Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜   作:フジ

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遅れてサーセン!

もう少しで、仮面ライダー1号とアマゾンズが始まるので楽しみな今日この頃。そして、ゴースト外伝でも指輪パンチ連打にテレポートブリザードとかかます笛木さんマジ物理学者

今回は難産でした。正直詰め込んでて展開が雑かもしれん……

今回でラストンベル篇は終了となります。

では、どうぞ!


20話 今日の命、明日の命

「ん……私は……?」

 

窓から差し込む日の出の光に照らされ、ラストンベルの宿屋『ランドグリーズ』の女将、ポプラは目を覚ました。

 

「いけない……私、寝てしまったのね」

 

自室の机に突っ伏す様に寝てしまっていた事に、ポプラは溜息を零す。

 

「マーガレット……」

 

ポプラは溜息と共に、その口から大切な1人娘の名前を口にする。

 

「昨日の事……夢じゃないのよね」

 

昨晩、謎の獣人の怪物と遭遇した事を思い出し、姿を消した娘が話していた事が子供のイタズラでは無い事を理解したポプラは自責の念にかられた。

 

若くして夫を亡くし、宿屋を切り盛りしながらも女手ひとつで精一杯育ててきた愛娘。しかし、仕事が忙しく、最近は娘に対して親としてしっかり接してやる事ができていなかったとも彼女は思う。

 

「私がマーガレットの話をしっかり聞いてあげていれば……」

 

今思えば、マーガレットは自分に助けを求めていたのだろうとポプラは考える。当然だ、幼い子供があのような怪物を見て不安にならない筈はない。

 

だと言うのに自分はマーガレットの言葉を信じずにイタズラと決めつけ否定した。本来、子供の1番の味方である筈の親に自身の言葉を否定されたマーガレットの心境は想像に難くない。

 

マーガレットが行方不明になってから今日で5日目。もしかしたら、もうマーガレットは……

 

 

そう考えそうになった自身の思考をポプラは首を振り否定する。

 

「駄目ね……私があの子の無事を信じなくてどうするの……大丈夫……あの子は生きてる……」

 

自身に言い聞かせる様にポプラはマーガレットの無事を信じると言い切る。

 

白皇騎士団や街の人々もマーガレットの捜索に協力してくれている。ならば、今の自分にできる事は、娘の帰ってくるこの場所で何時ものように待っている事だ。

 

そして、娘が帰ってきたら、好物のピーチパイを作ってあげよう。

 

満面の笑みでピーチパイを頬張るマーガレットを想像し、ポプラは気を引き締めた。

 

「さて、そうと決まれば朝食の準備をしなくちゃね」

 

そう言ってポプラは部屋を出ると厨房を目指し歩みを進める。他の従業員は既に準備を始めている筈だ。これ以上、遅れる訳にはいかない。

 

そう思い、食堂を目指し宿屋の玄関の前を通り過ぎようとした時……

 

 

 

カラン♪ カラン♪

 

 

ドアに取り付けられた鐘が鳴り、来客を知らせる。

 

「(あら? 誰かしらこんな時間に……)」

 

まだ僅かに日が見え始めた人通りも少ない時間に、宿屋を訪れる人は少ない。

 

一体誰が? そう思いポプラは玄関へと視線を向け……

 

 

「いらっしゃいま……え?」

 

玄関に立っていた人物達を認識し、ポプラの言葉が止まる。

 

 

彼女の視線の先にいたのは……

 

「おはようポプラさん」

 

「体調は大丈夫ですか?」

 

2日前の夜に宿を訪れた、見慣れない服装をした青年と、貴族の令嬢を思わせる服を着た少女、そして……

 

「ほら……家に帰ってきたんだ。お母さんに、しっかり言うことがあるだろ?」

 

 

「う、うん……ただいま……おかあさん……」

 

 

 

なによりも大切な愛娘だった。

 

 

「マーガ…レット? 」

 

「う、うん……お母さん……私のことわかる……?」

 

不安そうに尋ねるマーガレットに対してポプラからの返答はなかった。

 

 

「きゃっ!? お母さん?」

 

マーガレットから上がる驚きの声。

 

ポプラはマーガレットに一目散に駆け寄り彼女を力強く抱きしめたのだ。

 

大切な愛娘。その存在をその手で確かめる様に……

 

 

「お、お母さん! 苦し「……良かった」……え?」

 

 

「良かった……貴方が生きていて……本当に良かった……っ!」

 

 

「……お母さん」

 

涙を流すポプラはマーガレットを抱きしめながら言葉を続ける。

 

「ごめんなさいっ! あなたの言う事を信じてあげなくて……本当にごめんなさい!」

 

謝罪の言葉をこぼすポプラ。そんな彼女に対し、マーガレットは優しく微笑むと小さな腕をポプラの背に回す。

 

「ううん……わたしこそ心配かけてごめんなさいお母さん」

 

 

その言葉を受けポプラは涙を流しながらも、笑みを浮かべ告げる。

 

 

 

 

 

「おかえりなさい。マーガレット」

 

 

 

 

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「穢れと憑魔……マーガレットはそれが原因で……」

 

親子の再会から暫くし、遺跡に残ったオイシを除く、一同はランドグリーズの一室である、ポプラとマーガレットの部屋にいた。

 

天族であるサインドとザビーダに今回の事件についてをポプラに説明してもらう為である。

 

幸い、マーガレットの帰還を知った宿屋の従業員達は、彼女の無事を喜ぶと同時に、「仕事は、自分達に任せて娘さんと一緒にいてあげてください」と気を遣ってくれた。そして、長期の憑魔化により、体のよわっていたワックは別室にて安静にしている。

 

天族である2人が従業員達に見えていない事から、ポプラは天族の存在に関しては驚きながらも素直に受け入れてくれた。

 

同時に、マーガレットが何故、行方不明になったのか、そして昨日の獣人が憑魔と呼ばれるものだと知り、彼女は今回の事件の全容を理解したのだ。

 

そんな彼女に、サインドは深々と頭を下げ謝罪を口にした。

 

「申し訳ありません。マーガレットが憑魔となってしまった元々の原因は私にあります」

 

マーガレットが教会の信徒から迫害されそうになった原因は自分が加護を与える事を止め、この地を去った事にある。そう考えるサインドは本当に申し訳なさそうな表情でポプラに謝罪した。

 

一方のポプラは困惑しながらサインドへ返答する。

 

「さ、サインド様!? 天族の方が私などに頭を下げなくとも!」

 

 

伝承に伝わる超常的存在である天族に頭を下げられポプラは驚きの声を発した。

 

しかし、サインドは首を横に振り、言葉を続ける。

 

 

「天族などという肩書きなど、今は無意味です……私は役目を投げ出し、友達であるマーガレットを危険に晒す原因を作りました……母親である貴方に何と責められても仕方ありません……」

 

そう言ってサインドは頭を下げ続ける。

 

「あ、あのねお母さん! サインドは……」

 

それを心配そうに見守っていたマーガレットは思わず口を開こうとする。しかし、無言の晴人がマーガレットの肩に手を置き、その言葉を止める。

 

マーガレットは不安そうに晴人を見るが、彼は無言のままマーガレットを安心させる様に微笑むと2人のやり取りに視線を向ける。

 

「顔をあげて? 貴方を責めるつもりは私にはないわ」

 

「ッ!? ですが私は!?」

 

「それを言うなら私も、母親としての役目を疎かにして、マーガレットを追い詰めてしまったわ。だから、貴方が1人で責任を感じる必要は無いの」

 

敬語をやめ、それでいて、先ほどまでの他人行儀な口調ではなくどこか穏やかな口調でポプラは言葉を紡ぐ。

 

「ですが……」

 

「それに……私は貴女に感謝しているんです」

 

「えっ?」

 

ポプラの言葉の意味がわからず、サインドは困惑する。

 

「私はね? 夫を亡くしてから、この宿の女将としてずっと働き詰めで、娘に構ってあげられなくなってしまっていたの。でも、あの娘は優しいから我儘も言わずにいてくれたわ」

 

そう言ってポプラはマーガレットに視線を向ける。

 

「だけど、あの娘は何時も寂しそうにしていたわ。……でも私はそれに対して何もしてあげられなかった……けど、ある日、マーガレットが楽しそうに笑いながら私に言ったの……『大切な友達ができたの』って」

 

そう言いながらポプラはサインドへと視線を戻す。

 

「その日からあの娘はよく笑うようになったわ。あの娘はいつも楽しそうに『大切な友達』の事を話していた……。だから私、その『友達』にずっと伝えたかったの……」

 

優しく微笑み、ポプラは告げる。

 

 

「ありがとう……これからもマーガレットと仲良くしてあげて……って」

 

 

その言葉を受けサインドの目に涙が浮かぶ。

 

「ッ! いいんでしょうか……私はまだマーガレットの友達でいて……」

 

 

「えぇ、今度は是非、友達としてウチに遊びに来て。手によりをかけたピーチパイをご馳走するわ。マーガレットの大好物なの。貴方もきっと気に入ってくれると思うわ」

 

そう言ってポプラは優しくサインドの手を握る。

 

 

「ッ……! はい……っ」

 

「やったねサインド! 今度からウチに遊びにこれるんだ!」

 

手を取り合う2人と、喜びながら駆け寄るマーガレット。

 

そんな三人をアリーシャ達は微笑みながら見守る。

 

そこに、慌ただしく部屋の扉が開けられた。

 

駆け込んできたのは宿屋の従業員だ。

 

 

「女将さん!」

 

「あら? どうかしたの」

 

「み、店の外に! と、とにかく来てください」

 

慌てて息を切らせる店員の言葉につられて、一同は部屋を出て店の玄関口へと向かう。

 

「店の外がどうしたの?」

 

そう言ってポプラが宿屋の扉を開くと……

 

 

 

「女将さん! マーガレットが見つかったって本当かい!」

 

「あ! マーガレット! 無事だったのね!」

 

「よかった! 何かあったかと心配だったんだぜ!」

 

「女将さんに心配かけるなよなマーガレット! ここ数日は顔色悪くて見ちゃいられなかったんだからな」

 

「本当に無事で良かったわ!」

 

 

そこには、マーガレットの無事を聞いた街の人々が、事実を確かめようと押し寄せていた。

 

人々は次々と2人に対して暖かい言葉を掛けていく。

 

 

しかし……

 

 

「おやおや、なんだ……無事だったのですね。その娘は……」

 

 

人集りから離れた場所から嫌味ったらしい声がけかられる。

 

 

其処には、信徒を引き連れたラストンベルの司祭が立っていた。

 

 

「……これは司祭様。ウチの様な店に何か御用でしょうか?」

 

優しい雰囲気を持つ筈のポプラは雰囲気を変え、どこか皮肉めいた言葉を発する。

マーガレットは、司祭達に怯えた様に母親の背に隠れた。

 

 

「いえ、行方不明になっていた貴方の娘さんが見つかったと聞きましてね。こうして態々、足を運んだと言う訳ですよ」

 

 

「それはどうも」

 

回りくどい言い回しをする司祭に対して、街の人々は「何が言いたいんだコイツ」と言いたげな視線を向ける。

 

「しかし、天族様も懐が深い。子供とはいえ、あの様な戯言を吐いた子供を許して差し上げるなど」

 

 

『ッッ!!』

 

その、言葉にポプラや街の人々、そしてサインドの表情が険しくなる。

 

「……何が仰りたいのですか?」

 

 

感情を、押し殺しポプラが言葉を零す。

 

「なに……我々、教会に対する態度には注意した方がいいという事です。なにせ、我々は天族の、言葉の代弁者。我々を否定する事は天族様を、否定するということ。もし、同じ様な事があれば、今度は無事では帰ってこれないかもしれませんねぇ……」

 

 

「ッ!」

 

 

その言葉を聞いたサインドは限界だと言うかの様に拳を握り締め、司祭に向けて一歩踏み出そうとする。

 

 

しかし……

 

 

「いい加減にしろよ」

 

「……はい?」

 

「さっきから聞いてりゃ好き放題言いやがって! 腰巾着共を使ってマーガレットを暴行しようとした奴が何をほざいていやがる!」

 

「そうだ! もう我慢の限界だ!」

 

「お前が裏で何をしているのか、みんなが知らないとでも思っているのか! 教会の役割も碌に果たさないで、媚を売るだけの金の亡者が偉そうな事を言うな!」

 

「な、何を……」

 

司祭の言葉に対して怒りを爆発させたのは他ならぬ街の人々だった。

 

その反応が予想外だったのか司祭は驚きの表情を、浮かべる。

 

 

「そ、そのような物言いをして宜しいのですか? 私の言葉は天族の「知ったことか! 」……ひぃ!」

 

「天罰が下るってんならやってみやがれ!」

 

「次に天族を騙って巫山戯たことをしたらぶっ飛ばすぞ!」

 

「こ、この! 私の言葉が嘘だとでも「なぁ、司祭さん」……なんだ貴様は!」

 

人々の言葉に聖職者として化けの皮が本格的に剥がれ始めたその時、晴人が司祭へと声をかけた。

 

「あ、覚えてない? 昨日、会ってるんだけどなぁ……俺は偶々、この街に来た身なんだけどさ。アンタって本当に天族の言葉が聞こえてんのかなぁって気になってさ」

 

「何を馬鹿な事を。当たり前でしょう」

 

「そうかな? もしかしたらアンタが適当な事を言ってる……なんてオチだったりとかしない?」

 

「ハッ! 何処の馬の骨とも知れない男が何を急に……」

 

「ふーん。じゃあさ思い切って直接聞いてみようか」

 

「……は?」

 

 

晴人の言葉に司祭は間抜けな声を漏らした。

 

 

「ん? だってさ、天族は常に俺たちの事を見守ってくれてるんだろ? なら、俺たちに声が聞こえなくても何かしらの形で答えてくれるんじゃないかなぁと思ってさ」

 

「ふん、どうやってです?」

 

 

「そうだな。例えば……『天族さん! マーガレットの言葉に怒ってないなら、ラストンベルの大鐘楼を鳴らしてくれ!』……とか?」

 

そう言って晴人はザビーダに視線をむける。

 

その視線の意味を理解したのかザビーダはニヤリと笑いウィンクするとペンデュラムを構える。

 

 

「ハッ、いきなり何を……」

 

 

 

ブォォオォォォォォ!

 

 

「なっ!?」

 

ガラァン♪ ガラァン♪

 

突如として吹いた突風。それによりラストンベルの大鐘楼が大きな音を奏でた。先ほどまで無風だったのにも関わらず、本来、地下からくみ上げた水を動力として鳴る筈の大鐘楼が強風に揺られ、その音色がラストンベルに木霊する。

 

 

「おぉ、返事してくれた。やっぱいるんだなぁ、天族って」

 

「ぐ、偶然です。たまたま突風が吹いただけで……」

 

司祭は焦りからか嫌な汗を掻きながらも場を取り繕おうとする。

 

 

「そうか? じゃあもう1つ質問してみるか? なぁ、アリーシ……アリシアも何か言ってみろよ」

 

「アリシア……も、もしかして私のことかか!?」

 

流石に、ローランス領内の大勢の人々に注目されてる状況で敵国の王族の名前を口にするのは不味いと考えた晴人は咄嗟に彼女のメイドの名前でアリーシャに声をかける。

 

突如振られたアドリブに対して、アドリブが苦手なアリーシャは狼狽えるが、晴人の行動の意味を理解したのか晴人に続く。

 

「ゴホン!……では、天族の方々、貴方方はマーガレットに対して報復の意志は無いのですね?」

 

芝居が苦手なのか何処か棒読みになっているが、それでもアリーシャは、演技を続ける。

 

そして再び、ザビーダにより突風が吹く。

 

 

ガラァン♪ ガラァン♪

 

心地いい鐘の音が響くなか、反対に司祭の顔色はさらに蒼白になっていき脂汗をかき始める。

 

 

「ありゃ、なんか司祭様の言ってる事と違ってるな? じゃあ、最後の質問。 天族様、もしかして司祭様の言ってる事は全部デタラ「き、急用を思いだした! 悪いが失礼するっ!」……あらら」

 

晴人の言葉に司祭は踵を返し急ぎ足で去っていく。ブラブラと適当に手を振りながら晴人はそれを見送った。

 

 

 

 

 

 

 

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「ハルト……いきなり、思いつきの偽名で呼ぶのはやめてほしいんだが」

 

「いや、だって流石にあの人集りで本名呼ぶのは不味いだろ」

 

「そうだとしても、なぜアリシアの名前なんだ……」

 

「ん? いや、語感が似てて咄嗟に……」

 

「お陰様で、街の人々からは完全にアリシアとして認識されてしまったんだが……」

 

「しょうがないだろ。咄嗟に出る名前で違和感無さそうなのがそれくらいしか思いつかなかったんだ」

 

 

司祭達を追っ払ってから暫くし、一同は再びポプラの部屋へと戻ってきていた。

逃げ出した司祭を見た街の住人は溜め込んでいた不満をぶちまけるかのように喜びの声を上げた。司祭を追っ払っうのに一役買った晴人とアリーシャの二人にも「よくやってくれた」と感謝の言葉がかけられたのだが、その結果、アリーシャは、あの場にいた者達に『アリシア・コンバティール』という名前だと認識されてしまったのだ。

 

「それにしても、いきなりはやめてくれ……心臓に悪い」

 

「くっはは! 焦って棒読みだったもんなぁ」

 

「ざ、ザビーダ様、からかわないでください……」

 

茶化されて恥ずかしがるアリーシャ。そんな彼女を見て晴人は小さく笑う。

 

「ははは……あ、ザビーダもサンキューな、協力してくれて」

 

「ん? 気にすんなって、ちょいと将来有望なレディの手助けをしたってだけさ。しかし、よく咄嗟にあの方法を思いついたもんだな」

 

ザビーダは先程の晴人の作戦について関心したように語りかける。

 

「昔、風を利用して子供を騙した奴と戦った事があってね。正直言うと、あんまいい思い出でもないし、褒められた方法とは言えないんだろうけど、あぁでもして釘を刺しておかないと、連中がまたマーガレットに悪さするかもしれないからさ……」

 

嘗て戦った、風を利用し一人の少年の心を弄んだファントムの事を思い出し、同じ様な手を使った事に晴人はしぶい顔をする。

 

 

「君が個人的な報復で、ああ言う事をした訳じゃないのはわかっているさ」

 

「アリーシャの力で天族の姿を見せても良かったかもしれないが、それだと目立ちすぎるしねぇ……それに、追い詰め過ぎても何するかわかんねぇからな、あの手の手合いは……とりあえずはあれくらいで良かったと思うぜ?」

 

 

そんな晴人に対してアリーシャと、ザビーダはフォローする様に声をかける。

 

 

「あの、私からもお礼を言わせてください。娘の為にありがとうございます」

 

「気にしないでくれよポプラさん。俺たちは、やりたい事をやっただけさ」

 

そう言って晴人達はポプラの言葉を受け取る。

 

そして、もう1つ残されている問題を解決するべく。二人は話を切り出した。

 

「ポプラさん……実は折り入って頼みたい事があるのです」

 

「頼みたいこと……? 私にですか?」

 

「あぁ、騎士さん! 連れてきてくれ」

 

晴人が部屋の外に声をとばすと、部屋の扉が開けられ白皇騎士団の騎士に連れられ6人の子供達が入ってくる。

 

「……この子たちは?」

 

「実は……」

 

疑問の声を漏らすポプラに対して、アリーシャは説明を始めた。

 

 

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事の発端は、アリーシャが遺跡で目を覚ました数時間前に遡る。

 

 

 

「え、えぇっと……ハルト? 彼等は一体?」

 

目を覚ましたアリーシャは、困惑していた。

 

調査が進んでおらず、人の寄り付く筈の無いティンダジェル遺跡。その中に幼いマーガレットと歳の変わらない子供がいる。

 

それも、1人や2人ではなく、4人の男の子と2人の女の子の総勢6名。服は皆、汚れてボロボロであり、訳ありの空気を醸している。

 

「俺も驚いてるよ。倒れたアリーシャをこの部屋に連れてきたらマーガレットと一緒にこの子達がいたんだ。アリーシャの看病を優先したから、まだ詳しく事情は聞いて無いんだけど……」

 

「こんな小さな子達が、この遺跡に?」

 

そんな子供達の存在に戸惑うアリーシャに対して、一組の少年少女が口を開いた。

 

 

「驚いてるのはこっちだよ。隠れ家にきたら知らない人が寝てるんだもん」

 

「あの……この場所は『ある人達』が私達に貸してくれた隠れ家なの……」

 

 

胡散臭気にアリーシャ達を見る少年と何処か警戒し小声で話す少女。どうやら彼らが、このグループの代表らしい。

 

「あ……それはすまない! 私の名はアリーシャ。君たちは……?」

 

アリーシャは律儀に謝り名を名乗る。

 

そんな彼女を見つめる晴人も、アリーシャの生真面目な対応に苦笑しつつも、続く様に口を開いたを

 

「俺は晴人。勝手に邪魔して悪かった。その上、ベッドまで使わせて貰って感謝してるよ。ありがとう」

 

「わたしマーガレット! お邪魔させてもらってごめんね」

 

「…………」

 

「…………」

 

3人から告げられた、謝罪と感謝の言葉。だが、子供達は晴人達に警戒しているのか、なかなか言葉を発さない。

 

なんとも言えない沈黙が場を支配していく。

 

 

そんな時……

 

 

ぐぅ〜

 

 

気の抜けた空腹を訴える音が二箇所から放たれた。

 

「あぅ……」

 

「あっ! そのこれは!」

 

その音の発生源は、先程、おずおずと言葉を発していた少女とアリーシャだ。

 

「うぅ……」

 

「いや、その……済まない。朝から何も食べてなくて……」

 

そんな彼女達は恥ずかしいのか顔を赤くして俯いてしまう。それをみた晴人は優しく微笑むと右手の指輪を交換する。

 

「……?」

 

その場の少年達は晴人の行動を訝しむが晴人は構わずに指輪をバックルにかざした。

 

【コネクト! プリーズ!】

 

音声と共に展開された魔法陣。晴人はそこに手を突っ込み紙袋を取り出すと、そこから中の物を1つ掴み少女に差し出す。

 

「先ずは腹ごしらえだな。これでも食べな」

 

差し出されたのは、紙袋。中身は町の調査の際にセキレイの羽から購入したマーボーカレーまんだ。事件のゴタゴタで食べるタイミングを逃して冷えてしまったが、それでも味は保証できると晴人は評価している。

 

「え!? あ、ありがとう……」

 

突然、目の前で使われた魔法に少女は驚きながらもマーボーカレーまんを受け取る。

 

「やっぱり朝以降、何も食べて無かったか……多めに買っといて正解だったな。ほら」

 

「す、済まない……」

 

「いや、買ったお金自体はアリーシャの物なんだし謝る事は無いんだけどさ」

 

はしたない姿を見せた事が恥ずかしかったのか頰を僅かに染めながらも、アリーシャはマーボーカレーまんにかぶり付く。

 

「ほら、君達も遠慮すんな」

 

そう言って晴人は子供達にマーボーカレーまんを差し出す。

 

「……悪いけど、俺たちはまだアンタ達を信用した訳じゃ「本当に!?食べて良いの!?」……ってオイ!」

 

晴人達に警戒心を見せ、リーダー格の少年はマーボーカレーまんの受け取りを拒否しようとする。だが、他の子供達は、普段は食べられない食べ物に興味深々なのか、晴人の言葉に食いつき、リーダーらしき少年の言葉をスルーして駆け寄っていく。

 

「これ美味しい!」

 

「ありがとうお兄さん!」

 

「ていうか、どうやって取り出したの!?」

 

「スッゲー! 魔法みたい!」

 

「へぇ、旨そうだねぇ。なぁ、ハルト! 俺の分も「もうない。我慢しろ」……」

 

 

凹むザビーダを他所に晴人からマーボーカレーまんを受け取った子供達は勢い良く頬張り、嬉しそうに微笑む。

 

「喜んで貰えて何よりだ。ま、勝手に君たちの隠れ家を使わせて貰ったお礼みたいなもんだ。気にしないでくれ」

 

 

「え…あ、そんな……そちらこそ気にしないでください。えぇっと私は……シノって言います」

 

「そっか、宜しくなシノ」

 

素直に謝罪と感謝の言葉を告げた晴人に少女、『シノ』は驚いた様な反応を見せるが、その後におずおずと名前を名乗った。

 

「おい! シノ! こんな得体の知れない連中に軽々しく名前を教えるなって!」

 

「でも、この人たちは悪い人には見えないよジョン?」

 

「そんなの、まだわからないだろ! っていうか、俺の名前まで勝手にだすなよな!」

 

「あ! ジョン、ごめんなさい!」

 

「だ〜か〜ら〜!」

 

唯一、晴人達に警戒心を見せるリーダーらしき少年(どうやらジョンと言うらしい)は、警戒無く晴人に接するシノ達に注意を促すものの、そこはやはり子供であり、逆に自身の名前も明らかにしてしまう。

 

そんな彼らにアリーシャが声をかける。

 

「警戒する気持ちはわかる。だが教えて欲しい。君たちの様な子供が何故、街から離れた遺跡を隠れ家に? 君たちの両親は?」

 

 

そんなアリーシャの問いかけに、子供達の表情が暗くなる。

 

 

「? ……済まない、何か気に障っただろうか」

 

そんな子供達の様子にアリーシャはどうしたのか問う。

 

 

「……いない」

 

「え?」

 

 

ジョンがボソリと声を漏らす。

 

 

「ここにいる連中の親は、皆、戦争で死んでる」

 

 

「ッ!」

 

 

ジョンの発言にアリーシャは思わず言葉を詰まらせる。

 

 

「(戦争孤児……こんな幼い子供達が)」

 

まだまだ幼い目の前の子供達が、置かれている厳しい現実にアリーシャは心を傷める。

 

彼女もまた幼い頃に両親を失った身だが、それでも彼女には両親が遺した財産や、アリシアやマルトランといった支えてくれる人がいた。

 

そういった存在を持たない目の前の子供達の現状がどれだけ過酷なものなのか、アリーシャには想像もつかない。

 

 

「済まない……軽率な質問だった」

 

「……ふん」

 

アリーシャの謝罪に対して、ジョンは不機嫌そうにそっぽを向く。

 

そこに晴人が口を開く。

 

「でも、なんでこの遺跡に?」

 

「確かに。孤児達の受け入れなら、教会が行っていると思うのだが……少なくともハイランドでは「アリーシャ」あっ! す、済まない!」

 

子供だけしかいないとはいえ、ハイランドから来たことをあまりおおっぴらに言うべきでは無いと晴人はアリーシャの言葉を遮る。

 

そんな彼らの様子にマーガレットは首を傾げる。

 

「どうかしたの騎士のおねぇちゃん?」

 

『ッ!?』

 

その言葉に子供達が一斉に反応した。

 

 

「えっ!? ど、どうしたんだ!?」

 

 

突如、騎士という言葉に警戒を強めた子供達にアリーシャは困惑する。

 

 

「……あんた、ローランス軍の兵士なのか?」

 

警戒を強めながらジョンはアリーシャに問う。

 

 

「い、いや。確かに槍術は嗜んでいるが、私はローランス軍の人間ではないよ」

 

その言葉に子供達は緩やかに警戒を解いていった。

 

 

「なんだよ紛らわしい。心臓が止まるかと思ったぜ」

 

「? それはどういう……?」

 

アリーシャの疑問に対しての返答は別の場所からでた。

 

 

「その子達はな。『敗残兵狩り』をして、命を繋いでいるんじゃよ」

 

「ッ!」

 

「敗残兵狩り!?」

 

オイシから放たれた言葉にアリーシャ達は驚き、つい言葉を漏らしてしまった。

 

そんなアリーシャの言葉にビクリと反応し子供達は、再び警戒を強める。

 

「ッ……! なんでそれを!?」

 

「ま、待ってくれ!? 君達は……その……本当に……?」

 

リーダー格であるジョンに対してアリーシャは、言葉に迷いながら問いかける。

 

「……」

 

対してジョンは黙り込み何も答えない。

 

 

「そういえば、街で情報集めしていた時に、ヴァーグラン森林で敗残兵狩りが横行しているって話はきいたな……広大で警備がし辛いから、山賊が出やすいのに加えて、戦場が近い影響で敗走した兵が狙われやすいって……」

 

晴人はラストンベルでの情報集めの中で耳に挟んだ情報を思い出す。

 

それに対し、シノが口を開く。

 

 

「ま、待ってください! 確かに私達は……その……良くない事をしていますけど……」

 

「他の連中みたいに殺しまではやっちゃいない……死体から金になりそうなものをくすねたりはしてるけどさ……」

 

ジョンがシノに続いて自分達の事を話す。たが、アリーシャは顔を顰めた。

 

「だが、それは……」

 

例え、死体が相手とはいえ子供達のやっている事は盗人のそれだ。騎士として治安を気にかけるアリーシャとしては、そういった行為は、やはり認められない。

 

 

「ッ……! しょうがないだろ! 俺たちだって別に好きでこんなことしてるんじゃない! それでもこうしなくちゃ生きて行けないんだ! アンタみたいな裕福そうな奴にはわかんないだろうけどな!」

 

「ッ……!」

 

子供達の想いを代弁する様にジョンが大きな声を上げる。それに対してアリーシャは言葉を詰まらせてしまう。

 

そこに晴人が声をかける。

 

「落ち着けって。だけど、それなら何で教会を頼らないんだ? アリーシャが言うには普通なら教会は、孤児の受け入れをおこなってるんだろ?」

 

「あぁ、私の知る限りではだが……」

 

「残念だけど、今のラストンベルの教会には期待出来ないわ」

 

晴人の問いにサインドが答える。

 

「確かに、アリーシャの言う通り、ローランスの教会も孤児の受け入れは行っているわ。けど、枢機卿が現在の地位に就いてからラストンベルに派遣された司祭は、私腹を肥やす事で頭が一杯で、孤児の受け入れの様な慈善活動は……」

 

「典型的な俗物って訳かい……頭の痛い話だねぇ……」

 

「あの司祭、マーガレットの件といい……」

 

晴人とザビーダはラストンベルの司祭に対して呆れた様な声を漏らす。

 

「だけど、それだとマズイぜ? たしか、ローランス軍はヴァーグラン森林で起きている敗残兵狩りの撲滅に本格的に動き始めるらしい。このままじゃ、この子達は……」

 

セキレイの羽が話していた敗残兵狩り撲滅に、関しての情報を思い出した晴人は、神妙な表情で思案する。

 

 

その言葉に子供達の表情が不安に染まる。彼等とて理解しているのだ。このままでは駄目なのだと……だが、彼等は今を生きるだけで精一杯でそこから抜け出す術を持たない。

 

 

子供相手に軍人が非道な真似をするとは思いたくないが、子供達が危険な目にあう可能性は可能な限り避けたい。

 

例え、彼等が泥棒の様な事をしていたとしても、手を差し伸べない理由などない。晴人はそう考えている。

 

「ん?、そう言えば、君達が言っていた。この場所を貸してくれた人達ってのは誰なんだ?」

 

敗残兵狩りをしている様な連中が態々、小さな子供達に隠れ家を提供するとは考え辛い。そう思った晴人は子供達に問いかける。

 

「少し前、此処を隠れ家に使っていた人達が、いなくなる前に私達に、この場所を教えてくれたんです。『近いうちに軍が動くから、敗残兵狩りからは足を洗いな』って言って結構なお金も一緒にくれました……」

 

「おかげで暫くは食料には困らなかったし、死体漁りもしなくてよかったよ。この場所は街から遠くて換金には不便だから軍の連中から隠れる為の避難先として使ってるんだ」

 

「へぇ、気前のいい奴もいるもんだな」

 

「だが、それでも確実とは言えないぜ? この遺跡だってそのうち軍の連中に調べられるだろうし、金が尽きたらまた、そいつらは盗人の真似事をしなくちゃならないんだろ? 軍が本格的に動きだしたらどうにもならないぜ?」

 

子供達に助け舟をだした者達の存在に晴人は感心するが、ザビーダはしぶい顔をしてこれからの問題点を挙げる。

 

「確かに、もっと根本的な解決策が必要になる……」

 

ザビーダの言葉にアリーシャは眉を潜め思案する。

 

「(ハイランドでなら、まだ微力ながら助け舟を出せたかもしれないがローランス領では……教会と対立している騎士団も孤児に関しては管轄外だ。街の教会が元来の役割を取り戻せない事にはどうしようも……)」

 

どうしたものかと一同が思案する中、突如、重苦しい雰囲気を吹っ飛ばすように、意外な人物が声を挙げた。

 

「うーん……よくわからないけど。この森で暮らしてると危ないって事だよね? じゃあ、ウチの店に泊まったら? お母さんの作るピーチパイ、凄い美味しいんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………………はい?』

 

 

 

突如放たれたマーガレットの言葉に一同は何とも言えない声をこぼした。

 

 

「ま、マーガレット? 確かにあなたの店は宿屋だけど……」

 

「無料で子供達を何日も泊めるってのは厳しいんじゃないか? 女将さんや従業員だって生活が掛かってるしなぁ……」

 

「慈善活動の押し付けはできねぇよなぁ……仮に同意を貰えても、いつまでも泊まらせとくって訳にもいかねぇし」

 

サインド、晴人、ザビーダの三人は何とも言えない反応を見せる。

 

 

「うぅ……だめかな? 同い年の子が増えて楽しそうって思ったんだけど……」

 

 

しゅんとするマーガレット。

 

だが、アリーシャだけがその言葉に対して、真剣な表情で思案を続けていた。

 

 

「いや、マーガレットの案。名案かもしれない……」

 

 

その言葉に一同はアリーシャへ視線を向ける。

 

 

「考えがあるんだ。聞いて貰えるだろうか?」

 

そしてアリーシャは、1つの提案を口にした。

 

____________________________________________________________________

 

 

「つまり、この子達を暫くウチの宿で保護して欲しいということかしら?」

 

「はい。まことに勝手な頼みで申し訳ないとは思うのですが……」

 

 

事情を聞いたポプラはアリーシャ達が何を頼みたいのか察してその真偽を問い、アリーシャはそれを肯定した。

 

そこに晴人が口を開く。

 

「あの司祭はどうやら、教会本部に自分の悪い噂が届かないように、賄賂で関係者の口を塞いでるらしいんだ」

 

晴人はサインドから得た司祭の悪事を説明する。

 

「我々はこれからペンドラゴに向かう予定があります。その際にラストンベルの現状を伝えようと思います」

 

「教会だって、民の意識をまとめたい以上、反感を買ってる司祭を、態々放置できない筈だ。となれば、次は真っ当な司祭を派遣してくれると思う」

 

ローランス教会は元々、ハイランドとの戦争に対して、民をまとめようと働きかけていた。最高責任者である枢機卿に関しては現状、謎も多いが、それでも汚職に手を染めて教会としての役割を果たしていないあの司祭を放置して良い事はないだろうともアリーシャ達は考えている。

 

元々、アリーシャ達の旅の目的は、ローランスにて皇帝や、枢機卿に憑魔の危険を伝えると共に停戦の為の話し合いをするためだ。その話し合いにラストンベルの件も加わるということだ。

 

「ですが、それでもすぐに司祭が代わるという事はない筈です。ラストンベルの教会がその役割を取り戻すまで、子供達の安全を確実にしたい」

 

だからこそ、アリーシャ達はポプラに協力を求めた。

 

白皇騎士団に協力してもらい、彼らをペンドラゴの教会へと連れて行ってもらい保護してもらうという手も考えたが、謎の雨が降り続くペンドラゴには別の危険が潜んでいる可能性もある事から、晴人達は、一先ずは、この方法が1番安全だと結論づけたのだ。

 

「勿論、無償でとは言いません。子供達の宿泊代金は此方で用意します」

 

そう言ってアリーシャはガルド(お金)が詰まった袋をテーブルの上に差し出した。

 

 

その中身はざっと見積もっても、数ヶ月間は、宿を利用できるだろう額が入っている。

他の貴族に比べれば、自身の資産に執着のないアリーシャだが、それでも彼女は貴族の人間だ。旅を始めるにあたり、そのくらいの資金を用意する事自体は難しい事ではない。

 

その金額を見て、ポプラや子供達は驚きの表情を浮かべた。

 

 

「そ、そんな! 娘の命の恩人にお金など、いただけません!?」

 

そう言って、ポプラは袋をアリーシャに返そうとする。

 

だが……

 

 

「いえ、どうか受け取ってください。貴方には貴方の生活があります。お金で全て解決できると思っている訳ではないですが、協力していただく以上、私としてもキッチリした形でそれに報いたい」

 

「俺からも頼む」

 

そう言ってアリーシャと晴人は頭を下げる。

 

 

嘗て、アリーシャはスレイとマーリンドを訪れた際に、加護復活の為に協力を依頼した傭兵団を率いるルーカスから対価として報酬を要求された。

疫病に苦しむ民を助ける行為に金の話を持ち出された事に、当初、誇りを重んじるアリーシャは嫌悪感を覚えた。

 

だがルーカスは言った。

 

『もし、俺の部下が依頼の中で死んだら、遺された家族は、誇りとやらで飯が食えるのか?』と……

 

 

その通りだった。金が全てなどと言うつもりはないが、遺された者達が生きていく為の保障になり得るのも事実だった。

 

要はそれと同じなのだ。

 

ポプラには、母親として、女将として、娘や宿の従業員に対しての責任がある。それに対して、無責任に善意の活動を押し付ける様な真似をアリーシャはしたくなかった。

 

言ってしまえば、彼女なりのケジメなのである。

 

 

そんな彼女の真剣な態度に触発されて、子供達もポプラに対して頭を下げる。

 

「そ、その……俺たち、もう盗人みたいな事したくないんです!」

 

「迷惑をかけない様にします! 何なら、宿の仕事も手伝います、 だから……」

 

そう言って頭を下げる子供達を見たポプラはアリーシャへと視線を向けて、彼女が折れる気はない事を理解し小さく溜息を吐いた。

 

 

「ハァ……お金なんて貰わなくても協力するのに、頑固な子ね……わかったわ。このお金は一先ずは預からせて貰います」

 

 

「ッ!! で、では!?」

 

 

「えぇ、暫く、この子達の面倒は此方で見るわ。マーガレットの事もあるし他人事とは思えないですからね」

 

その言葉にアリーシャ達の表情が輝く。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

そう言ってアリーシャと晴人はもう一度頭を下げた。

 

「いいのよ頭なんて下げなくて。私は私で、やりたいようにやっただけなんだから」

 

 

そう言ってポプラは優しく微笑む。

 

「さて、そうと決まれば歓迎会の準備ね。手によりをかけたピーチパイをご馳走するわ♪ 」

 

その言葉を受け、子供達も表情が明るくなる。

 

そして、宿屋ランドグリーズの一室から子供達の喜ぶ声が響いた。

 

 

 

 

 

__________________________________

__________________________________

 

 

「今度こそ、取り敢えず一件落着ってとこだな」

 

ポプラから協力を得られた数時間後、晴人達は荷物をまとめラストンベルの西門の外にいた。西門の先は薄暗かったヴァーグラン森林とは対照的に日当たりの良い広大な草原地帯が広がっている。

 

ポプラ達からは一緒に子供達の歓迎会に参加しないかと声をかけられたが、元々、ペンドラゴへ急ぐ身だった二人は、事件解決と共に、早々にラストンベルを去ろうとしていた。

 

「しかし、ザビーダの奴。気づいたら急にいなくなってたな。なんか一言あっても良いのにな」

 

気づけば、いつの間にかいなくなっていたザビーダに晴人は不満を漏らす。

 

そこに、突如、声がかけられた。

 

 

「良かった。まだいたのね」

 

「サインド様!」

 

そこには、二人を見送りに来たのか、サインドがいた。

 

 

「どうかなされたのですが?」

 

「貴方達は私の恩人だから私だけでも見送ろうと思って……」

 

「そんな……そこまで気を遣っていただかなくても……」

 

「謙遜しなくてもいいわ、貴方達はマーガレットだけじゃない、私やあの子供達も助けてくれた」

 

その言葉にアリーシャは表情を曇らせる。

 

「どうかしたの?」

 

「いえ……その……敗残兵狩りの子供についてです」

 

歯切れの悪いアリーシャに晴人が声をかける。

 

「納得していないって顔だな」

 

「あぁ、結局、子供達に関しては、ポプラさんに頼った一時しのぎの対応になってしまっただろう? もっと上手くやれたのではないかと思ってしまってな……」

 

そう言ってアリーシャは俯向く。

 

 

「それでも、アリーシャは、あの子達の『今日の命』は救った。それは胸を張っていい事だと俺は思うよ」

 

「そうだろうか? 私は問題を、先送りにしただけなのでは……」

 

明日(これから)の事を考える事は大切さ。けど、『今日』を乗り超えなくちゃ『明日』は来ない。なら、俺たちは、1つ1つ、今の問題に向き合っていくしかないだろ」

 

「今と向き合う……」

 

その言葉にアリーシャは顔を上げる。

 

「今回の事件だってそうさ。マーガレット達を助ける事が出来たのは、アリーシャが『今日(目の前)の命』と向き合えたからだ。アリーシャはその事に後悔はあるのか?」

 

「無いよ……ある筈無い」

 

 

「だろ? なら『今日』はそれで良いじゃないか。『今日は今日をちゃんと生きる。明日の事はそれからだ』」

 

そう言って笑う晴人に対して、それを聞いていたサインドが言葉を発する。

 

「今日は今日を……そうね……その通りよ」

 

「サインド様?」

 

「私は、この街も人々も変わってしまったと思っていたわ。けど、マーガレットの為に怒ってくれた街の人達を見て気づいたの……本当に変わってしまったのは私の方なのかもしれないって」

 

そう言ってサインドは振り返り、ラストンベルの街を見上げる。

 

「変わっていく先の『未来(あした)』を憂いて私はこの街から逃げ出した。それで何かが変わる筈なんてないのに……『明日』の事ばかり考えて『今日』と向き合おうとしなかった……」

 

サインドは決意を固める様に瞳を閉じ、言葉を続ける。

 

「もう一度、信じて向き合ってみるわ。この街の人々と希望に満ちた『未来(あした)』に歩んでいく為に」

 

その言葉と共にサインドの体が輝きを放つ。

 

そして輝きが止むと、アリーシャ達の視線の先には加護領域に包まれたラストンベルの姿があった。

 

「また会いましょうアリーシャ、ハルト。『今日』を乗り越えた先の『明日』で」

 

そう言って微笑み、サインドは去っていった。

 

 

「だそうだけど? アリーシャ」

 

その言葉にアリーシャの表情が引き締まる。サインドの決意に触発されたのか、その目に先程までの迷いはない。

 

「……あぁ、悩んでる暇なんて無い。私達も行こうハルト」

 

「フッ……りょーかい」

 

そう言って微笑み合う二人はラストンベルを発とうとするが……

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃあ! そんじゃペンドラゴに向けてしゅっぱぁつ!」

 

 

 

「へ?」

 

「えぇ……?」

 

 

いつの間にか現れたザビーダに思いっきり出鼻を挫かれた。

 

 

「お? なんだよその微妙な顔は? こんな良い男に向かって」

 

ポカンとした二人に対して、ザビーダはそこにいて当然の様に振る舞う。

 

「え? なに? お前ついてくんの?」

 

「そのつもりだけど?」

 

「…………………えぇ」

 

「オイオイ、言っておくが俺様結構便利だぜ? 強い! カッコいい! 知識も豊富! トーク力抜群で、長旅の会話にも困らない! 一家に一台! ザビーダお兄さん!」

 

ハイテンションで語るザビーダ。そんな彼をスルーし晴人はバイクに跨りエンジンをかける。

 

「そうか、誰か買い取ってくれるといいな」

 

「ちょ、おまっ!? 扱いが雑だな!?」

 

「は、ハルト……ザビーダ様の協力が得られるのは心強いとおもうのだが「冗談だよ」……ならいいんだが」

 

エンジンを止めバイクから降りた晴人はザビーダへと向き直ると彼に問いかける。

 

「で? なんだって俺たちに同行するんだ?」

 

その言葉を聞いたザビーダはスボンに収めていた謎の多い銃、ジークフリートを取り出し、晴人達に見せる。

 

「俺には、ジークフリート(こいつ)でつけなくちゃならないケリが2つある……その為に憑魔を狩りながらこの大陸を彷徨ってた」

 

ジークフリートを見つめながらザビーダは言葉を紡ぐ。

 

「そんで、ケリの1つを果たすのに、お前さん達と行動するのが良いって思ったのさ。勿論、戦闘には協力するし、浄化の力を持つお前さん達がいれば、俺も不要な殺しをしなくて済む。悪い話じゃないだろ?」

 

「……ケリってのは、その銃で誰かを殺すってことか?」

 

「……少なくとも、今はそれしか手が無い相手だ」

 

晴人の問いにザビーダは誤魔化さずハッキリと言い切る。

 

その言葉を受け、少しばかりの間を空けて晴人は口を開いた。アリーシャは不安そうにそれを見守る。

 

 

「……いいぜ。好きにしな」

 

その言葉にザビーダは少しばかり意外そうに反応する。

 

「意外だな。てっきり反論されるかと思ったんだが……」

 

「別に? 少なくともお前が面白半分で命を奪う奴じゃないってのはわかってる。事情も知らずに偉そうな事を言うつもりはないさ……それに」

 

「……それに?」

 

「もしもの時は、俺がお前の『希望』になればいい。それだけさ」

 

 

笑ってそう言い切る晴人。それを見てザビーダは笑みを零した。

 

 

「くっ……くっはっはっ! 俺の希望になる……か。やっぱり面白いなお前」

 

そう言ってザビーダは右手を差し出す。

 

「そんじゃまぁ……宜しく頼むわ」

 

それに答える様に晴人も微笑むと右手を差し出し、握手を交わす。

 

「お?」

 

しかし、晴人は握手だけでは終わらず、ザビーダの手を取り、先ずは腕相撲の様に手を組み替える。

 

「ほら、拳握れ」

 

「あん? こうか?」

 

続いて、手を離すと拳を握り、正面、上、下の順に拳を軽くぶつける。

 

「なんだ今の?」

 

謎のやり取りにザビーダはその意味を問う。

 

「ん? まぁ、『これから宜しく』って意味だとでも思ってくれ」

 

「へぇ、変わった挨拶もあるもんだな」

 

「まぁな、戦友(ダチ)の受け売りだけどな」

 

そう言って笑いあう二人。

 

そこにアリーシャから晴人に声がかかる。

 

「ハルト……」

 

「ん? どうしたアリーシャ」

 

心なしか不機嫌そうなアリーシャが晴人の視界に映る。

 

「私はその挨拶を、してもらってないんだが……?」

 

「え? やってみたいの?」

 

「う、うん……」

 

そう言って少しばかり恥ずかしそうにアリーシャは肯定する。

 

「いや、まぁいいけどさ……えぇっと、先ずは握手をして……」

 

「こ、こうだろうか……?」

 

そう言って晴人は先程のやり取りの流れをアリーシャに説明し、アリーシャはぎこちなくそれに従う。

 

そんな二人のやり取りをザビーダは苦笑しながら見つめる。

 

 

「やれやれ……マイペースというか何と言うか」

 

 

ザビーダは呆れた様に言葉を零す。しかしその表情はどこか楽し気だ。

 

 

「さて、そんじゃまぁ、行くとしようぜ。『明日の命』って奴を救いにな」

 

そう言って三人はラストンベルを発つ。それを見送る様に、ラストンベルの大鐘楼が美しく鳴り響き、その音色が雲ひとつ無い青空へと溶けていった。

 

 

 

__________________________________

__________________________________

 

 

 

ザァーザァー ……

 

止む気配の無い雨音が広い室内に鳴り響く。

 

 

そこは薄暗い聖堂だった。

 

 

神聖な場所である筈のその場所は、その広さに反して人気がなく、言い知れぬ不気味さを醸し出している。

 

美しいステンドグラスは、隙間も無く広がる暗雲と降り続ける雨のせいで本来持つ美しさを失い霞んで見える。

 

そんな聖堂に一人、聖職者と思わしき白い服を纏う女性が佇んでいる。

 

「……必ず、乗り越えて見せる……災厄の時代を……そして、幸せだったあの頃へ……」

 

光を失ったように濁ったその瞳で虚空を見つめ、女性は言葉を紡ぐ。

 

 

そんな女性を見つめる影がひとつ……

 

 

紫色の服を纏った少女が、背後から女性を見つめ、その顔に笑みを浮かべた。

 

 

 




折角、PTご三人になったので戦闘終了掛け合いネタ
チョロ甘①

ザビーダ「チョロいぜ」

晴人「甘いぜ」

アリーシャ「え!? あ……『チョロい』と『甘い』だから……えっと……チョい甘だ!?」

晴人、ザビーダ「あーあ……」

アリーシャ「だ、ダメか!?」


以下、後書き

敗残兵狩りの子供達に関しては。あっさりに見えますが、まだまだ解決ではなく続く予定です。
ただ、クズ度の違いがあれど大筋が、同じスリのガキ共の方のサブイベントは省略することになるかもしれません。決定事項では無いですが、ぶっちゃけ焼き直しになりかねないんですよね。

関係ないですがバトライドウォー創生が楽しいです。ドラゴン各種を、動かせるように、なったウィザードが、すごく楽しい。だからドラゴタイマーとストライクドラゴンとプラズマシャイニングストライクの、実装はよ! インフィニティーの△+○は変えていいやろ!
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