Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜   作:フジ

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フッ!!!!!ハッ!!!!!!
あけましておめでとう!!!!!!

お年玉どころかバレンタイデーまでもつれ込みましたが新年初投稿です


43話 兄妹 中篇

神殿内に響いた叫び声。

 

自分達以外の人間は居ないはずの試練神殿で聞こえたその声に一同は驚きつつも、その声が響いた方向へと駆ける。

 

「こっちで良いのデゼル!?」

 

「音の察知には多少は自信がある。間違いない」

 

デゼルの案内に従い神殿の南東部、地下へと続く階段を一同は駆け下りる。

 

「っ!アレは!」

 

階段の先に、たどり着いた地下の一室。

高さ、広さ共にしっかりとしており、製作にはかなりの労力と技術が必要となる事が伺える場所だが一同の意識はそこに向くことはなく目の前の状況へと注がれる。

 

「っ!?子供!?」

 

人里から遠く離れた果て地の神殿。そこに不釣り合いな幼い少女がそこにいた。

 

しかも複数体の憑魔に囲まれてだ。

 

少女を囲む憑魔は三体。

巨大な岩の塊が人の形を形成し、その右手は不釣り合いなバランスと言える程大きく鋭く尖った岩がまるで相手をすり潰すハンマーの様になっている。

 

「ロックジャイアント!岩そのものが穢れにより憑魔化したものです!」

 

「まずい!あの娘が狙われてる!」

 

すぐ様対応しようとする一同だがロックジャイアントの一体はその右腕を少女へと容赦なく振り落とす。

 

少女の身体など簡単にすり潰すであろうその一撃が少女へと叩き込まれるその瞬間───

 

『グォオッ!?』

 

地面が隆起し振り下ろされる右腕を受け止める。

 

【コネクト! プリーズ!】

 

その隙を逃さず晴人は展開した魔法陣から空間を繋ぐコネクトで少女をすぐそばへと引き寄せる。

 

「大丈夫!?もう安心だからね!」

 

「この子はお任せください」

 

「みんなはあいつらを!」

 

それを見たロゼ、ライラ、ミクリオは少女を守る様に前に立つ。ライラとミクリオは敵の属性を考慮すれば相性の悪い自分たちが少女の護衛を担当した方が良いという考えなのだろう。

 

「ナイス!エドナちゃん!」

 

ロックジャイアントの一撃を止めた人物。エドナを称賛しながら晴人はウィザードライバーを操作し指輪をかざす。

 

「変身!」

 

【ランド!プリーズ!ドッドンッドドドドン!ドンドッドドン!】

 

「悪いが子供の前だ。一気に決めるぜ」

 

変身を終え、怯える少女の事を考えた晴人はすぐに決着をつけるべく躊躇なくドライバーへ指輪をかざす。

 

【チョーイイネ!キックストライク!サイコー!】

 

「ハァッ!」

 

右足へと地属性の魔力を纏わせウィザードはロンダートで空中へと跳躍する。

 

【ドリル!プリーズ!】

 

「ダァァァァァ!」

 

『グォオ!?』

 

指輪の力で更に高速回転を加えたキックがロックジャイアントへ迫る。ロックジャイアントは巨大な右腕でそれを防ごうとするが勢いを殺す事は出来ず、ウィザードのキックは右腕を貫き胴体にも大穴を開ける。

 

「「ハクディム=ユーバ!(早咲きのエドナ)」」

 

いち早く一体をダウンさせたウィザードに続きエドナの神依を纏ったスレイとアリーシャが残る二体へと肉薄する。

 

「裂震天衝!」

 

「「吹き飛べ!舞うは黄砂!」」

 

地の魔力を纏った強烈な斬り上げと手甲によるアッパーカットがロックジャイアントを宙に舞わせ轟音を立ててダウンさせる。

 

「トドメは任せな!」

 

「まとめてくたばりやがれ!」

 

その隙を逃す事なく2人の風の天族は魔法陣を展開し詠唱を終える。

 

「《幻影、双霊、踊ろうか!ビジュゲイト!》」

 

「《弄り合え、罵り合え、下衆共!ビジュゲイト!》」

 

強烈な二つの真空派が交差しダウンしたロックジャイアントを纏めて斬り刻む。

 

ロックジャイアント達はなす術なく、元のなんの変哲も無い岩へとその姿を変える他なかった。

 

─────────────────────

 

 

「ふぃー……」

 

「とりあえずこの場はなんとかなったか」

 

「そうだ!あの娘は!」

 

憑魔の浄化を終えた一同は先ほどの女の子がどうなったのかと、ライラ達の元へと駆け寄る。

 

するとそこには壁に寄りかかり目を瞑る少女の姿があった。

 

「ライラ!この娘の怪我は……」

 

「大丈夫です。大きな怪我は見られませんわ。極度の緊張状態から気が抜けて意識を失ってしまったのでしょう」

 

「そうですか……無事で良かった」

 

安堵の声を漏らすアリーシャだが、そこにロゼが疑問の声をあげる。

 

「それにしても、なんでこんな所にこんな小さな子がいるんだろう?」

 

「ヴァーグラン森林で出会った戦災孤児の子供達とは違うよな……」

 

「だろうな。あっちと違って、この神殿は人里から離れ過ぎている。こんな場所で小さな子供が生活できるわけがねぇ」

 

以前ラストンベルに立ち寄った際の事件を思い出す晴人だがザビーダは神殿の立地も含め、その可能性は低いであろうと否定する。

 

「捨てられた……という事なのでしょうか?」

 

「こんなところに一人でいる以上、誘拐って線は薄いだろうな。可能性としてはそれが一番高いかもな……」

 

災厄の時代、生活が困窮する中で口減らしで子供を手放す事があるのは一同もフォートンの件から理解している。

 

それでも、やはりやりきれないのか一同はなんとも言えない苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべる。

 

「とりあえずこの子をどうする?流石にこの子を連れたまま試練続ける訳にもいけないでしょ?」

 

「そうだな。試練は中止して各地に駐屯しているローランス軍の元まで連れて行って保護してもらう他ないと思う。エドナ様もそれで宜しいでしょうか?」

 

アリーシャは確認を意を込めてエドナへと問いかける。

話を振られたエドナは小さくため息を吐く。

 

「しょうがないわね。子供のお守りなんてしながら試練なんて面倒なだけだし」

 

面倒そうな物言いであるが子供の安全を考慮してかエドナもアリーシャの言葉に賛同する。

 

そこに───

 

「ぅん……ここは……?」

 

「っ!よかった!目が覚めた」

 

気を失っていた少女が目を覚ました。

 

少女は困惑しながら立ち上がり周りを見回す。

 

年齢は10歳ほどだろうか、薄い青髪を大きな赤く丸い特徴的な髪飾りで束ね、ツインテールにしている。

 

「あ、あなた達は……?」

 

少女は髪と同じ色の瞳を動揺で揺らしながらスレイ達へと問いかける。

 

「えぇっと……オレ達は」

 

「俺達はこの遺跡の調査を国から依頼されてな。それで調査をしていたら君を見つけたんだ」

 

導師の試練の話をされても目の前の少女には伝わらないだろうと晴人は不要な情報を省いて少女に説明する。

 

「調査……ですか?」

 

「あぁ、おっと!自己紹介が遅れたな。俺は操真晴人。よろしくな、お嬢さん」

 

そう言って安心させるように微笑む晴人。それに続きスレイ、ロゼ、アリーシャ、ライラ、ミクリオも名前を告げていく。

 

「あ、わたしはアミィと言います!えぇっとそれで……あちらの方達はなんと仰られんでしょうか?」

 

礼儀正しい口調で名前を告げた少女、アミィ。

アミィはおずおずと躊躇いながらエドナ達へと視線を向ける。その言葉に一同は目を丸くする。

 

「君、見えるのか?」

 

「見える……?」

 

天族が見えている事に驚く一同だが当のアミィは言葉の意味がわからずキョトンとしながら首を傾げる。

 

「なんでもねぇよお嬢ちゃん。紹介が遅れたな。ザビーダだ。よろしくな」

 

「……デゼルだ」

 

おそらく少女は生まれつき霊応力が高いのだろう。だがそれを説明してもしょうがないとザビーダとデゼルはすぐさま自己紹介を終える。

 

「ザビーダさんにデゼルさんですね……えぇっとそれで……」

 

アミィは困ったように最後の一人、そっぽを向き広げた傘をくるくる回すエドナへと視線を向ける。

 

「あぁ、あっちはエドナちゃんって言うんだ。心配すんなよ少し人見知り恥ずかしがり屋なだけで本当は寂しがりやで夜は人形を抱かないと眠れない様な──グェッ!?」

 

「適当な事言ってんじゃないわよ」

 

ペラペラと揶揄うような言葉を発していたザビーダの尻にエドナの傘が叩き込まれザビーダから潰れたカエルの様なうめき声が漏れる。

 

「え、えぇっと……」

 

「あ、気にしなくていいぞ。いつもの事だから」

 

「とりあえずここを離れよう。この遺跡は安全とは言えないから保護してくれる場所まで連れて行くよ」

 

寸劇にスルーを決めつつ晴人とスレイはアミィをこの場から避難するよう優しい声で説明するが……

 

「避難……あ、あの!」

 

「ん、どうした?」

 

「ここでお兄ちゃんと友達を見ませんでしたか!?」

 

「……ッ!」

 

放たれたアミィの言葉に一同は目を丸くした。

 

そしてエドナもまた少女の放ったある言葉に動揺の色を見せる。

 

「アンタ……お兄さんがいるの?」

 

人間相手には距離を置く事の多いエドナが珍しく進んで問いかける。

 

「あっ……はい!私、行方不明になった兄と友達を探してて!」

 

「君みたいな小さな子がこんな場所に一人で?」

 

明らかに小さな子供が来れる距離では無いこの場所に子供が一人でいる事に違和感を感じたアリーシャは思わず訝しげな表情を浮かべる。

 

「え?……いえ、村の人たちと一緒に馬で連れてきてもらいました。お兄ちゃんが居なくなってから何日かして、行方不明のお兄ちゃんが見つかったかもしれないと聞いて私、いてもたってもいられなくて。……でも、その後の記憶が無いんです。目を覚ましたらさっきの部屋で化け物に襲われて……」

 

その言葉にアリーシャをはじめとした一同は表情を険しくする。

 

少女の説明は明らかにおかしい。大の大人達がこんな場所に子供を連れてきて置いて帰るなと考えられない。

 

ましてやこんな辺境の遺跡で行方不明の子供を見つけたなど、そんな情報をどこから掴むというのか。

 

「(やはり……口減らしか)……アミィ、君の村の名前を教えてもらってもいいだろうか?」

 

アミィが気を失っていた際の仮説が現実味を帯びてきた事にやりきれなさを浮かべながらアリーシャはアミィの故郷の名を問う。

必要であればペンドラゴで報告し対応してもらう必要があると考えたからだ。

 

一方のアミィはアリーシャの真意が分からずキョトンとしながら首をかしげている。人の悪意を知らぬが故の純粋さがアリーシャには逆に残酷に感じられた。

 

「えぇっと……名前は無いんです。パルバレイ牧耕地の外れにある山の麓の小さな村なんですけど……」

 

「パルバレイ牧耕地の……?あそこら辺に村なんてあったっけ?」

 

アミィの言葉にロゼは考え込むように顎に指を添え首を傾げる。

 

「本当に小さな村なので……」

 

「いやいや、情報命の商売ギルドとしては大小関係なくしっかり把握しようってのがあたしのポリシーなんだよね。うぅん……でもなんだろう……どこかで聞いた覚えのあるような……」

 

職業病と言うべきか、喉の奥に魚の骨でも引っかかった様な気分の悪さを感じたのかロゼは腕を組み目を瞑りながら記憶を捻り出そうと唸り声を上げる。

 

「ロゼ、今はそれどころじゃないだろう」

 

「そうだな。この娘のお兄さんや友達がこの遺跡にいるなら早く捜索した方がいいけど……」

 

一同の視線がアミィに注がれる。

彼女の言う様にこの神殿に他の子供達がいるのだとしたら一刻も早く捜索にあたるべきなのは明白だ。

 

現に先程、目の前の少女は憑魔に襲われていたのだ。他の子供達とてそうならない保障などどこにも無い。

 

だがそうなると目の前の少女を安全な場所まで避難させる時間が惜しい。

 

どうしたものかと考える一同だが……

 

「あ、あの!私もお兄ちゃん達を探すのに連れて行ってもらえませんか!」

 

思いがけない少女からの申し出に一同は目を丸くする。

 

「アミィ、すまないがこの遺跡はとても危険なんだ。さっきの怪物を見ただろう?」

 

「あんなのがこの遺跡にはうじゃうじゃいるんだ。あんまりオススメはできないな」

 

アリーシャとミクリオは危険性を考慮し反対する。先程の憑魔に襲われた事を思い出してか、アミィも一瞬怯んだ表情を見せるが───

 

「ッ!! それでも……お願いします!心配なんです!お兄ちゃん達に何かあったら私ッ!」

 

恐怖を感じていない訳では無いのだろう。現に彼女は身体を震わせている。それでも真っ直ぐに意思を曲げずに訴える彼女の瞳には強い意志が込められていた。

 

そこに──

 

「うだうだ考えててもしょうがないでしょ。その娘を連れて探せばいいじゃない」

 

意外にも口火を切ったのはエドナだった。その事に驚きながらもミクリオがエドナへと問いかける。

 

「エドナ、だがこの娘を連れて歩くのは──」

 

「危険だって言うんでしょ。でも時間が惜しいわ。それに、この娘をどこか近場に一時的に避難させても目を離したら勝手に行動される可能性もあるわ。だったら連れて歩く方が一番安全でしょう」

 

そう言ってエドナはアミィへ彼女の意思を尋ねるかの様に視線を向ける。

その意図を汲んでか、アミィは両手に力を込め必死に一同へと訴えかける。

 

「お願いします!言う事は聞きますから一緒にお兄ちゃんを探させてください!」

 

深々と頭を下げるアミィにスレイは小さく息を吐くと笑顔を浮かべながらアミィへと声をかける。

 

「わかった!アミィにとっては大切な人なんだもんな!」

 

「ま、やっぱこうなるよね」

 

「ですが、くれぐれも無理はなさらないでくださいね?」

 

「やれやれ、導師御一行は優しいねぇ」

 

「文句言うなよ。小さなレディのエスコートだ気合い入れて行こうぜ」

 

「ふん、なんでもいい。早く終わらせるぞ」

 

「まったく、素直じゃないんだから……」

 

一同もエドナの言葉を了承しアミィはその事実に嬉びの表情を浮かべる。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

そう言って頭を再度下げるアミィにアリーシャが声をかける。

 

「くれぐれも私達から離れない様に。いいね?」

 

「はい!」

 

アリーシャの言葉に頷いたアミィは今度はエドナの元へと駆け寄る。

 

「……何よ?」

 

人間相手という事もあり、いつもの素っ気ない態度を見せるエドナだが───

 

「我儘を聞いてくれてありがとうございます。エドナさん!」

 

そんな素直な感謝の言葉にエドナは思わず目を丸くする。

 

「別に……うだうだ話してるのが面倒だっただけよ」

 

そう言って、ふいっと視線をアミィから逸らしエドナは歩き出す。

 

一同はそんな彼女に苦笑いを浮かべながらもアミィと共にエドナの後に続いた。

 

────────────────────

 

 

そして一同は遺跡の捜索を開始した───

 

結果から言ってしまおう。

 

アミィの兄や友達が見つかる事は無かった。

 

各方角の部屋や地下室を探索し、何度か憑魔との戦闘があったものの捜索対象の子供達の姿は影も形も無かった。

 

「痕跡無しか……」

 

「後は調べて無い場所って言ったら奥の祭壇くらいだね」

 

「試練は終えちゃいないが先に見てみようぜ。今は捜索優先だ」

 

晴人の言葉に一同は頷くと唯一調べていない遺跡の祭壇へと繋がるであろう扉へと向かう。

 

アミィもまた不安そうにしながらも一同の後に続く。

 

そんな彼女を一人見つめる者がいた。

 

「…………」

 

「ん?どうしたん、デゼル?」

 

帽子により視線は定かではないがそれでも彼がアミィに対して何かを感じているのを察したのかロゼがどうしたのかと問いかける。

 

「……あの子供」

 

「アミィがどうかしたわけ?」

 

「妙な感じがする」

 

「妙な?何さ、そんなさぱらん表現されても困るんだけど?もっと具体的によろしく」

 

「……わからん」

 

「わからんのかい! 何?まさか憑魔が化けてあたし達を騙してるとか突拍子の無い事を言うんじゃないよね?」

 

「いや、穢れは感じないが……」

 

「なら考え過ぎだって!ほら、行くよ!」

 

歯切れの悪いデゼルにロゼは痺れを切らし急いで一同を追いかける。

 

「……」

 

そんな彼女に従いながらもデゼルはどこか釈然としないような表情で後を追った。

 

─────────────────────

 

 

「ここも何も無しか……」

 

たどり着いた神殿の最奥の祭壇。

だがそこにもアミィの兄と友人の姿を見て見当たらない。

 

「パワント様にも何か聞けないかと思ったのですが」

 

「そちらも見当たりませんわね」

 

「まったく……元はと言えばあのエロオヤジの管理責任でしょうに……」

 

何故か見当たらないパワントにエドナは舌打ちをしながら悪態を漏らす。

 

「そんな……お兄ちゃん……」

 

肉体的な疲労と精神的なショックからかアミィはガクンとその場にへたり込む。

 

「ちょ!?大丈夫!?」

 

「少し休みましょう。この部屋には憑魔はいませんし件のミノタウルスもこちらを避けているようですし」

 

アミィに気を使いライラは休憩を提案する。

 

だが肉体的な疲れはともかく精神的なショックは少しばかりの休息でどうにかなる問題では無い。その事を案じてかスレイ達はアミィの様子を伺う。

 

「お兄ちゃん……みんな……」

 

俯くアミィ。そこへスレイが声をかける。

 

「アミィ、確かに不安なのはわかるよ。けど、この遺跡で見つからなかったって事は、君のお兄さんは少なくともこの遺跡からは無事に脱出できてるって事だ」

 

アミィの話を聞く限りアミィの兄達が行方不明になってからアミィがこの遺跡に来るまでそれほど日は経過していない。

 

そしてこの遺跡で彼女の兄や友人の遺体は発見できず、遭遇する憑魔達も人間が元となった憑魔はいなかった。

 

ならばアミィの兄達が生存している可能性は十分ある。

 

「休憩を終えたらすぐにこの場を離れてローランスの騎士団に捜索を依頼しに行こう」

 

「俺達も出来る限り手伝うさ。任せとけって」

 

安心させるように語りかけるアリーシャと晴人。二人の言葉にアミィは少しだが平静を取り戻す。

 

「あっ……ありがとうございます。すいません、取り乱しちゃって……」

 

「大切なご家族やご友人の安否がかかっているのです。取り乱して当然ですわ」

 

「むしろ君くらいの年齢だと落ち着いていて驚いているくらいだ」

 

外見からして10歳やそこらの年齢と思われるアミィは年齢にそぐわずハッキリと受け答えをし大人びた印象を受けた。その言葉を受けてアミィはどこか気恥ずかしそうに小さく微笑む。

 

「そうでしょうか……?あまり意識はした事はないですけど。私の両親は幼い頃に亡くなってしまって、それからは兄と二人で生活してきたのでお兄ちゃんに迷惑をかけないように私もしっかりしなきゃって……」

 

両親を幼い頃に失った。その言葉を聞いて一同の表情が曇る。

 

「お兄さんと二人で生活を……?」

 

「はい……勿論、村の人達から色々と助けてもらう形ですけど……お兄ちゃんも大人の人に混じって仕事を手伝ったりはしています」

 

「そうか、優しいお兄さんなんだな」

 

「はい!自慢のお兄ちゃんです!」

 

晴人の言葉にアミィはまるで自分が褒められたかのように笑顔を浮かべる。

 

だが一同の内心は穏やかでは無い。両親がいない子供の面倒を見る。それは、この災厄の時代において余裕の無い小さな村には大きな負担だったのだろう。

 

だからこそアミィの様な保護者のいない弱き存在が最初に切り捨てられたのだ。おそらくは他の子供というのも似たような境遇なのだろう。

 

災厄の時代が招いた無情な現状に一同はやりきれなさを感じざるを得なかった。

 

そんな一同の内心に気づく事なくアミィは言葉を続ける。

 

「お兄ちゃんいつも私の為に頑張ってくれて……なのに私、お兄ちゃんが行方不明になる前に喧嘩しちゃったんです……」

 

「……喧嘩?」

 

その言葉にエドナが反応する。

 

「私もお兄ちゃんみたいに大人の人達の手伝いをしたいって、お兄ちゃんだけに働かせたく無いって……そう言ったらお兄ちゃん、凄い怒って反対して……」

 

その時の事を思い出してか少女の瞳にじわりと涙が溢れる。

 

「私……お兄ちゃんの力になりたかったのにそれをダメって言われて、ついカッとなって……お兄ちゃんなんて嫌いだって言っちゃって……そうしたら次の日お兄ちゃん達がいなくなってて……」

 

決して本意では無かったのだろう。

 

子供特有の感情に任せた発言。

 

ずっと一緒にいられると、いつもと変わらぬ明日がやってくると信じていたからこその衝突。

 

だが少女にいつもの明日がやってくる事は無かった。

 

一番大切な人と一番最悪な別れ方をしてしまった事が少女の心に重くのしかかる。

 

そんな少女をなんとか励まそうとアリーシャが、口を開こうとしたその時───

 

 

 

 

 

 

 

「ホント……兄っていうのはどこも勝手よね……」

 

エドナが発した言葉にアミィは思わず目を丸くする。

 

「……え?」

 

キョトンとした表情でアミィはエドナを見つめる。

 

「自分はお兄ちゃんだからって色々無茶して、それなのにこっちが何かしようとしたらお前が責任を感じる事は無いだのなんだのって」

 

「え……あの……」

 

「そのくせ自分は外で友達作って色々危なっかしい遊びなんてしてて、なのにそれを棚上げして、こっちには危ない事をしちゃダメって本気で注意してきて、反論しようとしてもお前の事が大切だからなんて大真面目に言ってきて……卑怯よ」

 

エドナの言葉に困惑するアミィ。だがその言葉に共感できたのか少しずつ言葉を発し始める。

 

「エドナさんも……お兄さんがいるんですか?」

 

「いるわよ。ワタシを危ない目に遭わせたく無いとか言って一人で出て行った挙句、自分は外で危ない連中とつるんで散々ほっつき歩いてる癖に小言が沢山書かれた手紙とよくわかんない土産だけはこまめに送りつけてきた変わり者よ」

 

「お兄さん……帰ってこないんですか?」

 

問いかけるアミィの言葉にエドナ一瞬言葉を詰まらせるが、すぐに答えを返す。

 

「……帰って来たわ。ある日突然ね。でも頭に来たから今度はワタシが出てきてやったのよ」

 

「喧嘩してるんですか?」

 

「……まぁそんなところよ。だから安心なさい。アンタのお兄さんも、きっとそのうちひょっこり帰ってくるわ。兄っていうのは身勝手で無駄に逞しい生き物なのよ」

 

毒を吐きながらバッサリとボロクソに言い切るエドナにアミィは思わず苦笑いを浮かべる。

 

だがその表情からは先程の悲壮感が少しだけ薄れた。

 

「あはは……私はできれば早く仲直りしたいかなぁって……」

 

「下手に出るとツケあがるわよ。少しキツく当たるくらいで丁度良いのよ」

 

「でも悪いのは私ですから……だから仲直りのプレゼントも……あっ……!」

 

「……? どうしたのよ?」

 

何かを思い出しハッとした表情を浮かべるアミィにエドナは訝しげな表情を浮かべる。

 

「綺麗なお花……無くしちゃった……」

 

「花……?」

 

「この遺跡に来る途中で休憩してるときに見つけたんです。見たことのない赤い綺麗な花。私、お金はないから、お兄ちゃんとの仲直りにプレゼントしようと思ったんですけど、さっき気づいた時には無くなってて……」

 

「……花なんてあとでいくらでも集められるし渡せるでしょ?」

 

「でもたまたま見つけた花ですし、名前もどんな花なのかもわからないから、また見つけられるか……」

 

そう言ってしょぼくれるアミィにエドナは小さなため息を吐く。

 

「はぁ……エドナよ」

 

「……え?えっと……先程お聞きしましたけど……」

 

いきなり済ませた筈の自己紹介を始めたエドナの言葉にアミィは意味がわからず首を傾げるが───

 

「ワタシの名前じゃないわよ。花の名前。エドナって言うのよ。アンタの見つけた赤い花」

 

「えっ……同じ名前……?」

 

「名前だけじゃないわ。エドナは暑さや太陽の光に弱くて風通しの良い日陰に咲くの。育てる時は水のやり過ぎに注意が必要。ワタシと同じで繊細で可憐な花よ」

 

「繊細……?」

 

「可憐……?」

 

「トゲとか毒がありそうだな」

 

「黙ってなさい外野共、笑いが止まらなくなるトゲを喰らわせるわよ」

 

ボソリと呟いたミクリオ達の言葉をしっかり拾っていたのか傘の先端を見せつけてくるエドナに一同は慌てて口を噤む。

 

そんな中でアミィはおずおずと口を開く。

 

「ええっと……詳しいんですね」

 

「……昔教えてくれたのよ。お兄ちゃんが」

 

そんなアミィの言葉にエドナはどこか憂いを帯びた声でそう答えた。

 

「あっ……」

 

「ッ……!」

 

「エドナさん……」

 

そしてそれを聞いたスレイ、ミクリオ、ライラもまた悲痛な表情を浮かべる。

 

晴人達はその意図が分からず戸惑うが、一方でその言葉にアミィは小さく微笑む。

 

「仲が良いんですね」

 

そう言われたエドナははぐらかす様に視線を逸らす。

 

「さぁ、どうかしらね……けど、これで花の心配は要らないでしょ。プレゼントにしたいなら帰り道で集めて行けばいいわ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

感謝の言葉を口にして笑うアミィ。

 

その目蓋が重そうに瞬きをし始める。

 

「あ、あれ……私……」

 

会話の中で精神的な不安が軽減され緊張が解けたからか肉体の疲労も相まってアミィは眠そうに瞬きを繰り返す。

 

それを見たエドナはしょうがないとばかりに再びため息をつく。

 

「はぁ……しょうがないわね。少しだけ休んでなさい」

 

傍に座り込んだエドナは眠そうなアミィに膝を貸し横にする。

 

「はい……ありがとう……エドナさ……」

 

言葉を言い切る前にアミィは眠りの世界へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

「……で?何よその生暖かい視線は」

 

次の瞬間、先程までの不器用ながらにどこか優しげに話していた姿は何処へやら。エドナはいつもの調子でジト目で一同へと視線を移す。

 

その先ではロゼをはじめとした一同が生暖かい目でエドナを見つめていた。

 

「え? いやぁ〜エドナも結構面倒見良いんだなぁって」

 

「見事なお姉さんっぷりでしたわ」

 

ニコニコと微笑むロゼとライラの言葉にエドナの表情が痙攣る。

 

「けど、知らなかったなエドナちゃんにお兄さんがいるなんて」

 

「えぇ、私も驚きました」

 

「というか天族にお兄さんとかあるんだ?あたしはそこにビックリしたよ」

 

晴人、アリーシャ、ロゼは先程の会話の感想を楽しげに口にするが───

 

 

 

 

「……アンタらには関係無いでしょ」

 

次の瞬間エドナから放たれたのは先程の柔らかい口調とは違う冷たい声だった。

 

「え、エドナ様……!?」

 

「ちょ!?何!?あたし何か不味い事言った!?」

 

拒絶の色を含エドナの言葉にロゼとアリーシャの二人は慌てた表情を浮かべる。

 

「エドナ!流石にその言い方は───」

 

「黙ってなさいスレイ」

 

思わず止めに入ろうとするスレイだがエドナの強い眼差しがそれを遮る。

 

一瞬にして冷たい空気が場を支配するが───

 

 

 

 

 

「エドナちゃん。ハルト達にもそろそろ話しても良いんじゃねぇの?」

 

張り詰めた冷たい空気をいつもと変わらない軽い調子のザビーダの声が塗り替えた。

 

「……アンタの意見なんて聞いてないんだけど?」

 

「自分に嫌な会話されたく無いなら寧ろ最低限の事情は話しておくべきだろうよ。これまでははぐらかしてきたが、ここいらが良い機会だと思うぜ。これから先は否が応にもアイツの話題に触れる事も出てくるだろうしよぉ」

 

冷たい視線も声もなんのその。ザビーダは一切怯む様子もなくエドナの視線をまっすぐ受け止める。

 

少しばかり長い沈黙の末、先に視線を外したのはエドナだった。

 

「……勝手にすれば」

 

そう言ってエドナは俯いて膝元で眠るアミィへと視線を向け、完全に黙ってしまう。

 

「おい、ザビーダ。気を遣ってくれるのはありがたいんだがエドナちゃんが嫌がってるなら無理に話さなくても───」

 

エドナに気を使う晴人だがザビーダはその言葉を遮る様に口を開く。

 

「いや、アイツの話をするのも良い機会だ。それに今から話す問題は俺にとっても重要な問題だ。だから聞いておいてくれよ、『最後の希望』さんよ」

 

「……わかった」

 

ふざけた調子が消え真剣な表情でそう告げたザビーダに晴人もまたその意図を汲んでかそれ以上口を挟むのを止める。

 

 

「さて、何から話したもんかね……」

 

そう言いながらザビーダは顎に指を添え考える仕草を見せる。

 

 

「まぁやっぱり最初はエドナちゃんの目的についてハッキリ言っちまうべきかね……」

 

「エドナ様の目的……」

 

ザビーダの言葉をアリーシャは無意識に反芻する。

 

これまで拒絶から踏み込めなかった部分。エドナの抱える問題を目の前にしてアリーシャは気持ちを引き締める。

 

 

 

 

 

「エドナちゃんの目的、それは、ドラゴンになった天族を元に戻す方法を見つける事だ」

 

その言葉に事情を知らない晴人、ロゼ、アリーシャの3人は目を丸くし、デゼルは小さく唸り声をもらす。

 

「ドラゴンを元に戻すって……」

 

「えぇっと……確か天族の憑魔化が進行するとドラゴンになっちゃうんだっけ?」

 

以前ドラゴンについては一度聞かされた事があるものの幼体の段階の憑魔としか遭遇したことのない晴人達はその時の言葉を思い返す。

 

「そうだ。天族の憑魔化が進行するとドラゴンになる。ドラゴンは霊応力が低い人間にも視認できるほど強く穢れに結びついて浄化の力でも元に戻す事はできねぇ」

 

「そのドラゴンになった者を救う方法をエドナ様は探していると?」

 

そう問いかけるアリーシャにザビーダは静かに頷く。

 

「あぁ、そうだ。その天族の名前は『アイゼン』」

 

発せられた名前にザビーダの背後でエドナが人知れず震える自身の手をもう片方の手で握りしめる。

 

 

 

 

 

「俺の親友、そして……エドナの兄貴だ」

 

 

 

 

 






あとがき

キラメイジャーのピンクがカノンちゃんってマジ?
春映画復活させてマコト兄ちゃんと共演しろ(凸凹感)

今年もどんより更新になるとは思いますがさっさと進捗率999%になれるように頑張るので宜しければ今年も今作にお付き合いください
©️フジ
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