Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜   作:フジ

22 / 47
遅れて申し訳ないです。仕事の方が立て込んでたのが漸く片付きましたので急いで仕上げました。
サイモンちゃんの口調書きづらいなぁ!

では最新話です。どうぞ


22話 序曲・運命の交差点 中篇

謎の襲撃者を退けた晴人達は、傷ついた騎士達に応急手当を行うべくコネクトの魔法を使用し彼らを騎士団塔の中へと移動させた。

 

「辛苦潰える見紛うは常世……ハートレスサークル 」

 

騎士団塔の中、集められた騎士達を囲みこむ様に展開される美しい緑色の魔法陣。その輝きが負傷した兵士達を優しく包み込む。

 

「くっ……あぁ……」

 

癒しの輝きを受け先程まで痛みに呻いていた騎士達の口からは、苦悶ではなく力の抜けた様な心地よさそうな声が溢れた。

 

 

「これで大丈夫だろう。裂傷や火傷が酷かったが見た限りでは重症の者もいない様だ。じきに目を覚ます。尤も、傷が治ったとは言え無理は禁物ではあるがな」

 

薔薇の蕾を思わせる装飾がなされた(ワンド)を持ち、辺りの兵士達を見渡したサイモンは騎士達への応急手当が終わった事を告げる。

 

「凄いな、こんな大勢の人達を一遍に癒せるのか……何にせよ助かったよ。ありがとうなサイモンちゃん」

 

その光景に晴人は素直に感心する。様々な魔法を駆使する彼ではあるが、大勢の人の怪我を治す様な物は持っていない為、天族の扱う回復の天響術というものに思うところもあるのだろう。

 

「騎士の方達に大事が無くて良かった……手を貸してくいただき感謝しますサイモン様」

 

一方のアリーシャも、騎士達の怪我を癒してくれたサイモンに対して感謝の言葉を告げる。

 

「ふっ……この程度なら大抵の天族はできることだ。私はそんな大層な者ではないさ」

 

そんな二人の言葉をサイモンは薄く笑いながら否定する。その言葉に込められているのは謙遜のような意味を全く感じさせない自嘲じみたものだ。

 

「? その様な事は無いと思いますが?」

 

アリーシャは純粋な感想としてその言葉を否定する。

 

「そうか……すまぬな。私は天族の中では『落ちこぼれ』でなぁ……戦いや加護に関しては大した力を持っておらぬのだ。できることといえば精々、今の様に傷を癒す程度……故にその様な言葉を貰えた事が新鮮でな……」

 

幼い外見とは裏腹にどこか世の中を諦観したような物言いをするサイモン。

 

そんな彼女の言葉にに晴人達は口を開く。

 

「そうか? 十分凄いと思うけど?」

 

「同感です。戦う術や加護を持たなかったとしても人を助けようとするサイモン様の在り方は素晴らしいと私は思います」

 

そう告げる二人だが……

 

 

「『在り方』……か。ふふふ……どうだろうな……私の『在り方』は大凡、人々が天族に望む『在り方』とかけ離れていると思うが……」

 

そう言って薄く笑うサイモンに、二人は言葉の意味がわからず困惑する。それに気づいたサイモンはその場を取り繕う。

 

 

「む? すまなかった。話が脱線してしまったな。それで? ぬしらは何故あの場に居たのだ?」

 

「それは一一一」

 

サイモンの疑問に対してアリーシャは素直に自分達がこの街へ訪れた理由を説明していく。

 

「成る程、戦争を止める為にか……敵国の都に自ら出向くとは随分と無茶をする姫君だ」

 

説明を聞いたサイモンは呆れた様な、感心した様な微妙な表情を浮かべた。

 

「うっ! そう言われると否定は出来ませんが……」

 

「まぁ、二つの国の命運がかかった緊急事態なんだ。大目に見てくれよ。それで聞きたいんだけどさ……サイモンちゃんはこの街……いや、枢機卿について何か知らないか?」

 

「枢機卿? あぁ、ローランス教会のフォートン枢機卿か……さてな……私はこの街に住む天族ではないゆえ詳しい事まではわからぬぞ?」

 

「え? サイモン様はこの街の天族では無いのですか?」

 

「あぁ、訳あってこの街を訪れていた身なのだが……どうにもこの街からは嫌な物を感じてな、そろそろ去ろうかと思っていた矢先にぬしらと出会ったのだ」

 

ペンドラゴに関して詳しくない事を打ち明けるサイモン。そんな彼女に対してアリーシャは、それでも何か枢機卿に関しての情報が無いかと再度問いかける。

 

「それでも構いません。サイモン様が知る限りで構わないので枢機卿に関して何かわかる事を教えていただきたい」

 

その言葉にサイモンは少しばかり考え込む様な表情をしたあと、ゆっくりと口を開く。

 

 

「……あくまで私の主観になるが、構わないな?」

 

「はい、お願いします」

 

「ふむ……この街に滞在していたのは数ヶ月ほどだが……人々の話を聞く限り枢機卿の悪い噂は殆ど聞かないな。元々、才女として名を馳せていた事もあり、先代の教皇が失踪し王族が権力争いの内輪揉めを続ける事に民が不安を募らせる中で、枢機卿の政治手腕は高く評価されている。今のローランスが国としての形を保っているのは一重に枢機卿の存在が大きいだろう」

 

「それは……凄い方なのですね」

 

枢機卿に対し肯定的なその評価にアリーシャは驚きながらもどこか喜ばしい事のように言葉を零す。立場は違えど自身もハイランドの民の安寧を願っている身だ。同じ女性でありながら一人で国を背負う枢機卿に対し彼女なりに思うところがあるのだろう。

 

そんな中でサイモンはまだ話を途切れずに話を続ける。

 

 

「そしてもう一つ、噂されている枢機卿が起こす奇跡というのは確かな事実だ」

 

「と言うと?」

 

「何度か遠目から見た程度だが、枢機卿は怪我をした街の住民をその力で癒していた。まるで先ほど私が騎士達にやった様にな」

 

その言葉にアリーシャと晴人は驚いた表情を浮かべる。

 

「もしや天響術?」

 

「って事は、枢機卿はやっぱり導師なのか?」

 

サイモンの情報から二人は枢機卿がスレイと同様、導師の力を持つものかと推測するが……

 

「さてな……確かにあれは天響術だと思うが、枢機卿が導師かどうかの確証は無い……それに天響術を使う事が出来るのは導師や天族だけでは無いだろう?」

 

「っ!……憑魔の事ですか?」

 

「その可能性もあり得るという事だ」

 

「ですが、憑魔が態々人の怪我を癒す様な事をするのでしょうか? 今まで見てきた憑魔は穢れの影響で感情が暴走したり自分の意思を失った者ばかりでした……それを自分の意思で制御できる者は災禍の顕主以外にはいませんでした……」

 

ラストンベルで出会ったマーガレットの様に憑魔化も初期段階であれば人間としての意識は残る。だが、それも時間の問題だ。嘗て戦場で戦ったランドンの様に徐々に感情が歪み暴走していく事になる。

 

サイモンの証言が事実であれば枢機卿の『奇跡』は明らかに力を制御している代物だ。加えて天族であるサイモンから見て憑魔の姿をしていなかった事を考えれば、枢機卿の力が憑魔の物とは考え辛いとアリーシャは考えたが……

 

「姫よ、何事にも例外はあるものだ。確かに穢れに飲まれた者は憑魔と化しその身に潜む負の感情が暴走する。だが過去の歴史の中にはそれらの力をある程度制御した人間もいるのだよ」

 

アリーシャの言葉をサイモンは静かに否定する。

 

「天族が見えぬ者達には知る由も無い事だが、人間の歴史に名を残す偉人や英雄、それらの多くは導師と同様の力を持った者や憑魔の力を制御した者達だ」

 

その言葉に二人は驚き目を見開く。

 

「姫の知識で名を挙げるならば……1000年前に起こったグリンウッド大陸の統一戦争で名を馳せたディンドランと言えばわかりやすいか?」

 

「っ! あの武勇に名高い百戦将軍ディンドランが憑魔!?」

 

驚きの声をあげるアリーシャ。一方、この世界の歴史をよく知らない晴人にとってはイマイチピンとこないのだが、アリーシャの反応を見る限り衝撃の事実なのだろう。

 

「(俺たちの世界で例えるなら戦国時代の織田信長が、仮面ライダーだったり怪人だったって教えられたようなもんか……ま、そう考えると確かに驚きだよな)」

 

そんな事を考える晴人の脳裏に嘗て訪れた『戦極時代』や『オレンジの武士とバナナの騎士』が頭を過るが「いや、あれはちょっと違うか」と内心で否定し思考を切り替える。

 

そんな中、サイモンは話を続ける。

 

「そう、人は時として穢れすらも己の願いの為に利用する。一見、心優しい様に見える者とてその裏には『悪』と呼べる力を隠し持つ事などさして珍しくもない」

 

「で、ですが……サイモン様の言う事が事実なのでしたら枢機卿はこのローランスの為にその身を賭して尽力している方なのですよね? それならば私は「枢機卿を信じてみたい……か?」っ!……はい、その通りです」

 

言葉を遮りサイモンが放った言葉はアリーシャの内心を正確に突くものだった。

 

「はぁ……姫よ。少しは人を疑う事を知った方がいい。そなたの肩には多くの者の命がかかっているのだろう? 安易な行動がそれらの者達を危険に晒す事になると自覚するべきだ」

 

「っ!……ですが、手を取り合う為には、まずは此方が相手を信じなくては始まりません!」

 

「だが、その歩み寄りが裏切られた時に負う事になる傷は深いぞ?」

 

「それは……」

 

サイモンの言葉にアリーシャは言葉を詰まらせる。サイモンの言う通りもし枢機卿が憑魔の力を使う者だとしたら、安易に近づく事は間違いなく危険だ。自分一人ならいざ知らず協力してくれているザビーダや晴人も巻き込む事にもなる。

 

反面、アリーシャの中に枢機卿を信じてみたいという感情が生まれ始めたのもまた事実だ。立場こそ違えど女性の身で国の為に尽力する枢機卿の在り方はアリーシャ個人としてはとても好ましいものであり、生来お人好しな性分の彼女としては、枢機卿は憑魔では無いと信じてみたいと思い始めている。

 

そんな相反する感情がぶつかりアリーシャは、どうするべきか言葉を詰まらせるが……

 

 

「そっか、ならその枢機卿に直接会って見るのが手っ取り早いな」

 

話を聞いていた晴人から、その迷いをあっさりと断ち切る様な答えが放たれた。

 

「え?」

 

あまりにもあっさりとした晴人の物言いにアリーシャは惚けた様な声を漏らす。

 

「……魔法使いよ、聞いていたのか? 枢機卿は「憑魔かもしれないんだろ?」……そうだ」

 

「だとしても信じてみたい、少なくともアリーシャはそう思った。枢機卿の事だけじゃない……サイモンちゃんの最初に言った枢機卿への言葉もな。なら、俺のやるべき事はそんなアリーシャの力になる事だ。それに……」

 

一息置いて迷い無く晴人は言い放つ。

 

「例え枢機卿の力が憑魔のものだったとしても、枢機卿がその力で誰かを救おうとすることのできる奴なんだとしたら信じてみる価値があると俺は思うよ」

 

その言葉にアリーシャとサイモンは驚いた様に目を見開いた。

 

二人にとっての認識の根本は枢機卿の力が憑魔のものではないかどうかにあった。だが晴人はそれ自体は重要ではない様に言う。

 

「……妙な事を言う。憑魔の力とは他者を傷つけ堕落させる『悪』だ。ましてや、それを自身の意思で振るう者が『善』であることなど……」

 

晴人の言葉が気に障ったのかどこか表情を険しくしたサイモンは棘のある言葉を放つ。だが、晴人はそれに対しても態度を変える事は無い。

 

「手に入れた力が人々から『悪』と呼ばれるものだとしても、それをどう振るうのかはソイツ次第だろ? その力を誰かの為に振るう事ができるなら、もしかしたらソイツは『悪』じゃない何かになれるかもしれない。少なくとも俺はそう思ってる」

 

真っ直ぐな瞳でサイモンを見つめながら晴人は言葉を紡ぐ。

 

「力をどう振るうのか……」

 

傍でそれを聞いたアリーシャは無意識にその言葉を反芻する。

 

彼女もまた晴人の告げた言葉には驚いていた。穢れに対してその様な考え方は彼女とて持っていなかったからだ。

 

一方のサイモンはその言葉を受けると晴人への視線を外し俯く。前髪に隠された彼女の表情は晴人達には伺いしれない。

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………詭弁だな」

 

 

ボソリと彼女の口から二人には聞こえないほど小さな声が溢れた。

 

 

「サイモン様?」

 

言葉こそ聞こえないもの彼女の変化にアリーシャは心配し声をかける。その声を受けハッとした様にサイモンが顔をあげる。

 

「いや、済まない。少し考え事をしていた。まぁ、何をどう選ぶのかはぬしら次第だ……だが、努努忘れぬ事だ。この世界には悪意が溢れているのだということを……『この世に悪があるとすれば、それは人の心』なのだからな」

 

そう言ってサイモンは扉へ向けて歩みだす。

 

「もう行ってしまわれるのですか?」

 

「行ったであろう? 今日にはこの街を去るつもりであったと。先ほども言ったが私は戦う術を持ち合わせておらぬ故、商隊の馬車に同乗させて貰うつもりだったのだ。そろそろ出発する頃合いなのでな」

 

そう言ってサイモンは騎士団塔の入り口の扉を開く。

 

そんな彼女に向けてアリーシャ達は感謝の言葉を告げる。

 

「あ、あの! サイモン様! ご助言、感謝致します! どうか良い旅を!」

 

「道中、気をつけてな。縁があれはまた会おうぜ」

 

その言葉を受けサイモンは振り返り返答する。

 

「ふむ……そうだな……縁があれば、また会おう」

 

サイモンはそう言って意味深な笑みを浮かべた後に一瞬だけ、アリーシャ達から視線を外し騎士団塔の内部に飾られた『あるもの』へ視線を向け、すぐに踵を返しその場を後にした。

 

 

__________________________________

 

 

「あれが、『あの方』が仰っていた魔法使いか……」

 

 

降りしきる雨の中をサイモンは住宅街の通りを1人歩きながら言葉を零す。

 

「様子見の為に嗾けたがルナールでは歯が立たないか……まぁいい、例えあの2人が導師達に加わった所で枢機卿を『救う』事など不可能だ……」

 

そう言い放ち立ち止まった彼女は教会がある方角を見上げる。

 

 

「それにしても『フォートン』か……因果なものだな……」

 

そう零す彼女の顔にほんの一瞬だけ憂いの表情が浮かぶ。

 

「『黒』から生まれし新たな『黒』……そうだ……それが真理だ……『黒』から生まれる『白』など……ありはしないっ!」

 

 

サイモンは吐き出す様に、そして自身に言い聞かせる様にそう言い放ち、夜の闇へと消えていった。

 

 

 

 

__________________________________

 

 

一方、騎士団塔に残った2人は意識の戻らない騎士達を見守っていたのだが……

 

 

「なぁ、ハルト……」

 

「ん? どうかしたか?」

 

どこか聞き辛そうに声をかけたアリーシャに晴人はどうかしたのかと返答する。

 

 

「その……気になったんだ。先ほど君がサイモン様に言った事だが……」

 

「サイモンちゃんに言った事? どれの事だ?」

 

「例え、『悪』と呼ばれる力でも誰かの為にそれを振るえるのなら『悪』ではない何かになれるかもしれない……君はそう言っただろう?」

 

「あぁ、確かに言ったな」

 

あっけらかんと肯定する晴人。そんな彼にアリーシャは問う。

 

「……本当にそんな事ができるのだろうか? サイモン様の言葉を聞いた時、私は枢機卿の振るう力が憑魔のものであるかどうかで『善』か『悪』かを判断しようとした……それは間違いなのだろうか?」

 

自らの内に生じた迷い。その想いをアリーシャは率直に吐き出す。それに対して晴人は柔らかい声で諭すように答えた。

 

「枢機卿が善人なのか悪人なのかそれは俺にもまだわからないさ。世の中には悪人なんていないなんて綺麗事を言う気も無いよ。それこそ、人間としての記憶を持ちながら怪物の心を持っていた奴を俺は知っている……」

 

嘗て戦った深緑のファントムの事を思い出しながら晴人は言葉を続ける。

 

『人の希望を奪って……それでも君は、魔法使いなのかい?』

 

歪んだ自身の快楽を満たす為に多くの者の命を生贄に捧げてでも過去を求めた男。

 

その身が怪物になりながらも人としての記憶を持ち、人へと戻ろうとした、人の『心』を失った怪物。

 

その男の最後の捨て台詞を思い出しながら晴人は告げる。

 

「けどな、それとは逆に怪物と同じ力を持ちながら人を守る為に戦う奴らがいることを俺は知っている」

 

『黒』より生まれながら人々を守る仮面の戦士達。それを知るからこそ晴人は断言する。

 

「だからこそ、俺は、簡単に決めつけないでアリーシャが信じたいと思った事を大切にして欲しいって思う。結果的に裏切られるかもしれないし傷つけられるかもしれない。だけど、一歩踏み込んだからこそ見えてくるものだってあるだろ? それで救えるものもきっとある筈だ」

 

諦めずに傷つく事を恐れずに、信じて一歩踏み出したからこそ、見えてくる『希望』だってある。

 

『ありがとう晴人……私も信じてる……どんな私になっても……』

 

自身の未練により蘇りながらも最期は笑顔を浮かべ消えていった『彼女』がそうだったように……

 

「傷つく事を恐れずに……か。そうだな……手を取り合い歩んで行くのなら、まずは私が相手を信じて見なくては始まらない……」

 

 

 

「そういうこと。少なくとも踏み込まずに後悔しなくて済む」

 

「私の甘い考えで君まで傷つく事になるかもしれないのに?」

 

「言ったろ? アリーシャの力になる事が今の俺のやるべき事だって……それに俺としてはアリーシャには相手を信じる事のできる奴でいて欲しいんだ」

 

何度酷い目にあっても他者を信じ、手を差し伸べようする事のできる彼女はきっと多くの人達の希望になる事ができる。少なくとも晴人はそう思っている。

 

 

「他人を裏切りながら上手に生きる奴より、騙されてももう一度、他人を信じる事のできる奴の方がずっと強い。俺はそう思うよ」

 

そう言って優しく微笑む晴人。

 

「ハルト……」

 

そんな彼に釣られて彼女も笑みを浮かべるが……

 

 

「それに、俺個人としてもそういう奴の方が好きだしな」

 

「へ? ……す…き?…………ッッ!?」

 

次の瞬間、不意打ちの如く放たれた晴人の一言にアリーシャの顔が赤く染まった。

 

 

「ん? どうしたアリーシャ」

 

「な、なんでもない! 少し蒸し暑くて!」

 

アリーシャとて晴人の今の言葉が人間として好感が持てるという意味合いで告げられたものだとは理解できるのだが、いかんせん不意打ちじみた無自覚な一言に、その手のセリフに免疫の無い彼女は激しく動揺する。

 

先程までのシリアスな空気は何処にいったのかと思われるなんとも言えない雰囲気が部屋の中に満ち始めるが……

 

 

「おう、戻ったぜ」

 

丁度良く帰還したザビーダにより、断ち切られた。

 

「あ! ザビーダ様」

 

「戻ってきたか、それでさっきの奴は?」

 

思考を切り替え、先程の謎の男の行方を尋ねる2人。それに対してザビーダは首を横に振る。

 

 

「ワリィ、逃げられた。あのキツネ野郎大した逃げ足だぜ。確かに路地裏に追い込んだと思ったら幻みたいに消えられちまった。俺様の風の探知を振り切るなんざ簡単な事じゃ無いんだが……」

 

そういい謝るザビーダだが、2人は特に責める様子も無く返答する。

 

「いえ、ザビーダ様に大事が無いのでしたらよかったです」

 

「謎の多い奴だしな、逃げられた以上、グチグチ言ってもしょうがないさ」

 

そうフォローする2人にザビーダは表情を少し和らげる。

 

「そう言ってくれると助かるぜ。しかしあの野郎何者だ? なんで白皇騎士団の連中を狙いやがった?」

 

「わからない。騎士の人達もまだ意識を失った状態だから詳しい事は……」

 

「騎士の連中の怪我は大丈夫なのか? 俺の回復術で治療したほうがいいかい?」

 

「いえ、それには及びません。先程、通りがかりの天族の方が治療を手伝ってくださったので騎士の方達に大事は無いです」

 

「そうかい、そりゃ良かった。しかし、ローランスが誇る白皇騎士団を1人でここまで痛めつけるとは、厄介な奴だな」

 

黒装束の男を思い出しながらザビーダは険しい表情を浮かべる。

 

「見たところ団員が出払った手薄なタイミングで襲ったんだろうが、それにしても派手に暴れやがったもんだ」

 

手薄とはいえ30人以上の白皇騎士団を圧倒したであろう謎の男。その存在に警戒する一方、アリーシャは先程の男の外見を思い出し何かが引っかかった。

 

「あの男の服……そう言えば何処かで……」

 

「ん? アリーシャ、アイツについて何か思い当たる事があるのか?」

 

アリーシャの反応に疑問を感じた晴人はその意味を問うが……

 

 

ガチャン!

 

急に開かれた騎士団塔の扉の音に3人は会話を止め振り返る。

 

 

その視線の先には……

 

 

「こ、この状況は!? 貴様達、ここで一体何をした!?」

 

「まさか、枢機卿の手の者か!?」

 

別の任務で離れていたであろう残りの白皇騎士団の騎士達が帰還していたのであった。

 

 

「おい、この状況……もしかしてヤバくね?」

 

「完全に騎士団を襲った犯人の図だな」

 

「え!? そ、そんな!?」

 

自分達の立場がヤバイ事に気づく3人。

 

そんな彼らを逃がさないと言う様に騎士達は晴人とアリーシャを取り囲む。

 

「セルゲイ団長! この者達、如何しますか?」

 

その言葉を受けて、包囲網を抜けて1人の大柄の男が晴人達の前に歩みより立ちはだかる。

 

黒い前髪を鶏冠を思わせる様に上に掻き上げた特徴的な髪型に、精悍な顔つきをした男は静かに告げる。

 

 

「貴公ら……一体何者だ?」

 

 




遅れた癖に話が進んでないと言われそうですが、今回は主にサイモンとアリーシャに話を絞りたかったのでここで区切りました。次回で一気に合流まで行きたいなぁ

そういえば、ゴーストにウィザードのコヨミ役の奥仲さんがゲスト出演するらしいですね。襲った眼魔は白魔とインフィニティーにボコられそう(小並)
7月からアマゾンズの1期がTV放映もされるようですしamazonプライム版とどう変わるのかも楽しみです

ではまた次回。早めに更新できるよう頑張りますのでタコ焼きでも食べながらお待ちください
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。