Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜 作:フジ
Q ほんとぉ?
前回のフジ「あぁ、俺は大丈夫だ!(賢人)」
後1話終わらなかったよ……
「っ!憑魔!」
目の前に現れた巨大な馬に跨った首無しの騎士。
問うまでもなく憑魔であるそれに対して一同は素早く得物を構え戦闘態勢に移る。
「変身!」
【フレイム! プリーズ! ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!】
晴人は正面へと展開された魔法陣に駆け出しウィザードへとその姿を変える。
【コネクト! プリーズ!】
ウィザーソードガンを取り出しウィザードは跳躍し馬に跨った騎士へと斬りかかる。
ガギィッ!!
騎士はその斬撃へ反応し醜悪な人の顔のデザインが掘り込まれた左手の盾でその攻撃を防ぐ。
『フン!』
攻撃を防いだ騎士は右手に持った槍でウィザードを貫くべく強力な突きを放つ。
跳躍し空中にいる状態で攻撃を防がれたウィザードは無防備にその攻撃を受けるしかない。
「フッ!」
だがウィザードは攻撃を防いだ盾に蹴りを放つと反動で後方へと宙返りしてその突きを躱す。
【フレイム!シューティングストライク!】
「《踊れよ風刃!エアスラスト!》」
空中で回転しながらソードガンをガンモードへと切り替えたウィザードは指輪を翳し銃口へと火の魔力を収束させ引き金を引く。
炎の弾丸が放たれると同時に後方で詠唱していたザビーダが放った複数の風の円刃が首無し騎士へと殺到していく。
だが首無し騎士は手に持った槍に風を纏わせプロペラのように回転させその攻撃を弾く。
「へぇ、やるじゃねえの」
ヒュー!と口笛を吹きザビーダが軽口を叩くが今の攻防から見ても目の前の首無し騎士は間違いなく油断できない強敵なのは明白だ。
一同は隙を見せず警戒してそれぞれが臨戦態勢を取るが……
「あぁ……天族様……そこにいらっしゃるのですね」
「ちょ!?何やってんの!?」
先程落下して来た男性が立ち上がり、あろうことか首無し騎士に向けて歩き出したのである。
ロゼが思わず驚愕の声を上げるが男性は気にした様子もなくふらふらとまるで灯に引き寄せられる蛾の様におぼつかない足取りで歩み寄って行く。
ロゼが慌てて止まれと注意を込めて叫ぶが男の耳にはその声は届いていないのか或いはこちらの存在など眼中には無いのか、まるで意味をなさない。
案の定、ふらふらと歩み寄る男に対して首無し騎士は存在しない頭部の視線を向ける様にその向きを男へと変える。
「あぁもう!」
苛立ちを隠そうともせずに声をあげたロゼは首無し騎士の注意を逸らすべく短剣を投擲する。
騎士はそれに反応したのか風を纏った槍を振るい、風の衝撃で短剣を弾き飛ばした。
「手出しはさせませんわ!」
「まったく手がかかるわね!」
その隙を突き、ライラが紙飛行機にした紙葉を複数放ち、首無し騎士を避ける様な軌道で飛ぶ紙飛行機は男の歩みを遮る様に地面へと刺さる。
「うわぁ!?」
次の瞬間、紙飛行機が刺さった場所が点と点を繋ぐように炎の結界が展開され男の歩みを止める。
更にそこへダメ押しとばかりにエドナが生み出した岩の壁が男を囲むように隆起し完全にその動きを阻害する。
「「
男の謎の行動を止めた隙を逃さずスレイはミクリオと融合し神依を纏うと水の霊力を纏った矢を放つ。
「「蒼穹の十二連!」」
拡散し生き物の様に標的を目指し殺到する水のホーミング弾。
それを見た首無し騎士は馬の手綱を引き馬へと指示を出す。
大きく鳴き声を上げた馬は勢いよく駆け出した。
何もない空間を踏みしめ上空へと───
「はぁ!?馬が飛ぶなあ!!」
殺到するホーミング弾の追跡を振り切り空を駆ける馬にロゼは思わず悪態をつく。
「逃がすと思うか!」
「ここで仕留める!」
その光景に思わず叫ぶロゼだが、逃さないとばかりにアリーシャは手に持った槍へと炎の魔力を収束させデゼルが詠唱を完了させる。
「魔王炎撃破!」
「《噛み尽くせ!腐れ狼!アベンジャーバイト!》」
炎の斬撃と風の顎が上空へと離脱した首無し騎士へと放たれ、そして───
轟っ!
次の瞬間着弾した風と炎は空中で大きな爆炎となり轟音を立て爆ぜる。
「やったか!?」
スレイは警戒しながらも爆風で舞い上がった土埃が晴れるのを待つ。
だが───
「……いない?」
土埃が晴れた時、そこに首無し騎士の姿は無かった。
「浄化できたのか?」
そう問いかける晴人だがアリーシャとデゼルは首を横に振る。
「いや、手応えはなかった。恐らくは……」
「あの首無し野郎。自分も風の攻撃を放って相殺して逆に爆炎を目眩しにして離脱しやがった」
仕留めきれなかったと苦々しげに言う2人。
「ですが、あの落ちて来た男性は助けられました」
「あぁ、深追いせずに、先ずはあの人を保護しないと」
ライラと晴人の言葉に一同は頷くと炎と岩による壁を解除し落ちて来た男性へと駆け寄る。
「コラァ!アンタなに考えてんのさぁ!?」
身投げに始まり憑魔へと歩み寄ろうとした行為に関してロゼが怒声をあげる。
他の面々も大なり小なり同じ事を思っているのだが仮にも身投げした人間を全員で囲んで責めるというのも褒められた事では無いと考え雰囲気の明るいロゼに注意役を任せる。
「ご無事ですか!?」
「どこか痛むところはございますか?」
アリーシャとライラが男へと声をかけるが男は心ここに在らずと言わんばかりに反応が薄い。
「あぁ、天族様……どこに行かれるのですか……」
「っ!この人!?」
「あぁ、やはり命を捧げ損なった私にお怒りなのですね……ならばもう一度……」
空を見上げ虚な目でそう語り続ける異様な雰囲気に一同は思わず怯む。
だが───
「いい加減にしなさい」
ドスっ!
次の瞬間男の首にエドナの傘が叩き込まれた。
「へぇ!?……はは……あはは……あはははははは!……な、なんだこれは!?はははははは!」
「エドナぁあ!?」
「ちょおい!?何してんの!?」
男の態度に苛ついたのかエドナが容赦なく笑いのツボに一撃を叩き込んだ。
男が困惑したのも一瞬、次の瞬間には荘厳な塔を前に大笑いする男とそれを囲む集団というシュールな絵面が展開される。
「感謝も謝罪も求めてないけどね。まともに見えもしない神様にぶつぶつ言う前に、目の前にいるこっち見てちゃんと話しなさいよ。腹が立つわ」
そう言って悪びれる事もなく不機嫌そうに言い捨てるエドナに一同は苦笑する。
男はしばらく笑い続け、それが少しずつ治ると息も絶え絶えになりながら漸くスレイ達に対して言葉を発した。
「はぁ……はぁ……あ、貴方たちは?」
エドナの行為は乱暴な手ではあったが効果的だった。先程はこちらを真っ当に見ていなかった男は困惑という感情ではあるもののこちらへと注意を向けている。
「えぇっとオレはスレイって言います。一応、導師としての使命でここに来たんですけど……」
その言葉に男は目を大きく見開く。
「貴方様が噂の導師!?では、貴方は天族様とも会話ができるのですよね!?」
「え? それはまぁできるけど」
どこか興奮した様子で捲し立てる男にスレイは思わず困惑しながらもその言葉を肯定する。
「でしたら、どうかお伝えください!今回は命を捧げ損なってしまって申し訳ないと!今一度この塔を登りすぐにでも!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
明らかにまともじゃない男の発言をスレイは狼狽しながら遮る。
「伝えるも何も、アンタの目の前で聞いてるし見えてるんですけど」
ボソリとそう言ったエドナの言葉に男が固まる。
「それは……どういう……?」
困惑しながら、切れ切れに言葉を吐き出した男にスレイとアリーシャが口を開く。
「えぇっとですね……信じられないかもしれないけど……」
「こちらにいる方々が貴方の言う天族の方たちです」
ライラ、ミクリオ、エドナの方へと視線を向けながらあっさりと、神秘性も何もなく「あ、この人たち天族です」と紹介され男は思わず目を丸くして固まる。
「まぁそういう反応になるわな」
「ペンドラゴの猫さんと違ってぱっと見、人間と変わらないし、いきなり言われても信じていいのかわかんないもんね」
晴人とロゼは苦笑いしながら男の反応を見つめる。だが、このままでもしょうがないと晴人は男に声をかける。
「信じられるかはわからないけどスレイの言ってることは本当だ。そして、あんたがさっき近付こうとしたのは天族じゃない。憑魔っていう別の存在だ。ちゃんと見えてないからわかんないだろうけどとてもじゃないが聖なる神様なんてもんじゃないぞ」
「ついでに言えば天族は生贄なんて求めてないわよ。わかったらとっとと家に帰んなさい。アンタが勝手に飛び降りて命を捧げたところで誰も喜びはしないのよ」
晴人の言葉を引き継ぎエドナが簡潔に容赦なく男に言葉をぶつける。
「ちょ、エドナ!言い方……」
「いや、アレでいい」
行いはどこまでも見当違いとはいえ仮にも命を捧げるほどの天族を信仰をしている相手に対して下手に刺激しない方がとスレイはエドナを止めようとするが、デゼルがスレイの肩に手を置きそれを止める。
男はエドナの言葉にがくりと脱力しその場に座り込む。
「で、では……伝承は?」
「真っ赤な嘘よ。アンタはどこかの誰かが言い始めた根も歯もないなんの意味もない伝承のために死のうとしてた」
「そ、そんな……」
その言葉に男は項垂れ震え始める。
神に命を捧げるという使命感が取り払われ、残ったのは有りもしない幻想の為に犬死にしようとしていたと言う事実。
それが今更になって男に死の恐怖を与えたのだ。
そんな彼の震える手が握り締められる。
「え……」
項垂れていた男が顔を上げるとそこには美しい銀の髪を靡かせた女性の顔があった。
「天族を信仰してくれる。その気持ちは嬉しいです。ですが、貴方には貴方の人生があるはずです。まずはそれを貴方自身が生きて大切になさってください」
「……はい」
そう言って優しく微笑むライラに男は少しだけ手に力を込めてその手を握り返し小さく頷いた。
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「あの人は大丈夫だろうか……」
その後、戦闘の轟音を聞きつけて駆けつけたローランスの警備兵に連れられ男は去っていった。
その背中を見つめながらアリーシャは心配そうにそう溢す。
真実を知っている側に立てば男の行為は根拠の無い噂話を鵜呑みにして死のうとした馬鹿げた行為にしか見えないかもしれない。
だが、男にとってはそれが心から信仰してきた命を捧げるほどの価値観だったのだ。
自殺も生贄も認める事はできないが、だからといってアリーシャにはそれを馬鹿げてるの一言で切り捨てる事はできなかった。
「難しいもんだよね。見えたら見えたで問題は起きるんだろうけど見えなきゃ見えないで別の問題が起きるんだからさ」
「見えないものってのはそれはそれで厄介だからな。昔からよくある話だ。有りもしない存在を頭の中で作り出してそこに犠牲が生まれる。それは信仰だけに限った話じゃない」
「それに関しちゃ耳の痛い話だな。俺の故郷でも今でこそ生贄なんてのは世間的には禁じられてるけど昔はそういうのが無かった訳じゃ無いみたいだし」
晴人のいた世界にも神への祈願を込めて生きた人間をそのまま埋める、沈めるといった人柱という風習は過去に存在している。
加えてややこしい事にこの世界は天族や憑魔という不可視で超常的な存在が確かに身近に実在しているのだ。
天族側からしたら一方的な見当違いで勝手に崇めて勝手に死なれるのだ。兵士達から生贄の話を聞かされた時のミクリオやエドナの様に怒りや嫌悪感を抱くのは当然の反応とも言える。
だが、だからと言って現状で天族や憑魔という存在の情報を正しく公表した所で不可視の存在や負の感情が生み出す怪物の存在に人々は恐怖を抱き別の問題が発生するだろう。
そして仮に今後災禍の顕主を浄化し災厄や憑魔の被害が減ったとしても人と天族の間に理解不足からくる大きな隔たりが存在している事は何も変わらないのだ。
人と天族が共に歩む。
その道の険しさの片鱗を見せつけられた気になりスレイやアリーシャは思わず顔を顰める。
「あぁもう!やめやめ!あたしたちは試練に来てんの!真面目に考えるのは否定しないけど今は目の前の事に集中!」
表情を曇らせた二人に対してロゼはどんよりとした雰囲気を察してか、流れを打ち切るように声をかける。
「……あぁ済まない。ロゼの言う通りだな」
「うん、まだ試練も終えてないのにウジウジ考えてもしょうがないよな」
ロゼの意図を察してか二人も自分の成すべき試練へと意識を切り替える。
「で?どうするよ?」
「とりあえず塔に入ってみますか?」
「多分、この高い塔を登らされるんだよねぇ……はぁ、ゲンナリする」
「お前たった今、目の前の問題に集中とか言っておいて……」
目の前の塔の内部への入り口と思われる扉を見ながら面倒臭そうに溜息をつくロゼにデゼルは呆れたような声を漏らす。
「いつもみたいに護法天族が現れないし取り敢えず塔に入るしかないよね」
「絶対めんどくさい仕掛けがあるよねぇ……あの外壁の階段から登っちゃだめなのかなぁ」
そう言ってロゼが指さした先には四角い塔の外壁に巻き付くように作られた階段がある。
「さっきの人はこの階段で一番上まで登ったんだね」
「まぁ塔の中はこれまでの事を考えたら憑魔と仕掛けだらけだろうしな」
「これ見よがしに安全な道を見せつけられるとさぁ、なんかこう……今からわざわざ危険な道を進もうとしてる自分になんとも言えない気持ちになって来ない?」
「言うほど安全そうか?人が1人通れるかどうかの幅で柵も無いぞ?」
「登ってる時にさっきの首無し騎士が仕掛けてきたら大惨事だな」
「というか、どのみちここを担当してる天族に認められなきゃ降りてもっかい塔を登り直す羽目になるだけだしな」
「はいはい、わかってますよ。ちょっと言ってみただけですよ〜だ」
相次ぐツッコミに気怠げにそう返すロゼ。
アリーシャ達はそれに苦笑しつつ塔の内部へと足を運んだ。
一同が塔の内部へと姿を消した事で辺りには谷へと吹く風の音のみが残される。
だが……
「………ここが身投げの塔」
信仰に惹き寄せられる者は後を絶たない。
皆が去った塔の前に新たに現れた人影はゆっくりと塔の外壁の階段を登り始めた。
─────────────────────
「外観から察してはいたが……」
「こいつは広いな。単純な土地としての広さならこの前の地の試練の方が上かもしれないけど屋内としての広さならこの遺跡が一番なんじゃないか?」
塔の構造自体はひたすら上へと伸びる直方体であり一番下の階であるこの場所は壁や柱による視覚的な仕切りも無いためフロアそのものが見渡せ、晴人達はその広さを実感する。
「壁には風の五大神、ハヤヒノの紋章。間違いなく風の試練神殿だな」
早くも遺跡の装飾などを調べて始めたスレイが一定間隔で壁に横並びに描かれた紋章を見てそう言葉を溢す。
「まぁここまで来て違っても困るからそれはいいんだけどさぁ……」
そんな中、ロゼは顔を引き攣らせながら零した言葉を一度切ると、深く息を吸い込み───
「なんじゃこの断崖絶壁はぁ!?」
ロゼが指差し叫んだ広大なフロアの中心部、そこにはフロアを分断するかのように真一文字に床が存在しないのである。
「うわ、底が見えないぞコレ……」
「向こう側への幅もかなりのものだ。普通の人間はまずこの時点でここを越えられないだろうな」
フロアを分断する崖を見下ろした晴人は途中から薄暗く底が見えないレベルの高さである事に呆れた様に声を漏らす。
「……どうやら上もそういう構造の様だな」
上を見上げるミクリオ。そこには壁から迫り出している一つ上のフロアの床とそれらの床を大きく分断する吹き抜けの存在が飛び込んできた。
さらにその隙間から僅かにもう一つ上のフロアも確認できるが、そこも同じ様な構造となっている。
つまりこの遺跡はどのフロアも基本的に普通の人間ではどうあっても跳躍しても届かないほどに離れた床と床を飛び越えて移動しなければならないという事だ。
「ミスったら塔の中だろうが真っ逆さまに落ちていくって訳だ」
「というか内部に柱も碌に無いのにどういう構造よコレ。あの広さじゃ普通なら落ちるでしょ。あの壁から出てる床」
「そこはまぁ天響術で作られてますから」
普通なら欠陥構造間違いなしのトンデモ構造に文句を漏らすロゼにライラは苦笑いしてそう答える。
「要はコレをいつも通り風の天族の力で突破してけって事だよね?」
そう言って一同の視線がデゼルとザビーダへと向く。
「まぁ、そういうこったな。てな訳で……」
ニヤリとザビーダは悪戯な笑顔を浮かべ───
『うわぁ!?』
「うおっと!?」
『キャア!?』
次の瞬間強烈な風がまるで見えざる手の様に一同を浮き上がらせ向こう側の足場へと移動させる。
「これぞ風の天族の便利技。『瞬転の迅』ってな、どうよスゲェだろ?」
そう言ってドヤ顔を浮かべるザビーダだが……
「び、ビックリした……」
「いきなり浮いてそのまま落ちるかと……」
突然の自身の意思と全く関係ない浮遊移動が心臓に悪かったのかスレイ達は動揺を見せている。
「お前な……やるなら先に一言なんかあるだろ」
恨めしげにそういう晴人だがザビーダは意に介さず笑いながら言葉を続ける。
「いやさぁ、どうせこっから何回も使って反応薄くなっていくだろうし、それなら初回のフレッシュな反応を思い出に刻んでおきたいなぁと」
「本音は?」
「スカートとか上着が捲れて良い感じにチラッとサービスショットしないかと期待した」
キリッとした顔で即答したザビーダに晴人とライラはフッと笑みを溢し───
「「エドナちゃん(さん)」」
その声と共に傘がザビーダの首に叩き込まれた。
「……とりあえず。こっから先の瞬転の迅はデゼルがやって」
「……わかった」
笑い転げるザビーダをゴミを見るような目で見つめながらそう言い放ったロゼの言葉にデゼルはゲンナリした声で答えた。
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「あぁ、階段じゃなくて良かったぁ!」
「お前さっきまで外の階段で登りたいとか言ってたじゃねぇか」
「記憶にございません。あたしは若いから過去は振り向かないんで」
「それ若さ関係あんのか」
瞬転の迅で通路を飛び越えた先、そこには火の試練神殿でも見かけた天響術により昇降する床があり、一同はそれにより上のフロアへと難なく移動できた。
その後も道を遮る隔壁を風の天響術に反応するモニュメントを操作し動かす仕掛けこそあったものの大きな面倒も無く一同は上層部まで到達する事ができた。
水の試練神殿の様にひたすら自分の足で上を目指す事を想像していたロゼはこれ幸いと喜びの声を上げデゼルに呆れられている。
「まぁロゼの気持ちはわからなくもないが」
これまでと同様に神殿内には憑魔がいて何度か戦闘に突入こそしたものの瞬転の迅により離れた通路へと飛び越して移動する事を除けば水の神殿レベルの精神的にキツい仕掛けは存在していない。
よほど水の神殿の仕掛けが辛かったのかアリーシャもロゼの言い分を理解し小さく頷き同意する。
「実際割と順調だよな、油断したら下の階に真っ逆さまになるから気は抜けないけど」
「ハルトさんの言う通りですわ。もしかしたら急に足元がパカッと開いて落としたりしてくる罠が待ち構えているかもしれません」
「間抜けな絵面だけどここでやられたらエゲツないわねその罠」
各フロアに足場こそあるものの構造自体は吹き抜けである為下手を打って落下すれば一階まで落ちる所か一階より更に下の底の見えない崖に落ちかねないのだ。
飛行手段こそない訳では無いが気が抜ける状況とも言えない。
「でもまぁこの感じだと頂上はすぐそこでしょ?ならちょっと休憩していかない?流石にちょっと疲れたし、どうせ上についたら何かしらと戦わされるんだろうし」
今いるフロアの憑魔は既に浄化され安全は確保できている。ロゼの提案に一同は頷いた。
「ふぅ……しかしあれだね。この塔の高さを見た時はどれだけ時間がかかるかと思ったけど案外そうでもなかったね」
床へと座り込みながらロゼがそう溢す。
「それはデゼル様のおかげだろう。瞬転の迅での移動は本来ならミスすれば落下する命がけの危険な行為だが、デゼル殿の実力もあってそこへの不安は無かった。それを除けば憑魔との戦い以外に大きな障害は無かった」
ロゼの言葉に微笑みながらアリーシャが答える。
世辞抜きのストレートな賞賛。その言葉が気恥ずかしかったのかデゼルは腕を組み壁に寄りかかりながらフンと鼻を鳴らし下を向く。
その反応にロゼはニヤニヤと笑みを浮かべながら言葉を続ける。
「まぁ確かに便利だよねぇ瞬転の迅ってやつ。何か商売に使えそう」
「使うな」
「安い!速い!デゼル印の瞬転の迅!ですわね!」
「やめろ」
「今なら一回500ガルド」
「安過ぎるぞ!というかなんだその謳い文句は!?」
ロゼ、ライラ、エドナから飛び出すボケに巻き込まれて声を荒げるデゼル。
「でも探知とかもできるし実際便利だよなぁ風の天族の力って。俺のハリケーンスタイルはそこまでできないし」
「あぁ、先程の塔からの飛び降りにいち早く気付けたのもその探知能力のお陰だ」
「まぁ、風の力をセクハラに使おうとする奴もいるけど……」
「なんだよハルト?褒めても何もでないぜ?」
「褒めてないから」
晴人、アリーシャ、ザビーダが言葉を交わす中、スレイがふと何かを思い出した様に声を上げる。
「あ、そういえばさ」
「ん?どうかしたのかスレイ?」
「前から気になってたんだけど、以前憑魔のメデューサと戦った事があっただろ?」
「フォートンの時か」
「うん、その時デゼルってメデューサの石化が効かなかったよね。結局あれってなんでだったんだ?」
「あ!それあたしも気になってた。あの時は色々あって聞きそびれちゃったし」
無言なれど他の面子も同じ思いなのか、この場の視線がデゼルへと注がれる。それに対してデゼルは面倒くさそうに小さく息を吐くと言葉を発した。
「……あれか、理由は簡単だ。俺は───」
だが続く言葉はザビーダによって遮られる。
「目が見えてないから……だろ?」
「……気付いていたのか」
「これでも同じ風の天族だからな。お前の風の読み方は違和感があった」
少しばかり意外そうなデゼルに対してザビーダはなんて事ないとでも言うようにニヤリと笑う。
だがそれ以外の面子は違った。
「目が見えないって……」
「どういう事よ……だって……アンタ普通に生活できてるじゃない」
他の面々は驚愕の表情を浮かべて言葉を失っていた。明るいロゼですらなんと言葉を発して良いのか戸惑っている。
「簡単さ。お前らだって知ってんだろ?風の天族は風による探知ができる。こいつはそいつを活かして目が見えないのをカバーしてるのさ。だから石化の魔眼が効かなかった。当然だよな、見えてないんだから」
あっけらかんとそう言い切るザビーダだが他の面々から戸惑いの表情が消える事は無い。
「いや理屈はわかるけど……そんな単純に済ませられるもんじゃないだろ」
「目が見えている前提での補助としての探知と目が見えてない状態での視力の代替えまでしなくてはいけない探知では全く話が違うと思いますが……」
晴人とアリーシャが一同の想いを代弁する様に答える。
「そりゃそうだ。俺だって目を瞑って風の探知だけで生活から戦闘まで目を開けてる時と同じ様にこなすなんてできやしねえ」
そう言ってザビーダはデゼルへと視線を向ける。
「大したもんだと思うぜ。さっき塔の上から人が降ってくる事にもデゼルは俺より速く気がついた。探知だけなら間違いなく俺より上だ。視力を失ってからどんだけの期間を過ごしたのか知らんがそんな状態でこの面子の中で問題なく戦い抜ける程の腕を身につけてるんだからな……一体なにがそこまでお前を突き動かしたのやら」
口元が小さく微笑みながら、それでいて目は微塵も笑っていないザビーダは何かを探る様にデゼルを見つめる。
その言葉に秘められた感情に気が付いたのかデゼルはフンと皮肉げな笑みを浮かべる。
「回りくどい言い方だな。別にいいぜ答えても。少なくともスレイ達には教えているしな。俺が何故そこまでしてこの旅に参加しているのか」
その言葉に心当たりがあるのかスレイ、ミクリオ、ライラ、エドナの4人が表情を険しくする一方でロゼが大きく反応する。
「え?そんなんあるの?」
驚いた表情を浮かべるロゼ。それは晴人やアリーシャも同様であり、つまるところザビーダを含めたその4人がデゼルの目的を知らないという事だ。
そしてデゼルがゆっくりと言葉を紡ぐ。
「俺の目的はただ一つ。俺の目から光を奪いそして大切な仲間達を殺した憑魔を見つけ出し……殺す事だ」
その言葉にアリーシャとロゼが大きく目を見開く。
デゼルの口から放たれそれが意味するもの───
それは復讐。
「俺が導師に同行しているのは必然的に憑魔の情報が集まり易い事と浄化と神依という力に価値を感じだからだ」
「っ!……それは……」
そう言い切るデゼル。それに対してアリーシャは思わず言葉を詰まらせる。
それに対してデゼルは不敵に笑いながら言葉を続ける。
「信用しろとは言わん。俺は俺の目的の為にお前らを利用している訳だからな。しかし、これでも天族の端くれだ、仇以外の事に関しては惜しみなく協力するさ……だが、もしも仇を見つけた時は好きにさせてもらう」
そう言うとデゼルが立ち上がる。
「ちょ!?どこ行くのアンタ!?」
焦って声を上げるロゼ。それに対してデゼルは落ち着いた様子で返答する。
「別に、少しばかり離れるだけだ。俺がいたんじゃ話し辛い事もあるだろ。用が済んだら追ってこい」
そう言ってデゼルは歩き出してしまう。
「あぁもう!あのバカ!一人にするの心配だからあたしが見とく!」
「あ!ロゼ!?」
呼び止めるアリーシャの声を振り切りロゼがデゼルを追いその場を離れていく。
『…………』
なんとも言えない沈黙がその場を支配する。
そんな中で沈黙を破ったのは晴人だった。
「別に黙ってた事を責める気はないさ。デリケートな問題みたいだしな。けどこの際だ、話してもらえるか」
そう言って微笑む晴人にスレイは少しばかり表情を和らげると話し始めた。
「えぇっと何から話せばいいかな……」
「ならデゼル様がどこで仲間に加わったのかから話してもらっていいだろうか。私もロゼと何度か話した時にデゼル様について違和感を感じてたんだ」
その言葉にスレイが頷く。
「うん、じゃあそこから。ロゼと出会った時の事は簡単に話したよね?」
「あぁ、ヘルダルフと初めて戦って俺達と別れた後、ヴァーグラン大森林で出会ったんだよな?」
「うん、ロゼは消耗してたオレ達をローランスの兵士に見つからないように自分達が見つけた地下遺跡に匿ってくれたんだ」
「あぁ、それは聞いた。そこで憑魔になったオイシって犬の姿をした天族を助けたんだよな」
嘗てラストンベルで憑魔となったサインドを助ける為に奔走した時にティンダジェル遺跡で出会ったオイシに聞かされた事を思い出しながら晴人が告げる。
「オイシ様に会われたのですか?」
「まぁ俺達は俺達でひと騒動あったのさ。そこは今置いておくとして、その中でロゼが無意識に蓋をしていた霊応力が目覚めて憑魔や天族が見えるようになって協力を申し出てきたって事でいいんだよな?」
そして晴人の言葉を引き継ぐようにアリーシャが口を開く。
「だが気になっていたんだ。以前ロゼと話した時にロゼは天族が見えるようになった時、既にデゼルがスレイ達と一緒にいた仲間だと思っている様に話していた」
以前、ロゼとドーナッツ作りをしていた時に出た会話の中で感じた違和感、アリーシャはそこに切り込む。
「だがそれはおかしい、ヘルダルフとの戦いの時にデゼル様はいなかった。戦場から退避して遺跡に逃げ込んで憑魔となったオイシ殿を助ける中でロゼが力に目覚めたのならデゼル殿はどこで仲間になったのか」
一度話を区切り、アリーシャはスレイへ視線を向ける。
「うん、アリーシャの違和感は正しいよ。ロゼは気づいてないけどオレ達がデゼルと出会ったのは、実はロゼと出会ったのと同じタイミングなんだ」
「?……それは」
言葉の意図がうまく読み取れずに眉を顰めるアリーシャ。そこにエドナが口を開く。
「アイツはずっとロゼの側にいたのよ。ロゼ本人は気づいてないけどね」
その発言に晴人とアリーシャは目を丸くする。
「えぇっと……ずっとっていうのは……」
「偶然居合わせたとかじゃない。おそらくデゼルは何年も前からロゼと行動を共にしている。ロゼは知らないがデゼルと出会ったのもロゼと一緒に行動していたからなんだ」
戸惑う二人にミクリオはそう断言する。
「ロゼさんの霊応力の素養の高さはハルトさん達もご存知ですわよね?」
「あぁ、従士で神依が使えるってのはかなりのもんなんだろ?」
「はい、才能は幼い頃より天族達の村で過ごしてきたスレイさんにすら劣らないほどです。おそらくそれはデゼルさんが関係しているんだと思います」
「デゼルの?それって……」
その意図を問おうとする晴人だが話を聞いていたアリーシャはハッと何かを思い出した表情を浮かべる。
「それはロゼがデゼル様と神依を使った時に他の方の時よりも大きな力を放っているのと何か関係があるのですか?」
アリーシャは以前から感じていた疑問を口にする。その言葉を受けてライラは頷くと説明を再開する。
「はい、元より才能はあったのでしょうが、それに加えてロゼさんは恐らく知らぬ間にデゼルさんの器にされていたんだと思います」
「……それってつまりデゼルが勝手にロゼの身体に入ってたってことか?」
「はい、それも何年も長い期間をかけて何度も何度も……その影響で霊応力が更に肥大化したのに加えてデゼルさんとの神依の相性が飛び抜けて良いのだと推測しています」
「ですがなぜそのような……」
戸惑うアリーシャ。それを見てエドナが面倒そうに口を開く。
「詳しいことはわからないわ。アイツがワタシ達に話した理由はさっき言ってた事とほとんど同じ程度のものよ。だけど……」
「だけど……なんでしょうか?」
「もしもアイツが復讐の為に力を求めていたんだとすれば、才能のある
「しかしデゼル様は日頃からロゼの事を大切に……」
「手塩に育て上げた復讐の切り札だから大切にしてる。その可能性もあるでしょ」
「っ!……ですがそれは……」
仲間を疑うような真似をしたくないのか思わず言葉を詰まらせるアリーシャだがエドナは言葉を止めない。
「あくまで可能性としてあり得るって話よ。どのみちデゼルがロゼの過去に大きく関わってるのは間違いないわ。だからスレイやライラはもしもの事を考慮して敢えて仲間に迎えたの」
「もしもの時はデゼルを止められる様にって事か」
「うん……オレもデゼルがロゼの事をそんな風に思ってるなんて考えたくはないけど……」
「目の届かないところで何かされるくらいなら身近にいてくれた方がいいって訳か……まぁ俺もこの中じゃ似たようなもんか」
スレイの言葉にザビーダが自嘲する様に口を挟む。
「復讐か……」
「どうしたアリーシャ?」
表情を曇らせるアリーシャに気づいた晴人が声をかける。
「あ、いや……あぁもハッキリと言い切る以上、デゼル様の意思は硬いのだろうなと思って」
「ま、少なくとも本人に後ろめたさや躊躇いはないんだろうさ。いざとなれば迷わず目的の為に行動すると思う」
そう言って晴人は一瞬、ザビーダへと視線を向ける。形は違えど目的の為に命を奪う行為をハッキリと掲げているのは彼も同じだ。
そう言う意味では風の天族二人はどこか似ているのかもしれない。
「(復讐ね……)」
晴人の脳裏に一人の少女が過ぎる。
───稲森真由───
大切な家族の命をファントムに奪われ仇討ちの為に魔法使いとなった少女。
魔法使いの力を得てからも彼女は決して悪人と言える様な娘では無かった。
だが仇討ちへの想いから時折見せる危うさがあったのは晴人の記憶にしっかりと刻み込まれてる。
「……ま、いざとなったら止めるしかないだろうな」
「……それは、デゼル様と闘うと?」
「大切なものを奪われた怒りや悲しみを否定する気は無いよ。けどもしもアイツが目的の為にロゼや周りの人達を傷付けてしまうなら───」
静かに迷いなく晴人は断言する。
「綺麗ごとだろうがお節介だろうが止めるべきだろ?敵じゃなく仲間としてさ」
「敵ではなく仲間として……」
そう言い切った晴人にアリーシャはその言葉を小さく反芻する。
「うん!オレもそう思う!」
「まぁ、つまりはいつも通りということだね」
「デゼルさんが道を誤らない様に力を合わせましょう!」
「……つぐつぐお人好しよねホント」
そう言って笑い合う面々、それを見つめながらザビーダは苦笑すると立ち上がる。
「さて、そんじゃそろそろ行くとしようぜ。あんまり待たせると嬢ちゃんとデゼルが喧嘩始めちまうかもしれねぇしな」
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吹き荒ぶ風。
天を目指すかの様に高く聳え立つ神殿の頂上。
十分な広さを兼ね備えながら塔から四方へと飛び出した足場。
飛び込み台を思わせるその造形は皮肉にも身投げの伝説に説得力を与えてしまうかの様なデザインだった。
そんな頂上へとふらふらと一人の女性が外壁の階段を登りきり辿り着く。
「漸く辿り着いた……」
女性はゆっくり、ゆっくりと塔から迫り出した足場へと歩みを進める。
「証明するんだ……命を捧げて……私のした事は間違いなんかじゃないんだって……!」
生贄の伝承。
人が作り出した存在しない神への生贄。
また一人、明かりに吸い寄せられる蛾の様に一人の人間の命が堕ちていこうとしている。
そんな女を遥か頭上から首無しの騎士が静かに見下ろしていた……
あとがき
セイバー12話ラスト
フジ「賢人逝ったぁぁ!」
セイバー13話
フジ「生きてたぁ!」
カリバー「闇の力で消えます」
フジ「え、消えるの!?」
倫太郎を庇う賢人
フジ「消えてねぇじゃん!」
苦しみ出す賢人
フジ「消えそうじゃん!?」
ドラゴニックナイト登場
フジ「助かりそうじゃん!」
賢人消滅
フジ「賢人逝ったぁぁ!」(1週間ぶり2回目)
賢人くんの平成味割と好き
ディケイド絡みのスピンオフを匂わせる告知の詳細がいよいよ明日発表されるみたいだけど果たしてどうなるのか。それともTwitterのプロフ欄でジオジオが大きくなってきたジオウ絡みなのか楽しみな今日この頃今年最後の更新になります。
結局今年も亀更新でしたが完結に向けて来年も頑張りますので宜しければこれからもお付き合いください。
では皆さん良いお年を!
20日 追記:ジオウ&ディケイド 新作やったぜ