魔導転生 ~大魔導士キョウスケ☆マギカ~   作:新世界のおっさん

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プロローグ~二人のイレギュラー~

どこかは知らない、遥か遠く、そして古い世界。

科学ではなく魔術が発展しているその世界では、信仰を重んじ、自然と共存し、魔術の極致と言われる<魔法>を求め、世界中が競いあって切磋琢磨していた。

そんな世界に、一人の呪い(まじない)好きな少年がおったとさ。

彼は呪いで出たお告げにより、魔術で大成すると言われた。

それを素直に信じた少年は、他の誰よりも努力し、世界最年少で国お抱えの魔術師に成長したのだ。

少年は魔術師になり十分大成したが、まだ物足りなかった。

大成し欲が出た魔術師は、誰も至っていない<魔法>の領域を目指し研究に研究を重ねていった。

女と酒を絶ち、一心不乱に魔術にのめり込んだ……いつしか彼は大魔導士と呼ばれる程になっていたが、それでも<魔法>には届かなかった。

そして、いよいよ彼にも最期の時が迫っていた。

 

「……未練だな」

 

「お師様……」

 

かなり熱心に頼み込まれ、気まぐれに弟子にした少年に見守られている大魔導士。

女を絶った彼に妻子は無く、弟子だけが彼のそばにいた。

 

「死ぬまでに<魔法>を完成させたかったが……後をお前に託すしかないようだ」

 

「お師様……私が、私が必ずあなた様の代わりに<魔法>を完成させてみせます!ですので……ですのでご安心して任せてくださいね!」

 

涙を流す弟子に微笑んだ大魔導士は、彼の頭に自らの手を置いたと同時に、全身の力が抜け、ゆっくりと闇におちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、大魔導士は強かだった。

 

予め自らに理論上完成させていた、魔術により魂をそのままに転生させる<魔導転生>の術式を自らの身体に組み込んでおいたのだ。

これは大魔導士にとって賭けだったが、やはり諦められなかったのだ。

 

『私の手で<魔法>を完成させたい……』

 

彼は死に逝く中でそう<強く願った>。

すると深い闇の中、一筋の光が見えた。

 

『……あれが<私の>生か、死か……』

 

光の先で、自分が自分でいるのか……大魔導士は不安もあったが、手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん……?」

 

彼が目を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。

真っ白な天井、真っ白な壁、真っ白な寝床で彼は寝ていた。

手元には彼にとっては謎の存在、CDプレーヤーがあった。

 

「……赤ん坊に生まれ変わるつもりだったのだが、そうではないようだし、全く見知らぬ場所と物……完全にではないが失敗だな」

 

自らの失敗を理解し、落胆した彼はふと窓の外をみた……そこで初めて驚愕する。

 

「なんだこれは!自然がまるでない……微かに若い木がある程度だ……それに、金属の固まりが走っている!」

 

彼の世界には無かった事象、自然が殆ど失われた都市と、大きく発展した科学の姿だった。

 

「どうやらとんでもない場所の人間に転生してしまったようだな……」

 

これでは<魔法>がどうのと言っている場合ではないのではないかと、彼は頭を抑えた。

その時ドアが開き、その音に反応し彼は振り向いた。

 

「あ、えっと<恭介>……大丈夫?」

 

「え……ああ、大丈夫」

 

そこには青い爽やかな色合いの髪をした少女がいて、彼の様子を見て心配そうな表情で問いかけてきた。

彼は唐突な事だったが、とりあえず大丈夫と答えておく。

 

「そっか、良かった……えと、今日もCD買ってきたんだけど……聞く?」

 

「CD?」

 

「うん」

 

少女はそのままベッドの横にある椅子に腰掛け、彼の手元のCDプレーヤーを取ると中の円盤を、自分の持ってきた物へと取り変えだした。

その時開けた、彼女の鞄の中から体操着がチラリと見え、そこに書いてあった名前が彼の目に入った。

 

「……さやか……」

 

「ふぇっ!?な、何!?」

 

「あ、なんでもない」

 

口にしたのに反応したと言う事は、少女がさやかで間違いないと納得した彼は、とりあえず口をつぐみ彼女の様子を見守った。

用意が終わるとさやかは、イヤホンを差し出した。

 

「はい、出来たよ……聴かない?」

 

「ん……こ、これを耳につければいいのかな?」

 

「……ブフッ!ど、どうしたの恭介……まるで<初めてイヤホンを見たみたい>だね!」

 

「からかわないでくれ……」

 

その通りだから困る……と彼は思いながら冷や汗をかきつつ、イヤホンを耳につけた。

それを確認したさやかは微笑み、CDを再生する。

すると彼の耳に穏やかな音楽が流れ出す。

 

「(この箱と円盤は音楽を奏でる術式でも施してあるのだろうか……いや、違うな……魔力の流れを感じない、どうなっている?)」

 

さやかには悪いと思ったが、一人の研究者として、未知の技術の方に彼は大きく興味をそそられていた。

これはどう動いているのか、何が原材料か、何をエネルギーにしているのか……これらは魔術に応用出来ないかと。

 

「(……知りたい……!)」

 

沸き上がる知的好奇心を止められない彼は、瞳を輝かせる……身体に合わせて心も少年に還ってきているのだろうか。

そんな様子を見たさやかは好意的に受け取ったのか、やはり微笑みながら彼を見つめる。

 

「恭介はやっぱり音楽が好きなんだね……」

 

「ん……そうだ、さやかも一緒に聴こうよ……せっかく二つあるんだし」

 

「えっ、あっ、ちょっ、恭介ェ!?」

 

女性を退屈させるのはマナー違反だと、最低限のマナーを叩き込まれていた彼は、自分一人で楽しむのは明らかにNGだと感じ、イヤホンが二つに分かれているのを確認すると、さやかを自分の近くに引き寄せ、もう片方のイヤホンを彼女の耳に入れる。

 

「(以前は余裕がない人生だったのだ……今回は他者との交友も楽しむべきだな)」

 

「(ど、どうなってんのぉ!?恭介ってこんな大胆だったっけぇ!?)」

 

今度は真っ赤になって狼狽えるさやかを、彼が微笑んで見つめる番だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのさぁ……あれはビックリだよ恭介ェ……」

 

「おや、お気にめさなかったかい?」

 

「あ、いや、楽しめたけど……」

 

「なら、良かった」

 

さやかのジト目と文句を軽くいなし、彼は笑う。

あれから二人でしばらく音楽に耳を傾け、穏やかな時間を過ごした……何だかんだで彼はさやかの年相応の女の子な反応を、気に入っていた。

 

「さやかに嫌われたくなかったんだ、もしかしたら退屈させていたかもと思って……」

 

「恭介……大丈夫だよ、そんなこと全然ないから!寧ろ……」

 

「寧ろ……?」

 

「な、なんでもない……」

 

その先は流石に気恥ずかしくて言えず、さやかは目をそらす。

 

「(言えるわけないじゃん……一緒にいて、話せるだけでも幸せだなんて……)」

 

「まあ、良いか……何にしてもとても楽しかった、ありがとうさやか」

 

「ちょぉっ!?」

 

彼は気にせず、久方ぶりに穏やかな時間をくれた彼女に感謝し、頭にポンと手を置き、笑う。

唐突な事に驚き、飛び上がったさやかは、彼をマジマジ見つめたあとこう言った。

 

「やっぱり……今日の恭介変だぁぁぁぁ!」

 

「あ、さやか?」

 

そのまま彼の呼び掛けにも答えず。さやかは病室を飛び出していった。

彼女が去ったのを確認し、彼はクスクスと笑った後、自らの状態を改めて確認する。

 

「(両足が満足に動かない、それに両手の指も思い通りにはいかんな……まあ、このイヤホンだったかを掴んだ時のように、魔力を集中すれば指力を戻すくらいは問題ないが……足がこれでは支障がある……治さねばならんな)」

 

大魔導士たる彼の魂に宿っている膨大な魔力は、そのまま恭介と言う少年の身体に馴染んでいたので、絶え間なく魔力を流せば身体の不調を補える。

だが、流石にそれは彼も疲れるので魔術を行使し、不調を治す事にした。

 

「失礼します、上条くん何かあったらナースコールを……」

 

「あ、すみません……大きめな紙と筆はありませんか?」

 

「え……筆はないけど、ボールペンなら……」

 

「ならそれでお願いします」

 

巡回に来た看護士に、術式に必要な物を用意してもらえるよう頼むと、彼女は怪訝な表情をしたが、しっかり持ってきてくれた。

それを受け取り、看護士が去ってから、彼はボールペンを観察した。

 

「なるほど、後ろの出っ張りを押すと書くための部分が出てくるのか……便利な上長く使える、実に合理的だ」

 

ふむふむと納得し、早速複雑な術式を馴れた手つきでさらさらと描いていく。

一般人が見ても、全く理解できないであろうそれを描ききると、彼は胸元にそれを配置する。

 

「これで良し……本来なら自然のエネルギーも借りたい所だが、あるのは樹で出来ているこの特殊な紙と、花瓶に飾ってある花くらいか……」

 

彼のいた場所には樹で出来た紙はなく、基本羊の皮で出来ている<羊皮紙>だったのだ……故に彼はなぜここに自然が少ないか改めて理解し、複雑な気持ちになったが、今は力を借りられる事に感謝した。

 

「頼むぞ……力を借してくれ……」

 

術式に魔力を込めると、光を放ち彼の身体が包まれる。

彼の不調が癒され、代わりに疲労していく。

 

「ふぅ……ほぼ自力は疲れる、が治ったので良しとしよう」

 

手足が完璧に完治し、動ける事を確認すると、僅かにジワリと出てきた汗を払い、立ち上がり近くにあった鏡の前に歩いていく。

銀髪の少年の姿を確認し、彼はニコリと微笑む。

 

「中々男前だな、<上条恭介>……弟子に似てるのがまた気に入ったぞ?」

 

先ほど看護士が呼んだ<上条>、そしてさやかが呼んだ<恭介>……それらを複合し、違和感無く感じたのはこの呼び方だったので、彼は身体の元主をそう呼んだ。

また、容姿が後を託した弟子に似ていたのもあり懐かしさも感じていた。

その上で、上機嫌に彼はこう宣言した。

 

「そして、その名と身体……大事に使わせてもらう、今日より我が名は上条恭介だ」

 

この後、巡回の看護士がやって来て驚愕するのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、別の病室で起き上がる影があった。

影の正体は少女であり、手元の宝石を顔の前で光らせ、髪の三つ編みをほどき、凛々しい瞳で虚空を睨む。

 

「<まどか>……今度こそ、貴女を救ってみせるわ……」

 

彼女の名は<暁美ほむら>、たった一人の友のために時間を何度も巡っている魔法少女……。

<上条恭介>と<暁美ほむら>……この世界にとって二つのイレギュラーが同時に目覚めた瞬間だった。

 




初めましての方は初めまして、久方ぶりの方……おひさしっ(カルッ
新世界のおっさんでございます。

今回は大分前に書いてたのに、書けなくなってしまった題材でありまどマギに再挑戦してみてます……本能の牙?違います、魔導転生です(断言)
決しておっさんが本能の牙しか書けない男じゃないと、宣言したいが為に書いてます。

初めましての方には意味不明ですよね、すみません。
これから上条恭介がどうなっていくのか、なま暖かく見守っていただけると幸いです。
今後とも宜しくお願いしますm(_ _)m
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