Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜 作:フジ
ただ、この作品はサブでどんなにはやくてもメインの方の小説との交互の更新となります。此方は完全に不定期の更新になりますので、それでも良ければこれからもよろしくお願いします。
あと、サブタイトルがドライブっぽいけどドライブは出ません
独自設定がバシバシでます。ご注意を
「さぁ、ショータイムだ!」
憑魔を前に、臆さず向かい合う姿を変えた晴人を見てアリーシャ・ディフダは混乱していた。
それもそうだろう。
何の脈絡もなく自分の前に現れた青年、操真 晴人が、憑魔を視認できることだけでも驚きだというのに、在ろう事か、晴人が火の粉をまき散らす赤い魔法陣を出したと思ったら、魔法陣を通り抜けた青年の姿は、ルビーのように紅く輝く仮面をつけた戦士へと姿を変えていたのだ。
その唐突な展開に着いて行くのは難しいだろう。だが、彼女は混乱する頭で、自分が、似たような物を知っている事に思い至る。
「まさか……『神衣』!?」
導師であるスレイが使用していた、天族と融合し、天族の持つ属性の力を操る事を可能にする能力。彼女が知る限り、別れる前のスレイは、4属性の内、仲間の天族のライラの火・ミクリオの水・エドナの土という3属性の神衣を使用していた。見た限り、晴人は火の神衣を使えるのだろう。
「ハルト……君は『導師』なのか?」
そんなアリーシャの呟きを他所に仮面の戦士へと姿を変えた晴人は、ゆっくりと獣達へ向け歩きだした。
そんな晴人に対して獣の憑魔『マーモット』と鳥の憑魔『イーグル』が唸り声を挙げて一斉に襲いかかる。しかし……
「おっと! 随分と張り切ってるな!」
軽口を叩きながら仮面の戦士は、ローブを翻し獣達の攻撃を軽やかに回避していく。
「今度は、こっちからいくぜ」
そう言った仮面の戦士は、四方から飛び掛ってきたマーモットに対して、回転しながら飛び上がり全て蹴り落とす。吹き飛んだマーモットに続き、着地した仮面の戦士の背後からイーグルが奇襲をかけるがその動きも予測していたのかオーバヘッドキックで蹴り飛ばす。その隙を逃さないとばかりに正面から三体のイーグル達が襲いかかるが……
ザシュッ!
何かを切り裂く音が連続し、イーグル達が悲鳴をあげる。
「あの武器は剣にもなるのか!?」
驚きの声をあげるアリーシャ。仮面の戦士は襲い掛かったイーグルに対して、手に持っていた銀色の飛び道具と思わしき物を剣へと変形させ切り裂いたのだ。
ローブを翻しながら華麗に敵を切り裂いていく仮面の戦士。その動きは武術というよりは、まるで舞っているかのようで、アリーシャは、その戦いに魅入られる。
しかし、そんな彼女に上空で様子を伺っていた穢れにより姿を大きく変えてしまった上級の憑魔『変異憑魔』の『ホルス』は突如、神々しく輝く翼から、大量の輝く羽を弾丸のようにアリーシャへと射出し攻撃をしかけて来た。
変異憑魔を竜巻のようにしか知覚できていないアリーシャは、その攻撃に気づかず反応できない。だが……
「させるかよ!」
仮面の戦士はホルスの攻撃に勘づくと、纏っている黒いローブを掴み、アリーシャの方向へ放るように翻す。すると仮面の戦士のローブ元の長さの何倍にも伸び上がり、アリーシャの前に盾のように展開される。
ガガガガガガガガ!
ホルスの羽が地面を抉る音が響き渡るが仮面の戦士の伸ばしたローブには傷一つ付かず、当然、ローブに守られたアリーシャも無傷である。
「ロ、ローブが伸びた!? 」
天族達が使う天響術ですら見れないであろう芸当にアリーシャは唖然とする。
「おいおい、お前の相手は……俺だろ!」
一方の仮面の戦士はホルスを見上げ再び手に持った剣を先ほどのアリーシャが見た事の無い飛び道具の状態に変形させ射撃で攻撃をしかけるが……
『オオオオオオオオオオオ!』
突如、ホルスから放たれた神々しい姿には似合わない呪詛のような叫びにより発生した黒い障壁によって、放たれた弾丸は全て防がれてしまった。
「へぇ……やるねぇ」
攻撃を無傷で防がれたというのに仮面の戦士の口からは相変わらずの軽口が漏れる。
呪詛『マントラ』を止めたホルスは再び空中で旋回しながら此方の様子を伺っている。一方、地上では先ほど仮面の戦士に切り裂かれた憑魔達が再生を始めており、このままでは再び囲まれてしまうだろう。
「……そろそろ、ケリをつけるか」
仮面の戦士は何かを決意したのか、右手にはめていた指輪を交換し、腰に巻かれたベルトを操作した。
「ハルト? 一体なにを?」
その意図がわからないアリーシャは困惑する。
【ルパッチ マジック タッチゴー! ルパッチ マジックタッチゴー!】
すると、先程とは違う、奇妙な呪文が流れ始める。そして、仮面の戦士は右手の指輪をベルトにかざす。
【ビッグ! プリーズ!】
呪文とともに現れた大きな魔法陣に仮面の戦士は右手を伸ばす。そして魔法陣を通過した腕は、まるで御伽話に出てくる巨人の腕のように巨大化していた。
「ええぇッ!?」
この短い時間に何度驚かされただろう。普段の男性のような口調はどこにいったのか、アリーシャは年相応の少女のような驚きの声をあげる。
驚いたのはホルスも同様のようで、巨大化した腕に焦ったのか呪詛の発動が遅れてしまう。その隙を逃さず、仮面の戦士は巨大化した腕でホルスをガッチリと掴み拘束する。
「そらよ!」
もがくホルスをものともせずに仮面戦士は、先程切り裂き、再生中で動けない憑魔達がまとまっている場所へホルスを投げ飛ばす。
『ガァァォォァォ!』
地面に叩きつけられたホルスと巻き込まれた獣の憑魔達が叫び声をあげる。だが仮面の戦士の攻撃は終わりでは無い。
【キャモナスラッシュ! シェイクハンズ! キャモナスラッシュ! シェイクハンズ!】
得物を再び剣へと変形させ、ベルトと同様の手形の意匠、『ハンドオーサー』を起動し、鳴り響く呪文と共に左手の宝石をかざす。
【フレイム! スラッシュストライク! ヒーヒーヒー!】
赤い魔法陣を纏った刀身に灼熱を思わせる赤い炎が迸る。その姿は、アリーシャの記憶にある、神衣を纏い炎の大剣を振るうスレイの姿を思い起こさせた。
「はあぁっ!」
叫びと共に振るわれた横一閃。迸る赤い炎が飛ぶ斬撃となり、ホルスへと放たれる。
ゴォォォオォオォォォ!
炎に耐性を持つ筈のホルスを容易く焼き払い、取り巻きの憑魔も巻き込みながら、着弾した炎の斬撃により周囲を炎が包み込み、憑魔の断末魔が丘陵へと響き渡る。
それが決着となった。
「ふぃ〜」
脱力するように息を零す仮面の戦士。そして、再び赤い魔法陣が体を通過すると、その姿は、アリーシャが先ほど出会った青年、操真 晴人のものへと戻っていた
「しかし、なんだったんだ? こいつら? アリーシャちゃんは、ヒョウマとか言ってたけど……」
状況が完全に飲み込めていない晴人は倒した憑魔の方へと視線を向ける。魔法の炎が消えると、そこには、何の力も感じ無い、獣や鳥が倒れていた。
「どういうことだ?」
困惑しながらも晴人は、獣達へと近づいていく。
「大きな傷は残っていない……気絶しているだけみたいだな。さっきの化け物は、こいつらが?」
そんな彼にアリーシャが声をかける。
「やはり、『穢れ』が祓われている。 ハルト……君は天族と契約した『導師』だったのだな」
その言葉に、晴人は意味がわからず、ぽかんとした表情をしてしまう。
「『穢れ』? 『テンゾク』?『導師』? なんのこと?」
問いかける晴人の言葉に今度はアリーシャが逆に混乱する。
「え? だが今確かに、『神衣』を纏い『憑魔』の穢れを浄化して……」
「言ってることの意味がわからないんだけど……少なくとも俺は、その『導師』ってやつじゃないよ」
「で、では君は一体……」
その言葉に晴人は不敵に微笑み左手の赤い指輪をアリーシャに見せながら静かに告げる。
「俺は、ウィザード……指輪の魔法使い、ウィザードだ」
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「……では、ハルト殿は、ここから遥か離れた小さな島国から突然、このグリンウッド大陸へ突然、跳ばされたのですか?」
自己紹介を終えた晴人は、まず最初にアリーシャへ、この世界についての説明を求めた。地球では聞いたことの無い大陸に先ほどの『憑魔』という怪物、アリーシャが自分へ向けて言った『導師』という言葉。何を話すにしても、それが何なのか分からなければ、会話が噛み合わないからだ。
アリーシャは、晴人の問いかけに、困惑した表情をしつつも嫌な顔をせず、グリンウッド大陸や憑魔・天族・導師について説明し、加えて、先程の戦いで多少は信用を得たのか、自身の身分や現在の行動目的について話してくれた。
その説明を聞いた晴人は、この世界が自分達の世界である地球とは根本的に違う物だということを悟る。一通りの説明を聞き、自身の置かれた状況を理解した晴人は、アリーシャへ自分がグリンウッドとは別の遠くの島国から、跳ばされてきたと説明した。
異世界から来たという事実を伏せて真相について細かく説明しなかったのは不要な混乱を避ける為だ。他の場所から一瞬で跳ばされて来たという説明でさえアリーシャは戸惑う表情をしており、彼女がギリギリ納得してくれそうなラインで話を纏めようと晴人なりに頑張った結果、この説明に落ち着いたのである。まぁ、大体あっているので嘘という訳でもないのだが。
「あぁ、そうなるかな。少なくとも俺のいた国で、グリンウッド大陸なんて場所を知ってる奴なんていなかったし」
言葉を交わしつつ2人は丘陵地帯を歩いている。あまり、時間をかけてしまうと日が暮れてしまい野営をしなければならない。レディレイクへ戻ろうとしていたアリーシャは距離を考えれば到着までの数日間の野営をせざるを得ないのだが、それにしても、先ほど憑魔に襲われた場所で、それをする訳にもいかないので、歩きながらの情報交換を行う事になったのだ。この大陸の地理など微塵も知らない晴人からすれば、その提案に異論は無く、アリーシャに同行させて貰いながら、この世界の情報を聞くことができ、渡りに船といえる。
「正直、信じ難いが……先程のハルト殿の力を見るとあり得ない話とも言い切れないですね」
「魔法のこと?」
「はい……まさか、導師の力以外に穢れを浄化する術があるとは」
「俺も魔法石にそんな力があるなんて驚きだよ」
アリーシャの言葉に晴人も同意する。アリーシャの説明で憑魔についての事を知った晴人だが、自身の力に穢れを祓う力があることに関しては彼自身、想定外だった。
「しかし、憑魔が見えるとは、ハルト殿は高い霊応力をもっておられるのですね」
その言葉に晴人は考え込むような表情をする。
「(アリーシャが言うには、この世界では憑魔や天族ってやつは霊応力の高い人間なら視認できる。俺が憑魔を見えるって事は、霊応力のある人間は俺の世界で言うと『ゲート』に近い存在ってことなのか?)」
『ゲート』、それは晴人のいた世界において、先天的に魔力を持った人間であり、『魔法使い』になれる可能性を秘めた存在であると同時に、一歩間違えば『ファントム』という怪物となってしまいかねない危険性を孕んだ人間のことである。
『絶望』を誕生の鍵とした『ファントム』と負の感情である『穢れ』を発生の鍵とする『憑魔』、その2つの関連性から、晴人は自分が憑魔を視認できた理由を推測する。
「しかし、よかったのですか? ハルト殿の乗っていた乗り物を置いてきてしまって?」
思考中だった晴人にアリーシャが問いかける。現在、アリーシャと共に丘陵地帯を歩いている晴人は、自身の愛車であるバイク『マシンウインガー』をアリーシャと遭遇した近くの茂みに隠して置いてきている。理由としては、徒歩のアリーシャに合わせたというのもあるが、馬車などを使用しているこの世界の文明のレベルをアリーシャの説明で理解した晴人が、この世界の人々に変に怪しまれたくなかったからだ。
「あー、大丈夫、大丈夫。いざとなればどうにでもできるから」
軽い調子で返答する晴人に、アリーシャは、少し戸惑うものの本人がそう言うのならと納得する。
「そう……ですか。ハルト殿がそう言うのなら大丈夫なのでしょう。……そろそろ日が暮れてきます。今日はここで野宿にしましょう」
日が沈み、あたりが薄暗くなり、アリーシャは野宿の準備をした方がいいと話を切り出す。丁度『マーリンド』に向かう途中で、スレイ達と共に野宿で夜を明かした地点へたどり着き、前回、獣達の襲撃が無かったここならばある程度安全が保証されるだろうと判断したからだ。
「申し訳ないですが。薪になるものを集めて来ます。 暗くなる前に焚き木の準備をしたいので……。ハルト殿は、此処で待っていてください。」
数日前のキャンプ跡に荷物を降ろし野営の準備をしながらアリーシャは晴人に告げる。
「いやいや、それくらい俺が集めてくるって、アリーシャちゃん」
手伝いを申しでる晴人。
「いえ、準備でしたら私が。そ、それと……そのアリーシャちゃんというのは、やめていただけないでしょうか? 少し恥ずかしいというか……呼びたければ呼び捨てで構わないのですが」
羞恥心からか少し頰を染めながら、呼び方の訂正を求めるアリーシャ。どうやら年齢の近い男性にそう呼ばれた経験が無いらしい。
「そう? じゃあ、アリーシャで。ところであの憑魔を倒してから俺に対して口調が変わったけど、どうかしたの?」
先ほどから敬語を使い始めたアリーシャに疑問を持った晴人が、理由を問う。
「それは、その……申し訳ありません! 先程は『導師』と同じ力を持つ方とは知らず、馴れ馴れしく話しかけて「ちょっ! ストップ! ストップ!」」
まくし立て始めたアリーシャの言葉を遮る晴人。
「もしかして、さっき説明してくれた『天族』ってのに接する感じで、今俺に話しかけて来てる?」
まるで、仕事の上司か信仰の対象にでも話しかけるような勢いだった彼女に、なんとなく察した理由が正解なのか問う晴人。彼女の中での自分に対する評価がおかしい事になっていると会話から感じたからだ。
「は、はい……そうですが?」
「最初の口調で良いって……そんな接し方されたら精神的に疲れるよ」
「で、ですが「も ど し て」……わかったよハルト」
強く口調を戻すように求めた晴人に、アリーシャは渋々、最初の口調に戻る。
「うんうん、そっちの方が良いって。それじゃあ、焚き木を集めてくる。アリーシャは他の用意を宜しく」
そう言った晴人は返事を待たずに焚き木を集めに行ってしまう。
「はぁ……スレイといいハルトといい導師の力を持つ者というのは、砕けた接し方を好むのだろうか?」
そんな晴人の背中を見送りながら、アリーシャは困ったような言葉を漏らした。
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「ふぃ〜、ご馳走様。食料を分けてくれてありがとうアリーシャ」
日が完全に暮れた丘陵地帯。燃え盛る焚き木の周囲に座る晴人は、今しがた夕食を終え、感謝の言葉を告げる。
「気になさらないでくださ「アリーシャ……口調」……あ。す、すまない!」
未だに敬語を使ってしまいそうになるアリーシャを晴人はジト目で見つめ、その視線にアリーシャは焦りがなら謝る。
「結構、堅いよなぁアリーシャ。一緒に旅をしてた導師にも、そんな感じだったの?」
問いかける晴人の言葉にアリーシャは首を横に振る。
「いや、天族の方達に対しては、敬語で接していたが、スレイとは導師になる前からの友人として知り合いだったので、普通に……」
「だったら、俺も普通でいいんだけどなぁ……」
「で、ですが、導師と同じ力を持つハルト殿にそのような……」
尚も、口調を崩しきれないアリーシャに対して、突如、晴人は悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべた。
「は、ハルト?」
「なんでしょうか? アリーシャ様?」
「な!?」
困惑したアリーシャの問いかけに晴人は急に、畏まった態度で返答する。
「きゅ、急になんだハルト! その口調は! も、元に戻してくれ!」
急に態度を変えた晴人に対して戸惑い焦ってしまうアリーシャ。
「いえ、貴族のアリーシャ様に、俺のような下々の人間が、そのような恐れ多「わかった! 私が悪かった! だから、その呼び方はやめてくれないか!」……な? 俺の気持ちがわかっただろ? アリーシャ?」
露骨に遜った晴人の態度にもどかしい気持ちとなったアリーシャは、堪らず晴人に口調を戻すよう訴え、晴人はそれに応じる。
「……ハルトは、少し意地が悪いな」
むくれた表情で見つめてくるアリーシャ。そこに垣間見えた年頃の女の子らしい一面に、晴人は笑みを浮かべた。
「む、笑うことはないだろう」
「ごめんごめん、今のアリーシャの方が、やっぱり良いと思ってさ。でも意外だな、貴族なら、今みたいに話しかけられるのが普通ってイメージがあるんだけど」
晴人のその言葉にアリーシャの表情が曇る。その反応に、晴人は何かマズイ事を聞いてしまったことを察する。
「あー、もしかして、何か嫌な事聞いちゃった? 俺?」
その言葉にアリーシャは、ハッとした表情になり慌てて否定する。
「い、いや、ハルトが悪い訳じゃないんだ! ただ、私は王族としても貴族としても立場が低くてね……それに私自身、貴族の生活というのが好きではないんだ」
「……だから、導師と一緒に災厄を止める為の旅を?」
その問いかけに、アリーシャは少し表情を明るくしてこたえる。
「『騎士は守るもののために強くあれ。民の為に優しくあれ』……私の尊敬する人の言葉だ。私も、そうありたい……そして、その先で穢れのない故郷を見てみたい。そう思って騎士の真似事をしている……」
「……」
誇らしく語るアリーシャ。しかし、その表情は徐々に曇っていき、自嘲するような言葉となっていく。それを晴人は黙って聞いている。
「別に、私自身が特別で無くてもいいんだ……スレイのように特別な力がなくても少しでも私にできる形で力になれればいい。そう思っていた……」
まるで、溜め込んでいた何かを少しずつ吐き出すように彼女は言葉を続ける。
「それだけで胸を張れたんだ……従士契約を結んで、旅の中で守護領域を取り戻して、少しずつ夢に近づいていけて……身勝手かもしれないが、それがとても嬉しかった。だけど……それはただの自己満足だったんだ……私はスレイ達の仲間に相応しくなかった……」
そんな彼女に晴人は静かに問いかける。
「……導師達と旅を続けたかった?」
たった一つの問いかけ。だがそれは核心だった。その言葉にアリーシャは、ゆっくりとこたえる。
「そんな資格は、私にはないよハルト……私は怖かったんだ。私が彼らの使命の妨げになってしまうことが……そして、いつか、お前はお荷物だと彼らから言われてしまうんじゃないかということが……」
もし、彼女がレディレイクへの帰路で晴人と出会うことなく1人でいたならば、その言葉は彼女の心中に秘められたままだっただろう。しかし、彼女は出会った。スレイと同じく特別な力を持った存在、操真 晴人に。それが彼女の偽りない本心を引き出した。
「おかしいだろうか? 貴族の娘が、1人で勝手に張り切って空回って、滑稽に見えるんだろうか?」
焚き火を見つめながら語る彼女の言葉は、どこまでも弱々しい。そんなアリーシャに対して晴人は静かに言葉を告げる。
「そんな訳ないだろ」
「え?」
静かに、しかし、力強く否定した晴人の言葉に、アリーシャは驚いたように晴人へ視線を向ける。
「助けを求める人達の声を聞いて、アリーシャは助けたいと思ったんだろ? その為に1人でも頑張ったんだろ? なら、それは絶対に間違いなんかじゃない。 少なくとも俺はアリーシャのやってきた事を馬鹿にしたりなんてしない」
「だが、結局、私の力ではスレイ達と共に歩む事は……」
「力の有る無しなんて関係ないさ」
アリーシャの言葉を遮り晴人は断言する。
「少なくとも俺の仲間は、そうだった」
「ハルトの仲間が……?」
「あぁ、俺の仲間の殆どは魔法使いじゃない普通の人間だった。それでも皆、自分にできる方法で俺を支えてくれた。俺一人じゃ絶対にあの戦いを切り抜けられなかった」
行く宛の無い晴人達を匿い、ファントムとの戦いの為に魔法石の指輪作りに協力してくれた骨董屋の店主『輪島 繁』
魔法使いでなくとも人々を守る為に奔走し、晴人が迷った時に、そっと背中を押してくれた女性刑事『大門 凛子』
晴人が道を踏み外しかけた際には叱責し、今も晴人の力となるべく、指輪作りの修業に励む、青年『奈良 瞬平』
衝突することもあったが、ファントム打倒のために情報提供という形で協力してくれた国安0課の刑事『木崎 政範』
みな普通の人間でありながら、晴人と共にゲートである人々を救う為に協力してくれた、晴人にとって掛け替えのない大切な仲間である。
「ハルトも人々の為に戦っていたのか?」
「世界の為なんて言える程スケールの大きいものじゃなかったけどね。アリーシャやスレイっていう奴みたいに、国を良くするとか、違う種族との共存を目指すなんて大層なものじゃなかったよ」
アリーシャの問いかけを補足しつつ返答する晴人。
「強い思いがあるのならまずは、それを伝えないと駄目だ。だからさ、俺はアリーシャが遠慮する必要なんて無いと思うよ。今はまだ無理かもしれないけどさ、もし、今度、スレイって奴と会うことができたらアリーシャの思いを真っ直ぐにぶつければ良いと思う」
「だが、スレイ達からしたらそれは迷惑では……?」
迷うアリーシャ。そんな彼女に晴人は躊躇なく断言する。
「少なくとも俺は、自分の力を分け与えていた奴を足手纏いだと思ったことなんて一度もない」
脳裏によぎるのは、一人の少女。自分の分け与える魔力で命を繋いでいた。自分の『最後の希望』といえる存在。
「つまり俺が言いたいのは……ひとの事ばかり気にして自分の希望を捨てるなってこと」
その言葉にアリーシャは俯きながら、晴人に問いかける。
「できるだろうか……私に。スレイ達の力になることが……夢を叶えることが」
「わからない……けどさ、挑戦しなきゃ何も叶えられないだろ?」
「あぁ……その通りだ」
まだ不安はあるのだろう。しかしアリーシャは顔を上げ、真っ直ぐにその目で晴人を見据え返答する。しかし、晴人の言葉はまだ終わりでは無かった。
「ま、デカイ口叩いた以上、ハイ、さよならでアリーシャ一人に押し付けやしないさ。俺も協力するよ」
その言葉にアリーシャは目を丸くする。
「え?」
自分に協力してくれるといった晴人に驚きの声をあげるアリーシャ。
「もし、アリーシャが夢の途中で絶望しそうになったら、その時は……」
希望の魔法使いが、淡い希望を胸に秘めて足掻いている目の前の少女を見捨てる事などあり得ない。
晴人は左手を握り締め、その手にはめられた指輪を見せるようにアリーシャの眼前に突き出し、微笑みながら告げる。
「俺がお前の希望になってやるよ」
その言葉にアリーシャは驚きに目を見開く。出会ったばかりの自分に対して晴人は、平時の軽い調子ではなく真剣な表情で言い切ってみせた。その言葉を聞いたアリーシャの顔にはいつの間にか笑みが浮かんでいた。
「ふふっ! 変な魔法使いだな……君は」
屈託のない笑顔をみせたアリーシャを見て、晴人もまた笑みを浮かべる。
「お、やっと笑った。いいじゃん、悲しそうな顔より、そっちの方がずっと似合ってる」
「そ、そうだろうか?」
その言葉にアリーシャは、頰を赤くし恥ずかしげに目をそらす。
スレイが嘗て契約の際、彼女に与えた真名。それを知らない晴人が無自覚に褒めたのだが、彼女にはそれがとても嬉しかった。
「ま、何をするにも、まずは、その橋の修復状況の確認と天族を祀る人間探しを片付けなくちゃね。明日に備えてさっさと休もう」
話を打ち切り纏める晴人。
「そうだな、じゃあ私が見張りをしているから晴人は先に眠ってく「それなら大丈夫」え?」
【ガルーダ! プリーズ!】
別の指輪をはめた晴人がベルトに指輪をかざすと共に、赤い小型の鳥のようなものが現れる。
「怪しいのが近づいてきたら教えてくれ」
そう言いながら赤い鳥に先ほどの指輪をはめ込む晴人。赤い鳥は返事をするかのように一鳴きすると上空に舞い上がった。
「は、ハルト? 今のは?」
「魔法使いの使い魔だよ。俺が注いだ魔力が切れるまで動いてくれる。とりあえず朝までは保つから、俺達はゆっくり休もう」
【コネクト! プリーズ!】
アリーシャに返答しつつ、再び別の指輪で赤い魔方陣をだした晴人はそこに手を突っ込み何かを取り出す。
「これ、バイクに積んであった寝袋。よかったら使いな」
「さ、流石にそれは悪い! ハルトが使ってくれ!」
申し訳ないと遠慮するアリーシャだが、晴人も譲らない。
「女の子が体を冷やすのはよくないって。それにアリーシャが体調崩しちゃったら、俺の道案内は誰がやるんだ?」
「う……それは……そうだが」
晴人に丸め込まれ渋々納得するアリーシャ。
そんなやりとりを挟み2人は眠りにつく。
暫くして寝息を立て始めた2人を、空に浮かぶ月だけが静かにみつめていた。
騎士に憧れる少女と指輪の魔法使いの出会い。それが、この世界に何をもたらすのか。それはまだ誰にもわからない。
DLCプレイ後の感想
フジ「ありゃ、狐生きとる。まだ続くのか」
海東「続きは無いっ!(泣)」※攻略本インタビュー情報
仮面ライダー真「orz」
フジ「馬場P、絶対に許さねぇ!」フルーツバスケット!