Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜   作:フジ

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フッ!!!!ハッ!!!!!俺!!!!何故更新しない!!!!!(マコト兄ちゃん式自戒)

最近、リア友がシノビやクイズやキカイのネタバレをしてきてどいつもこいつも我が救世主ルートの未来人だと言う驚愕の事実が発覚した今日この頃です

では新年1発目(春)の最新話です

祝え!39話!まさに更新の瞬間である!(ウォズ並感)


39話 堕ちし修羅 後篇①

 

 

 

 

 

 

「うわぁ!流石は古代アヴァロスト時代の遺跡! 造りが凝ってるなぁ!」

 

「イグレインとはまた違ったデザインだね。やはり信仰する対象が違うと遺跡の装飾にも違いが出てくるみたいだ」

 

「壁の模様とかも違うもんな! ほら!あの眼みたいな石像とか!」

 

遺跡の内部を進む一同。

そんな中、スレイとミクリオは相変わらずの遺跡好きの一面を発揮し足を止めてルーフェイの遺跡について語り合っている。そんな2人に釣られて他の一同も足を止める。

 

「相変わらず遺跡絡むとテンションたっか……こっちそういうのさっぱりわからん……略してさぱらん」

 

「そのさぱらんってやつは流行らせたいのか?……というか、普段からあんなテンションのお前がそれを言うのか」

 

「え!? 普段のあたしって側から見るとあんな感じなの!?」

 

「割とな」

 

そんな2人の熱量について行けず引き気味のロゼだが傍のデゼルにお前も普段はあんな感じだろうと言われ驚愕に顔を染める。

 

「まぁ、遺跡云々はよくわかんないけど珍しい遺跡なんだろ? いいんじゃないのか貴重な経験なんだし」

 

「こっちとしてはさっさと終わりにしたいところだけどね……こんなジメジメした場所に長居したく無いわ」

 

「まぁ、そりゃ試練を与える場所が居心地が良いとは俺も思わないけどさ」

 

気怠げなエドナの言葉に晴人も同意する。

確かにあまり経験した事の無い体験をしているが気を張らなくてはいけない場所に長居したいとは思わないのが普通だろう。

 

「兎に角!まずはちゃっちゃっとあのアウトルって人が言ってたアシュラって憑魔を浄化しちゃおうって! 遺跡見て回るならその後でいいっしょ!」

 

「あ! 待ってくれロゼ!確かこの先は!」

 

そう言ってロゼがずんずんと先頭を切って奥へと進もうとする。アリーシャはそれを呼び止めようとするが時既に遅く……

 

ブゥン……

 

「……へ?」

 

等間隔で壁に設置された石造りの眼。

 

その前を通り過ぎた瞬間、眼は青く輝き、次の瞬間一同が青い光に包まれる。

 

そして……

 

「あ……あれ?」

 

「ここは……」

 

「先程の……」

 

気づけば一同は先程アウトルと会話した巨大空洞の場所へと戻って来ていた。

 

「な、何今の!?」

 

事態が飲み込めずに混乱するロゼ。それに対してスレイ達が冷静に返答する。

 

「多分だけど、遺跡の罠……かな?」

 

「恐らくは天響術を用いた転移の仕掛けだろう」

 

「遺跡に忍び込んだ盗賊は奥に進もうとしても気がついたら入り口に戻されたって言ってたもんな」

 

「あぁ、恐らくは今の仕掛けのことだろう。試練神殿に訪れた天族を試す為の天響術による仕掛けだ」

 

一同の言葉にロゼは困ったように頬を掻く。

 

「えぇっと……つまりどうすればいいわけ、それ?」

 

そんな彼女の問いにミクリオが口を開く。

 

「任せてくれ。僕に1つ策がある」

 

__________________________________________

 

そして再び先程の通路に戻ってきた一同。

 

次の部屋へと続く道の壁には先程と変わらず等間隔で石造の眼が設置されている。

 

「あの眼が転移の罠だな」

 

「天響術により生物と同じ眼としての機能を備えてるのだと思います。あの眼の前を通って視認されれば転移の術が発動する様になっているのかと」

 

先程の状況から壁の眼が怪しいと睨んだザビーダとライラ。2人の言う通り壁には等間隔で石造りの眼が設置されており普通に通過すれば罠を起動してしまう事が察せられる。

 

「うーん……前の遺跡は燭台に正しい順番で天響術の火をつけていく仕掛けだったけど、これって水の力でなんとかなるもんなの? あたし、全然どうすればいいのかわかんないんだけど?」

 

そう言いながらロゼは首を傾げる。

他の面子も想像できないのか答えを求めてミクリオに視線を向ける。

 

「まぁ、見ていてくれ」

 

そう言ってミクリオは足元に魔法陣を展開する。

 

「《霊霧の衣》!」

 

その言葉と共に一同の体を巨大な水の泡が包み込む。

 

「これは……」

 

「説明は後だアリーシャ。悪いがこの術はあまり保たない。早く次の部屋へ」

 

そう言ってミクリオに先導され一同は通路を歩き次の部屋へと到達する。それと同時に一同を包んでいた水の泡は音を立てて破裂した。

 

「おぉ!無事に突破できた! ……でも何で?」

 

罠を作動せずに突破できた事に喜びつつもロゼは首を傾げる。

 

「この術は対象を水で覆って水の膜で光の屈折を調整する事で……」

 

そんな彼女にミクリオは得意げに解説を始めるが……

 

「あぁ、そういう細かい理屈はパス。どういう術かだけ解説ヨロシク」

 

「…………」

 

「み、ミクリオ殿! 私は興味あります! 後で是非教えてください!」

 

ロゼの容赦の無い一刀両断に再び項垂れ凹むミクリオ。そんな彼にアリーシャが慌ててフォローに回る。そんな彼女の言葉に気を取り直してミクリオは咳払いをすると説明を再開する。

 

「…………要はさっきの水の膜で覆われると外からはそこに何も無い透明に見える術を作ったんだ。水の膜で覆われてる者同士は見えるように調整してるけどね」

 

「へー、それであの眼を誤魔化した訳か」

 

「その通りだ。けどまだ未完成でね。その場で動かないだけなら長持ちするけど移動してしまうとすぐ壊れてしまうんだ」

 

「成る程、現状では使い道が限られてると言う訳か」

 

「ですが、それであの眼の仕掛けを突破できました。ミクリオさんの日頃の研鑽の賜物ですわね」

 

「いやいや大したもんだぜミク坊! 透明になるなんて男の夢が広がる術じゃねぇの」

 

ミクリオの術に賛辞を送るライラとザビーダ。だが傍に立つ晴人は心なしか白い目でザビーダを見つめる。

 

「……因みにその男の夢ってのは?」

 

「そりゃお前決まってんだろ。女湯に……」

 

ズドォ!

 

次の瞬間、問答無用でエドナの傘がザビーダの笑いのツボに叩き込まれた。

 

「ギャハハハハ! え、エドナ……て、テメェ……ハハハハハハハハハハ!」

 

首を抑えながら笑い転げるザビーダ。

一同はそんな彼を白い目で見つめる。

 

「今のはお前が悪い」

 

「同感ですわ」

 

辛辣な言葉を投げかける晴人とライラだがザビーダは笑いのツボから復帰しながらも悪びれず言葉を続ける。

 

「なんだよ。男としてはむしろ健全だろうが、そういう動機は。俺だって昔は女湯を覗きたい一心で飛ばした風を読む特訓をだな……」

 

「え……そ、そうなのですか? ミクリオ殿……?」

 

「……アリーシャ、頼むからあの男の言う事を真に受けないでくれ。そして僕を同類に見ないでくれ」

 

平静を装おうとしながらもあからさまに少し引き気味で尋ねてくるアリーシャ。そんな彼女にミクリオは再び項垂れる。

 

「……もしかしてアンタも昔は女湯が気になって風を操る訓練を……」

 

「する訳無ぇだろうが!」

 

一方で予期せぬ流れ弾がデゼルを襲う。

そんな混沌とした状況を眺めながらスレイは苦笑いを浮かべた。

 

「あはは……でもミクリオの術で仕掛けは突破できるってわかったしこれで一安心だな」

 

「確かにね。よっしゃ! この調子で速攻で上まで辿り着いちゃおう!」

 

そう言ってロゼは握りこぶしを掲げ、元気に宣言したのだが……

 

 

__________________________________________

 

 

 

 

「あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"イライラするぅぅぅ!!」

 

数時間後、そこには怨嗟の声をこれでもかと漏らして叫ぶロゼの姿があった。

 

「……落ち着け、女が出していい声じゃなくなってるぞ」

 

「だってさぁ!? あれから何回スタート地点に戻されたと思う!? 流石にクドイわ!」

 

頭を抱えて「うがー!」と叫ぶロゼ。他のメンバーも乾いた笑いを溢す。

 

「まぁ確かに……」

 

「少し意地悪に感じるかなぁ?」

 

歯切れ悪くそう答えるアリーシャとスレイだがその言葉にロゼがカッ!と目を見開く。

 

「少し!? こんだけ何回もスタート地点に戻されて少し!? 明らかに仕掛けの配置に悪意があるわ! ただでさえ遺跡の中に封じられてる憑魔と戦ってるのに何が楽しくてこんな繰り返し嫌がらせを受けなきゃならないのさ!? この仕掛け考えた奴、絶対性格悪いでしょ!?」

 

一息にまくし立てるロゼ。その勢いからかなりの苛立ちがわかるがそれも無理もない。

 

数時間をかけ一同がたどり着いた現在いる部屋の場所は目的地までの進行度で言えば7割ほどの場所である。

 

これだけ聞けば時間がかかりすぎると感じるかもしれないが一同がこの部屋に到着するまでに仕掛けに引っかかった回数は両手の指では足りない程だ。

 

最初の転移の仕掛けは一直線の通路の壁に配置されていた事もありミクリオの術が有効な内に一気に通り過ぎてしまえばいいだけだった。

 

だがその後も簡単にとはいかなかった。

 

その後訪れた広い部屋の壁には至る所に転移の仕掛けの眼が配置されていたのだ。

ミクリオの術の効果時間では広い部屋を一気に突っ切る事は出来ず、部屋の中で何回かに分けて術をかけ直す必要があったのだが、なにぶん部屋の壁の至る所に転移の眼があり……

 

眼の仕掛けの範囲外の安全地帯を見誤り術を解除し転移の眼が……

 

術の効果時間を誤り転移の眼が……

 

進んでは戻されを繰り返す苛立ちで凡ミスをして転移の眼が……

 

そんな事を一部屋ずつ何回も繰り返し、しかも進めば進むほど先の部屋は仕掛けの数は増えていく始末。

 

気分はまるで『ふりだしに戻る』のマスばかりの双六である。どう考えても苦行でしかない。

 

比較的温厚なメンバーが多い一同ではあるが流石にスレイやアリーシャですらこの仕掛けの多さに悪意を感じ乾いた笑いを浮かべている。

 

「だが、少しずつ進展はしている。これまでの各部屋の仕掛けの位置は完全に把握したからたとえ戻されてももう仕掛けにかかることは無いだろう」

 

そんな中、ミクリオは冷静に手に持った手帳を見返す。そこにはこれまでの部屋の仕掛けの位置や移動の手順が事細かに書き込まれていた。

 

隣に立つ晴人もその手帳を横から見ながら言葉を零す。

 

「いや、でもまぁ……こうやって見返すと罠の配置に比べれば引っかかった回数は少ない方なんじゃないか? ほら、結構ロゼのアドバイスで回避できた罠とかあっただろ?」

 

「そう言えばそうですわね。ロゼさん本人は一度も罠を作動させていませんでしたし」

 

「ロゼ、結構こういう遺跡の探索の才能あるんじゃない?」

 

晴人の言葉にライラとスレイが同意する。実は晴人の言葉通り、この遺跡の探索では結構な頻度でロゼが眼の配置に気がついて作動を回避できた事があったのだ。

 

その事を賞賛する3人だが……

 

「そりゃまぁ、こういうのは手慣れて……」

 

「……手慣れて……?」

 

「っ! あ! いや! なんでもない! ほらあれだよ! 商人特有の勘ってやつだよ!」

 

「あまり関係無さそうに感じるが、そういうものなのか?」

 

「えっ……そ、そうそう! 実はそうなんだよ!あははははは!」

 

不自然に誤魔化す様に笑うロゼ。それに違和感を覚える一同だが……

 

「……おい、お喋りはそこまでにしてそろそろ行くぞ。このままだと日が暮れる」

 

「あっ! そうだね。ごめんデゼル。それじゃあ行こうみんな!」

 

話の流れを断ち切るデゼルの言葉にスレイは話を打ち切り次の部屋へと歩みを進め、一同もそれに続く。

 

扉を開き次の部屋へと一同は足を踏み入れる。

また転移の眼の仕掛けが無いかと警戒する一同。

 

だが次の部屋には転移の仕掛けも憑魔の姿も無かった。

 

が、次の瞬間……

 

「なっ!? 結界!?」

 

突如として部屋の入り口と出口を封じる様に結界が張られ一同を部屋に閉じ込める。

 

「ちょっ!? 閉じ込められた!?」

 

「罠か!? 」

 

「気をつけてくれ皆! 部屋に閉じ込めてから何かまだ別の罠を作動させてくるかもしれない!」

 

「このパターンは部屋に閉じ込めて水攻めかしらね……」

 

「この流れで不吉な事を言うんじゃねぇ!」

 

警戒する一同、だが部屋の中では一向に何も起こらない。油断せず辺りを見回すが、その部屋にあったのは1つの台座、そして……

 

「……本?」

 

台座の上にポツリと置かれた一冊の本だけだった。

 

それを見た一同はこれまでと違うパターンを訝しむ。

 

「急に別パターン……露骨に怪しいわね……」

 

「罠かな? 迂闊に本を開けたら中に吸い込まれるとか……」

 

「あるわけねぇだろそんな展開」

 

冗談を飛ばすロゼに呆れた様にツッコミを入れるデゼル。

 

「本に吸い込まれるねぇ……どう思うよハルト。魔法使い的にそういう展開は」

 

「少なくとも、俺はこれまで本に吸い込まれる経験はしたことは無いな。石に吸い込まれた事ならあるが」

 

「石には吸い込まれたことがあるのか……」

 

いつもの二人の軽口でのやりとりを聞いたミクリオがその発言に表情を痙攣らせる。

 

「でもまぁ怪しいのは確かだな」

 

「どうする? スルーしちゃう?」

 

ロゼの問いかけにスレイは少しばかり考える素振りを見せ……

 

「いや、読んでみよう」

 

そう結論を出した。

 

「え、でも……」

 

「うん、確かに怪しい。でもこれは試練なんだ。結界に閉じ込められたこの状況で置かれているんだから、ただの悪意じゃなくて何か意味のあることなんだと思う」

 

そう言ってスレイは前に歩み出し台座の上の本へ警戒しながらゆっくりと手を伸ばし、そして掴み取る。

 

「……何も起こらない?」

 

「油断はすんなよ? 本に吸い込まれるってのは流石に無いが、何か術が仕掛けられてる可能性は十分にありえるからな」

 

困惑するスレイにザビーダは警告する。

 

「ライラは何かこの本から感じたりする? ほら、ライラって紙葉で術を使うしさ」

 

「……いえ、現状では何も感じませんわ」

 

「となると、やっぱ本を開いてみるしかないわけか」

 

 

ライラと晴人の言葉にスレイは頷くとゆっくりと本を開いた。そして本の中身を見たスレイの目が大きく見開かれる。

 

「これって……」

 

「っ! どうかしたのかスレイ?」

 

アリーシャが心配そうにスレイへと声をかける。

 

「これ……日記だ」

 

「え? 日記……?」

 

「なんでそんなものがこんなとこにあるわけ?」

 

戸惑う一同。それに対してスレイは開いたページに目を走らせその内容を声に出して読み上げる。

 

/////////////////////

 

––––『コモン歴二十二年、緑陽の月』––––

 

日記を書くなんて今までのオレの習慣には無かったが、今日は驚くべき体験をした。恐らくはオレの人生最大の驚きだろう。毎日の出来事を書き残す気にはならないが、こんな重要な出来事なら記念に記録に残すのも悪くないと考え 。今日から大切な出来事は記録していこうと思う

 

今日、オレの前に水の天族が現れ、導師にならないかと勧められた。天族が視え、その声を聴けるオレにはその資質があるのだという……だが、ただの刀鍛冶のオレが導師になれるのだろうか……?

 

天族の彼が言うには昨今、被害をもたらしている災厄は人々の負の心、穢れが生み出す憑魔によるもので、それを止める事ができるのは天族と契約した導師だけらしい……

 

オレの身の回りにも災厄で苦しむ人、大切な人を失った人は多い……もし、オレにその人達を助ける力が眠っているのなら……

 

/////////////////////

 

「これって導師の日記!?」

 

「うん。書いてある暦から見るに何百年も前、まだマオテラスが大陸の天族達を陪神にして今より多く導師が存在していた頃だと思う」

 

パラパラとスレイは日記のページをめくっていく。

 

「でも、日記の状態はあまり良くないみたい」

 

スレイの言葉に晴人達は本を覗き込む。スレイの言う通り殆どのページは既に劣化し字も読めたものではない。持ち帰り詳しく調べれば読むことも可能なのかもしれないが、現状では優先すべき事とは言えないだろう。

 

「しっかし、そうなってくると意味深だな。露骨過ぎるくらいだぜ」

 

「確かにな。そもそもアシュラって憑魔を浄化する事以外にアウトルが俺達の何を試そうとしているのかわからないからな」

 

疑念を覚えたザビーダと晴人。一方でスレイはパラパラと読めるページが無いかページをめくり続ける。

 

そんな彼にミクリオが声をかける。

 

「やはり、同じ導師の日記となると気になるのかスレイ?」

 

「……うん、昔の歴史にも興味はあるけど、この人は導師として生きてどんな道を歩んだんだろうな……って思ってさ」

 

そう言いながらページをめくり続けたスレイの手が止まる。

 

「あっ、ここは読める」

 

/////////////////////

 

–––––コモン歴二十五年、賢者の月–––––

 

導師になって三年。この活動は人生を賭けるに足るものだった。

 

憑魔との戦いは命がけで厳しいものだ。しかし、その戦いの先には人々の笑顔がある。そして共に戦う天族の友を得る事が出来た。今なら三年前のオレの選択は正しかったのだとハッキリと断言できる。

 

月日が流れるのも早いものだ。3年前にアイツの誘いに乗り契約したのがつい昨日の様に思える。最初の頃はアイツののらりくらりとした態度とソリが合わずに導師になった事を後悔した日もあったが、そんなアイツも今となってはオレのかけがえのない友だというのだから不思議なものだ。

 

だが、穢れは人の心より果てしなく生まれる。なんとかしなければ。導師の数は決して多くはない。オレはもっと多くの人を救いたい……

 

人々の笑顔を守りたい。

それがオレとアイツの夢だ。

そのためにもっと強くならなければ……

 

/////////////////////

 

 

 

 

「優しい方だったのですね……この日記の導師の方は」

 

「天族が同じ夢を持つ友達か……なんかスレイとミクリオみたいだね」

 

そう言ったロゼの言葉にスレイは少し照れながら頰をかく。

 

「そうかな? でも、少し嬉しいかも。今から何百年も昔にもオレとミクリオみたいな関係の人がいて、それをこうやって知る事ができたのは」

 

「『天遺見聞録』に書かれていた仮説の立証にも繋がるしね」

 

自分のことの様に嬉しそうに語るスレイとそれに賛同するミクリオ。だが晴人はミクリオの口から出た言葉に首を傾げる。

 

「『天遺見聞録』? なんだそれ?」

 

そんな晴人の疑問にアリーシャが口を開く。

 

「『天遺見聞録』というのはこのグリンウッド大陸の歴史について様々な事が記された書物だ。著者は不明だが、人と天族の歴史を調べる為に大陸の各地の遺跡を巡り、古代の謎に対して様々な仮説を記しているんだ」

 

「へぇ、そんなもんがあるのか」

 

「あぁ、天族の存在や導師の伝承についても記されていて、私がスレイ達に出会った切っ掛けもその本に記された伝承の地『カムラン』を探していたからなんだ」

 

「アリーシャも読んでたって事はその本は結構有名なのか?」

 

その言葉に今度はロゼが反応する。

 

「出回り始めたのは20年くらい前かららしいよ。いろんな人に読まれて有名っちゃ有名だけど歴史書というよりかは御伽噺とか観光ガイドみたいな認識されてるかなぁ。各地の遺跡の詳細はかなり正確で学者さんたち的にも需要あるみたいだけど基本的には導師や天族に関しての内容だからねぇ」

 

歴史には興味は無いが商売絡みの情報収集は欠かさないのかロゼが商人目線からの情報を語る。

 

「まぁ普通の人間からすれば導師や天族はついこの間までお伽話扱いだった訳だからな。そうなるのも無理もないか」

 

「オレも昔、イズチで暮らしてた時にジイジからこの本を貰ってさ。本に書かれた、『神話の時代、人は天族を知覚し、共に暮らしていた』って仮説から歴史に興味を持ったんだ」

 

「それ以来スレイはずっと天遺見聞録を持ち歩いてるからね。渡したジイジが逆に呆れるくらいさ」

 

「ん? イズチってのは天族の村なんだよな? そんな所にも天遺見聞録があったのか? 大昔からある本とかじゃなくて20年前から出回り始めた本なんだろ?」

 

スレイとミクリオの言葉に疑問を感じた晴人は二人に問う。

 

「ジイジは詳しく話してはくれなかった。この本を書いた人もオレ達みたいに天族を知覚できる人だったのなら、この本を書く過程でジイジやライラと知り合っていてもおかしくは無いと思うんだけど……」

 

なんとも言えない表情でスレイは視線を横へ向ける。それを追う様に一同の視線がそちらへと向く。

 

「…………」

 

その先ではライラが沈痛な表情で口を噤み俯いていた。

 

「(これまでもライラがこんな表情をする事は何度かあった……やっぱり何かあるって訳か……)」

 

晴人は……否、この場にいる皆が薄々勘付いてきてはいた。

 

スレイより以前の最後の導師が姿を消したのはいつか?

 

ペンドラゴから消えたマオテラスの契約が解除されたのはいつか?

 

そして今語られた天遺見聞録が出回り始めた時期はいつか?

 

「(20年前……そこに何かある……そしてライラはその何かを少なからず知っている)」

 

そんな一同の考えを場の空気から感じてかライラはおずおずと口を開く。

 

「あの……私は……」

 

暗い表情でゆっくりと言葉を絞り出すライラ。

だが、そんな言葉を遮り晴人はスレイへと声をかける。

 

「ま、わかんない事を今気にしてもしょうが無いだろ。それより、その日記まだ読めるとことか無いのか?」

 

「え……あの……」

 

追及を免れないと思っていたのかライラは唐突に話を中断した晴人の言葉に目を丸くする。

そんな彼女に晴人はさらりと、なんて事も無い様に返答する。

 

「別に無理に話さなくても良いよ。前々から思ってたけど、そんな表情してる時点で訳アリなんだろ? 俺もスレイ達もライラが悪意があって何かを隠しているなんて思っちゃいないさ」

 

少なくとも晴人には彼女の表情を見て悪意や保身で何かを隠しているとは思えなかった。

何より悪意を持った者ならば今の様な表情などおくびにも出さずに隠し通そうとするだろう。

 

「晴人の言う通りだよライラ。それにほら、オレって謎は自分の手で解き明かしたいしさ」

 

「またスレイは……まぁ確かに謎を解き明かす楽しみが探求の醍醐味ではあるとは思うけどね」

 

晴人の言葉に続く様にスレイとミクリオは冗談混じりで笑いながら答える。そんな二人に苦笑しながらロゼとアリーシャも続く様にライラへと語りかける。

 

「遺跡好きコンビの意見はさぱらんだけど、あたしもあんま気にしてないからさ、ライラも理由はわからないけど毎回毎回そんな申し訳なさそうにする必要は無いと思うよ?」

 

「私も同意見です。ライラ様の過去に何があったのか知らない私が言うのも差し出がましいのかもしれませんが、あまり思い詰めないでください」

 

「ま、そう言うことだからこの話はここでお終いって事で、ほらスレイ、続き続き」

 

「あ、わかった! えーっと……」

 

再びペラペラと日記をめくり始めるスレイ。晴人達もそれを後ろから覗き込み見守り始め、話は打ち切られ、先ほどまでの重い場の空気は霧散する。

 

「…………私は」

 

そんなスレイ達を離れた場所で見守りながらライラの口から小さく声が溢れる。その声にはやはりどこか自責の念が込められていた。

 

「辛気臭い顔してんじゃないわよ。チャラ男2号達に気を使わせてたんだからここは切り替えておきなさい」

 

「エドナさん……」

 

「エドナちゃんに賛成。ま、どのみちいつかは答えに辿り着くんだ。アイツらがああ言ってくれたんならお前さんがするべき事は、いつか来る真実に辿り着く時に腹を括っておく事だろうさ。過去は兎も角、今のお前さんはスレイのパートナーなんだからな」

 

「ザビーダさん……はい、その通りですわね。私も本当の意味で20年前の事から前に進める様にならなければ……」

 

ザビーダの言葉を受け、ライラの瞳から哀しみの色が消え、決意の火が灯る。

 

「ふん……どいつもこいつも随分と甘い事だ」

 

「ロゼの奴相手にはだだ甘なお前さんが言うかね……」

 

「ふふっ……デゼルさんもお優しいですからね」

 

「……チッ」

 

「皮肉キャラぶるつもりが順調にむっつりキャラの道を進んでるわねアンタ」

 

「……うるせえ」

 

少しばかり毒づくデゼルだがザビーダとライラの二人にさらりと受け流され逆にカウンターをもらいばつが悪そうに舌打ちし、終いにはエドナにトドメを刺され最後の一言を境に黙り込んだデゼルにザビーダとエドナは意地の悪い笑顔を向け、ライラはその光景に苦笑する。

 

そんな時……

 

「これって……」

 

先程まで楽しげに日記をめくっていたスレイからどこか困惑した声音が漏れ天族四名はどうしたのかとスレイに視線を向ける。

 

/////////////////////

 

––––コモン歴二十八年、車輪の月––––

 

ダメだ……日に日に穢れが世を覆っていく。浄化しても浄化しても人の心から穢れは新たに生み出され続けていく……

 

人の心から生まれた穢れは災厄を呼び、災厄は人の心に新たな穢れを生む。やがてその穢れは更に大きな災厄となり、さらなる大きな穢れを人の心にもたらしていく……

 

穢れにより国々は疲弊し荒み、日に日に衝突を強めていく……このままでは開戦も時間の問題だ……そしてそれは更なる災厄を呼ぶだろう……

 

だが、オレは災厄も戦争も止められない……このままではダメだ……導師なのに力が足りないのだ……

 

穢れを祓うには強い力が必要なのに……

 

 

 

/////////////////////

 

「…………」

 

「スレイ……」

 

そのページを読み終えたスレイは沈痛な面持ちで手に持った日記のページを見つめ続け、傍のミクリオはそれを心配そうに見守る。

 

そんなスレイに対してザビーダが口を開く。

 

「導師の人手不足に関しては数百年前も大して変わらなかったからな。ましてや導師ってのは基本的に人間社会への過度な干渉を禁じられてる」

 

「災厄を一時的に浄化して止めようが人間社会の状況が改善されなければ穢れはまた生み出され続けてイタチごっこって訳か……」

 

「うーん……確かに力を持つ導師が人間社会に強く干渉するのは危険って掟は理解できない訳じゃ無いけどさ。そこはもうちょい柔軟にってあたしとかは思っちゃうなぁ。まぁ、それをしてたらしてたで何か別の問題が起きてたかもしれないから結果論でしか無いけどさ……」

 

ザビーダの解説にロゼはどこか釈然としなそうな口調で自分の意見を述べる。

 

「まぁ、そういう意見もわかるがね。導師の人間社会への干渉が禁じられてたのにも色々理由があんのさ」

 

ザビーダのその言葉に天族全員の表情が険しくなる。軽い口調で話しているザビーダですらその表情はどこか険しい。

 

「もしかして、それで一度何かあったの……?」

 

一同の反応からロゼは何かを察し、問いかける。

 

「そんな所だ。調べるってんなら止めやしないが、俺からは詳しい事は話せないぜ。天族の中ではその事を話すのは今は堅く禁じられてるんでな」

 

そう言って口を閉ざすザビーダ。お喋りな彼がそこまで言うということは余程の事であるのは理解できるのかロゼもそれ以上の追求はしない。

 

一方で晴人とアリーシャは日記を見つめるスレイへと声をかける。

 

「スレイ……それ以上読むのは……」

 

「あぁ、正直あまり良い予感はしない。日記の中身も……スレイにとっても」

 

同じ境遇である導師の日記。スレイにとって共感できる立場の人間の手記であるからこそ、これから先の内容は場合によってはスレイの心に影響しかねないと危惧してか、2人は日記を読むのをやめる事を提案するが……

 

「ありがとう……けど、この日記が導師の試練と関係があるかもしれない以上、やめる訳にはいかないよ。それに、普段から歴史の真実を知りたいなんて言っておいて自分に都合が悪くてなったら目をそらすなんてオレはしたくないからさ」

 

スレイはそう言って微笑むと日記をめくる手を進めていく。

 

「あった! コモン歴31年……さっきのページから3年後の手記だ」

 

 

 

/////////////////////

 

––––コモン歴三十一年、玉杯の月––––

 

ついにッ!……ついに輝光銀が手に入ったッ……!

 

これで、手に入る!俺に欠けていたもの……全ての憑魔を……災厄を斬り伏せる力を!

 

これで剣を打とう。オレに足りない力を埋め合わせるために

 

力を……力を……力を……ひたすらこの想いを念じて……

 

全ては……友との……アイツとの夢の為に……

 

 

/////////////////////

 

「剣を打つ……刀鍛冶だった自身の技能を活かして、強力な武器で足りないものをカバーしようとしたって訳か……」

 

「ま、妥当な判断かもな。浄化の力が無かった千年前は、対魔士が特殊な技法を施された武器で憑魔を殺していた。先天的な能力が足りないなら他で補助すりゃいいってのは人間の昔からの知恵だからな」

 

「なら輝光銀ってのは?」

 

日記に書き記されていた言葉に縁の遠い晴人がザビーダに問いかける。

 

「ミスリルの事さ。伝説的な稀少な金属でな……強度で言うなら最高クラスなんだが、これがまぁ見つからなくてな……」

 

「じゃあそれを手に入れたって事は……」

 

「執念……ってやつだろうな。少なくとも導師の活動の片手間で探せるような代物じゃ無いはずだぜ」

 

「けどそれって……」

 

「手段が目的にすり替わった本末転倒ってやつね……守る為の力を求めるあまり守る事を疎かにしたって事よ」

 

バッサリと冷たく評したエドナ。それに対してアリーシャは複雑そうな表情で言葉を零す。

 

「ですがエドナ様、目的である剣さえ作る事ができればこの方も……」

 

その力で導師としての役目に再び従事するのでは?そう考えるアリーシャだがエドナはどこか遠い目で言葉を紡ぐ。

 

「……そんな簡単に済めば良いけどね」

 

そんな諦観した彼女の声を聞きながらスレイは続く解読可能なページに目を通す。

 

 

/////////////////////

 

––––コモン歴四十二年、桜花の月––––

 

ついにできた。

 

我が二十年の悲願を込めた剣が。この剣があれば斬り倒せる。

 

穢れを……憑魔を……全ての災厄を……

 

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「ちょい待ち!? 11年も剣を作ってたの!?」

 

日記に記された歴にロゼが思わず驚きの声を漏らす。

 

「そんな事だろうとは思ってたわよ」

 

そんなロゼの反応を他所にエドナは小さくため息を零す。そんな彼女に晴人が問いかける。

 

「……どうしてエドナちゃんはそうなると思ってたんだ?」

 

「1000年前にマテオラスが降臨してから程なくして、この大陸は大規模な地殻変動によってその形を大きく変えたわ。そしてその過程で文明は衰退し多くの技術も失われた。ミスリルによる武器の製法、憑魔に対する武器の製法もその1つよ。それをもう一度1から再現するなんて簡単な事じゃないわ」

 

「むしろ11年で完成できたのが驚きなくらいですわ……この方にはそれ程の強い想いがあったという事なのでしょうが……」

 

「それでもエドナの言う通りになった訳か……守る為の力を求めて守る事を疎かにしてしまった……難しい話だな……」

 

日記の持ち主の人々を守りたいという正義感は本物だったのだろう、だからこそ力に囚われてしまった事に、この場にいる皆がやりきれない表情を見せる。

 

「それにしてもこの日記って結局なんだったの?」

 

どこか重い空気を感じロゼは自ら話題を振る。

 

「力の試練はアシュラという憑魔を浄化する事、だとすると、この日記は心の試練に関係しているのかもしれないけど……」

 

「色々考えさせられる内容ではあったけど、流石に日記読んだだけで心の試練は合格って事は無いよね……」

 

日記と試練の関係について考える一同だが明確な答えには結びつかない。

 

「…………」

 

そんな中、先程から口数の減ったスレイは手に持った日記のページをゆっくりと、恐る恐るめくった。

 

そこには……

 

「ッ!? ……なんだコレ……」

 

「ん? どうしたんだスレイ」

 

大きく身を見開き震える声がスレイの口から溢れる。その反応に気づいたアリーシャとミクリオもどうしたのかと日記を覗き込むが……

 

/////////////////////

 

奪われた。奪われた。奪われた。奪われた。奪われた。奪われた。奪われた。奪わレた。奪ワれタ。奪ワレた。奪わレタ。奪ワレタ。ウバワレタ。

 

オレの剣。オレの生涯を賭けて作り上げたオレの剣

 

アイツは裏切ッタ。シンジテいタノに

 

オレのユメを。オレの生涯を。オレのヤクソクをウラギッタ

 

許さない。許さない。許さない。許さない。許サない。許さナい。許サナい。許さなイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ

 

取りモドす。カナラズ。

 

オレの剣……剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣 剣______________

 

 

/////////////////////

 

 

「これは一体……」

 

日付も書かれていない明らかに異常な手記。

さらに次のページをめくるとそこにはもう完全に人の言語ではない殴り書きされた文字の様な何かがページを真っ黒に染め上げている。

 

得体の知れない狂気にアリーシャはおもわず背筋に冷たいものを感じ身震いする。

 

そしてそれは他の面々にも言えた事だ。

 

「奪われた……? どういう事だ……?」

 

「この手記からして精神的にかなり追い詰められている様です……恐らくは穢れに……」

 

悲しげな表情でそう告げるライラ。そして次の瞬間……

 

「えっ……結界が……」

 

突如として道を封じていた結界が解除される。

 

「えっ? 何? なんで解除されたの? あたし達何もそれっぽい事してないよね?」

 

「やった事と言えば日記を読んだくらい……つまりはそういうこったろ」

 

「この日記を読み切る事が結界の解除条件だったっていうのか?」

 

「けど、なんで!? 結界まで張ってなんであたし達にこれを読ませるのさ!? 流石に悪趣味にも限度ってもんがあるでしょ!? 」

 

書かれた日記の内容には同情する。だからこそそれをただ読ませるだけ読ませるなだけのこの結界の仕掛けにロゼは嫌悪感を感じ始めていた。

 

そして彼女の言葉に共感してか無言ながら一同の表情は険しい。

 

その時……

 

『グギャァァァァァァァァァァ!!』

 

重苦しい静けさを突如として断末魔が切り裂いた。

 

「な、なんだ!? 叫び声!? 」

 

「真上の部屋からか!」

 

決して遠くない位置、恐らくは真上の部屋から響いたその叫びに一同は素早く反応する。

 

「とにかく行ってみよう! もしかしたら誰かが襲われているかもしれない! 良いな? スレイ!」

 

素早く判断を下す晴人だが……

 

「…………」

 

「スレイ?」

 

「あっ! ごめんハルト!急ごう皆!」

 

スレイの反応が無い事に訝しむ晴人だがスレイは少し遅れて反応すると一同に指示を出し上の階に向かうべく駆け出していく。一同もそれを置い駆け出すが……

 

「……気付いているかハルト?」

 

上の階へと続く道を駆け出した一同の最後尾でザビーダは隣を走る晴人に声をかける。

 

「スレイの事か?」

 

「あぁ、他の若い連中も動揺はしていたが導師殿が一番それが顕著だ」

 

「無理も無いだろ……同じ立場だった人間の記録だ。あれで気にならない方が嘘だ」

 

「俺様だってそう思うさ。それが悪いと言うつもりもねぇよ。だが間が悪いのも確かだ。アシュラとの戦いに参加できるのは……」

 

「みなまで言うな。もしもの時は俺がフォローするさ」

 

「ハッ……そうかい。だが気をつけろよ。恐らくは今回の試練……かなり悪趣味なものになるぜ……」

 

「……わかった。肝に銘じておくさ」

 

そんなやりとりを繰り広げる内に一同は最上階の部屋へとたどり着くが……

 

「チッ……結界か……」

 

最上階の部屋への入り口には結界が張られアウトルが指定した以外の面々の侵入を防ぐ。

 

「大丈夫!ここから先はオレ達が!」

 

「行って参ります!」

 

「皆様、お気をつけて」

 

「調子に乗って足を引っ張んなよロゼ!」

 

「やかましいわ! そこであたしの活躍を指咥えて見とけ補欠!」

 

「ま、頑張れば?」

 

「いい加減な応援だな……」

 

言葉を交わしながらスレイ、アリーシャ、ロゼ、ミクリオは部屋へと駆け込んで行く。

 

続く様に晴人も部屋へと駆け込むが……

 

「ッ! ……これは!」

 

大きく開けた円形の広い部屋。大量の憑魔の死骸が辺り一面に転がっていた。

 

それ以外にも動物の骨、鎧など穢れが抜けきり憑魔となる前の宿主のものと推測されるものも転がっており、多くの憑魔がこの部屋で殺された事を暗示している。

 

 

『憑魔……斬る……斬る……斬る!』

 

天井へと届きそうなほどの巨漢。紫の肌に憤怒の表情を浮かべ、人ならざる証として筋骨隆々の腕が6本。その手には一対の剣、ハンマー、メイスが握られている。

 

その憑魔こそ……

 

『スベテを斬る!』

 

憑魔アシュラ。

 

その怒りに満ちた瞳が晴人達へと向けられた

 

 

 

 

 





あとがき

2018年12月フジ「本当なんだ! ジオウに出てくるディケイドはベルトがバージョンアップしてプレバン案件だし、冬映画はWのレジェンド枠が風麺のおっさんで電王からは良太郎が出るんだ!」

2018年9月フジ「ライアードーパント乙」


数カ月後

2019年3月フジ「本当なんだ!ジオウにパワーアップした海東が客演するし、東映が2022年から仮面ライダーシノビの映像を3話分手に入れて配信するんだ! あとヤクザ脚本の龍騎スピンオフが配信されて蓮がゲイツの服を着てツイッターに投稿するんだ!」

2018年12月フジ「監察医乙」



いやホント今年のライダーの密度おかしいわ

それと総合評価3000超えありがとうございます
これからも励みにして頑張りたいと思います

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