Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜 作:フジ
仮面ライダーアマゾンズがクソ面白くて楽しみな今日この頃、仮面ライダーマッハと仮面ライダーハートの外伝決定でテンションがヤバいフジです
もう少しでマッハの小説も発売だし今年のライダーは退屈させねぇな! 鎧武小説も面白かったので此方も期待ですね
今回のサブタイはキバネタ(なお音楽記号が変換できん模様)
では、最新話をどうぞ
21話 序曲・運命の交差点 前篇
ザァァァァ……ザァァァァ……
広大な平原に強く降り続く雨。
そこは見渡す限りの麦畑だった。
その光景を三人の人影が見つめている。
「ったく……聞いてはいたけど、ひどい雨だな」
「あぁ、この雨の量……これが年単位で絶えることなく降り続いているなんて……」
「まったくだ、水も滴るイイ男なザビーダお兄さんにも限度があるぜ」
あたり一面に広がる、広大な麦畑、ローランス最大の穀倉地帯である『パルバレイ牧耕地』で作られる食物は、ローランス国内だけに留まらず商人を通じてハイランドへも輸出されるほど有名な物だ。
バイクを止めた三人は眼前に広がるその光景に眉を顰めた。
「勿体無いねぇ……ここら一帯の作物、コガネカビに侵されてんな。これじゃあ収穫量は期待できないぜ」
「農家の方達の姿も見えない……収穫を諦めてしまっているのだろうか」
視界一面を埋め尽くすほど広がる牧耕地に対して人の姿は殆ど見当たらない。遠くの方で疎らに動く人影がある為、一応の活動は行っているのだろうが、長雨による不作が人々の心に影響を与えているのは間違いないだろう。
アリーシャは、その事実に表情を暗くする。
「……まぁ、俺たちまで暗くなってもしょうがねぇさ。向こうにペンドラゴも見えてきたんだ。風邪をひかない内に行こうぜ」
晴人とアリーシャの二人はドレスアップの魔法を使い晴人が黒、アリーシャが白の外套を雨具として着ているがバイクで一気に移動してきた事もあり、内側の服も濡れてきており、身体も冷えてしまっている。
そんな二人に気を使ったのかザビーダは目的地を指し、先を急ごうと促すと光の粒子に変わりアリーシャの身体へと吸い込まれる。
三人旅になった事もあり、そのままではバイクの二人乗りが難しい事から、ザビーダは前回の戦闘時同様、移動中はアリーシャを器として一体化している。
「やっぱ。器にするならカワイ子ちゃんが良いね」と抜かしたザビーダに対して、晴人が「コイツやっぱ置いて行こうかな」と内心で思ったのは秘密である。
「ザビーダの言う通りだ。先ずはペンドラゴに着いてから考えようぜ」
晴人はそう言ってマシンウインガーのエンジンをかけ、アリーシャは後部のシートに跨ると晴人に掴まる。
それを確認すると晴人はバイクを発進させた。その行く先にはラストンベルを超える高さの城壁に囲まれた皇都『ペンドラゴ』が迫っていた。
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「へぇ、皇都って聞くだけあってレディレイクにも負けないデカさだな。いや、広さだけならこっちの方が上か?」
門を潜り到着したペンドラゴの広場で晴人は素直な感想を零した。
湖上に作られたどこか神秘的だったレディレイクとは異なり、堅牢さを感じさせる巨大な城壁に囲まれた中世のヨーロッパを思わせる街並みは、異世界からやって来た晴人には新鮮に映ると同時に彼の中である事を思い起こさせる。
「(この城壁と光景……間違いない。この世界に跳ばされた時、頭にながれた映像にあった場所だ……このペンドラゴに何かあるのか?)」
自身をこの世界に跳ばした虹色の石が見せた光景が自身の目の前にある事に晴人は気づくと同時に、それが何か意味があるものなのかと心の中で考える。
だが、考えた所で現状での情報は少なく直ぐに行き詰まってしまった。そこにアリーシャが口を開き晴人は考え事を中断する。
「初めて訪れたが流石はローランスの皇都だ。だが……」
「あぁ、やっぱり活気は無いな……無理も無いか。こんな不気味な雰囲気じゃ外に出ようって気もなくなるよな」
「この街に来たのは久しぶりだが、ヒデェもんだな。前は活気に満ちた街だったんだが……」
人気の少ない周囲を見回しながら晴人達は噴水のある広場まで歩みを進める。
「お! この噴水はまだあったか」
広場の中心にある噴水を見てザビーダは懐かしそうな声をあげる。
「ん? この噴水がどうかしたのか?」
「いやな? この噴水には愉快な思い出があってね。つい懐かしい気持ちになってよ」
噴水を見つめながらザビーダは面白そうに語る。
「この噴水に……ですか? あまり変わった所は無さそうですが……」
「あ! やめとけアリーシャ、その噴水は……」
アリーシャは噴水を覗き込む。それをみたザビーダは慌ててそれを止めようとするが……
ザバァン!!
「へ?」
アリーシャの口から間の抜けた声が漏れる。
突如、噴水の水が逆流し至近距離にいたアリーシャがずぶ濡れになったのだ。
「うおっと!? アリーシャ!?」
「あーあ、その噴水はなぁ……『憤怒の噴水』なんて呼ばれててな。複雑な制御構造で作られている所為か偶に逆流するんだよ……俺も昔、旅の仲間共々ずぶ濡れにされたんだ」
至近距離で水の逆流に直撃したアリーシャは外套を着ていたとは言え、その勢いから水が隙間から入り込み中の服までずぶ濡れになったのか、身体が更に冷えてしまい僅かに震えており、トレードマークともいえる特徴的な横に流れる前髪もずぶ濡れになりだらりと下がってしまっている。
「だ、大丈夫かアリーシャ?」
「あ、あぁ……少しばかり驚いたが、大丈…くしゅん!」
言葉を遮るように可愛らしいくしゃみがアリーシャの口から漏れる。
「あー、取り敢えず宿に行こうか。本当に風邪をひきかねないし」
「同感だね。ここはひとつペンドラゴ名物の『ドラゴ鍋』でも食って温まろうぜ。寒くてしょうがねぇよ」
「そりゃ、お前は半裸だもんな」
「そういうのなら俺にも外套くれよ」
「外套だけが浮かんでる光景見たら周りの人達が驚くだろ、我慢しろって。というか……今更だけどなんで半裸なんだお前」
会話を交わす三人。だが、そこに声がかけられる。
「おやおや、大丈夫ですかお嬢さん。そんなにずぶ濡れになっては風邪をひいてしまいますよ」
声をかけたのは、小柄の商人らしき人物だった。
「すいません。お気遣いありがとうございます」
「いえいえ、それにしてもあまり見かけない方ですが、その身なりからして御身分の高い方とお見受けします」
「え? いえ、私はその様な者では……」
アリーシャの身なりから推察した商人の言葉をアリーシャは咄嗟に誤魔化す様に否定する。
「ご謙遜を……実は私、この街で商人として働いている者なのですが、貴方のような方に耳寄りな話がありまして」
「私に? それは一体……」
男の話を真面目に聞くアリーシャ。一方で晴人は胡散臭そうに商人を見ている。
「どうしたハルト?」
「いやさ、アリーシャってキャッチセールスに引っかかりそうなタイプだと思ってさ……」
「キャッチ……なんだそれ?」
「ん? 要は押し売りに弱そうって事だ」
「あー、なんやかんやお姫様だもんねぇ」
少し離れた位置でコソコソと静かな声でそんな会話をする二人。それを他所に商人の男は話を続ける。
「はい、実はですね。今、このペンドラゴの貴族の間で『ある秘薬』が流行しているのです」
「秘薬?」
聞き返すアリーシャに対して商人らしき男は液体の入った小瓶を幾つか取り出し見せつけるように告げる。
「えぇ、その名も『エリクシール』」
商人のその言葉を聞きアリーシャの目が驚きに見開かれる。
「エリクシール!? 『マオテラス』がもたらしたと言われる万能薬の事ですか!?」
「ほう、博識な方ですな。その通り……『長寿の霊薬』として知られるあのエリクシールです。どうです? 貴方も是非この秘薬を手に入れてみたくはありませんか?」
会話を交わす二人。それを他所に話についていけない晴人はザビーダに質問する。
「なぁ、話についていけないんだけどエリクシールって?」
「ん? まぁ、簡単に言えばどんな病気も一発で治し、飲んだものには長寿を約束すると言われる伝説の薬さ。ただ、現在では製法が失われちまっていて、古代の遺跡から発掘された当時の現物には物凄い値段がつくレアものなんだが……」
「? 凄い薬なのはわかったけど、そんな希少な物がポンポンと出回るのか?」
「そりゃ、出回らないだろうねぇ」
そんなやり取りをする二人同様、アリーシャも同じ疑問をおぼえたようで、同様の疑問を口にする。
「あの……言い辛いのですがエリクシールは製法が失われた秘薬の筈……」
「成る程……このエリクシールは偽物かもしれないと……」
「気を害したのなら申し訳ありません……」
だが、商人の男は気を害した様子も無く笑顔を貼り付けたままアリーシャに返答する。
「いえいえ、構いませんよ。当然と言えば当然の疑問ですから。ですが、これをご覧下さい」
そう言って男は何かが書かれた紙を取り出す。
それを見たアリーシャの表情が驚きに染まった。
「これは! ローランス教会の証明書!? 」
「えぇ、そうです。教会の印が押されたれっきとした本物ですよ」
男が取り出した紙はローランス教会がエリクシールの販売を認めると書かれた証明書だった。それもアリーシャが見る限り証明書に不備らしき物は見当たらず、使用されている印も間違いなく本物である。
「これで疑惑は晴れたでしょうか? このエリクシールは教会のお墨付きです。それでどうです? 今なら特別価格で「悪いね、今は持ち合わせが無いんだ。今度暇な時にでも顔を出すよ」お、お客様!?」
セールストークを再開しようとする男を遮り、晴人はアリーシャの手を引きその場を後にする。商人の男はそれを見送ると少しばかり苦い顔をした後にその場を去っていった。
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「アリーシャ。ああ言うタイプは話に乗ると捕まって逃げ出せなくなるから早めに断っておいた方がいいぜ?」
「すまない……エリクシールと教会の証明書の事がどうにもひっかかってね……」
「まぁ、気になるのは確かだけどよ。今はそれ以外にやる事があるんだろ? そっちを済ませようぜ」
広場を後にした三人はペンドラゴの宿屋『ギリオーヌ』へと到着し、空いている二部屋を借りると部屋の前で会話を交わしていた。
「兎に角、先ずは少し休んで腹ごしらえだ。さっきのでアリーシャも服が濡れてるだろ? 着替えてきたらどうだ? アリシアちゃんが替えの服を用意してくれたろ?」
「そうだな。このままだと…くっしゅん! ……風邪をひいてしまう」
そう言ってアリーシャ外套を脱ぐ。案の定、先程の噴水の件で中の服までびしょ濡れになっていたのだが……
「えぇ〜着替えちまうの? 勿体無くねぇ?」
「は? 勿体無いって何が?」
アリシアが用意した替えの服は今着ている服と同じデザインの物だ。着替えた所で見た目は変わらない筈だと思い晴人はザビーダの言葉に疑問を感じるが……
「だってよぉ〜眼福じゃん。水に濡れた女の子。服の白い部分が水で薄く透けてそこはかとないエロさが……」
ザビーダの口から放たれたのはストレートなセクハラ発言だった。
ズザァァォァァ!!
直後。アリーシャが両腕で自分を抱きしめる様なポーズで胸の部分を隠すようにして全力で後退した。
「ッ〜〜!! 」
顔を赤くし背を向けながらこちらに視線を向けるアリーシャ。そんな姿に場がなんとも言えない空気に包まれる。
「ザビーダァ!! 部屋に行くぞ! 今すぐ!!」
その空気に耐えられず晴人はザビーダを連れ部屋へと撤退しようとする。
「おう。また後でな」
そんな晴人の言葉に対してザビーダはナチュラルにアリーシャの方の部屋へと入ろうとする。
「お前もこっちだよ!!」
【バインド! プリーズ!】
「ちょおまっ! ジョーク! ジョークだって! 天族ジョーク!」
「五月蝿いよ! いいから来いって!」
そう言って晴人は鎖で雁字搦めにしたザビーダを部屋へと引っ張っていき、後には顔を赤くしたアリーシャだけが残された。
操真晴人。普段はスカしてるが実はツッコミ気質の常識人である。
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そんなこんなで、一休みした後に一同は宿の食堂で食事を終え会話をしていた。
「ふぃ〜。ドラゴ鍋か、なんか不思議な味だったな」
「噂によると使われている出汁に秘密があるらしいぜ。美味いだろ?」
「まぁね……でも、あんま目立つ様に動くなよ? 周りからは下手すりゃ宙に浮いたスプーンが勝手に鍋を食ってる様に見えるんだからな?」
「わかってるって、だから態々、こんな端のテーブルでお前とアリーシャの身体に視線を遮られる位置で食ってるだろ? 天族ってのは食事をしなくても死にやしないが、それでも食事ってのは『楽しみ』なんだ。大目に見てくれよ」
「それならいいんだけどな……さて、食事も終えた事だし、そろそろ行動と行こうか」
「だな。で? まずはどう動く?」
「そうですね……やはり、この都にある騎士団塔に行くべきでしょう。我々が皇帝に謁見するには白皇騎士団の団長である『セルゲイ』という方の協力を得るのが現状では1番確実ですから」
ローランス帝国の軍は複数の騎士団により構成されおり、皇帝の親衛隊である白皇騎士団はその中でも政治への発言力が強い。協力してもらえるなら心強い存在だろう。
「現状で確実に協力が得られそうなのは、白皇騎士団だけだからな。それにスレイ達の情報も何か聞けるかもしれない」
「成る程ね。なら案内するぜ着いてきな」
そう言ってザビーダは席を立ち二人はそれに続く様に外套を纏いその場を後にする。
宿屋をでて右に曲がると未だに降り続く雨の中を三人は歩き始める。
中央広場を出て住民の住む東の居住区へと足を踏み入れながらアリーシャはふと、気付いた事を口にした。
「そう言えば、ペンドラゴにも加護領域は無いのですね」
「あぁ、それか。実は俺も気になってんのよ。この街は元々『ムルジム』って言う天族の加護があった筈なんだが」
「サインドみたいに人間に思う所があって加護を消したか……或いは」
「穢れに飲まれて憑魔になってしまったか……という可能性が高いだろうな」
「そうなんだよねぇ……せめて、加護さえあればこの長雨や不作もマシになってたかもな」
その言葉に晴人が疑問を口にする。
「そうなのか? 穢れの浄化以外にも加護領域の効果ってあるんだな」
「まぁな。『地の主』である『加護天族』ってのは信仰が高まれば展開される領域の範囲内で、自身に対して祈る人間の願いってもんをある程度反映できるのさ。農家の多いこの街でなら、作物の豊作や気候の安定なんてのがわかりやすい例だな」
「へぇ、凄いもんだな」
「ま、万能って訳じゃないけどな。それと、間違っちゃいけないが『加護』を与えられるのは『加護天族』だけじゃねぇ。『加護天族』ってのは街だけに留まらずその地域一帯を加護の影響下にできる力の強い天族の事だ。『加護天族』じゃない天族であっても『加護』を与える事自体はできる」
「ってことはザビーダも『加護』を与える事は出来るのか? 」
「あぁ、俺に対して信仰してくれる奴がいるのなら出来なくはないぜ。もっとも、『加護天族』の連中みたいに加護が与えられるとは限らないけどな」
「ザビーダ様。それはどういう意味でしょうか?」
ザビーダの言葉にアリーシャは首を傾げる。
「天族の加護ってのは天族によって加護の作用の仕方が違うのさ。例え人間側の祈りが同じでもそれを受ける天族が違えば与えられる加護の形も異なっちまう」
「祈りに対して加護がどう効果を発揮するかわからないって事か?」
「そういうこった。こればかりは祈りを受ける天族も決めようが無い。天族として生まれ持った特性みたいなもんだからな」
「なるほどねぇ。天族ってのは謎だらけだな」
「前にも言ったろ? 天族ってのはあくまで超常的な力を得た存在の総称みたいなもんだってな。今言った以外にも4属性に当てはまらない特殊な力を扱う奴だっていたりするんだぜ?」
ザビーダのその言葉に思い当たる節があるのかアリーシャが反応する。
「火・水・風・土以外の属性ですか?」
「お? 興味でもあるのかい?」
「えぇ、以前スレイ達の故郷である『イズチ』の近辺で不自然な雷に襲われて気を失った事があったのですが、あれはもしや……」
嘗てアリーシャがスレイと出会う切っ掛けとなった出来事。災厄を止める手段を求めて伝承にある『始まりの地』を探す過程で彼女は謎の雷に襲われ崩れた地盤により地下の遺跡へと落下しそこでスレイと出会った。
当時の天候は穏やかな物だったにも関わらず、『アロダイトの森』を越え、『マビノギオ山岳遺跡』へと踏み込んだ瞬間、雷に襲われたアリーシャだが、天族の存在を知った今思えば、あれはイズチへの侵入を防ぐ為の天族による防衛手段だったのではと思ったのだ。
「あぁ……そりゃゼンライの爺さんの力だな」
「ゼンライ様……その方があの雷を?」
「あぁ、ライラと同じ高位天族の一人で『光』の属性を操れる爺さんさ」
「『光』の属性か……」
ザビーダの語る話に何かおぼえがあるのか晴人はボソリとその言葉を反芻する。
「『光』の属性ってのは相性のある4属性と違ってあらゆる憑魔に対して有効な力だ。爺さんはその力を込めた特殊な雷を操れんのさ」
「あらゆる憑魔に……それは凄いですね」
「なんせ、天族の中でも最年長クラスだからねぇ、あの爺さんは……ま、そんな具合に天族にも特殊なのがいるってことさ。はい、ザビーダお兄さんの天族講座終了! そろそろ到着だぜ」
会話を交わす内に三人は東部の市街を抜け騎士団塔あるエリアへと辿り着いていた。
「そういや、いきなり邪魔することになる訳だけど話通ってんの?」
「それなら大丈夫だろ。協力してくれた白皇騎士団の騎士さんが団長のセルゲイって人に話を通しておいてくれてるらしい」
「えぇ、少なくとも数日前には私達が訪れると伝わっている筈……っ!」
騎士団塔のエリアへと足を踏み入れたその時、三人の会話が止まる。
騎士団塔のエリアへと足を踏み入れたにのに関わらず周囲に人が居ない。雨音以外の音がしない異常な人気の無さ、それが三人の警戒を強めた。
「なんか妙な感じだな……」
「同感だ……人の気配が無ぇ。いや……この感じは……」
何かを感じ取りザビーダが振り返る。
「どうかしたのですか? ザビーダ様」
「……!! 何かが戦っていやがる!場所は……中央広場か! それにこの気配……憑魔だぜ!」
ザビーダのその言葉に二人は驚きの表情を浮かべるもすぐに引き締める。
「ザビーダ! 案内頼む!」
「おうよ! こっちだ!」
踵を返し駆け出す三人。
東部市街へと続く道を避け曲がり道を左へと曲がり走り抜けた先に見えた階段を駆け下りる。
そこは数百人単位の人々が入れるであろう巨大な広場だった。おそらくは高い地位の人物が演説を行う際に使用されるのだろう。演説用と思われる舞台が広場の奥に造られている。
だが今問題なのはそこではない……
「なっ!?」
「チッ……こいつは……」
そう、三人の目に飛び込んできたその光景は……
「ぐぁっ!?」
「うぅっ……」
傷つき倒れ伏した数十人の白皇騎士団の騎士達の姿だった。
「大丈夫か!?」
近くに倒れている騎士の一人に駆け寄り晴人は声をかける。
「ぐぅう……」
男の鎧は苦悶の声を漏らすがどうやら命に別状は無い様だ。
だが白銀の美しい鎧は黒く煤けており肉が焼けたような嫌な臭いが晴人の嗅覚を刺激した。
その痛ましい現状に表情を険しくする三人へ何者かの声がかかる。
「あぁん? なんだぁ? 人払いしといてくれんじゃなかったのかぁ? なんで騎士以外の奴が紛れ混んでんのかねぇ?」
「何者だ……?」
三人が視線を向けた先には一人の男が立っていた。
黒尽くめ服。猫背気味の前傾姿勢、大柄の体格に動物の尾を思わせるボリュームのある金髪が腰まで伸びている。
だが、1番印象的なのは男の容姿だ。
狐を思わせる切れ長で異常に吊り上がった瞳。
犬歯を思わせる鋭い歯。
人間とは思えない尖った長い耳。
目尻や口角には血を思わせる赤い化粧のようなものが塗られている。
どこか人ならざる物を感じさせる何かが男からは放たれていた。
「折角人がこいつらをどう始末するか楽しく考えてる所を邪魔するなんて悪い子だねぇ」
「っ!? お前がこれをやったのか!」
謎の男に対しアリーシャは警戒を強める。
その言葉に反応し男はアリーシャを凝視する。
「あぁん? ……あれぇ……あれあれあれぇ……? 驚いた……誰かと思ったらあの時食い逃したメインディッシュじゃないか」
ニタァ……
アリーシャを見た男の口角が更に吊りあがり不気味な笑みを形作る。
「ッ!?」
狂気を感じさせる笑みにアリーシャは一歩後ずさる。
「小僧共の所為で食い逃したと思っていたんだが……丁度いい……騎士共のついでに食ってヤるよォ!!」
そう嗤い男は一気に此方へと突撃しようとし……
【コネクト! プリーズ】
「
ドガガガガガガガガガァン!!
「ヌォオ!?」
足元に着弾した銃弾と鉱石によりその足を止めた。
「オイオイ……初対面のレディに『食ってやる』は無いだろう? エスコートがなってないぜ、どこのカントリーボーイだお前?」
「なんか、仁藤の奴がそれと似たような事をやっちゃってた様な……まぁいいか……取り敢えず、お前が何者かは知らないが、この人達を傷つけたのは見過ごせないな」
晴人とザビーダはお互いの得物を構え、謎の男と相対する。
それを見た男は更に楽しそうに嗤いだす。
「く……クカカカカァ!! お前……美味そうな臭いだなぁ」
ザビーダを見つめ男は舌舐めずりをする。
「この男……天族が視えて!?」
「うぇ……ノーサンキューだぜ。俺様そういう趣味無いから」
「いや、多分そういう意味じゃないと思うぞ」
ザビーダは嫌悪感を露わにして表情を引きつらせるが次の瞬間、すぐに目つきを鋭くする。
「クカカカカカカカカカカ!」
何故なら男の身体から突如強烈な穢れが噴出したからだ。
それと呼応するように辺りから突如、リザードマンやアーマーナイトといった憑魔が姿を現す。
「これは!? この男まさか憑魔!?」
「なるほどね、どうりで一人だけで騎士団の人達を倒せる訳だ……」
「ハッ! 上等じゃねぇの! 寧ろ遠慮する必要が無くなるしなぁ!」
男の正体を察した三人は戦闘態勢をとる。
【ドライバーオン!】
「変身!」
【フレイム! プリーズ! ヒー! ヒー! ヒーヒーヒー!】
晴人とアリーシャは姿を変え構える。
「なんだぁお前? キラキラ光って目障りだなぁ!」
男はウィザードへと人間の限界をあっさりと超えた速度で肉薄する。
「シャァ!!」
「ふっ!」
お互いの鋭い蹴りがぶつかり合う。
「コイツは俺が引き受ける! 二人は周りの憑魔を頼む!」
「わかった!」
「了解だ。そいつは任せるぜハルト!」
晴人の言葉を受け二人は周囲の憑魔へと駆け出す。
「俺の相手は一人で十分って訳かぁ? 生意気だねぇ」
「気に障ったか? そりゃ悪かったね」
男の言葉を受け流し、ウィザードはローブを翻し構えをとる。
「あぁ、気に障ったよ……だからぁ……そのキラキラと目障りなツラを粉々にしてやるぜぇ!」
その言葉と同時に男の両手から青い炎が噴き出す。
「ッ!」
「焼け爛れろォ!! フレイムトーチ!」
両手から放たれる青い炎弾。
ウィザードはそれに反応し身を捩りギリギリで回避する。そこに男が肉薄し炎を纏った腕をウィザードに叩きつけようとする。
「喰らいなぁ!」
「やなこった!」
ウィザードは顔面狙いの一撃を顔を横に僅かに逸らす最小限の動きで回避し逆に肘打ちを男の胸に叩き込む。
「ぐぇえ!」
「ハァッ!」
続いて流れ様に右回し蹴りからの左後ろ回し蹴りを叩き込み男は大きく吹き飛ぶ。
「て、テメェ!」
「炎使いか……だったらコイツだ」
激昂する男を他所に晴人は左手の指輪を交換する。
【ウォーター! プリーズ ! スイ〜スイ〜スイスイ〜!】
「青くなったからなんだってんだぁ!」
「ハッ! お望みならすぐに見せてやるよ!」
そして二人は再び激突する。
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一方、アリーシャとザビーダは突如現れた憑魔達と戦闘を開始していた。
「一槍両断!葬炎雅!」
アリーシャは炎を纏った薙ぎ払いで憑魔達を吹き飛ばす。
その先から迫る三体の憑魔。
「魔人剣!」
「
それを二人の得物から放たれた衝撃波が迎撃する。
「ッ!」
突如、晴人のスタイルチェンジの影響でアリーシャの纏う力が水属性へと切り替わる。
だが、アリーシャは一瞬驚くも動きを止めずにすぐに対応する。
「ザビーダ様! ここは一気に!」
「あぁ!任せな!
ザビーダが両の手を地面へ向けペンデュラムを突き刺す。
同時に憑魔達の足元から無数の鎖が出現するとその動きを封じ込める。
「今だ! 蒼天烈閃! アローレイン!」
アリーシャは槍に収束した魔力を頭上へ向け射出する。
射出された水の魔力は頭上にて分散。無数の魔力の矢となり憑魔達へと降り注ぐ。
『ガァァァォァア!!』
悲鳴を上げ憑魔達が一掃される。
「よし! これで!」
確かな手応えを感じアリーシャは憑魔の浄化を確信する。
だが……
「あん? どういう事だ?」
「え? 何も……ない?」
本来なら浄化された生物が残る筈にも関わらず憑魔達がいた場所には何一つ残ってはいなかった。
「どうなっている? 」
憑魔に対して攻撃を当てた感触は確かにあった。にも関わらず、まるで幻でも見せられたかの様にアリーシャ達の眼前には何一つその形跡が残っていない。
戸惑う二人。だが、そんな二人の意識をウィザードと謎の男が戦う音が引き戻す。
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「ウラァ!」
飛び掛かり鋭い歯でウィザードへと喰らいつこうとする男。だが……
【リキッド! プリーズ!】
「何ィ!?」
液体化した身体に攻撃がすり抜け、逆に液体化したウィザードに纏わり付かれる。
「ぐぁああ!?」
「お前には聞きたい事が山ほどある。悪いが大人しくして貰おうか」
ウィザードは腕や関節をロックし卍固めを決め男を拘束する。
「ぐあぁ? 聞きたい事だとぉ?」
「そうだ。何故騎士団やアリーシャを狙うのか何が目的なのか、キッチリ話してもらおうか」
問い詰めるウィザード。だが、男は不気味な笑みを絶やさない。
「ハッ! お断りだねぇ! フォトンブレイズ!」
「くっ! コイツ! 天響術まで!?」
足元に浮かぶ赤い魔法陣。
直後ウィザードの背後に炎の力が収束し爆発を起こす。間一髪察知したウィザードは男の拘束を止め飛びのいて回避するがそこに男は追撃を仕掛ける。
「隙だらけだ! 狙い撃つぜ! フレイムシュート!」
男は両手を前方に構え先程よりも巨大な炎弾を発射する。
だが……
【ディフェンド! プリーズ!】
「なぁ!?」
水で形成した盾により男の攻撃は防がれる。
「ほらよお返しだ」
反撃とばかりにウィザードは展開した水の盾を男に向けて放つ。
「ぐわぁ!」
水の盾が直撃し怯む男。
そこにウィザードはウィザーソードガンを取り出し、一気に畳み掛ける。
【ウォーター! シューティングストライク! スイ! スイ!スイ!】
「話は浄化した後にキッチリ聞かせて貰うぜ」
魔力が収束された銃口を男へ向ける。
「フィナーレだ」
そして引き金が引かれ水の魔力弾が放たれる。
だが……
『ガァァァォァア!?』
「なっ!?」
突如、男の盾になる様に現れた複数の憑魔が射線を遮る。
そして着弾。
アリーシャの時同様、憑魔は何も残さず消滅する。
その隙を突き、謎の男は異常な跳躍力で城壁の上へと飛び乗る。
「ッ! しまった!?」
男を逃した事に内心で舌打ちしつつウィザードは男に視線をむける。
其処に、憑魔を撃破したアリーシャ達が合流する。
そんな三人を見下ろしながら男は告げる。
「ハァ…ハァ……チッ退けってのかよ」
ボソリと言葉を零し男はウィザードを睨みつける。
「そこの仮面野郎……テメェのツラは覚えたぜぇ……次こそはそのキラキラしたツラを粉々にしてやるよ」
そう言い捨てて男は城壁の向こうへと身を投げ姿を消す。
「チッ逃げやがったか! ハルト! 俺は奴を追う! お前とアリーシャは倒れた騎士団の連中を診てろ!」
「わかった! 無茶すんなよ」
「皆まで言うな!」
ザビーダは男を追い駆け出す。
それを見送り二人は辺りに倒れている騎士達に声をかけていく。
「火傷が酷いな。何か応急手当が必要か」
恐らくは男の炎の攻撃を喰らったのだろう。騎士達は皆命に別状は無いものの火傷を負っていた。
「済まないハルト。私は治癒の術までは……」
「そうか……。まてよ、火傷……ならこいつが使えるか?」
そう言ってウィザードは指輪を取り出す。
「(魔法の指輪? だが、いつも使っているものとは外見が違うようだが…… )」
ウィザードが取り出した指輪は普段使用している円形のデザインの物では無く。六角形の形状の物だった。
ウィザードはその指輪をベルトに翳すが……
【エラー!】
「ッ! 今のドラゴンの状態じゃ駄目って事か……」
失敗を知らせる音がベルトから鳴り響く。
それを聞いたアリーシャが口を開いた。
「ハルト、先ずは騎士団塔へ彼らを連れて行こう。騎士団塔ならば応急手当の道具もあるはずだ」
「今はそれしかないか……」
兎に角、騎士達をこのままにしておくことはできない。二人はすぐに行動を開始しようとするが……
「おや? 憑魔の気配を感じて来てみれば奇妙な事になっているものだ」
二人の背後から突如声がかかる。
振り向いた二人の視線の先には……
「ん? どうかしたのか? 驚いた顔などして」
そこにいたのは一人の少女だった。
年齢で言えば十代前半。線も細くまだまだ子供だと感じさせる外見だが、纏う雰囲気は外見と釣り合っていない。
服装は紫を基調ときたものだが上着は二枚の布を両肩で結び両脇下、胸元、背中を紐で結んだだけのものであり、下着もつけておらず胸元、ヘソ、横腹、背中を大きく露出している。
紫がかった黒髪をオレンジ色の毒々しい花飾りでツインテールにしており、露出度の高い服装からは病的に白い肌が覗いている。
「君……は? 」
アリーシャは戸惑いながら問いかける。
少女は静かに答える。
「私か? 私の名は『サイモン』。しがない天族だ」
そう言い、少女……サイモンは薄く笑みを浮かべる。
「どうやらお困りの様だ。微力ではあるが助力しよう。人に救いを与える事こそ天族の務めだ……フフフ」
〜ベルセリアのPV視聴した結果〜
フジ「面倒な事になった……」(白魔並感)
ヤベェよ……ヤベェよ……ベルセリアPTにアイゼン参戦確定だよ。今作ではジークフリート関連はアイゼンが人間時代に使っていた太古の対憑魔武器として改変してアイゼンのキャラ共々思いっきり捏造するき満々だったのにPV見る限り素手の格闘技キャラだよ!どないしよう!?
と、若干焦りましたが逆に考えればスカスカな部分が公式で補完される訳ですし悪いことではないですよね。
ベルセリアで明かされる情報を何処まで今作にフィードバックできるかはわかりませんが、できる限りベルセリアの設定を取り込んでいけたらなと思っています。
ベルセリアで明かされる設定が自分の想像を大きく超えたしまっていて修正がきかない部分は本作オリジナルの捏造になってしまうと思いますがご理解頂けると幸いです