Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜   作:フジ

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平成ジェネレーションズ! 面白かったぞおおお!!
粗はありましたがレジェンド勢にもガッツリ見せ場があってずっと暴れまくりな映画で大変素晴らしかったです。

今回の更新でタグを1つ追加しました。感想欄では以前からお答えしていたのですが、まだまだ先になりますが今作はウィザード以外のライダーが一名参戦を予定しています。

それと今回使う、ビーストマント装備のフレイムドラゴンは超DVDネタだから捏造じゃないよ! 気になる人は要チェック! ビーストマントを、両肩に装備したフレイムドラゴンはカッコいいですよ


ではおそらく今年最後の投稿です。どうぞ


27話 諸刃の希望 後篇②

「あれが……ハルトの新しい力……」

 

燃え上がる紅い龍の幻影の中から姿を現した見たことの無いウィザードの姿に、アリーシャは小さく声をこぼす。

 

「ドラゴンの力を纏った……? ドラゴンの力を利用……いや、協力してるって言うの……? そんな事って……でも、それなら……お兄ちゃんの事も……」

 

そんなアリーシャの横で、同じくウィザードを見つめるエドナの口から困惑した声が漏れた。

 

「エドナ様?」

 

「ッ!!………………」

 

そんなエドナを気にして声をかけたアリーシャだが、エドナはその声にハッとした表情を一瞬見せるとすぐに黙り込んでしまう。

 

「(この反応……ヘルダルフとの戦いでハルトがドラゴンを呼び出した時と同じだ……エドナ様はやはりドラゴンに何か因縁が……)」

 

心の中でエドナの反応から何かを察したアリーシャは再びウィザードへと視線を向ける。

 

「(ハルトは、この遺跡で自分の中の魔力を引き出す為の指輪の力を取り戻すと言っていた……そして、あのドラゴンの言葉……ドラゴンをその身に宿す事でハルトが力を取り戻すというのなら……ハルトの……魔法使いの力の根源というのはまさか……)」

 

疑問、困惑、予感……ごちゃ混ぜになる様々な感情がアリーシャの胸中に渦巻く。

 

「ハルト……」

 

不安を滲ませた声がアリーシャの口から溢れたその時……

 

「えっ!?」

 

ほんの一瞬……魔力の衣を解除していたにも関わらず、アリーシャの意思に関係なく強制的に火属性の魔力が発動した。突然声を上げたアリーシャに周りの仲間達から視線を向けられたが、すでに魔力が解除されていた事とアリーシャが「いえ、なんでもありません」と答えた為に、仲間達は訝しみながらも視線をウィザード達へと戻した。

 

「(い、今のは……一体……)」

 

まるで力を取り戻したウィザードに呼応するかの様な現象にアリーシャは戸惑う。

 

そんな彼女の揺れる瞳が向かう先で、戦いの火蓋は再び切って落とされた。

 

 

___________________________________

 

『ゆくぞ!!』

 

先程とは異なり、正体を明かしたサラマンダーは力強く人の言葉を放つと同時に、恐ろしい勢いでウィザードに肉薄する。

 

「ッ!! 速い!!」

 

先程の戦いでの速さを数段上回るその踏み込みにスレイは驚きの声を溢す。

 

『ハァァァア!!』

 

気迫の篭る声と共にウィザードに向けて振るわれる大剣の横一閃。

 

だが……

 

「…………」

 

轟ッ!!!

 

本気を見せ、先程の戦いを大きく上回る速さで振るわれた渾身の一閃は、轟音と共に虚しく空を切る。

 

ウィザードは振るわれた横一閃を、最小限の後方へのスウェーのみで回避したのだ。

 

『ウォォォォオ!!』

 

「…………」

 

続いて振るわれる縦一閃。

 

ドゴォォォン!!

 

その一撃で石造りの足場がクレーターの様に陥没するが、ウィザードは真紅のローブを翻し、舞う様に横へと最小限の動きで回避し……

 

「ハァッ!!」

 

『な!? ぐぉぉお!?』

 

ドゴォオ!!

 

放たれる回し蹴りがサラマンダーの脇腹を捉え、その巨体が恐ろしい勢いで吹き飛ばされる。

 

ドガァァッ!!!

 

ピンボールの様にその巨体を吹き飛ばされたサラマンダーは石版の一つに盛大にぶち当たり、漸くその勢いを止める。

 

一方のウィザードはローブを翻しながら、静かにサラマンダーを見据える。

 

「悪くない調子だ。さて、そんじゃ反撃といこうか、スレイ! ライラ!」

 

「あぁ、行くよ! ハルト! ライラ!」

 

「えぇ!此方はいつでも大丈夫です!」

 

ウィザードの声に答え、スレイは燃え盛る大剣を構える。

 

【コネクト! プリーズ!】

 

一方のウィザードも魔法陣よりウィザーソードガンを取り出すとソードモードへと切り替える。

 

そして駆け出す二人。

 

「ハァッ!!」

 

『うぉぉ!!』

 

サラマンダーに接近しウィザードの剣が振るわれ、サラマンダーの大剣の一撃と正面からぶつかり合う。

 

『ぬぅ!?』

 

だが、先程とは異なりウィザードの斬撃は押し負ける事なく、サラマンダーの一撃と拮抗する。

 

「てやぁっっ!!」

 

『ッ!!』

 

そこに逆サイドから突っ込んできたスレイの大剣の一撃が振るわれる。

 

ガギィン!!

 

だが振るわれた一撃はサラマンダーが左手に持つ大盾で防がれる。

 

だが……

 

「「建つは血塔!」」

 

『ぬぉぉぉぉぉぉっ!?』

 

ウィザードがバックステップで退くと同時に、スレイが大きく振りかぶった大剣を下方から頭上へと跳ね上げる様に振るい盾をカチ上げる。そして、斬撃を追従する様に地面から巨大な火柱が立ち登り、サラマンダーを飲み込むと勢いをそのままに空中へと浮き上がらせる。

 

【フレイム! シューティングストライク! ボー! ボー!ボー!】

 

それを追撃する様に、得物をガンモードへ切り替えたウィザードはハンドオーサーを起動し、指輪を翳すと通常のフレイムスタイルを上回る威力の炎弾を浮き上がったサラマンダーへと放つ。

 

『ぐぁぁぁっ!?』

 

着弾し爆音と共に地面へと落下するサラマンダーは、空中で態勢を立て直し着地するが……

 

『ぐぅ!?』

 

先程は直撃を受けて、なお平然と立っていたサラマンダーがよろけ、地面に片膝をつく。

 

『なるほど、威力も先程とは桁違いだ……だが、まだだ! この程度では足りないぞ!』

 

そう言い放ち立ち上がるサラマンダーの足元に、赤い魔法陣が浮かび上がる。

 

『我が火は爆ぜる魔炎! バーンストライク!』

 

そして三発の灼火弾がスレイとウィザードに放たれる。

 

それを見たスレイは大剣を目の前で横に向け構える。

 

「「紅の障壁!」」

 

叫びと共に地面から炎の壁が吹き上がり、二人を守るように立ち塞がる。

 

そして炎の壁と灼火弾が激突し、爆音と共に相殺される。

 

そして爆発が晴れた先には……

 

「いない!? ……!! ハルト!! 後ろ!!」

 

先程立っていた場所にサラマンダーの姿は無く、爆炎を目くらましにウィザードの背後へと回っていたのだ。

 

『ハァッ!!!』

 

がら空きのウィザードの背中に向けサラマンダーが強烈な横一閃を放つ。

その斬撃が命中すると思われたその瞬間……

 

【コピー! プリーズ!】

 

ガギィィィィンッッッ!!!

 

『なッ!?』

 

驚愕する声を発するサラマンダー。

 

攻撃の瞬間、ウィザードは振り向く事もなくウィザーソードガンのハンドオーサーを起動すると、変身用の指輪では無くコピー魔法の指輪をかざした。

 

そして何も持っていなかった右手に現れたもう一本のウィザーソードガンを背筋に合わせるように背後へと回し、サラマンダーの斬撃を振り向く事なく背面受けで防御したのだ。

 

「ハァッ!!!」

 

動揺に隙を見せたサラマンダーに対して、ウィザードは振り向くと同時に左手の剣で斬りつける。

 

『グォア!?』

 

怯むサラマンダー。更にウィザードは勢いをそのままにウィザーソードガンの二刀流で斬撃のラッシュを仕掛ける。

 

ガキィィンッッ!!

 

「たぁぁあ!!」

 

『グオオッッ!?』

 

ラッシュで崩れた防御の隙を突き、二本のウィザーソードガンの突きがサラマンダーの胸に叩き込まれ後方へと吹き飛ばす。

 

「決めるぞ! スレイ! ライラ! 突っ込め!」

 

「「任せて(ください)!」」

 

ウィザードの言葉に応えながら、吹き飛んだサラマンダーへ向け駆け出すスレイ。

 

サラマンダーは迎撃するべく大剣を構えるが……

 

『なにッ!?』

 

動揺するサラマンダー。

 

スレイの後方でウィザードはウィザーソードガンをガンモードに切り替え、2丁拳銃から銃撃が放たれ、スレイの背後から弾丸が生き物の様にスレイを避けサラマンダーの頭上、左右、正面とあらゆる方向から殺到したのだ。

 

『クッ!?』

 

スレイの身体を目くらましとした銃撃に反応が遅れたサラマンダーは盾を構え、ギリギリで銃撃を防ぐ。

 

だが、それこそがウィザードの狙いだった。

 

防御の隙を突き、スレイがサラマンダーの懐へと飛び込む。

 

『ッ!! しまっ___ 』

 

スレイの狙いを察したサラマンダー。

 

だがもう遅い……

 

「「我が火は灼炎! 」」

 

スレイが左下方へと腰溜めに構えた大剣から恐ろしい勢いで炎が噴き出す。

 

「「紅き業火に悔悟せよ!」」

 

大剣の切っ先を地面に滑らせながら回転し下から上へと業火を纏う大剣が、サラマンダーへ向け振り上げられる。

 

「「フラン! ブレイブ!」」

 

『グォォォォォォオオオオ!?』

 

スレイの大剣がサラマンダーの手に持った大剣と盾を容易く両断し、サラマンダーへと炸裂する。斬撃を受けた箇所が大爆発を起こし、サラマンダーはその身体をホームランボールの様な勢いで上空へと吹き飛ばされた。

 

だが……

 

『グゥゥ……まだだ!』

 

吹き飛ばされたサラマンダーは健在だった。大剣と盾を失ったがそれにより威力が軽減されていたのだ。

 

しかし……

 

「後は任せた! ウィザード!」

 

それでもなおスレイは勝利を確信し笑みを浮かべ叫ぶ。

 

その背後で……

 

 

 

 

 

「あぁ、任せな。 行くぜドラゴン! 」

 

スレイの言葉を受け、ウィザードが赤く輝く指輪をベルトにかざす。

 

【チョーイイネ! スペシャル! サイコー!】

 

 

ベルトの音声と共にウィザードの大きな背中に赤い魔法陣が展開される。

 

そこから燃え盛る龍の幻影が現れ、ウィザードを中心に旋回すると背後から胸を貫く。

 

『ガァァァァァァァア!!』

 

そして、ウィザードの胸にウィザードラゴンの頭部、ドラゴスカルがその姿を現し咆哮をあげる。

 

ウィザードが両手を左右に広げゆっくりと浮き上がると、胸のドラゴスカルが吹き飛ぶサラマンダーに向けて口を開く。

 

そして……

 

「フィナーレだ!」

 

その言葉と同時にドラゴスカルの口から強力な火炎放射『ドラゴンブレス』が放たれ、サラマンダーを炎の奔流が飲み込んで行く。

 

『ぐぁぁぁっ!?……ぐぅっ!? 成る程……大した……力だ……確かに……見せて……もらったぞ……!!』

 

炎に飲み込まれながら最後にそう呟いサラマンダーは爆炎に飲まれその姿を消す。

 

それが、試練の決着だった。

 

 

___________________________________

 

「ふぃ〜……終わったな」

 

サラマンダーの撃破を確認しウィザードは脱力し気を抜いた様に息を零す。

 

「やったな! ハルト!」

 

そこに神衣を解除したスレイとライラが声をかける。

 

「ハルト! スレイ! ライラ様! 」

 

加えて、結界が解除されたのかアリーシャ達も三人に駆け寄って来た。

 

「やれやれ、見てて肝が冷えたよ」

 

「ほんとそれだよね。試練にしたって、説明も無しにいきなりあれは悪趣味だって」

 

「だからそれが試練なんだろ。説明したら試練にならん」

 

「そりゃあそうかもしれないけどさ……」

 

ぶーぶー文句を言うロゼ。だが、不満を言うのを止めると今度はウィザードへと視線を向ける。

 

「えーっと……それでなんだけどさ……さっきのって結局なんだったのかなー……なんて」

 

彼女なりに妙な空気を察しているのか、おずおずと遠慮気味にロゼは先程現れたドラゴンに関して質問する。

 

だが、それはこの場にいる晴人以外の全員が心の内に持つ疑問だった。

 

「あれってドラゴンのことか? あれは……」

 

その問いかけにウィザードは答えようとするが……

 

「済まないが、先に此方の要件を済ませて貰っても構わないか?」

 

集まった一同に何者かが声をかける。

 

その声に釣られて一同が視線を向けた先には、白いフード付きのローブを纏い、口元以外を隠すデザインの仮面を被った人物が立っていた。

 

「えーっと……その声、エクセオ様ですか?」

 

聞き覚えのある声にスレイはそう問いかける。

 

「左様だ。導師スレイ、火の天族ライラ、先程の戦い見事だった。力の試練、見事合格だ。其方に五大神ムスヒの秘力を授けよう」

 

その言葉と同時に、スレイの足元に大剣を模したムスヒの紋様が現れ、赤く輝くとその輝きがスレイに取り込まれていった。

 

「ムスヒの加護により其方の持つ領域の力が強まった。それは穢れの領域に抗う力となり得るだろう」

 

「つまり、さっきの心の試練の時みたいに相手の穢れの領域に押し負けて力を発揮できなくなったりししないって事ですか?」

 

「その通りだ。だが、災禍の顕主に対するにはまだ力不足となるだろう。奴に対抗するには残り3つの試練を乗り越え、四属性全ての秘力を手に入れる必要がある。心して臨む事だ」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

エクセオの言葉にスレイは頭を下げ感謝の言葉を口にする。

 

それを見て口元を緩め僅かに微笑むと、エクセオは次にライラへと視線を向ける。

 

「『浄化の炎』、マオテラスが残した力の残滓……ライラ……『誓約』を行なったのだな」

 

「…………」

 

突然の問いかけにスレイ、ロゼ、ミクリオ、アリーシャ、晴人の五人は言葉の意味がわからず首を傾げる一方、残りの天族達は何かを察した様に押し黙り、事態を見守る。

 

一方のライラは表情を暗くするものの、その問いかけには答えない。

 

「答えない……『答えられない』か……済まぬ。辛い事を聞いたな……」

 

「いえ……全ては私の非力が招いた事態ですから……」

 

弱々しく言葉を零すライラ。それを見てエクセオは小さく溜息をつく。

 

「背負うなとは言わん。だが背負い過ぎるな。1人で背負える物などたかが知れている。それは人間であろうと天族であろうと変わりない」

 

「はい、同じ過ちは繰り返しません。『今度こそ』私は道を違えません」

 

事情を知っているもの同士の会話。スレイや晴人達からすれば意味を察する事は難しいが、両者の雰囲気から口を出してはならない話題なのだと察し、誰も口を挟む事はしない。

 

そして会話を終えたエクセオは最後にウィザードへと視線を向ける。

 

「本当に迷いは無いようだな」

 

先程の手合わせで晴人の覚悟を察したのか、エクセオは言葉少なくそう問いかける。

 

「あぁ、自分で選んだ道だからな」

 

「ふっ、どうやら私の行なった事は君にとっては今更な話だった様だな」

 

「気にしちゃいないさ。あの力で警戒されたのも初めてって訳じゃないしな」

 

「……導師達への説明は私から行なった方がいいか?」

 

「いや、自分で話すよ。約束だしな」

 

そう言ってウィザードは、戸惑い見守るアリーシャへと僅かに視線を向ける。

 

「そうか……礼を言おうソーマハルト。『この世界』の為に助力してくれる事、感謝する……」

 

「気にしなくていいさ。俺にとっちゃいつもの話だ」

 

含み無くそう告げたエクセオに、ウィザードも仮面の下で笑みを浮かべ返答する。

 

そうして会話を終えた所に再びロゼがおずおずと口を開いた。

 

「えーっと……取り敢えず会話は一通り終了って事でいいのかな? なんか色々と聞きたい事はあるんだけどさ。先ずはハルトが言ってた村長さんの身体の毒を治す魔法。あれ使える様になったの? 早く戻った方がいいと思うんだけど……」

 

「悪い、その通りだな」

 

その言葉を受けてウィザードは指輪を交換しベルトにかざす。

 

【ビースト! プリーズ!】

 

魔法の発動を知らせる音声と共に紫がかった青い魔法陣が展開され、ウィザードが真横にかざした右腕を通過していく。

 

「どうやら成功みたいだな」

 

そう告げたウィザードの右腕にはイルカの頭部を模した肩装甲と先程の魔法陣と同色のマントが装備されていた。

 

「やったな! それじゃあ村長さんの所に……ちょっと待って!」

 

「ん? どうかしたのか?」

 

待ったをかけたスレイの言葉にウィザードはどうしたのかと問う。

 

「ごめん! 1つだけエクセオさんに聞いておきたい事があるんだ」

 

そう言ってスレイはエクセオの方を向き問いかける。

 

 

その内容は……

 

 

「エクセオさん……貴方はドラゴンになった人を助ける方法を知っていますか?」

 

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「今、戻ったよ! 村長さんは!?」

 

時は進み、真夜中を過ぎ夜明けが近づきはじめる時間に差し掛かったゴドジンの村。

 

村長の家にウィザード達は戻ってきた。

 

「戻って来た!よかった! 村長さんならまだ……ってなんだソイツ!?」

 

村長の家に駆け込んできた一同に村人は安堵するが、直後に現れたウィザードの姿を見て素っ頓狂な声をあげる。

 

まぁ、見知らぬ仮面の人物がいきなり駆け込んできたらそりゃあ驚くのも無理は無い。

 

「あぁ、そういえばこっちの姿は見せてなかったっけか。わりぃ、驚かせちまったな」

 

「その声……さっきの兄ちゃんか?」

 

ウィザードの声を聞き村人はそう問いかける。

 

「あぁ、約束通りあんたらの希望を救いにきたぜ」

 

「ほ、ほんとか!? ならこっちだ! 早く来てくれ!」

 

藁にも縋るような形相で村人はウィザード達を村長を寝かせている寝室へと案内する。

 

だが、寝室に案内されたウィザード達はそこで意外な光景を目にした。

 

「あんたは……」

 

「あら? どうやら間に合ったようね?」

 

ベッドに横たわり苦しむマシドラに対して、回復術をかけている者がいた。

 

ゴドジンに向かう道中で救った天族の女性である。

 

「聞きたい事は色々とあるのだけど、先ずはこの人を助けて貰えるかしら? この人達が待っていたのは貴方達なのよね?」

 

「わかった。まかせてくれ」

 

柔らかい声で告げた女性に対してウィザードは頷くと、右肩に装備されたマントを大きく翻す。

 

するとマントから海の色を思わせる青い光のシャワーが横たわり苦しむマシドラへと降り注いだ。

 

「ぐぅ……あ……? わ、私は……?」

 

すると先程まで意識が朦朧とし苦悶の声をこぼしていたマシドラの表情が和らぎ、弱々しくもその瞳が見開かれる。

 

「村長!」

 

「毒の方はこれでなんとかなった筈だ。けど一先ずは安静にしていた方がいいと思う」

 

変身を解除し元の姿への戻った晴人は村人達にそう告げる。

 

「ありがとう! 本当になんと礼を言ったらいいか……!」

 

「気にしなくていいさ。礼はいいから今は村長についていてやってくれ」

 

そう晴人が言うと、村人達はもう一度礼を言うと村長の看護をするべく持ち場へ戻っていく。

 

「ふぃ〜、取り敢えずこっちはひと段落か……後は……」

 

そう言いながら晴人はアリーシャ達へと視線を向け口を開く。

 

「宿に戻ろう。約束通り説明するよ。『魔法使い』について……な」

 

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宿の一室に戻って来た一同。テーブルの椅子に腰かけた晴人を中心に他の面々は同じく椅子に座る者、ベッドに腰掛ける者、壁に寄りかかる者など皆が思い思いに彼の話を聞く姿勢を見せていた。

 

因みに先程、村長応急手当として回復術をかけていた天族の女性『フォーシア』は、未だに村長の部屋に残り、回復術を用いて村長の看護を手伝っている。

 

あの後本人から話を聞くと、晴人達が試練神殿に向かった後、目を覚まし村を散策していたところ慌てる村人達を発見し事情を察して、晴人達が戻るまで毒に苦しむ村長の状態を軽減するべく、回復術で村人達の看護に協力してくれたらしい。

 

本人曰く「突然の事で驚いたけど、ここまで手伝ったのだから最後まで手伝わせて」との事だ。

 

そんな訳で、あまり大人数であの部屋にいても邪魔になるとフォーシアと村人達にあの場を任せて、一同は宿に戻って来たのである。

 

「さて、何から話したもんかな……」

 

そう言って少しばかり困った表情を浮かべる晴人。彼からすれば先程の試練神殿でドラゴンとエクセオの会話から一同に説明すべき内容がとっ散らかってしまい、どういう順を追って話すべきなのか些か困ってしまっている。

 

一方スレイ達も、晴人の事に関してはこの中では一番付き合いの長いアリーシャですら、彼の人となりこそ理解してはいるが彼の過去や魔法使いの事に関しては詳しく知らない為、どう踏み込むべきなのか迷ってしまう。

 

そんな中、何とも言えない空気に耐え兼ねたのか、ロゼが少しばかりオーバーリアクション気味に会話を切り出した。

 

「あー! そんな事いきなり言われても混乱するって! こっちはつい最近天族とか憑魔の事を知ったばっかりなのに、そこに加えて魔法使いとかさっきのドラゴンとかまで加わってもうさっぱりわからん! 略して『さぱらん!』」

 

彼女なりに重苦しい空気をなんとかしたいのか、敢えて大袈裟な喋り方で場を温めようとしているのだろう。そんな彼女の気遣いを察してか、椅子を逆向きにして座り込み、背もたれに両腕を乗せて脱力気味に事態を見守っていたザビーダは苦笑すると口を開いた。

 

「そうだな……あのドラゴンについても気にはなるが、まずは魔法使いってもんが何なのかだな」

 

そう言ったザビーダの言葉を他のメンバーも無言で肯定する。

 

「魔法使いについてか……これを説明しようと思うと多分、基本的な部分で色々と混乱するかもしれないけど……」

 

「なによ、随分と勿体ぶった言い方ね」

 

「うーん、まぁ、アリーシャには大雑把に説明したけど、俺ってこの大陸とは凄い離れた場所から来たんだよ」

 

流石に開口一番で「俺は別の世界からやって来ました」というのは話を脱線させかねないと判断したのか、晴人は少しばかり表現を濁しながら説明を始めた。

 

「凄い離れた? グリンウッド大陸の外から来たって事か? となるとお前さん、『異海』を越えた『異大陸』から来たのか?」

 

晴人の言葉に、ザビーダは少しばかり驚いた表情を浮かべる。

 

「? ザビーダ様、『異大陸』というのは?」

 

ザビーダの言葉の意味がわからず、アリーシャは問いかける。

 

「ん? あぁ、異大陸ってのはな____ 」

 

 

ザビーダ曰く、嘗てグリンウッド大陸がまだ違う名で呼ばれていた時代、この大陸は外洋である『異海』の先にある未知の大陸からの侵略を受けたと同時に、そこから伝わった技術で今よりも優れた文明を築いていたというのだ。

 

人々は『異海』の先に存在する未知の大陸を『異大陸』と呼んでいたが、異海を越えることは当時の造船技術をもってしても容易ではなく、その実態は謎に包まれていたという。

 

後に大規模な地殻変動の発生により嘗ての大陸は形を大きく変え現在のグリンウッド大陸となり、その際に文明は大きく衰退し、多くの技術が失われた。

 

それがザビーダの語った内容だった。

 

「と言うことは、ハルトは海の向こうから来たの!? 」

 

「驚いたな。グリンウッド大陸の造船技術は過去に失われたと聞いていたが外界から人が訪れるなんて……」

 

「確かに、ハルトが乗っていた乗り物といいこの大陸では間違いなく作れる様な物では無いと思っていたが……」

 

それぞれが思い思いに感想を口にするが、晴人は微妙な表情を浮かべる。

 

「いや、俺も正直そこらへんはよくわからないというかなんというか……」

 

「なんだ? 随分と歯切れが悪いな」

 

「あー、なんて言ったら良いんだろうな。俺の元いた場所とこの大陸の関係性ってのが俺にもわからないんだよね」

 

「どう言うことでしょうか?」

 

「いや、何か落ちてた虹色に光る石が急に光り出したと思ったら、いきなりこの大陸に跳ばされたからさ……」

 

『………………』

 

そう言った晴人に対してアリーシャを除くメンバーは何とも言えない表情を浮かべる。

 

「う、嘘では無いと思いますよ!? 私がマーリンドからレディレイクへ向かう道中、ハルトは突然不思議な光の中から現れましたから!!」

 

何とも言えない沈黙をフォローすべく、アリーシャが焦りながら晴人との出会いについてを一同に説明していく。

 

「アリーシャがそう言うなら本当なんだろうけど……」

 

「なんというか、いきなり凄い内容だな」

 

「というかハルトよお。そんな目に遭ってなんで落ち着いてんだよ」

 

「いや、これでも驚いてはいるんだぜ? ただ、妙な場所に跳ばされるのも今回で4回目だからな。流石に少しは慣れてきたというか……」

 

「いや、初めてじゃないんかい!? 普段どんな経験積んでんの!? 」

 

晴人の発言に思わずツッコミを入れるロゼ。

 

一方、静かに話を聞いていたエドナが晴人に問いかける。

 

「随分と回りくどい形で説明し始めたけど、アンタが元いた場所と魔法使いってのが何か関係あるわけ?」

 

「んー、関係というか、この大陸とは根本的に違う部分があるんだよなぁ」

 

「違い? 何よソレ」

 

「まぁ、わかりやすく言うと、俺の元いた場所には『穢れ』も『憑魔』も『天族』も存在しなかったんだ」

 

その言葉に一同は大きく目を見開いた。

 

「穢れが存在しない!? そんな場所があるのか!?」

 

この世界における根本的な部分を否定する晴人の発言に、ミクリオは思わず声を大にし問いかける。

 

他の天族の面々も声には出さないとは言え、その顔には驚きの感情が見て取れた。

 

当然と言えば当然だろう。彼らからすれば穢れの存在する世界を数千年単位で見続けて来たのだ。

 

穢れと無縁の場所というのは彼らからしても未知の世界なのだから。

 

「あぁ、少なくとも、俺はこのグリンウッド大陸に来るまでその手の類のものは見たことがない」

 

「た、確かに君は、初めて出会った時、憑魔や天族について知らなかったが……じゃあ君が魔法使いとして戦っていた相手というのは?」

 

そこでアリーシャの頭に浮かんだ疑問。それは晴人が魔法使いとして何と戦っていたのかと言うことだ。今までの晴人の言動から、彼が魔法使いとして人々を守る為に戦っていたという言葉が嘘であるとはアリーシャ自身、微塵も考えていない。

 

だが、そうなってくると穢れの存在しない世界で彼が何と戦っていたのかという疑問にぶつかるのだ。

 

そしてその問いを受け、晴人が口を開く。

 

「『ファントム』……それが俺たちが戦っていた相手だ」

 

「ファン……トム。確かさっきのドラゴンがそんな事言ってたよね?」

 

ロゼが試練の際のドラゴンの発言を思い出し問いかける。

 

「あぁ、そうだ。ファントムは『ゲート』と言われる人間を様々な手段で追い込み絶望させようとする。俺はそれを阻止する為に戦っていたんだ」

 

「その『ゲート』というのは?」

 

「潜在的に魔力を体内に秘めた人間の事さ。魔力ってのは誰でも持っているものじゃない。こっちで例えるならスレイやロゼみたいな生まれつき霊応力が高い人間みたいなもんだと思ってくれ」

 

「それじゃあ、アンタもゲートだったって訳?」

 

「そういう事になるな。もっとも、魔法使いになるまで俺の中に魔力なんてものがあるなんて俺自身知らなかったけどな」

 

「え? そうなの? なんかこう……魔法使いの国!……みたいなの想像してたんだけど?」

 

「魔法使いの国ねぇ……似たようなものは見た事あるけど、少なくとも俺のいた場所でも魔法を信じてる奴なんてそうそういなかったよ。魔法なんてものは物語の中だけの話だと思われてる。『ゲート』である人間も含めてね。まぁ実際、ゲートだからと言って自分の中の魔力を好きに使える訳じゃないからな」

 

「どういう意味だ? 『ゲート』と『魔法使い』ってのは同義じゃないのか? そもそも、何故ファントムってのはゲートを絶望させようとする?」

 

その言葉に晴人は少しばかり自分の中で何かを整理するように押し黙り、軽く呼吸を整えると、意を決して口を開いた。

 

「……新たなファントムを生み出す為だよ」

 

「え? ハルト、それはどういう……?」

 

晴人の発言の意味が理解できず、アリーシャはその意味を問う。

 

「ゲートってのはあるリスクを背負ってる。もしもゲートである人間が何かの切っ掛けで絶望してしまった時、ゲートの『アンダーワールド』……まぁ、簡単に言えば心の中の世界にファントムが生まれ、そして……」

 

「そ、そして……?」

 

アリーシャは不安を覚えながらも問いかける。

 

 

 

 

 

「宿主の命を奪い、ファントムは現実に誕生する」

 

その言葉に誰かが息を飲む音がアリーシャの耳に届いた。或いはそれは自分のものだったのかもしれない。

 

だが、アリーシャにはそれを考える程の余裕が無かった。

 

何故ならば……

 

「(宿主の命を喰らい生まれる怪物……)」

 

脳裏を過るのは夢で見た光景、体に亀裂を生じさせ蛹の殻を食い破る様に生まれ出る怪物達の姿。

 

「(ハルトの話と一致している……それじゃあ……まさか……まさかあの光景は……)」

 

動揺するアリーシャ。一方で残る面々も驚きを滲ませた表情で晴人に問いかける。

 

「えっと……それじゃあつまり、ゲートは絶望すると死ぬってこと?」

 

「あぁそうだ」

 

スレイの問いかけを晴人は静かに、しかし、しっかりと肯定する。

 

「生まれたファントムは普段は生前の宿主の姿に擬態して人の中に紛れ込んでいる。だけど、姿が同じでも中身は別人だ。宿主の心は肉体と同時に消滅する……」

 

それこそがゲートが背負う宿命。

 

____『僕をグレムリン(その名)で呼ぶな!』____

 

そして、ただ一人の例外を思い出しながらも、晴人は敢えてその事を口にする事は無かった。

 

「物騒な話だな。絶望が死に直結するか……負の感情が引き金になる憑魔に似てる部分もあるが……」

 

「ファントムになってしまったら、その時点で助ける事はできないんだな……」

 

「似てるとは言え単純に憑魔と比較できるものでもないけどな。ファントムになる条件は憑魔化よりも限定的だ。ファントムによって絶望させられなければ滅多な事じゃファントムは生まれないし、あらゆる物に影響を与える憑魔化は別の意味で危険性が高いからな」

 

「成る程、ですがそれならハルトさんはどうやって魔法使いになったのです? ゲートのままでは魔力を行使する事は不可能なのでしょう?」

 

ゲートが魔法使いとなる条件とは何か、疑問を覚えたライラは晴人に問いかける。

 

「絶望の淵に立たされ、体内にファントムが生まれた時、絶望に負けず自分のアンダーワールドの中にファントムを封じる。それが魔法使いになる資格だ」

 

その言葉に一同がハッと何か気がついた表情を浮かべる。

 

「自分の中にファントムって……まさかあの時のドラゴンって!!」

 

「そう、あのドラゴンが俺の中に住むファントムであり、俺の魔力の源だ」

 

『ッ!?』

 

その言葉に衝撃が奔る。当然と言えば当然だ。ファントムという怪物こそが晴人の力の源。

 

それはこの世界で例えるならば憑魔の力で戦っている様なものだ。条件だけで見れば導師よりも寧ろ災禍の顕主に近しい力で彼が人々を助けているというのは、天族であるライラ達にとっても驚くべき事実である。

 

そして、アリーシャはその言葉である事に気がつく。

 

「待ってくれハルト……ファントムを体内に飼うと言う事は、もし君が絶望したら……」

 

「あぁ、俺は死に、あのドラゴンがファントムとして現実に誕生する」

 

ハッキリと、それでいて何でもないことの様にそう言った晴人に、アリーシャは思わず声を荒らげ立ち上がった。

 

「どうして!!」

 

「アリーシャ!?」

 

そんな彼女の剣幕にスレイは思わずたじろぐ。

 

「それが分かっていてどうして力を取り戻したんだ!! あの時あのドラゴンが言っていた『代償』というのはその事だったんだろう!!」

 

「アリーシャ……」

 

「あ……す、済まない……」

 

我を忘れた様に声を荒げた事に気付き、アリーシャは気まずそうに俯く。

 

だが晴人は優しく微笑みアリーシャに語りかける。

 

「いやいいんだ。心配して怒ってくれたんだろ? ありがとな」

 

「だ、だが……」

 

「けど、ヘルダルフに対抗するには今のままじゃダメなんだ。あの時はドラゴンの力で何とか退けられたけど、あいつが本気だったとは思えない。力を失った状態で今度、あの時の戦場みたいに憑魔が溢れ出たらもうどうしようも無いんだ。無茶でもなんでも力を取り戻さないと」

 

そう言い切る晴人だが……

 

「理解できんな」

 

突然、デゼルが会話を遮りながらそう告げた。

 

「この大陸の人間でも無いお前が何故そこまでする? 」

 

「ちょ、あんた! そんな言い方しなくても!」

 

「事実だ。外から来たその男が何故そんなリスクを再び背負ってまで無関係な国を守ろうとする? 魔法使いとしての使命感や義務と言うやつか? 」

 

デゼルは晴人を試すかの様に問いかける。それを受けた晴人は小さく息を吐くと静かに答える。

 

「……使命感や義務感ってのが無い訳じゃない……けど一番の理由はそんな大層なもんじゃないさ」

 

「なに?」

 

「俺が戦うのは、誰かが絶望するのを見たくないから……絶望させられる辛さはよく知っているからな……」

 

「どういう意味だ……」

 

「俺が魔法を手に入れた日、その日俺を含む大勢の人間がファントムを生み出す儀式『サバト』に巻き込まれた。儀式により集められたゲート達は無理矢理絶望させられた……」

 

「なっ!?」

 

「……その方達は?」

 

その問いかけに晴人は首を横に振る。

 

「儀式を生き残ったのは俺ともう一人だけ。他の人達はみんな目の前でファントムになって死んでいった」

 

重々しく告げた後、一呼吸置いた晴人は話を続ける。

 

「確かに俺はこの大陸にとっちゃ余所者だ。そんな俺が戦う理由なんて側から見れば胡散臭いかもしれない。けどな、ヘルダルフが戦場で作り出したあの光景は俺にとっちゃ他人事で済ませられるものじゃないんだよ」

 

静かに、それでいて熱い感情を滲ませながら彼は告げる。

 

兵士達が穢れに飲まれ怪物となっていく光景が、嘗ての光景と重なった。それを他人事として許容する事など彼にはできはしなかった。

 

「それに、勘違いしてもらっちゃ困るけどさ、俺は力を取り戻した事に後悔はしてないよ」

 

「何故だ? 望まずして手に入れた力なんだろ?」

 

「最初はな。確かに俺はなりたくて魔法使いになった訳じゃない。戦い始めた理由に自分だけ生き残った責任や強迫観念みたいなものが無かったとも言わないよ」

 

「あ……」

 

晴人の言葉にアリーシャは晴人が嘗て言っていた言葉を思い出す。

 

_____『俺は進んで導師になったスレイって奴と違って、なりたくて魔法使いになった訳じゃないから』____

 

あの時の言葉の意味を彼女は漸く理解する。

 

彼はなるべくして魔法使いになったのではなく、望まずしてその力を背負わされたのだと……

 

「けど、今はそれだけじゃない」

 

「……え?」

 

始まりは悲劇だった。

 

絶望の中で悲劇を止めるヒーローが現れる事はなく、多くの命が失われていく中で青年は生き残った。

 

そして彼は決意する。

 

希望(ヒーロー)が来ないなら、自分が悲劇から人々を救いあげる希望(ヒーロー)になるのだと。

 

力を手に入れて自惚れた訳ではない、自分が選ばれた存在だなどとは微塵も思わない。

 

それでも青年は決意した。

 

例え分不相応でも……

 

本当は宝石には程遠いガラス玉だとしても、ヒーローという宝石(やくわり)を演じきる事を……

 

そうしてヒーローとしての仮面を被り、青年は戦いの渦中へと自ら足を踏み入れて行った。

 

だが、戦いの中で、望まずして手に入れた筈の力は、いつしか彼という人間の芯へと姿を変えて行った。

 

魔法使い(このちから)があったから救えたものがあった。魔法使い(このちから)に自分の夢を託してくれた奴がいた。魔法使い(このちから)があるから掴めた『希望』があったんだ」

 

絶望の淵で手に入れた力は守るべき人々の為の希望だけでなく、彼自身の希望となっていた。

 

「だから、今は胸を張って言えるよ。魔法使い(これ)が俺の生き方なんだってな」

 

そう言って晴人は作り笑いでは無い本心からの笑顔を浮かべる。

 

「だからドラゴンは俺にとっては絶望なんかじゃない、俺の信じる道を進む為の希望なんだ。魔法使いだったからこそ今だって、俺はアリーシャの力になれてるんだからな」

 

その言葉にアリーシャの中で何かが繋がった。

 

「(あぁ、そうか……)」

 

彼女の脳裏に晴人がサイモンに言った言葉が蘇る。

 

____『例え、『悪』と呼ばれる力でも誰かの為にそれを振るえるのなら『悪』ではない何かになれるかもしれない」____

 

「(あの言葉は晴人自身が掴んだ答えだったんだ……そして彼がそんな生き方をしていたからこそ、私は今スレイ達と共に夢の為に戦える……)」

 

彼から与えられた魔力は、元を辿ればファントムであるドラゴンから生み出された力だ。

 

それでもアリーシャは今、その力を希望に2つの国の戦争を止めようとしている。

 

「(ならば信じてみよう。彼が信じたドラゴンの力が私の希望へと繋がる力になるのだと……いや、違うな。私自身が形にするんだ。晴人から貰ったこの力を『希望』に……ハルトがそうした様に)」

 

そんな想いを胸にアリーシャは胸の内に生じた不安を振り払う。

 

一方で晴人は一同に向き直り口を開く。

 

「ま、こんなところかな。『魔法使い』と俺が『戦う理由』は。要するに、ここがどこかなんて俺には関係ないのさ、助けを求める声があるなら俺は魔法使いとして『最後の希望』になる。それが今の俺のやりたい事でやるべき事なんだよ」

 

晴人は微笑みながらそう告げる。

 

「そんでもって、俺はこれからもアリーシャの手助けをしながらヘルダルフを浄化したいと思ってる。目的は同じだ、改めて、そっちが良ければ力を合わせて一緒に戦って行きたいって思ってるんだけど、どうかな?」

 

その言葉を聞きアリーシャは慌てて立ち上がるとライラ達に頭を下げる。

 

「わ、私からも改めてお願いします! 」

 

そう告げた二人にスレイ達一同は……

 

 

 

 

「オレは良いと思うよ。ハルトとはさっきも一緒に戦った仲だし、力になってくれるのは心強いと思う」

 

「スレイ……!」

 

「はぁ……スレイならそう言うと思ったよ」

 

「まぁ、スレイさんですから♪」

 

笑顔を浮かべながら晴人達の提案を受け入れたスレイを見て、ミクリオとライラもつられて笑みを浮かべる。

 

「いいじゃんか、オレがハルトを信じたいと思ったんだ。そこに根拠なんて必要ないだろ?」

 

「あたしも特に気にしないよ。旅はみちづれなんて言うし、多い方が楽しいっしょ!……そんで? デゼルは?」

 

「……異論は無い」

 

「あんたねぇ……さっきの流れでそれは印象悪いよ?」

 

「知るか……」

 

「じ〜〜〜」

 

そっぽを向くデゼルだが、それに対してロゼはジト目でご丁寧にセルフ効果音付きで見つめる。

それにより暫くして根をあげたのはデゼルの方だ。

 

「クソッ! 言えばいいんだろうが! ……ハルト!」

 

「お、おう……」

 

勢いまかせに声をかけられ怯む晴人だがデゼルは口を開くが……

 

「まぁ……なんだ……悪かったな」

 

突如失速し勢いがなりを潜め、口下手キャラと化したデゼルの口から言葉少な目に、謝罪の言葉が溢れた。

 

「はぁ〜、ないわ〜」

 

「知らん! クソッ! 俺はもう休むぞ!」

 

そう言ってデゼルは空いたベッドにドカリと横になると帽子を普段よりも更に顔を隠すように深く傾けてふて寝を決め込む。

 

「ありゃりゃ拗ねちゃった」

 

更に呆れるロゼ。

 

その時、ガチャリと扉が開く音がする。そちらへ視線を向けるとエドナが無言のまま部屋から出て行こうとしている。どうやら女性陣用にとった部屋に戻るつもりの様だ。

 

「あー、エドナさん?」

 

思わず呼び止めようとするライラだが……

 

「反対したって無駄な流れでしょ? だったら好きにすれば?」

 

冷たく突き放す様な言葉を残し彼女は部屋を去っていく。

 

「エドナ様……」

 

そんなエドナにアリーシャは悲しそうな表情を浮かべる。

 

「あんま気にすんなよ。エドナちゃんは素直じゃないのさ」

 

そんな中、ザビーダがいつもの調子で口を開く。

 

「そういうお前はいいのか? 俺とまだ一緒に旅をしてさ」

 

その言葉を聞いたザビーダは鼻で笑うと迷いなく告げる。

 

「つまんねぇ事を聞くんじゃねぇよ。その程度の事で掌返すなんざありえねぇよ。言ったろ? こう見えても約束に関しちゃ煩い男なのさ」

 

「ふっ……そうかい」

 

問いかけをアッサリと一蹴したザビーダに、晴人はどこか嬉しげに笑みを浮かべる。

 

「そんじゃま、改めて宜しく頼むぜ」

 

「こちらこそ!」

 

そう言いながら、晴人とスレイは握手を交わし笑い合った。

 

 

 

___________________________________

___________________________________

 

 

白い壁、白い床、アリーシャの視界に飛び込んで来たのはそんな見慣れぬ光景だった。

 

「ここは……また夢の世界なのか?」

 

晴人との会話を終えた後、スランジの容体が安定した事を聞かされた一同は改めて休息をとった。

 

思えば険しい崖道を乗り越え、やっとこさ辿り着いたゴドジンでろくに休む事なく、調査と火の試練での戦いを敢行したのだ。

 

夜明け間近とはいえ流石に疲労が蓄積していた一同は睡眠を取り、アリーシャもまたベッドで眠りに就いた筈なのだが、気がつけば彼女はまた見たことも無い部屋の中で目を覚ましたのだ。

 

彼女の周りを白い服を来た女性達が慌ただしく通り過ぎていくが、アリーシャの事はまったく認識していない事から、彼女は自分が以前にも見た夢の世界に再び来たのだと察した。

 

「見たことのない場所だ。という事はこれはハルトの?」

 

晴人の話からアリーシャは、以前に見た夢の光景が晴人の記憶であると事を確信しはじめていた。

そんな矢先、またしても自分が見たことも無い場所に来てしまった事から、彼女はこの光景もまた晴人の記憶によるものなのかと推測する。

 

「慌ただしいな、何かあったんだろうか?」

 

慌ただしく走る白衣の女性達が気になり、アリーシャは後を追う。

 

そして白衣の女性を追って辿り着いた部屋でアリーシャが見たものは……

 

「これは……」

 

ピッ……ピッ……ピッ……

 

規則的に部屋に鳴り響く奇妙な音、部屋の中には2つのベッドがあり、そこには1組の男女が横たわっていた。

 

二人は口には管が繋げられた奇妙なマスクをしており、怪我をしているのか体のいたるところにも包帯が巻かれその姿はとても痛々しい。

 

「この人達は……」

 

アリーシャが困惑した時、彼女の傍を一人の少年が駆け抜け、2つのベットの間に立つと横たわる二人を見て戸惑いを隠さず動揺を露わにし立ち尽くす。

 

だが、その少年を見た女性は本当に……本当に、心の底から嬉しそうな表情を浮かべる。

 

「よかった……あなたが助かって」

 

弱々しい声で少年を見つめる女性。その言葉を受けアリーシャが少年に視線を向けると少年は体の所々を怪我したのか包帯で手当てをされている。

 

おそらく女性は少年と共に何かの事故に巻き込まれたのであろう。

 

医者でもないアリーシャでさえ一目見れば、重体なのは横たわる二人だという事は理解できる。

 

だと言うのに女性はそんな状態であるにも関わらず、少年の無事を心から喜んでいるようにアリーシャには見えた。

 

「お母さん! 死んじゃ嫌だよ!」

 

少年から悲痛な叫びが放たれる。

 

そんな少年に女性は力を振り絞る様に手を伸ばす。少年の手を握る。

 

「忘れないで……晴人。あなたはお父さんとお母さんの希望よ」

 

「ぼくが……希望……?」

 

女性の言葉を反芻する少年に今度は男性から声がかけられる。

 

「そう……晴人が生きていてくれる事が……俺達の希望だ……今までもこれからも……」

 

息も絶え絶えだと言うのに男性もまた少年に手を伸ばしその手を握る。まるで少年に何かを託すかな様に……

 

ビー! ビー!

 

突如。先ほどまで規則的に鳴り響いてた音が変化する。アリーシャにはその意味がわからなかったが、白衣の女性達はそれをみて更に慌ただしく動き始める。

 

「容体急変!」

 

「早く先生を呼んで!」

 

大勢の白衣を着た人々が慌ただしく動き回り、その中でメガネをかけた白衣の女性が少年をベッドから邪魔にならない様に離れさせる。

 

「嫌だよっ!」

 

その光景に少年の口から悲痛な叫びが放たれ……

 

突如、景色が切り替わった。

 

「い、今のは!? 」

 

アリーシャもまた先程の会話の内容に動揺を見せていた。

 

「今の少年が……ハルト? ではさっきの二人はハルトの両親?」

 

混乱するアリーシャ。だが辺りの光景は彼女の気持ちを無視するかの様に動き続ける。

 

「ここは……あの時の海岸?」

 

切り替わった光景には見覚えがあった。以前見た夢の中で訪れた海岸である。あの時は儀式の始まりにより日食で辺りが闇に覆われていたが、まるでそれが嘘の様に晴れ渡っている。

 

「あの時の続き? じゃ、じゃあハルトは!?」

 

そう言って辺りを見回したアリーシャの視線に、ある光景が飛び込んでくる。

 

「いた!ハルト!」

 

サバトの爪痕を思わせる死に絶えた人々の残骸が黒い灰の様に舞う中を、声が届かないと分かっていながらも海岸の岩場に尻餅をつく様に座り込む晴人を見つけ、アリーシャはその名を呼び駆け寄る。

 

「良かった……無事だ」

 

予測通り、この光景が過去の記憶であるならば晴人が死ぬ筈はない事は彼女とて承知だが、それでもサバトの光景は彼女にとって衝撃が大きかったのか、アリーシャは思わず安堵の息をこぼす、

 

だが、当然ながら目の前の晴人はアリーシャの声には反応せず、驚いた表情である一点を見つめていた。

 

「? 何を……?」

 

晴人の視線の先を追い、アリーシャもまたそちらへと視線を向ける。

 

そこには……

 

 

白を基調とし金のラインが描かれたローブとウィザードに似た琥珀色の仮面を纏い、意識を失っている少女を抱きかかえた人物が立っていた。

 

「魔法……使い……?」

 

外観に違いこそあれ、ベルトや指輪などは晴人が纏うウィザードの姿に酷似している。共通点の多い白い魔法使いにアリーシャは思わずそんな言葉を零す。

 

「ハルトが言っていた古の魔法使い? いや、だが指輪のデザインは違う……」

 

晴人から聞いていないもう一人の魔法使いの存在に、アリーシャは困惑する。

 

動揺する二人を余所に、白い魔法使いは少女を抱きかかえたまま晴人の傍まで歩み寄る。

 

「よく希望を捨てずに生き残ったな」

 

白い魔法使いは安心させる様な口調でそう言うと、抱えていた少女を優しく晴人に預ける様に降ろす。

 

「お前は魔法使いとなる資格を得た」

 

白い魔法使いは静かに晴人へ告げる。

 

「魔法……使い?」

 

困惑する晴人だが、白い魔法使いは白色の魔法陣を展開するとそこから何かを取り出し、晴人に投げ渡す。

 

「ファントムを倒す、ただ1つの道だ」

 

晴人に投げ渡された物、それはアリーシャもよく知るウィザードのベルトだ。

 

そして白い魔法使いは晴人が変身に使う赤く輝く指輪を晴人に差し出す。

 

そこで再び景色が切り替わった。

 

 

「また海!? 今度は一体……」

 

切り替わった景色はまたしても海岸。だが先程の場所とは違うのか岩場ではなく砂浜であり、大きな波音と共に海の波がアリーシャの立つ場所まで流れてくる。

 

「!!あれは……」

 

アリーシャの瞳に、砂浜をフラフラと歩く少女が飛び込んでくる。

 

その顔にアリーシャは見覚えがあった。白い魔法使いに抱えられ眠っていた少女である。

 

綺麗な長い黒髪に人形を思わせる様な整った外観をした少女はフラフラと砂浜を歩き続ける。

 

「おい! 待てって『コヨミ』!」

 

そこに少女を追う様にやってきた晴人が少女の肩に手をかけ呼び止めるが……

 

「触らないで!」

 

コヨミと呼ばれた少女は晴人の強い拒絶を見せ、晴人の手を振り解く。そして自身のロングスカートが海に浸かる事も気にせず海に向かい歩き出す。

 

「な、何を!?」

 

困惑するアリーシャ。

そんな彼女を他所に、少女は手にはめられていた魔宝石の指輪をはずすと海に投げ捨てようとする……

 

しかし駆け寄った晴人がその手を掴む。

 

「離して!」

 

叫ぶ少女だが、晴人はその手から指輪を奪い取ると少女の行為を否定する様に小さく首を横に振った。

 

「ッ!!」

 

それを見て少女は服が濡れる事も気にせず浅瀬に膝をつく様に座り込む。

 

「あたしの事は放っておいて!」

 

尚も晴人を拒絶する少女。

 

「あたしなんて……記憶も無ければ肌の温もりも無い……ただの人の形をした化け物よ!!」

 

そんな彼女の言葉にアリーシャは目を見開く。

 

「まさか、彼女がハルトが言っていたサバトのもう一人の生存者?」

 

詳しい事情はわからないが、アリーシャは先程の光景から、コヨミと呼ばれた少女もまた、晴人と同様にサバトで何かを失ったのだと推測する。

 

その時……

 

「『前に進むには今を受け入れるしかないだろ』」

 

晴人はそう言うと海に足を浸け、少女の傍まで歩み寄ると少女と同様に服が濡れる事も気にせずその場に座り込む。

 

「俺たちが何者だろうと、今を生きようぜ」

 

その言葉に少女は俯くのやめ、晴人の方を見る。

 

「今を……生きる?」

 

そう言葉を漏らした少女の手を取り、晴人は少女が投げ捨てようとしていた指輪をその手にはめる。

 

 

「約束する。俺がお前の……最後の希望だ」

 

アリーシャもよく知る晴人のその言葉を最後に、アリーシャが見ていた光景が搔き消える。

 

「(あの指輪は?)」

 

夢の中で最後にアリーシャの瞳に映ったのは、少女の指にはめられた魔宝石の指輪だった。

 

___________________________________

 

「はっ!?」

 

窓から陽の光が注がれる早朝、アリーシャは宿のベッドの上で目を覚ました。

 

「今のは……」

 

鮮明に思い出せる夢の内容を反芻しながらアリーシャは周りを見渡す。

 

ライラ、エドナ、ロゼの3人は未だに夢の中なのかベッドで眠っていた。

 

そんな光景を見て少し落ち着きを取り戻したアリーシャは、自身の指にはめられた指輪に視線を向ける。

 

「この指輪……同じだった」

 

夢の中で現れた『コヨミ』と呼ばれる少女の指にはめられた魔宝石の指輪。

 

それは、今アリーシャの指にはめられた指輪と全く同じデザインのものだったのだ。

 

「あの少女は一体……」

 

魔法使いの真実を知ったアリーシャ。だが、それはまだ操真晴人の人生の入り口に過ぎなかった。




Q コヨミの事は話さないの?
A まだです

以下、最近の出来事

平成ジェネレーションズを親戚の子供5歳の保護者とした一緒に観に行く

フジ「エグゼイドのライダーで誰が一番好き?」
子「レーザー!」
フジ「へぇ。じゃあクリスマスプレゼントは?」
子「レーザーのガシャットとガシャコンスパロー!」
フジ「そっか楽しみだな」
子「うん!」(満面の笑み)

自宅にて、エグゼイド11話視聴
フジ「やべぇよ……やべぇよ……」


クリスマスの朝にプレゼント貰った数時間後にレーザーが、くたばったら完全にファントム案件なんですが……

なおレーザー死亡フラグ一覧
①LV3で一人だけHPゲージあり
②LV3にHP2%以下限定の必殺技あり
③ハンター装備をオモチャで再現しようとするとレーザーの分が足りない
④四人の中でグッズ展開が何かとハブられる
⑤一人だけ今後の強化形態のバレがいつまで経っても来ない


晴人さん助けて!

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