Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜   作:フジ

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だが気をつけるべきなのはフジだ。奴は11月発売のゲームを楽しんでる。
更新が遅れたのも、PXZ2とSWBFとMHXって奴らの仕業なんだ

と冗談はさておき、ゼスティリアでライラ役を務めた松来さんが10月末に亡くなったとのことです。遅くなりましたがご冥福をお祈りします。スパロボの新録聞きたかったなぁ……



今回は、ジークフリートや浄化の力等、一部の変更点が明かされています
では、どうぞ


17話 約束

甲高く鳴り響いた一発の銃声。

 

轟ッ!

 

突如現れた謎の男が自身の持つ銃でこめかみを撃ち抜いたその瞬間、男を中心に強烈な突風が吹き荒れる。

 

 

「くっ!? この風……この力の大きさは……!?」

 

 

まるで男から溢れ出した様に荒れ狂う風。そこから感じる力の大きさにアリーシャは思わず目を見開く。

 

「(風の天族!? だが、この力の大きさは……スレイの神衣並だぞ!?)」

 

今の男から感じる力の大きさは一般的な天族が持つ力を大きく逸脱していた。

 

アリーシャが知る限り、長い年月を生きた天族であるライラやエドナからですら、これ程の大きな力を単独では出すことなど出来ない筈なのにだ。

 

そして、巨大な風の力を纏った男は憑魔化したサインドへ攻勢にでる。

 

 

「ビート上げるぜ!」

 

『!?』

 

一瞬にして距離を詰めた男は右手側のペンデュラムを憑魔へ向け放つ。

 

 

「ルードネスウイップ!」

 

 

『グウウゥゥゥゥゥ!?』

 

風を纏い一直線に放たれたペンデュラムは高速でしなり、無数の刃となって憑魔に叩き込まれる。

 

強力な攻撃の直撃に憑魔は苦悶の声をあげ、後ずさる。

 

 

「(強い! だが……あの方が例え強くても憑魔を浄化する事は……)」

 

 

アリーシャが知る限り、浄化の力を振るう天族は炎の天族であるライラくらいだ。例え戦闘力が高くとも浄化できなければ憑魔を止める事はできない。そう思いアリーシャは加勢しようと槍を構えようとする。アリーシャの視線の先ではダメージを受けた憑魔の傷が回復し始めている。

 

焦るアリーシャ。だが、謎の男は慌てる事なく先程の拳銃に次弾を装填する。

 

リロードの為にバレルのロックを解除し折り畳まれた状態で一発の弾丸を込め、再びバレルを元に戻した男は、今度は自身ではなく憑魔へとその銃口を向ける。

 

「(今度は敵に向けた? ……それにあの落ち着き様……まさか、あの武器、浄化が可能なのか?)」

 

本来なら天族といえども浄化の力を持たなければ穢れを祓うことは出来ない。だと言うのに落ち着き払った男の行動にアリーシャは男の持つ銃が、浄化を可能にするものなのかと推測する。

 

そして、男は引き金に指をかける。

 

「……あばよ」

 

発せられる感情を殺したような冷たい声。そして、男が引き金を引こうとした瞬間……

 

「ッ!!」

 

 

【エクステンド! プリーズ!】

 

 

「うお!?」

 

「ッ!? ハルト!? 一体何を!? 」

 

鳴り響いた音声と共にエクステンドの魔法により離れた場所にいたウィザードの腕が伸び、男の銃を掴んで銃撃を阻止する。

 

憑魔を庇う突然のウィザードの行動にアリーシャは困惑と驚きの声を上げた。

 

しかし、事態は止まらない。

 

膝をついた竜人型の憑魔に対し、様子を不安そうにみつめていたマーガレットが大きな声で呼びかけたのだ。

 

 

「サインド! 大丈夫!? 私のこと、わかる!?」

 

大切な友達を案じ必死に呼びかけるマーガレット。その言葉に憑魔の動きが鈍る。

 

 

『マァ……ガ…レ……ット……? ウァ……ァ……』

 

 

 

呻く様に漏れた言葉。そこにはまだ僅かばかりの理性が残されていた。

 

 

「うん! 私だよサインド!」

 

 

『ダ…メ……ニゲ……テ……ア……ァ……アァァァァァア!』

 

 

マーガレットの言葉に憑魔は頭を降り、大きな叫び声を上げる。

 

そして強力な旋風が竜人型の憑魔を中心に巻き起こる。

 

 

「くっ! これは!?」

 

「あん? 『ドラゴニュート』が風の天響術だと? 変異種か?」

 

 

旋風により視界が遮られアリーシャ達は憑魔の姿を見失う。そして風が止んだ跡には……

 

 

「……地面に……穴?」

 

憑魔と化したサインドは姿を消し、先程まで憑魔がいた場所には、地面に巨大な穴が空いていた。アリーシャは慌てて、その穴へと駆け寄り、下を覗き込む。

 

「これは……地下に空洞があるのか?」

 

薄暗くよくは見えないが、空いた穴の先には謎の空間が広がっていた。周りが夜な事もあるが、覗き込んだだけでは高さや広さがわからない事から地下の空間がかなり広いものである事をアリーシャは察する。

 

そこに、天族の男が穴に歩み寄り、アリーシャ同様、地下を見つめる。

 

 

「ティンダジェル遺跡の奥に逃げ込みやがったか……」

 

「! ……これが、ティンダジェル遺跡?」

 

男の口から出た言葉から地下に広がる空間がサインドが先程、言っていたティンダジェル遺跡だと知り、アリーシャは再び穴を覗き込む。

 

「(サインド様が、調査の進んでいないと言っていたのは、この地下遺跡の事だったのか……。確かに、過去に訪れた遺跡にも地下にあるものが多かったな……失念していた)」

 

 

スレイ達と初めて出会った遺跡をはじめ、アリーシャが過去に訪れた事のある遺跡の中には地下にあるものも少なくは無かった。その事を思い出し、アリーシャは地下遺跡の存在に納得できるするのだが……

 

 

「ハァ……やれやれ、ありゃ遺跡の奥に逃げ込みやがったぞ……それで? お前さん、いったい、どういうつもりだい?」

 

「ッ!? なにを!?」

 

 

ガキンッ!!

 

 

鳴り響く金属音。軽い調子だった天族は目を鋭く細めウィザードへ、片手のペンデュラムを放ったのだ。

 

ペンデュラムの先端にある鋭く尖った鉱石がウィザードが振るった刃と接触し火花を散らし、アリーシャはその行動に驚きの声をあげる。

 

「手伝って貰おうなんて期待しちゃいなかったがな……だからって邪魔される筋合いは無いとは思わねぇかい? 」

 

「っ! そうだハルト…… さっきは何故あの様な事を?」

 

先程の憑魔への銃撃を妨害したウィザードに対し、鋭い視線を向けながら理由を問いかける男。アリーシャもまた晴人の考えがわからずに困惑しながら、問いかける。

 

 

「……」

 

 

 

だが、ウィザードは、2人の質問に答える事無く黙り込んだままだ。

 

 

「オイオイ……黙りかよ」

 

質問に答えないウィザードに場の空気は鋭さを増していく。

 

だが……

 

 

ドサッ……

 

 

「! マーガレット!」

 

 

突如倒れたマーガレット。そんな彼女にウィザードとアリーシャは変身を解除し、急いで駆け寄る。

 

そんな2人を見て、場の空気が崩れた事に天族の男はガシガシと頭を掻くと大きく溜息をついた。

 

 

「無視かよ……ハァ……まぁ、しょうがねぇか」

 

そう言って男もまたマーガレットに歩み寄ろうととする。

 

そこに……

 

 

「お主ら、其処で何をしている!」

 

 

 

突如響く声、三人が驚いて声のした方向へと視線を向けると……

 

 

 

「い、犬………!?」

 

「犬ではない……これでもれっきとした天族じゃ」

 

 

 

素っ頓狂な声を発したアリーシャの視線の先にはマーガレットの飼い犬、ワックとは別の、老人の様な声をした白い犬が佇んでいた。

 

 

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「で、では『オイシ』殿は、先日、このティンダジェル遺跡の奥でスレイ達に助けられたと?」

 

 

「左様。憑魔となった我が身を導師スレイ達に救われたのじゃ。ワシは昔はヴァーグラン森林一体を加護する天族での。その後は加護を蘇らせる為に器となりそうな物を探して過ごしていたのじゃが……そうか……サインドが憑魔に……」

 

 

先程の出会いから数刻後、アリーシャ達は地下にある遺跡の一室にいた。

 

犬の姿をした天族、『オイシ』は気を失ったマーガレットとワックを見るやアリーシャ達に自分に着いてくる様に言うと彼女達を遺跡群の奥に案内した。

 

オイシが言うにはヴァーグラン森林にはグレイブガント盆地での戦いによって敗走した敗残兵を狙った『敗残兵狩り』が横行しており、夜に気を失った子供を連れて歩くのは危険だからということらしい。

 

 

オイシに案内された先には割れた地面に地下へと続く梯子が取り付けられており、地下のティンダジェル遺跡へと通じていたのである。

 

梯子を下りた先は様々な紋様が刻まれた石造りの大部屋となっていた。真正面には恐らくは遺跡の奥へと続くのであろう半円状の門があり、それ以外にも角に一回り小さい部屋が幾つか見受けられた。

 

その内の左奥にある小部屋に案内されると、そこには遺跡に似つかわしくない、真新しいベットが幾つか並んでおり、オイシはマーガレットとワックをそこに寝かせる様に言った。その後の診察でマーガレットとワックの体調には特に危険は見られず、マーガレットの気絶は、あくまで憑魔化していた疲労と緊張状態を脱した事によるものである事がわかり、アリーシャは安堵の息を零した。

 

マーガレット達の無事が確認できると、アリーシャは改めてオイシに自己紹介をし、これまでの経緯についてを説明した。それを聞いたオイシは、自身がこのティンダジェル遺跡で導師であるスレイ達に救われたと告げたのだ。

 

どうやらヘルダルフとの戦いの後、グレイブガント盆地から離脱したスレイ達は、この遺跡に逃げ込み休養を取っていたらしい。その後、遺跡の奥から感じた穢れを察知し、遺跡を調査した結果、憑魔となったオイシを救ったとのことだ。

 

因みに、運び込まれているベッド等は、『ある者達』が先日までこの遺跡を秘密の活動拠点として使っていた際の物との事で、拠点を移した後も一部の物資が置き去りにされているらしい。

 

「(成る程、この遺跡で休養を取り、スレイ達はラストンベルへと向かったのか……しかし、それにしても……)」

 

スレイ達の事を思考しながら、アリーシャはチラリとオイシへと視線を向ける。

 

その視線に気付いたオイシはアリーシャに問いかける。

 

「犬の姿をした天族が珍しいかの?」

 

「あっ! いえ、その……申し訳ありません、不快な思いをしたのでしたら謝ります」

 

人以外の姿をした天族を初めて見たアリーシャは、つい好奇心に満ちた視線をオイシに向けた事を謝罪する。

 

犬に謝る貴族の少女という絵面は客観的には、かなりシュールなものだ。

 

「気にせんでいい。今の世では天族が見える人間は稀じゃ。ましてやワシの様な人以外の姿をした天族は珍しいからの」

 

「天族にも色々な姿の方がいるのですか?」

 

「それはの ……」

 

アリーシャが口にした疑問。オイシがそれに答えようとした時、その言葉は遮られた。

 

「天族にも色々あんのさ。生まれながらに天族だった奴。何かの拍子に天族になっちまった奴。修行を重ねて天族に至った奴。って具合にな。天族って名称は種族を指す言葉というよりかは特殊な力を持った存在になった奴らの総称なのさ」

 

何故かアリーシャ達についてきていた天族の男が壁に寄りかかりながらオイシの言葉を遮りアリーシャの疑問に答えたのだ。

 

「ハァ……『ザビーダ』よ。人の会話を遮る所は変わっていないようじゃの」

 

「会話に加わるのが上手いと言って欲しいぜオイシの爺さんよ」

 

「どの口が言うのやら……それで? アリーシャ殿達はともかく、何故、風来坊のお主までここについて来た?」

 

「決まってんだろ、この遺跡の奥に逃げたサインドの件を片付けるついでに、このお嬢ちゃん達が何者なのか知っておこうと思ったからさ。なにせ導師に似た妙な力を持っているんだからな、天族の一人としては気になるところだろ?」

 

ザビーダと呼ばれた男は軽い調子で笑い、アリーシャへと視線を向ける。

 

「私達の事を……ですか? ええっと……ザビーダ様?」

 

戸惑いながらもオイシの告げた彼の名前を口にし、問いかけるアリーシャ。

 

「あぁ、導師としての契約も無しに浄化の力を使う『魔法使い』の人間なんて俺様も初めて見たからな……しかも、ライラや導師殿の知り合いとはねぇ、世間ってのは狭いもんだ」

 

「! スレイ達を知っているのですか?」

 

「ん? あぁ、前にレイフォルクでちょっとな」

 

「レイフォルク……スレイ達がエドナ様と出会った場所……」

 

嘗て、疫病の蔓延したマーリンドに向かう道中で一時的に別行動を取っていたスレイ達が霊峰レイフォルクでザビーダに出会っていた事を知ったアリーシャは驚きつつその時の事を思い返す。

 

「(スレイ達はあの山でザビーダ様にも出会っていたのか……そういえば、合流した時にスレイやミクリオ殿が神妙な顔をしていたが、レイフォルクで何かがあったのだろうか?)」

 

レイフォルクから戻ってきた後、スレイは度々、暗い表情で何か考え込む事があった。理由を聞いてもすぐに何時もの明るい表情に戻ってはぐらかされてしまって理由はわからなかったが、もしかしたらレイフォルクで何かがあったのでは無いかとアリーシャは考える。

 

 

そんな彼女の思考を遮りザビーダが言葉を発した。

 

「……へぇ。もしかして、エドナちゃんまで導師殿と旅してんの?」

 

「! エドナ様とも、お知り合いなのですか? その通りです。エドナ様もライラ様と陪審契約を結びスレイ達に同行しています」

 

「ほぉ〜、あの(・・)エドナちゃんが人間と旅をするとは意外だねぇ」

 

「? というと?」

 

「ん? いや、こっちの話さ。そんでよ、もう一つついでに聞いて置きたいんだが……構わないかい、魔法使い殿?」

 

アリーシャの問いかけをはぐらかし、突然、おちゃらけた態度を消し去ったザビーダは、先程から今までずっと黙り込んでいた晴人へ視線を向け、問いかける、

 

 

「……何が聞きたいんだ?」

 

ふざけた態度の消えたザビーダの視線を受け晴人が静かに口を開く。

 

「わかってんだろ? さっきの戦いで、なんで俺の事を邪魔したのかってことさ」

 

張り詰め始める空気。それを見つめるアリーシャは口を挟む事なく事態を見守る事しかできない。いや、本当の事を言えば彼女も気になっているのだ。なぜ、先程、晴人がザビーダの攻撃を妨害したのかが。

 

そんな、静まる部屋の中で晴人はゆっくりと口を開く。

 

「ザビーダって言ったな。お前こそ、本当は、なんで俺がお前の邪魔をしたのかわかってるんじゃないのか?」

 

その言葉を受け、ザビーダの目つきに鋭さが増す。

 

「……何が言いてぇ?」

 

 

その視線を真っ向から受けながら晴人は確信を持って告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前……さっき、憑魔になったサインドを殺そうとしただろ」

 

 

 

 

その言葉にアリーシャは思わず驚きの声をあげた。

 

「な!? ハ、ハルト? ……いったい何を言って……」

 

「……」

 

狼狽するアリーシャ。そんな中、オイシは神妙な顔つきでザビーダを見つめる。

 

そして、晴人は言葉を続ける。

 

「さっきアンタが構えた銃。アレがどんな代物なのかは知らないが、アレから感じた力はスレイが使っていた浄化の力とはまったく別のもんだった。なにより、あの時、サインドに引き金を引こうとしていたアンタの顔はとてもじゃないが、命を救おうとする奴の顔には見えなかったよ。まるで、介錯でもしようとしてる奴の顔だった」

 

引き金に指をかけた際のザビーダの表情。晴人は、其処から感じた違和感に咄嗟に反応し、攻撃を妨害した。

 

そして、その勘は決してハズレてはいなかった。

 

「そうか……20年前、ワシが憑魔となる以前に風の噂で聞いた時はまさかとは思っていたがザビーダ……お主」

 

ザビーダを見つめるオイシの口から哀しみの篭った声が溢れる。

 

「噂? オイシ殿……それはいったい?」

 

問いかけるアリーシャ。

 

そして、オイシは重い口を開く

 

 

「……ある風の天族が各地で憑魔と化した天族を殺しながら旅をしている……付いた呼び名は『憑魔狩りのザビーダ』……天族の間では有名な話じゃよ……所詮は与太話だと思っていたのじゃが……」

 

「……真実だったというのですか? で、ですが、何故そのような!?」

 

ザビーダは、困惑し問い質そうとするアリーシャの視線を受ける。だが、彼は全く悪びれる様子もなく軽い調子で告げた。

 

「憑魔は地獄に送る。それが俺の流儀だからさ」

 

「なっ……!」

 

その言葉を受けアリーシャ思わず絶句した。

 

ザビーダの発言は、アリーシャが今まで天族に抱いていたイメージを破壊するものだったからだ。

 

アリーシャにとって天族という存在は、清らかで、命を尊ぶ者達だった。

 

そして、現に、今まで出会った天族達は性格や人間との接し方に差はあれど彼女の思うように、命を尊び世界を行方を案じる者達ばかりだった。

 

だからこそ、平然と同族の命を奪うと言うザビーダの発言はアリーシャにとって大きな衝撃だったのだ。

 

「そ、それは説明になっていませんッ!! 命を奪わなくとも、浄化の力なら……」

 

天族に対して、尊敬を持って接するアリーシャが、何時に無く語気を荒くする。

 

だが、ザビーダはアリーシャの言葉をアッサリと否定した。

 

「お嬢ちゃん、世の中そうそう簡単な話で済まねぇのさ」

 

「え?」

 

アリーシャの言葉を遮ったザビーダは静かに告げる。

 

「確かに数百年前は浄化の力を司る天族や、導師として戦う人間は大勢いたさ。だが、天族を知覚できる人間が減り、天族信仰が失われ、天族の存在が空想の存在となっていくにつれ、浄化の力を持つ天族も減っていった。なんでだと思う?」

 

「それは……」

 

「天族は人間ほど穢れへの耐性を持たねぇ。だからこそ、穢れから身を守る為に導師を器として契約を交わすんだ。だが、人の世から導師の素養を持つ奴は減っていった。そうなれば、導師なしで憑魔に立ち向かわなけりゃならない天族はどうなるか? 答えは簡単だ……憑魔との戦いの中で、浄化の力を持つ天族自身が穢れに飲まれ憑魔になっちまうのさ」

 

「……その結果が、今のグリンウッド大陸だと言うのですか?」

 

「その通り、導師は徐々に数を減らし、人間達の中で御伽噺の存在になっていった。そして、20年前、この大陸にいた最後の導師が消えた。そして、それと入れ替わるように『奴』が現れたのさ」

 

「奴?」

 

「今代の『災禍の顕主』、黒い獅子の顔を持つ憑魔だ」

 

 

「ッ!! ヘルダルフ!!」

 

グレイブガント盆地で相対した強大な獅子の憑魔。その存在を思い出し、アリーシャの表情が強張る。

 

「20年前から、奴はあらゆる形で人の世に干渉していやがる。だが、浄化の力を持つ天族は今やライラのみ、導師もつい最近まで不在だった」

 

だからこそ、最後の浄化の力の使い手として、ライラは安易に動く事が出来ず、レディレイクの大聖堂にて、新たな導師の誕生を待ち続けていた。

 

「天族には加護以外にも、力の熟練した奴は自身の司る属性毎に特殊な力が使える。炎は、穢れの浄化。地は封印。風は守護って具合にな。俺が、天族でありながら穢れに飲まれずに憑魔と戦いながら一人旅できんのも、それが理由ってわけさ。最も、そのレベルまで達してる天族なんざ一握りだがな。つまり、最近まで憑魔を浄化する手段は失われてたって訳だ」

 

「……だから、憑魔を殺して旅をしていたというのですか?」

 

「あぁ、コイツでな」

 

そう言ってザビーダはジーンズに、ねじ込まれた銃を取り出す。

 

「『ジークフリート』……ダチから譲り受けたもんさ。コイツの弾丸は天族に撃てば力を増幅し、憑魔に撃てば穢れを無理矢理切り離す事ができる。最近は残りの弾丸が少なくなってきて、無駄撃ち出来ないのが困りもんだがな」

 

「ですが、その銃は……」

 

「あぁ、穢れごと宿主を殺す」

 

ハッキリとザビーダは言い切る。

 

「何故、そのような……憑魔と化したとはいえ罪の無い人間や天族を手にかけるなんて……」

 

悲しそうに言葉を漏らすアリーシャ。だが、ザビーダは軽い調子で返答する。

 

「そうか? ……死ぬ事で救われる奴もいるかもよ?」

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

その言葉に沈黙を貫く晴人の指先がピクリと僅かに反応した。

 

 

 

 

一方でアリーシャはザビーダの言葉を強く否定する。

 

「ッ!! そんな事あるはずが「なら、浄化の手段が無いときに、もし自分が憑魔になって人を襲いそうになったとしたら、お前さんどうするよ?」……ッ! そ…れ……は」

 

ザビーダの言葉にアリーシャは思わず黙り込む。民を守るべき騎士として、もし、正気を失い守るべき存在を傷つけそうになったら、自分は何を願うか……そんなことは決まっている。「自分を殺してでも止めて欲しい」と彼女は言うだろう。

 

だからこそ、アリーシャはザビーダの言葉に反論できない。

 

「答えられないかい?」

 

「ッ! ですが! 今は浄化の力を持つ者がいます! 導師であるスレイや魔法使いであるハルトが! ですから、ザビーダ様にも協力を「わりぃが断るぜ」……そんな何故……」

 

アリーシャの提案を、あっさりと拒否するザビーダに彼女は弱々しく困惑の声を零す。

 

「お嬢ちゃん達の覚悟の問題さ」

 

「覚悟? それならば既に「できてるって? そりゃ間違いだ」ッ! 」

 

アリーシャの言葉を遮り、ザビーダは問いかける。

 

 

 

 

 

 

「本当に覚悟ができてるってんなら、お嬢ちゃんは、もしもの時、憑魔ごと、宿主を倒せるのかい?」

 

「……え?」

 

その言葉にアリーシャの頭の中が真っ白になった。

 

 

「勘違いしてもらっちゃ困るがな浄化の力ってのは絶対じゃねぇ。敵の穢れの力を上回る浄化の力が必要だ。もし、浄化の力が足りなければ完全な浄化はできず、宿主はすぐに憑魔に戻っちまう。となれば、それを止める手は一つ……一時的に穢れが弱まってるうちに宿主ごと倒すしかねぇんだよ。お前さんにそれができるかい?」

 

 

「それは……」

 

 

「できないか? なら、やっぱり協力はできねぇな。もしもの時の覚悟が決まってない奴に背中は任せられねぇ」

 

ヘラヘラとした調子が完全に消え、ザビーダの鋭い眼差しがアリーシャの揺れる心を見透かすように細められる。

 

その視線から逃げるようにアリーシャは俯いた。

 

殺しというザビーダの手段をアリーシャは否定したかった。

 

 

だが考えてしまうのだ。例えば、ザビーダの言うように、先日のグレイブガント盆地での戦いでランドンが浄化不能だったとしたら、ランドンの命と傷ついた背後の兵士達のどちらの命を自分は優先しただろうかと……

 

憑魔と化した者の命は救いたい。だが、ためらいによって生まれる犠牲もある。憑魔となった者の命と多くの人々の命を天秤にかけなくてはならなくなった時、自分はどうするのか……そう考えた彼女は答えを出せなかった。

 

 

そんな弱々しく俯くアリーシャにザビーダは少し困った様な表情をして頭をガシガシとかくと彼女に声をかける。

 

 

「ハァ、女の顔を曇らせる趣味は無いんだがね……別に、殺しを嫌うお前さんの優しさが悪いとは言わないさ。だが、憑魔と関わり続ける以上、いつか必ず、俺が言った様な事態にぶつかる。そうなれば、お前さんの様に優しい人間は、その優しさが祟って、苦しみ憑魔に堕ちる。過去にもそういう導師は何人もいた……だから、手をひくなら今のうちだ」

 

その言葉はザビーダなりの忠告だったのだろう。出会ったばかりの彼とて、同族である天族を救いたいというアリーシャに対して悪い感情は持っていない。

 

だが、永い年月を生きた彼は理想と現実の差の残酷さをよく知っている。

 

彼女が持つ優しさは時として、自身を深く傷つけることも……

 

「もし、これからも憑魔に関わり続けるつもりなら覚悟を決めな。それができないなら必要以上に憑魔の件に首を突っ込むな。お前さんには、戦争を止めるって目的があるんだろ?」

 

「覚悟を決める……。それは命を奪う事で、何かを救う事を……ですか?」

 

 

「そうだ。誰も望んで憑魔になった訳じゃない。だが、憑魔になった奴は、そいつの意思に関わらずあらゆる物を傷つけていく。だから、俺は殺してでも止めるのさ。そいつ自身の誇りと名誉の為に……ソイツの生き様を憑魔に塗りつぶされないようにな……」

 

手に持ったジークフリートへ視線を向け

何かを懐かしむようにザビーダは言う。

 

「それがコイツを俺に託したダチとの『約束』で俺の『誓い』だ」

 

 

そして、話は終わりだと言うようにザビーダは部屋の出口に視線を向ける。おそらく彼は遺跡の奥にいるであろう憑魔と化したサインドと戦いに行くつもりなのだろう。

 

 

 

だが……

 

 

 

「……ハルト?」

 

ザビーダが動くよりも早く、空いたベッドに腰掛けて沈黙を貫いていた晴人が立ち上がり部屋の出口を目指して歩き始めたのだ。

 

 

 

「どこに行くつもりだい? 魔法使い殿」

 

 

そう問いかけたザビーダの言葉に晴人は足を止め振り向かずに答える。

 

 

「決まってるだろ。遺跡の奥だ」

 

「止めとけよ。あの憑魔はドラゴニュートって言ってな。ドラゴンの幼体の一つだ。強力な憑魔で戦闘力はドラゴンパピーを遥かに凌ぐうえ、風を操る変異種ときてる。感じた力も通常種より上だ。さっきは、憑魔になったばかりのサインドの意識が残ってたお陰で一気に押し切れたが、おそらく今は完璧な状態だ。浄化しきれる保証もないぜ」

 

「関係ないさ。そんなことは」

 

「へぇ、それをわかってて行くってんなら魔法使い殿は『覚悟』ができてるって訳か?」

 

「あぁ……」

 

 

そう答えた晴人にアリーシャは思わず驚きの視線を向ける。

 

「(ハルト……?)」

 

 

そして、晴人はゆっくりと口を開く。

 

 

 

「『覚悟』はできてる。俺は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何があってもサインドを助ける」

 

 

その言葉にザビーダの目つきが再び細まった。

 

 

 

「魔法使い殿……人の話を聞いてんのか? 綺麗事と楽観でどうにかなる問題じゃ「知ってるよ」……あ?」

 

 

問い詰めるような言葉を突如遮られ、ザビーダは顔をしかめる。

 

 

「死がソイツにとって救いになる時もある。そう言ったよな?」

 

 

「……あぁ」

 

 

「否定はしないさ。そんな事は嫌に成るほど知っている」

 

 

 

そう、彼は知っているのだ。

 

 

「大勢の人達の為に死ぬ事を願った奴を俺は知っているんだ……」

 

 

 

 

『私だって、本当は消えるのが怖い……でも……私が消えたら、誰も犠牲にならずに済む! 全てを終わらせるにはこれしかないの! 』

 

 

晴人の心に刻み込まれた『彼女』の最期の言葉……

 

 

「そして、俺はそれを受け入れた」

 

 

『このまま、静かに眠らせて……それが私の……『希望』……!』

 

 

 

だが……

 

 

「けどな、『アイツ』は決して、俺に誰かの命を諦めろと言った訳じゃないんだ」

 

 

「……!」

 

その言葉にザビーダの目が驚いたように見開かれた。

 

 

 

「アイツとの『約束』を、誰かの命を諦める『言い訳』にはさせない……助けを求める声があるなら俺は手を伸ばす」

 

そう言って振り向いた晴人はマーガレットへと視線を向ける。

 

 

「サ…イ……ンド」

 

 

ベッドに横たわる少女は意識を失いながらも、大切な友達の名前を弱々しく零す。

 

それだけで、晴人の『覚悟』は決まる。

 

 

「だから、お前さんは何があっても憑魔になった奴の命も諦めないってのか?」

 

 

そう問いかけるザビーダの視線を真っ向から受けながら晴人は告げる。

 

「あぁ、そうだ」

 

他の誰にでも無く、自分自身に言い聞かせるように……

 

 

 

 

 

 

 

「俺が『最後の希望』だ」

 

 

 

 

 

 

 

そう言い切り、彼は部屋から出て行った。

 

 

それを見てアリーシャも少し遅れながら彼を追うように歩き出す。

 

 

「……お嬢ちゃん?」

 

その意外な行動にザビーダは声をかける。

 

「ザビーダ様……私にはまだ答えがわかりません……私にはあなたの様な殺す覚悟もなければハルトのような助ける覚悟も無い……。中途半端です。けれど……」

 

 

アリーシャの脳裏に抱き合うマーガレットとサインドの姿が蘇る。

 

 

「共に生きていく事を……素晴らしい事だと思いたい! それを諦めたくないんです! だから……私は行きます」

 

 

そう言って、アリーシャは晴人を追って部屋から駆け出て行った。

 

 

 

そんな二人を見送るザビーダにオイシが声をかける。

 

 

「あの二人の事を見極めたかったのじゃろうが、わざわざ、あの様な悪役じみた物言いをしなくても良かったのではないか? 」

 

「ハッ! そんなんじゃねぇさ……」

 

 

「どうだかな……のう、ザビーダ。お主は、やはりまだ『アイゼン』の事を……」

 

心配するようにザビーダに問いかけるオイシ。だが、軽く笑いながらその言葉を遮る。

 

 

「くっはっはっは! 我ながらダッセェよなぁ! 試すつもりが逆に痛いとこ突かれて黙らされてやんの!」

 

笑い声をあげ自嘲するザビーダは再び、ジークフリートに視線を向ける。

 

 

 

「『約束』を『言い訳』にはさせない……か。あの台詞なかなか効いたな……」

 

 

 

バチンッ!

 

 

「ザビーダ?」

 

 

突如、両の手で思いっきり頬を叩いたザビーダの行動にオイシは戸惑いの声をあげる。

 

 

「オイシの爺さん。悪いが子守を頼むぜ」

 

そう言って彼もまた部屋の出口へ向かい歩き始める。

 

 

「……何をするつもりじゃ?」

 

 

その問いかけに振り向いたザビーダは不敵に笑いながら返答する。

 

 

 

「ヒーローごっこさ」

 

 

そう言い放ち彼は踏み出す。

 

 

 

フィルクー=ザデヤ(約束のザビーダ)

 

 

 

友との誓いと自身の真名が示す、生き方を貫く為に

 

 




最近の友人との特撮トーク

友「バンノドライバー、ポチった」

フジ「マジか」

友「これからはゴルドドライブと呼べ!!」

フジ「蛮野ォ!!」マッテローヨ!

台詞40種以上収録とかいつの間にか10増えてて笑うしかない。公式PVでも割られててさらに笑うない。そして、公式の無料配布の所為で俺のスマホの待ち受けが蛮野に乗っ取られて戻る気配がない

もう少しでmovie大戦の時期! エジソンが活躍できるか賭けようぜ! 俺は活躍出来ないにウヴァさんのコアメダル8枚!(外道)

あとVシネチェイサーにアクセル参戦もたのしみだぜ!
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