、それとは別に気になっていることもある」

 

「……この街に加護領域が無いってことか?」

 

「あぁ……それ自体は別におかしくないんだが、この街は戦場に近いというのに、穢れが殆ど感じられ無い。とても、じゃないが長期間、加護領域の恩恵を受けていないとは思えないのだが……」

 

 

ラストンベルに到着したアリーシャが最初に気になった事は、この街に加護領域が無いことだった。それ自体は別段おかしいことではない。天族信仰の廃れたハイランドの街は、どこも加護を失っていた。ローランスの街がそうだとしても変では無いが。ローランス領で戦場となるグレイブガンド盆地に一番近いこの街は、殆ど穢れが感じられない程、その影響を受けていなかった。加護領域による自浄作用なしで、その状態を維持している。アリーシャはそれが引っかかったのである。

 

「確かに気になるな……なんなら明日、少し調べてみるか?」

 

「それがいいかもしれない。この街にも教会があるようだし、まずはそこで話を……」

 

 

アリーシャがそう言った瞬間、ガシャン! と食堂に食器が割れる音が鳴り響いた。

 

「す、すいません! すぐに代わりの物をお持ちしますので!」

 

二人が驚いて音のした方向を見ると、40代前後の女性が客に謝りながら、床に落ち割れた食器を集めていた。恐らくはスープの入った食器を運んでいたのだろう。床にはスープが飛び散っていた。

 

謝罪し、厨房へも戻っていった女性の様子に他の客席に座る客達がヒソヒソと会話を始める。

 

「女将さん、2日前からからずっとあの調子だな」

 

「仕方ないさ……可愛がっていた1人娘のマーガレットが行方不明なんだ。いくら騎士団が捜索してくれているとはいえ気が気じゃないだろうよ……」

 

「唯でさえ、ここ最近は物騒な事件が起こってるってのに……」

 

「もしかしたら、マーガレットはもう……」

 

「おい! 滅多なことを言うな! 女将さんに聞こえたらどうする」

 

なにやら辺りで囁かれる、不穏な会話の数々に晴人とアリーシャは顔を見合わせる。

 

「(行方不明事件? この女将さんの娘さんが? 騎士さんの夜間の警備の強化にはそういう理由もあったのか)」

 

聞こえてきた会話から事情を察する晴人。

 

しかし、そこに追い打ちをかけるように客の1人が言葉を漏らした。

 

「もしかして、マーガレットは天族様の怒りを買ったんじゃないのか?」

 

「「ッ!」」

 

 

『天族』という言葉にアリーシャと晴人は反応し、その会話に聞き耳を立てる。

 

「おい! だから縁起でも無いことを言うな!」

 

「でもよ! 聖堂で『あんなこと』を言ったんだ! もしかしたら、司祭様が言っていたように天族の怒りを買って罰が当たったんじゃ「なぁ、その話。少し聞かせてくれないか」 な、なんだアンタ!」

 

アリーシャの身分を隠さなくてはならない事を考えれば、可能な限りは目立つような行為は避けるべきだっただろう。だが、晴人は、それを理解した上で、躊躇わず会話を交わしていた男に声をかけた。

 

そんな話を聞かされて、何もしないなど操真晴人にはできなかった。

 

「いきなり割り込んできて何を言ってやがる! 面白半分で言ってるのなら「頼む、大切な事なんだ」……う」

 

 

見かけない男が野次馬根性で話を聞こうとしたのかと怒りを露わにした男性客だが、怯まずに真剣な表情で尋ねる晴人に押され黙り込むと、ポツリポツリと話し始める。

 

「マーガレットが、10日くらい前に、聖堂で変な事を言ったんだよ……」

 

「なんて?」

 

尋ねる晴人に男は言いずらそうにしながらも口を開く。

 

 

「『この聖堂に天族はいない』ってな……」

 

 




ゼスティリア設定資料集を買ったフジ

友「約2アリーシャ分の出費で、設定のガバガバっぷりを再確認したな」

フジ「黙ってろよクズ」

友「ミツザネェ!」


設定画のサイモンちゃんが可愛かったので、もうどうでもいいですハイ(<::V::>)
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