Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜 作:フジ
TOZXのアニメが始まりましたが(今の所)イケるやん!
毎回アリーシャの太ももを見てたら30分が過ぎている……不思議だね!!
0話で仲間の女騎士が容赦なく処理されたり、目の前で幼女が竜巻に飲まれたり、蟲攻めされたり、落ちたり、ウォータースライダーされたり、雷に打たれたり、暗殺されそうになったりアリーシャの芸人みてぇな体の張りっぷりを見てると何とも言えない気持ちになる今日この頃です
では最新話どうぞ
謎の男による白皇騎士団強襲の現場を目撃したアリーシャ達。 男を退け、傷ついた団員達を騎士団塔へ連れ帰り手当をしたのも束の間、別任務へと出ていた白皇騎士団の別働隊が帰還し、その場を発見されたことにより、アリーシャ達は誤解により、騎士達を襲った疑いをかけられたのだが……
「そ、その……私はアリーシャ・ディフダ」
「えぇっと……仲間の操真晴人だ」
敵対の意思の無い2人は正直に自身の名を名乗る。
すると……
「おぉ! では貴殿らが部下の報告にあったハイランドからの使者なのだな!」
「「え?」」
先ほどまで険しい表情をしていた白皇騎士団を率いていた大柄の男はアリーシャ達に対して予想外に友好的な態度だった。
一転したその反応に2人は安堵すると同時に肩透かしを食らった様に何とも言えない表情を浮かべる。
「団長! 油断なさらないでください、こいつらは枢機卿の手の者かもしれません!」
アリーシャ達を包囲した騎士の1人が男に対して警戒を呼びかける。
しかし、男は首を横に振ると周りの騎士達へと構えた武器を下すように指示を出す。
「武器を下ろすんだ。この2人の名前と特徴は、先日報告のあったハイランドからの使者と一致している。事実であれば、彼女達はこのローランスの危機に駆けつけてくれたのだぞ? それに対して武器を向けるなど我が騎士団の誇りにかけてあってはならない」
「わ、わかりました。団長がそう言うのであれば……」
毅然として、芯の通った男の言葉。その言葉を受けて騎士達は警戒を解く。
「遥々、このペンドラゴに来ていただき感謝する。自分は白皇騎士団、団長のセルゲイ・ストレルカと言う。君達がペンドラゴを訪れた理由は部下から報告を受けている。済まないが、まずはこの状況について説明して欲しい」
混乱する部下達を落ち着かせる為か、状況を整理するためセルゲイはアリーシャ達に現状の説明を求めた。
「わかりました。実は___ 」
そうしてアリーシャ達はペンドラゴに訪れてから起きた事を説明していく。
「___以上が、私達がこの街を訪れてからの出来事です」
アリーシャの説明を全てを聞き終わるとセルゲイは、アリーシャ達へ感謝の意を表した。
「部下の危機を救って頂き感謝する。団長として礼を言わせて欲しい」
頭を下げたままそう告げるセルゲイを見てザビーダが面白そうに告げる。
「真面目だねぇ。ま、そういう奴は嫌いじゃないけどな」
そんな彼を他所にアリーシャと晴人はセルゲイに対して返答する。
「礼など不要です。私も騎士としての務めを果たしただけですから」
「俺も似たようなもんさ。気持ちは受け取るけど、そういうお堅いのは抜きにしようぜ」
そんな2人の言葉にセルゲイは僅かに笑みを浮かべると話を切り出した。
「フッ……では、いきなりで申し訳無いが、此方もペンドラゴの現状について説明させてもらおう」
セルゲイの口から語られたペンドラゴの現状は大まかに言えば、マーリンドで白皇騎士団の騎士に説明された事と同様のものだ。
一年前に突如、前教皇であるマシドラ教皇が行方不明となり、入れ替わるようにフォートン枢機卿が奇跡の力を振るい民からの支持を強め、権力争いを繰り広げる王族を抑え幼帝の側近として台頭している一方、戦争や不自然な『止まない雨』により民の生活に暗い影を落としている。それがペンドラゴの現状である。
「スレイや君達からの話を聞き、私はマシドラ教皇の失踪や不自然な『止まない雨』に枢機卿の奇跡の力が関係しているのではないかと疑っている」
「スレイと……そうだ! セルゲイ殿、スレイ達は今どこに? このペンドラゴに滞在しているのですか?」
「いや、確かに彼らはこの街を訪れたが、今は街を離れている」
「ん? 騎士さんの話じゃアンタはスレイ達にペンドラゴで起きている『止まない雨』や枢機卿の奇跡の謎を解く手助けを頼んだんだよな? そのスレイ達がどうしてペンドラゴを離れているんだ?」
スレイ達が街を離れている事に晴人は首を傾げるが、セルゲイは彼の疑問に対して驚きの言葉を告げた。
「あぁ、実は行方不明のマシドラ教皇の足取りが掴めたのだ」
その言葉に2人は驚きの声をあげる。
「ッ! マシドラ教皇が見つかった!?」
「オイオイ、そりゃ朗報だけどそれがどうしてスレイ達がペンドラゴを離れる事に繋がるんだ?」
「ふむ、詳細は私にもわからないのだが、スレイの奥方殿の話によると、ペンドラゴから南東にある『ゴドジン』という小さな村でマシドラ教皇の目撃情報があったらしい」
そう告げたセルゲイだが、晴人とアリーシャとザビーダの3人は教皇についてとは別の所に気を取られていた。
「奥方ですか?」
「奥方……マジか?」
「奥方ねぇ……導師殿……案外手が早いのか?」
セルゲイの口から語られた『奥方』という言葉に、3人はポカンとした表情で思い思いの言葉を零しつつセルゲイに背を向け、顔を寄せ合い作戦会議でもするかの様に話し合いを始める。
「おい、なんだ奥方って? 」
「た、多分言葉通りの意味だと思うが……」
「いやいや、言葉通りだと余計に意味わかんねぇからね?」
「少なくとも戦場で別れた時にそんな奴いなかったよな?」
「あ、あぁ……そうだ! もしかしたら検問を超える時に正体を隠す為に身分を偽ったのでは無いだろうか? 導師という立場は危険も伴う可能性があるし隠しておきたかったのかもしれない」
「いや、それにしても誰が奥方役やったんだよ」
「そこはライラじゃねぇの? エドナちゃんがやったら導師殿は別の容疑でとっ捕まるぞ」
「ですが、そもそも天族の方は姿が見えないのですから奥方役をやるのは不可能なのでは?」
「じゃあ別の協力者がいるってことか?」
「お、おそらくは……? 」
「良い事じゃねぇの、女性比率が高いのは素晴らしいぜ」
「……お前、いっつもソレだな」
あーでもないこーでもないと割としょうもない議論を始めた3人。それに対してセルゲイは困った様な表情をしながら声をかける。
「き、急にどうかしたのか?」
「え、あ……も、申し訳ありません!」
「話を脱線させて悪いな。続きを聞かせてくれ」
「う、うむ。行方不明となったマシドラ教皇に関しては、以前から我々騎士団は枢機卿が何かしら関与しているのではないかと思い、調査をつづけていた。しかし、教会は『マシドラ教皇は逃げた』の一点張り……」
険しい表情を浮かべ説明するセルゲイ。そんな彼にアリーシャはおずおずと問いかける。
「しかしその……証拠はあるのですか?」
その言葉にセルゲイは首を横に振る。
「いや、騎士団の総力をあげて捜索したが手掛かりは掴めなかった。だが、枢機卿の周辺を探った騎士団員18人が行方不明になっている……」
「ッ! そんな……」
語られる事実にアリーシャは悲痛な声を漏らす。
「悔しい話だが、枢機卿に対するには此方も超常の力が必要となると考えた私は、ペンドラゴで出会ったスレイに、枢機卿の謎とマシドラ教皇の捜索を依頼した。そして、『ゴドジン』での教皇の目撃情報からその調査に向かってもらったのだ。騎士団が動けば教会は警戒する可能性が高いからな。 情けない話だが、下手に動き教会は刺激してしまっては騎士団と教会がローランスを割りかねない……我々は決してそんな事を望んでいるわけでは無いのだ」
己の無力を責めるかのように沈痛な面持ちでセルゲイは言葉を零す。
「この暗闇の時代を乗り越えるには国と教会が手を取り合い民を導いていかねばならないと教皇様は仰られていた。そして、自分はこの身この心を育んでくれたローランス帝国を愛している。……だが、我が国の真実は止まぬ雨の帳に隠されまま……それを討ち払わなければこの国に未来は無い」
力強くそう言い切るセルゲイ。それを見た晴人は、どこか喜ばしい事のように笑みを浮かべる。
「フッ、なるほどね……なら俺たちも気合い入れていかないとなアリーシャ?」
「……あぁ! セルゲイ殿の国を国を想う気持ちは私とて理解できる。セルゲイ殿、ハイランドとローランス、両国の良き未来の為に私達も協力を惜しみません」
その2人の言葉を聞きセルゲイは驚いた様な顔を見せた後、笑みを浮かべる。
「……感謝します。ハイランドに貴女のような姫君が居られて良かった」
「ソイツはお互い様だろ。こっちとしてもアンタみたいな真っ直ぐな人間がローランスにいてくれたのは幸運だったさ……それで? そうなるとこれから俺たちはどう動くべきだ? 」
感謝も程々に、晴人は今後の行動方針をどうするべきなのか問いかける。
「うむ、アリーシャ姫とハルトにはゴドジンに向かいスレイ達と合流して欲しい。部下から聞いた、アリーシャ姫の他者に天族を見せる力を活かして戦争を止める様に陛下を説得するのであれば、導師であるスレイとの合流は最優先だ。陛下の側近である枢機卿がどう動いてくるかわからない以上、まずは戦力を集めるべきだろう」
「……いいのか? 確かに枢機卿の正体がわからない以上、戦力を増やしてから対応するのに越した事はないけどさ……あんたの所の騎士達の安否はわからないんだろ?」
「その通りです。我々で急ぎ調査した方が宜しいのでは?」
アリーシャとハルトは行方不明の騎士達の安否を気にするが……
「だからこそ……これ以上の被害を出さない為にも迂闊な真似はさせる事はできない。貴方方はローランスの真実を解き明かす鍵であると同時に大切な協力者だ。一方的に危険な状況へ放り込む様な真似などできない」
セルゲイは真剣な表情で晴人達の申し出を断る。しかし、次の瞬間、部下の1人から強い声が上がった。
「団長!! 彼らがこう仰ってくれているのです! 行方不者の調査に力を借りるべきなのではないのですか!?」
「ならん……それは我々騎士団で応ずるべき問題だ」
「……何故です? 導師達にもそう言ってゴドジンに向かわせて……彼等の力ならば枢機卿の奇跡に対抗できるかもしれないのでしょう!? 」
「ならんと言っている……我々の尻拭いで安易に彼等を危険に晒すことはできない」
「……何故、そんなに冷静でいられるのです!? 行方不明の騎士の中にはボリスだって……貴方の弟だっているのですよ!?」
「ならんと言ったッ!!!」
「っ!!」
有無を言わさぬ迫力の込められたセルゲイの言葉で騎士は口を噤む。
「済まない……見苦しい所を見せてしまった」
口調を落ち着けながらセルゲイは晴人達へ向き直り会話を再開しようとる。だが、3人は見逃していなかった。気丈に振る舞いながらもセルゲイの手が硬く握り締められ震えている事に……
「セルゲイ殿……」
そんな彼の姿にアリーシャは何と声をかけるべきなのか躊躇ってしまう。
「心配も同情も不要だ。スレイや貴殿らは、ローランスの民の笑顔を取り戻す可能性を持った希望なのだ。だからこそ、どうか我々の意思を汲んで、真実を明らかにして欲しい……頼む」
そう言って頭を下げたセルゲイに対してアリーシャはもう何も言えなかった。
民の笑顔こそ騎士が守るべきもの。
その為に傷つく事が騎士の誇り。
安易にそれを否定する事は彼等の希望と誇りを踏み躙る事になると彼女は理解したから……
「……それでいいんだな?」
最終確認として晴人はセルゲイに是非を問う。
「あぁ、二言は無い。それに私は部下の無事を信じている。確かに我々は心から枢機卿の事を信用することができない……だがやり方は違えても彼女もまたローランスの為に動いてる……そう信じたいのだ……だからこそ部下の命を奪うような真似はしない……そう思っている」
国を背負う同胞だからこそ間違いを犯したのであれば見過ごす事はできない。疑念と信じたいという気持ちの狭間で揺れながらもセルゲイは枢機卿を唯、悪と断じる訳ではなく間違いがあれは正したいのだと願っている。
「……わかった。あんたの指示に従うよ……けど、あんた達も無茶はするなよ。俺達だけじゃない……騎士団だってこの国の希望なんだからな」
「必ず真実を明らかにしてみせます。セルゲイ殿達もどうか無理をなさらないでください」
「承知した。その言葉胸に刻むとしよう」
「となれば、即行動だ。早くスレイ達に合流しようぜ」
「む、良いのか? この街には着いたばかりなのでは?」
「今のアンタ達を聞いた後じゃ、宿でグータラ寝る気も起きないさ」
「……すまない。ゴドジンに向かうには凱旋草海南部のバイロブクリフ崖道を抜ける必要がある。険しく危険な道だ、注意してくれ」
「凱旋草海南部……という事は我々はスレイ達とどこかですれ違っていたのか」
「凱旋草海もパルバレイ牧耕地も広大だからねぇ……ハルトのバイクで一気に駆け抜けちまったのが仇になったかもな。だが、バイロブクリフ崖道からゴドジンならそうそうすれ違う事は無い筈だぜ」
「スレイ達は貴殿らの情報が来る前にはゴドジンに向けて街を発った。それ故、ローランスに貴殿らが訪れている事は知らない筈だ」
「気にすることは無いだろ。ここで追いついて見せればいいだけの話さ」
「あぁ、停戦の説得にはスレイ達の協力が不可欠だ。ここで必ず合流しよう」
「また、雨の中を突っ走るのは気乗りしないが……ま、男がグチグチ言うもんじゃないわな」
そう言ってザビーダとアリーシャは出口へ向かって行く。
しかし、晴人はまだその場を動かなかった。それに気付いたアリーシャは晴人に問いかける。
「ハルト? どうかしたのか?」
「あぁ、ひとつだけセルゲイに確認しておきたい事があるんだ」
「私に……? それはなんだろうか?」
その言葉に対して、晴人はゆっくりと口を開き問いかける。
「なぁ、セルゲイ。もしもマシドラ教皇が___ 」
__________________________________
__________________________________
雨が降りしきる夜の市街。
セルゲイ達との話を終えた晴人たちは、その中を外套を纏い街の門へと向けて歩んでいた。
「しっかしさっきの今で即出発とは忙しない事この上ないねぇ……ま、名物のドラコ鍋にありつけただけでもマシか」
「文句言うなって、その手の打ち上げは両国の休戦が決まった後にでもやればいいだろ」
「そりゃそうか……そん時はレディレイク名物の魚料理にでも期待するかね。ハルト、お前さんは何が食いたい?」
「は? 俺? ……そうだな。アリーシャの屋敷で食べたアリシアちゃんのドーナッツでも食べたいかな」
「ドーナッツ? なんだ? そこまで言うってこたぁ、そんじょそこらでは食えない高級ドーナッツでも食えるのか?」
「いや? 普通のプレーンシュガーだけど?」
「おいおい、戦争を止めた祝いが普通のドーナッツかよ。もう少し欲張っても罰は当たらねぇだろ」
「良いんだよ。俺はプレーンシュガーが好きなんだから。なぁ、アリーシャ。アリーシャは……どうしたアリーシャ?」
街を包む陰鬱な空気と止まない雨から意識を逸らすように取り留めもない会話を交わす2人。そんな中、アリーシャへと会話を振った晴人だが、アリーシャの反応が無いことから足を止めて後ろを歩くアリーシャへと振り返る。
そんな晴人の問いかけにアリーシャはハッとしたように反応する。
「あ……いや、すまない少し考え事をしていた」
「いや、別に気にしちゃいないが……もしかしてさっきの事が気になっているのか?」
「……あぁ」
「まぁ、確かにさっきの俺の質問はアリーシャの立場からするとあんまり良い気はしないかもしれないけどさ……一応、セルゲイ達の意思は確認しておくべきだろ? 」
「いや、君の言うことは私も理解できる……唯、もしも君の言った可能性通りだったとしたら私個人としてはやはり複雑だ……」
どこか浮かない顔を浮かべたアリーシャは外套の内側から丸められた羊皮紙を取り出す。
それは先ほど晴人の問いかけの後にセルゲイから託された手紙だった。
「『もしもハルトの言う通りになったらこの手紙を教皇様に渡してほしい』……か。なぁハルト……マシドラ教皇は___ 」
「ッ! アリーシャ!上だ!」
アリーシャが何かを問おうとしたその時、ザビーダがそれを遮り叫ぶ。
「ッ! なっ!?」
突如民家の屋根の上から何かがアリーシャ目掛けて飛び降り、その手に持った得物を振り落としたのだ。
ザビーダの言葉に反応したアリーシャは寸前でその攻撃を横に躱すが、纏っていた白い外套はその一撃で一部が切り裂かれ宙を舞う。
「なっ、憑魔!?」
突然の奇襲に驚きながらも魔力を発動し姿を変えるアリーシャだが、憑魔は続けて手に持った巨大な槍を近くにいる晴人へと振るう。
「ッ!」
【コネクト! プリーズ!】
変身する隙を与えずに振るわれる槍の一撃に対して、晴人はとっさにコネクトの魔法陣から取り出したウィザーソードガンの刃でそれを受け流す。
ガキィンッ!
変身していない生身の状態では力比べでは敵わない事を理解している晴人は、まともに打ち合わずに斬撃を逸らすと同時に敵との距離をあけるべく、足裏での蹴りを胴体へと叩き込む。
ガァン!
鳴り響く空洞の金属音。ダメージこそ与えられなかったが鎧の憑魔は衝撃で僅かに後退する。
「うお! 硬っ!? それに足痛っ!」
鎧の憑魔を思い切り生身のまま蹴った反動を思いっきり受けた晴人は、蹴った側の足を誤魔化すようにブラブラと揺さぶる。流石に何時もの様な気障ったらしい台詞を吐く余裕は無く、素のリアクションを見せる彼だが、憑魔はそれを一瞥すると晴人達に背を向け逃走し始める。
「逃げた?」
「ったく! どこのどいつだか知らねぇが舐めてくれたもんだな!」
3人は逃げた憑魔を追う。
「ザビーダ様! あの憑魔は?」
「『リビングアーマー』だ。人じゃなく鎧そのものが憑魔化しているが、生前の使い手の技を使いこなす近接型の憑魔だ。近接戦は注意しな!」
憑魔を追い3人は、先ほど謎の男と戦闘した広場へと駆け込むが……
「ありゃ、いない?」
「道を間違えたのか?」
「いや、確かにこの広場に逃げ込んだ筈だ。見間違えじゃねぇ」
リビングアーマーの姿は広場には無く3人はその事を訝しむ。
その時……
「おや?何かお探しですか?」
「「「!?」」」
背後からかけられた声に3人は勢いよく振り向く。
その視線の先には……
「どうしたのです? 驚いた顔をして」
白い法衣を纏い、三つ葉のクローバーを思わせるデザインの杖を持った黒髪の女性が1人佇んでいた。
「……貴女は?」
突然現れた聖職者と思わしき女性に対して、アリーシャは警戒しながら問いかける、
「あぁ、これは失礼……私を知らないという事は旅の方なのですね。私はリュネット・フォートン。この街で枢機卿を務めている者です」
その言葉に3人の目が大きく見開かれる。
「……あんたがフォートン枢機卿だって? 奇跡の力を振るうって噂のか?」
「奇跡……えぇ、巷ではその様に言われている様ですね」
晴人の問いを、フォートンは知的さを感じさせる整った顔にうっすらと優しげに笑みを浮かべながら肯定する。
そんなフォートンに対してザビーダが口を開く。
「で? 奇跡の聖女様がこんな雨の中で1人何をしているんだい? 夜遅くに綺麗なレディが1人で出歩くのは感心しないぜ? こわぁい怪物に襲われちまう」
軽口を混ぜつつ警戒を滲ませたザビーダの台詞。普通の人間には聴こえるはずのない天族の声に対してフォートンは……
「おや? 私が
眉ひとつ動かさず冷静に応じた。
「モテる男は美人の視線には敏感でね」
肩を竦めながら対応するザビーダ。だが、彼の目は笑っておらず目つきに鋭さが増す。
「……やはり、導師と同じく天族が見えるのですね」
「それだけではありません。貴女の事も知っていますよ。ハイランドの姫君……アリーシャ・ディフダ」
「ッ!?」
あっさりと正体を言い当てられた事に驚きを露わにするアリーシャ。だが、フォートンの言葉はそれだけでは終わらない。
「そして、アリーシャ姫を守る『指輪の魔法使い』」
「……」
フォートンから視線を向けられた晴人は黙って彼女を見据える。
緊迫する空気。
だが、アリーシャはそれを打ち破る様にフォートンへと話しかける。
「フォートン殿、敵対関係の国の人間でありながらローランス領に無許可で侵入した事には謝罪します。ですが、これには理由があるのです」
「理由?」
「はい、先日のグレイブガンド盆地での両国の大規模な激突。その裏で糸を引く存在を私は知りました。その者は人々の負の感情が生み出す力『穢れ』を生み出すためにハイランドとローランスの戦いを煽っているのです。それを止める為に私は秘密裏にローランスとの停戦の実現を目的にこのペンドラゴへ訪れました。フォートン殿は皇帝陛下の側近であると聞きます。陛下への謁見の為に、どうか私達に力添え頂けないでしょうか?」
嘘偽りの無い真っ直ぐな言葉でアリーシャはフォートンへと自身の目的を告げる。
それに対してフォートンは……
「両国の危機を伝えに危険を冒し、このペンドラゴに……どうやらバルトロ達の様な俗物とは違うという噂は真のようですね」
予想外に好意的な評価を告げる。
「え……?」
アリーシャは思わぬ言葉に呆気に取られた声を漏らす。
「国の為に尽くす献身的なその在り方。それに加えて貴女は私と同じ奇跡の力を身に宿している。貴女は正しくハイランドを導く為に選ばれた存在です」
「あ……あの……」
誉め殺しか何かと思われるほど吐き出され、不気味な程に並べ立てられる賛辞の言葉の数々。アリーシャはそれに対して逆に不自然さを覚え言葉を詰まらせる。
「「……」」
一方で晴人とザビーダの2人は、先程この広場で起きた戦いを見ていたかの様な物言いのフォートンの言葉に対して表情を険しくする。
「両国の平和の為、そして災厄の時代を越える為、是非とも協力させて頂きます」
「本当ですか!」
フォートンの言葉にアリーシャは思わず表情を明るくするが……
「えぇ、ですからアリーシャ姫。ハイランドを捨てなさい」
その言葉にアリーシャの笑顔が凍り付いた。
「な、何を仰るのです!? 」
動揺した声で問いかけるアリーシャ。それに対してフォートンは変わらず貼り付けた様な笑顔で答える。
「両国の平和の実現の為に権力争いを生む俗物共を排する必要があります。その為にアリーシャ姫、貴女に賛同する兵士を束ねてハイランドを抜けローランスに来て頂きたい」
「わ、私に国を割れと言うのですか!? それに戦いを止めなくては穢れが____ 」
「穢れは私にとって脅威とはなりえません。そして、国を割るというのも違います。ハイランドとローランスは1つとなるのです。その為には不要な膿を取り除く必要があります。バルトロやそれに属する俗物共を私と貴女で排するのです。そして私と貴女は奇跡の力で民を導き1つとなった国を纏める。そして災厄の時代を乗り越える。悪い話では無いと思いますが?」
「ち、違います! 私が望んでいるのはそんなやり方では___ 」
「何を躊躇うのです? 私腹を肥やす事しか考えない野心家の俗物など、国を思うのであれば切り捨てるべきでしょう? そういった連中程、正しい道を進もうとする者の障害となるものです。貴女とて身に覚えがあるのではありませんか?」
「そ、それは……」
フォートンの言葉に思わずアリーシャは言葉を詰まらせる。それは決して戯言で済ます事の出来ない言葉だった。災厄に苦しむ民から目を背け自信の権力や財産に固執した貴族や、自分を排する為に時には暗殺紛いの事までしてきたバルトロをはじめとする官僚達。
フォートンの言う人の闇を、腐敗を、アリーシャは今まで何度も見てきた。
「先ほど、この広場で貴女がその力を振るい戦う姿を見ました。その力があれば私と同様に腐敗を排し民を正しく導いていけるのです。ならば答えは決まっているでしょう?」
そう言い切るフォートンに対してアリーシャは押し黙る。晴人とザビーダはそれに対して何かを言う事なくアリーシャを見守る。
そしてアリーシャの口がゆっくりと開かれる。
「フォートン殿……私には叶えたい夢があります」
「……夢?」
「言い伝えでしか見た事の無い穢れ無い美しい故郷をこの目でみたい。それが私の夢です」
「そうですか。それは素晴らしい夢です。それならば尚の事ローランスと組みバルトロ達を討「お断りします」……何?」
アリーシャから告げられたハッキリとした拒絶に、初めてフォートンの表情が崩れる。
「私の夢は、自分の意にそぐわない者を排した道の先にはありません。そして___ 」
アリーシャは自身の指にはめられた指輪に見つめながら答える。
「この力は他者を排する為の力では無く、他者を救い上げる為の力です。それを違える事は私の夢とそれを信じこの力を分け与えてくれた彼への裏切りだ。それだけは出来ない……絶対に!」
真っ直ぐにフォートンを見据えアリーシャは告げる。
「例え拗れても間違えても、私は手を差し伸べる事を止めたく無いです。例えその道の途中でどれだけ傷つく事になっても、その願いだけは腐らせたくは無い。それが……私の信じる希望です」
微笑みながらそう告げたアリーシャを見て晴人は嬉しそうに笑うと口を開く。
「ま、そういうわけだ枢機卿。魔法は誰かを傷つける為のものじゃない。誰かの希望を救う為のものだ。だから悪いけどあんたの意見は飲めないよ。もう少し平和的な案で頼むぜ」
そう言い放ちアリーシャの横に並び立つ彼を見てアリーシャもまた笑みを浮かべた。
その姿を見てフォートンが静かに口を開いた。
「そうですか……なら方法を変えましょう」
次の瞬間、あたり一帯の空気が変わった。
「う!?」
「アリーシャ!?」
「チッ……薄々勘付いちゃいたがやっぱりかよ」
嘗てのヘルダルフの領域で霊応力が麻痺した時と同様に、発動した魔力が解除され元の姿に戻ったアリーシャは、苦しみながら地面に片膝をつく。
同時に、ザビーダは枢機卿の奇跡の力の正体を確信し、両手のペンデュラムを構えた。
「うぅ……この力……穢れの領域。まさか……」
苦しみながらもフォートンへと視線を向けるアリーシャ。そんな彼女にフォートンは冷たく言い放つ。
「良き協力者たり得ると思ったのですが、仕方ありません……こうなればその力だけでも手駒としていただきましょう」
カンッ! フォートンが手に持った杖で石畳を叩くと同時に周囲に変化が起こる。
「!! こいつは……」
「なるほどね……そういうことかよ」
アリーシャを庇うように立つ晴人とザビーダは表情を一段と険しくする。
彼らの視線の先には_____
『グゥゥゥウ』
広場へと繋がっている2つの道を塞ぐ様に大量の憑魔達が立ち塞がっていた。
ルーガルーに似た狼タイプの獣人、先程襲ってきた鎧の憑魔、聖職者の様な服を着たリザードマンを見てザビーダは舌打ちする。
「チッ……ワーウルフ、リビングアーマー、リザードプリースト……大層な数だな」
「いや、それだけじゃなさそうだ」
「あん?」
空を見上げて告げた晴人の言葉に釣られて、ザビーダは空を見上げる。そこには黒い羽根と角を生やし巨大な槍を持つ女性の憑魔が何体も飛んでいる。
「デビルか……空への逃げ場も対策済『ガァァァァァァァア!』……次はなんだ?」
背後から鳴り響く咆哮に振り返る2人の視線の先には、他の憑魔と異なる大型の憑魔が城壁の上から飛び降り、広場の奥に作られた舞台の上へ着地した。
体格はヴァーグラン森林で戦ったブリードウルフと同等であり、棘の付いた大きな手甲に鋭い爪と牙を持ち虎を思わせる獣人タイプの憑魔である。
「虎武人……気をつけろハルト。アレは他の雑魚共とは違うぞ」
「あぁ、他の奴らより強い穢れを感じるぜ。けど、なんでいきなりこんなに沢山の憑魔が?」
「……原因はあちらさんの仕業だろうな」
そう言ってザビーダはフォートンへ視線を向ける。
「フォートンがこの憑魔達を率いているってのか? なら、この穢れの領域は____」
「そう、私の力です」
晴人の言葉を遮りフォートンは自身の力の正体を告げた。
「なるほどね……穢れは脅威にはならないってのはそういう意味かよ」
「そんな!? では、人々が話していた奇跡の力の正体は……貴女は民を欺いていたのですか!? 民を導く言葉は偽りだったのですか!?」
枢機卿の力の源が憑魔の物であると知り、アリーシャはフォートンへ向け叫ぶが____
「それは違います。民を導き災厄の時代を越えるという言葉に嘘はありません。私はこの力で、国の内と外の障害を排し、国を1つにまとめ、正しく民を導いてみせます」
嘘や皮肉とは違う力のこもった声でフォートンは答えた。
「障害を排す……まさか、マシドラの教皇の失踪も本当に貴女が……?」
疑念をぶつけるアリーシャ。だが、その言葉を受けたフォートンは突如笑い声をあげた。
「私がマシドラを? ……フフフ、あの男にそんな価値などありませんよ。何せあの男は国を見捨て逃げたのですから」
その言葉にアリーシャは強く反応した。
「逃げた!? ですが、マシドラ教皇は長年、ローランスにその身を捧げ続けた方だと……」
「フッ……騎士団の者達と同じ様な物言いですね。嘘ではありませんよ。マシドラは人々を導かねばならぬ立場にありながら、我が身可愛さにこのペンドラゴから姿を消したのです。だというのに騎士団は滑稽にもマシドラを庇い、私が何かしたのだと疑う始末……まったく度し難い。あの様な無責任な男を盲目的に信じ続ける騎士達も、権力争いしか頭に無い王族達も愚かとしか言い様が無い……だから決めたのです。私がこの力でローランスと導くのだと」
マシドラへの嫌悪感を隠そうともせずフォートンは表情を歪め言葉を吐き出し続ける。
「フォートン殿……貴女は……」
一方のアリーシャは、フォートンの力強い言葉から憑魔の力を宿しながらも彼女の国を救おうとする意思が本物であることを突きつけられ、言葉を詰まらせた。
「だから私には力が必要なのです。奇跡の力で民の信仰を高め、『この雨』で人々の心を1つにする」
だが、その続くフォートンの言葉にアリーシャの表情が固まる。
「ッ!? 『この雨』で……? まさか!?」
アリーシャの反応にフォートンはニヤリと笑みを浮かべる。
「察しの通り。この止まない雨は私の力によるものです」
その言葉に反応した晴人がフォートンに問いかける。
「……わからないな。この国を救いたいならなんでそんな事するんだ? 」
「全ては恐怖で民の心を1つにする為……災厄に追い詰められた民衆達を私という希望が導くのです。それこそが救い。痛みが救いをもたらす! 雨に濡れた体を寄せ合うのはさぞ温かい事でしょう」
その言葉を聞いたアリーシャはヨロヨロと弱々しく立ち上がりながらフォートンを見据えた。
「ちが……う。そんな物はまやかしだ。貴女のやり方は人々の持つ希望を奪い都合よく上書きしただけに過ぎない……それでは民の心は救われない!」
その言葉にフォートンの表情が激しく歪んだ、
「黙りなさい! 理想論しか語れない小娘が! 心を救えたところで何になるというのです!? お前には結果を得られぬ責を背負えると言うのか!? 私は例えどんな手を使ってでもローランスを救う! それこそが……そうすれば……!!」
「ッ! それは……」
放たれた言葉の迫力に押され黙り込むアリーシャ。それと同時に3人を包囲していた憑魔達が一斉に動き始める。
「従わないというのなら仕方ありません。貴女達を憑魔に変え彼等と同様に我が傀儡としましょう」
フォートンの意思を受け、戦闘態勢を取り始め憑魔達に対してザビーダは苦々しげに言葉を零す。
「ったく……マズイな。上位憑魔の虎武人に、この雑魚共の数……とてもじゃないが力が使えなくなっているアリーシャを守りながらやり合うのは厳しいぜ?」
「わかってる。ここは、退くしかない。停戦の交渉には王族のアリーシャが必要不可欠だ。この状況で無茶をする事はできない」
「そう簡単に逃げられると思いますか? その状態の姫を守りながら? 」
こちらの行動を見透かして語りかけてくるフォートン。その言葉に晴人とザビーダは表情を苦々しげな表情を浮かべる。
アリーシャが一時的に力を使えない現状では晴人とザビーダが戦うしか無いが、アリーシャを庇いながら大量の憑魔を強行突破するのはリスクが高すぎる。
ハリケーンスタイルで空中に逃げるという手段も上空のデビル達が阻むだろう。
そう簡単に脱出を許すほどフォートンは甘くなかった。
「チッ……背に腹は代えられないか」
そう言い放ち、ザビーダはジーンズにねじ込んだジークフリートを取り出すと、銃口を自身の顳顬に突きつける。
「無駄弾は使いたくなかったがこの際だ。やるしかねぇよな」
そう言って引き金に指をかけるザビーダ。
一方で晴人もまたこの状況を脱する方法を考えていた。
「(どうする? 真っ向勝負をするには状況が悪すぎる。空を飛んで逃げるにしても、アリーシャを抱えたままじゃあのデビルってのの群れと戦う事はできない……)」
ハリケーンスタイルによる空中からの離脱は封じられ、真っ向から戦おうにも枢機卿の力には謎が多く敵の数も多い。加えてアリーシャの状態を省みれば今は退くしか無いだろう。ハイランドから脱出した時とは違い足元の床の先に空間が無い以上フォールの魔法も役には立たない。
「(こんな時、仁藤の指輪さえ使えれば……いや待てよ……確か穢れの領域はドラゴンの力を……こうなりゃ一か八か!)」
晴人は決意を固めると素早く右手の指輪を交換する。手にはめた指輪は、前回傷ついた騎士達に使おうとし魔法が発動しなかった黒縁に六角形の装飾が取り付けられた指輪だ。
「(ヘルダルフクラスの穢れの領域でもなければドラゴンは呼び出せない……けど、失われたドラゴンの力に一時的に力を与える。それなら前は使えなかったこの指輪も!)………ザビーダ! アリーシャを抱えて俺に近寄れ!」
「!! りょーかいッ!」
晴人の言葉に何か策があると察し、ザビーダはジークフリートをしまうとアリーシャを抱え上げ晴人に駆け寄る。
「何をするつもりかは知りませんが逃がしませんよ」
その言葉と同時に憑魔達が一斉に晴人達へ向け殺到するが……
「いや、悪いが退かせてもらうぜ。近いうちにまた来るよ」
軽口を叩きながら晴人は指輪をバックルに翳す。
【ビースト! プリーズ!】
鳴り響く音声が魔法の発動を晴人に伝え、同時に晴人達の足元に紫がかった青の魔方陣が展開され____
「うお!?」
「え!?」」
ザビーダとアリーシャが驚きの声をあげる中、石造りの床がまるで水面の様に波打ち、3人の身体が地面に沈み込みその姿を消した。
「なに!?……逃げましたか。追いなさい……」
フォートンは驚きの表情を浮かべるもすぐにそれを取り繕うと上空のデビル達に追撃の指示を出す。
「まぁいいでしょう。どの道あの者達は停戦の為にこのペンドラゴに来る必要がある……その時こそ、姫達を憑魔に変えローランス繁栄の為の手駒としよう」
そう言い放ちフォートンは踵を返し教会へ向け歩き出す。
「私は間違ってなどいない……そうですよね? 姉さん……」
最後に彼女の口から漏れたその呟きは、降りしきる雨音に飲まれ消えていった____
__________________________________
__________________________________
「なんとか突破できたか……」
「まさか、地面の中を泳ぐ事になるとはね……そんな魔法も持ってたのかよ」
「正確には借り物だけどな……一か八か成功してよかったぜ」
晴人の機転により憑魔による包囲から脱した3人は既にペンドラゴの外に脱出し、少しでも距離をとるべくバイクを走らせていた。
「すまないハルト……また足を引っ張ってしまった……」
後部座席に座り晴人に掴まるアリーシャは弱々しく謝罪する。グレイブガンド盆地の時と同様に穢れの領域で力を一時的に封じられ、戦えなかった事に責任を感じているのだろう。その表情は曇っている。
そんな彼女に晴人は気にしてないというような優しい声で答える。
「いちいち謝る必要なんてないさ。仲間なら助け合うもんだろ? それに戦争を止めるにはアリーシャの力が必要になる。俺には2つの国の間を取り持つ事は出来ないんだ。弱気にならず前を向いて行くとしようぜ」
「前というか絶賛尻尾を巻いて逆走中だけどな!」
「茶化すなよお前は!」
アリーシャと同化中のザビーダが茶々を入れ、それにツッコむ晴人。そんなやり取りに重苦しい空気が少し和らぎそうになるが_____
『アアァァァァァア!!』
「「「ッ!!」」」
響き渡る理性を感じさせない女性の叫び声。アリーシャは慌てて振り向き後方を確認すると、牧耕地帯を駆け抜けるバイクを追うように何かが空を飛びこちらに迫ってきている。
「ハルト!デビルだ! どうやら追っ手みたいだぜ!」
「そう簡単には逃げられないか。足を止めたら地上からの追っ手にも追いつかれる!このまま安全な場所まで走り抜けるぞ! アリーシャ、力はまだ使えないか?」
「声や姿は認識できるようになってきたがまだ戦闘までは……」
「了解! なら振り落とされないようにしっかり掴まってろ!」
そう言って晴人はエンジンを吹かせマシンウィンガーを更に加速させる。
「ハルト、デビルは風の憑魔だ。風の天響術に手に持った槍による近接戦闘の両方を熟せる万能型だ、気をつけろよ!」
ゴォッ!!
ザビーダがそう告げた瞬間後方から風の槍がマシンウィンガーに向けて何発も放たれる。
「チィッ!!」
咄嗟に左へ体重を傾け進路を変える事で回避し、外れた風の槍が地面へと着弾し轟音をたてる。
「やるしないか……変身!」
【フレイム! プリーズ! ヒー! ヒー! ヒーヒーヒー!】
左手をベルトに翳し、ウィザードへと姿を変える晴人。
その後も続く風の槍の連射を、ウィザードは右へ左へとジグザグに走行し回避していく。
「このままじゃキリがないな……それなら!」
【コネクト! プリーズ!】
ウィザードは左手てウィザーソードガンで取り出すとガンモードで前方にばら撒くように発砲する。
『ギャウッ!?』
ばら撒かれた弾丸は生き物の様にUターンし、そのままウィザードとすれ違うと、後方から追撃してきていたデビルの数体に直撃し地面に叩き落とす。
『アアァァ!!』
「おっと!」
だが追撃の手は弱まらない。
バイクに追いつき、横に並んだデビルがその手に持つ巨大な槍でウィザードに向けて突きを放つ。
ガギィ! ウィザードは銃に折りたたまれた刀身の部分で受け流し、肘打ちを叩き込み怯ませた所に至近距離で弾丸を打ち込んだ。
『ギャアァ!?』
銃撃で吹っ飛んだ吹き飛んだデビルの一体はそのまま岩に叩きつけられ倒れこむ。
だが、次は背後から槍を構えた別の一体が突っ込んでくる。
「フッ!」
『グギャアア!?』
ウィザードはブレーキをかけドリフトの要領で180度ターンを決め、攻撃を回避しながら逆にデビルの後方に回り込むと、再びアクセルを吹かせ加速しながら得物をソードモードへと切り替え、追い越しざまに斬りつけた。
「キリがないな……」
そう言いながらバイクを走らせるウィザード。その視線の先に高低差のある地形が飛び込んでくる。
「アリーシャ! 悪いが少し無茶をするぞ!」
「構わない! 君を信じる!」
「おい、俺には「よし行くぜ! 」…おい聞けよ」
アクセルを捻りマシンウィンガーを加速させていくウィザード。その先には急な傾斜の岩場がある。
そこに向けて一直線に疾走するマシンウィンガー。速度を弱める様子は一切なくそれに置いて行かれぬ様残りのデビル達も全速力で後方を追従する。
そして……
「ハァッ!」
傾斜に突っ込んだマシンウィンガーはそのまま傾斜を駆け上がり、勢いをそのままに直進し頂上で勢いよく空中に飛び出す。
【フレイム! シューティングストライク! ヒー!ヒー!ヒー!】
ガンモードに切り替えたウィザーソードガンのハンドオーサーを起動し、指輪をかざすと同時に空中でバイクの姿勢を横へと向け、背後に迫っていたデビルへウィザードは銃口を向ける。
その先にはウィザードを追従するために一直線の射線上にデビル達がいる。
「フィナーレだ」
引き金が引かれると同時に放たれた炎弾が、デビルたちを巻き込み爆発する
『ギャァァアアア!!』
デビル達の叫びを背に無事に着地したマシンウィンガーをそのまま走らせ、ウィザード達はその場を後にした。
__________________________________
__________________________________
その後、バイクを走らせた晴人達は止まない雨の範囲を抜け、安全な凱旋草海の遺跡跡にて休息をとり、アリーシャの回復を待った。
翌日にアリーシャの霊応力の回復を確認すると再びバイクを走らせ凱旋草海南部へと向かい、無事にゴドジンへと通じるバイロブクリフ崖道へと到着した。
「うへぇ……セルゲイの話通り危なさそうな場所だな」
険しい崖の合間を縫うように走る道には当然柵などなく、落ちればただではすまない様な高所を通っている。このような場所でバイクを走らせる訳にもいかず、3人は徒歩で進んでいた。
「険しい道……スレイ達も危険が無ければ良いが」
この道を先に進んだであろうスレイ達を案じるアリーシャ。
「大丈夫だって、こんなあからさまな場所ならどんな奴だって落下しないように気をつけるさ。そんなベタな事には……」
そう言った次の瞬間
「うひゃぁああああ!?」
晴人達が歩く道の上の方から謎の叫び声が響きわたった。
「はい?」
「なんだぁ?」
晴人とザビーダの2人は困惑するが、アリーシャは魔力を発動し姿を変えると一直線に駆け出す。
遥か上の道から人が落下してきた事に気付いたからだ。
「間に合え!」
危機一髪アリーシャは落ちてきた人間をキャッチするが……
「きゃあ!?」
「痛ったぁ!?」
勢いは殺せず体勢を崩して2人揃って地面を転がる。
晴人とザビーダは慌てて駆け寄る。
「大丈夫か!」
「妙な事口走らなけりゃよかったな……怪我はないかい?」
そう声をかけた2人に倒れたアリーシャが反応する。
「あぁ、私は大丈夫。それよりも君……え、君は『セキレイの羽』の!?」
「イテテ……ごめん、ごめん! 受け止めてくれて助かっ……うぇ!? アリーシャ姫!? なんでこんな場所に!?」
アリーシャは落ちてきた相手を知っているのか驚いた声をあげる。
一方で落ちてきた人物……いや女性もまたアリーシャの存在に目を丸くして驚いていた。
肩まで伸びたショートボブの赤毛。髪の色と同じく赤を基調とした服の上から丈の短いボレロ風のジャケットを着て黄色いスカーフを首に巻き、下は動きやすさを重視しているのか白のピッタリとしたズボンを履いており、年齢はアリーシャより幾つか上に見える。
そこに居る全員が状況が掴めず混乱するが。
「ロゼ! 大丈夫!?」
そこにもう1人、上から飛び降りてきた人物が現れる。
だが、今度の人物……否、青年は知らない相手では無い。
アリーシャ達が合流するべく探していた相手……
「スレイ!?」
「え、アリーシャ!?」
斯くして一度別れた道は再び交わる。
そこに新たな役者が加わり、物語の序曲は静かに終わりを告げた。
※読者の方達へのお願い
当作品の今後の作風に関してですが感想欄で何度か答えた事もあるのですが、本作は味方PTキャラへのアンチ・ヘイトをする予定はありません。特に原作で色々と問題行動の多かったロゼに関しても設定改変を行いしっかりと味方キャラとして描いていくつもりです。ゼスティリアの原作に対して色々と思うところのある読者の方もいるかもしれませんが、原作への愚痴をキャラに喋らせて気に入らないキャラを叩くという作風は個人的にはやりたくないのでそこの所をご理解頂けると幸いです
ハイ!真面目な話終了!
原作ゼスティリアやってて枢機卿の杖を見たときに最強(笑)、フロート(笑)などのワードが頭を過ぎった人!
ダキバの紋章ハメか、ニュートンの壁打ちの刑な!