魔導転生 ~大魔導士キョウスケ☆マギカ~   作:新世界のおっさん

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information:
恭介が変身可能になりました。
必要とあらば武力介入しましょう。

昼を寝過ごしてしまいました。
イベントが発生します。

それでは引き続き魔導転生をお楽しみください。



キリカ、魔法少女になる

 

呉キリカ……彼女にとって友達とは、特別な意味を持つ存在。

彼女は小学生の頃、根が内気だったせいでクラスに馴染めず、友達も出来ず、いつも一人だった……しかしある日、席替えで隣になったクラスメイト<間宮えりか>と出会い、初めて一人ではなくなった。

 

『私たち、名前が似てるね!』

 

えりかは、キリカと自分の名前が似ていると言う事で盛り上がり、積極的に話しかけてくれ、キリカも彼女の事が好きになっていった。

二人は互いに一人だけの親友となった、だがその幸せは長く続かなかった……えりかが親の都合で転校になってしまったのだ。

涙ながらに二人は別れ、キリカはまた一人になった……だが、彼女はえりかと再会の約束をしていたので、それで寂しさを我慢していた。

 

『……エリカ?』

 

『え?』

 

そして、彼女の転校からしばらくして、万引きをしようとしている所を目撃してしまった。

何故見滝原を離れた彼女が、一人で、こんな場所で、こんな事をやっているのかは分からなかった……だが悪いことをやっているのはキリカにも分かった。

 

『だめ!エリカ!』

 

『……ッ!』

 

彼女が止めようと声をかけた瞬間、青ざめた顔でえりかは逃げ出し、キリカは呆然と取り残された。

どうしたら良いのか分からなかった彼女はその場に残り、商品が無くなっているのを店員が見つけ、キリカに疑いをかけた。

親友が罪を働いたと言うショックと、元来の内気な性格のせいで上手く喋れず……結果えりかにより罪を擦り付けられる事になってしまったキリカ。

 

『……もう誰も……信じられない……』

 

万引きをしたと言う事で近所で話題にされ、親からも疎まれ、学校ではさらに誰にも寄り付かれなくなった。

キリカはその日から以前よりさらに内向的になり、ひねくれた物の見方をするようになっていった。

学校にも行かず、家にもあまり帰らない……人間不信に陥っている彼女に<居場所>など無かった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『手伝いますよ』

 

『……は?』

 

彼に出会うまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後になったが、結局恭介が学校に来ることはなかった。

連絡も無いためキリカは心配で頭がいっぱいだったが、これから魔法少女体験ツアーに行くことになっている……彼女はその為に必死に切り替えた。

 

「……ダメだよキリカ、信じなくてどうするのさ……」

 

待ち合わせのファーストフード店の化粧室で、顔を洗い自分を奮い起たせる……キリカは自らを守るために、自分から進み出た恭介の勇姿を思い出していた。

 

「キョウスケは強い……何事にも絶対の自信を持って臨んでる……私は彼の様になりたい……勇気ある自分に」

 

『その願いが本当なら、ボクが叶えてあげられるよ?』

 

鏡を見つめ、自らの思いを再確認しているキリカの元に、キュウベえはやって来て話しかけてきた。

 

「……遠慮しておくよ、契約で変わっちゃったら、私は恭介に顔向けできなくなる……彼の思いを踏みにじる事は絶対にしたくないんだ」

 

『……そっか、なら願いが決まったらいつでも言ってほしい、ボクはいつでも待ってるよ』

 

自分が変わるために協力すると言ってくれた恭介を裏切るのは、えりかと何が違うのか?……そう考えてしまったキリカは、キュウベえの誘いを断った。

 

「……さて、じゃあ行こうか……キュウベえがいると言う事は、他のみんなも集まってるかも」

 

そろそろ良い時間だと判断し、化粧室を出る……辺りを見渡すと三人が一つのテーブルに集まっていたので、混ざりに行く。

 

「やぁ、私も混ぜてよ」

 

「キリカさん、どうぞどうぞ!」

 

「ありがとう、サヤカ」

 

キリカを確認すると、全員笑顔で出迎えて席を空けてくれる。

 

「さて、全員集まったけれども……皆準備は万端?」

 

「あたしはこれを……無いよりはマシかなって」

 

そう言ってさやかは金属バットを持ち出す。

無論人間にとっては十分凶器だが、相手が化け物であると思うと、素人である三人にも少し心許なく見えてきた。

 

「そうね、それくらいの心構えの方が良いわね……鹿目さんは?」

 

「私はその……これを……」

 

まどかが取り出したのはノート。

そこには昨日の寝る前や、今日の授業中書いていたのか、自分の契約した時の衣装案と、マミやほむらの衣装などが描かれていた。

これには全員爆笑した。

 

「いやぁ、流石まどかだわ!あんたには勝てんわぁ!!」

 

「う、うん!素晴らしいよマドカ!!」

 

「うふふ……意気込みとしては十分ねっ」

 

「うぇぇっ!?わ、私真剣なのにぃ!うぅ……」

 

当人は至って真面目にやっている故に、笑われて恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にしてうなだれる。

 

「こ、こほん……それで、呉さんは?」

 

「ん……私は特にないよ……マミを信じてるからね」

 

キリカはマミにそう返して微笑む、心なしか左手のアクアマリンが輝きを増した気がした。

 

「あら……ありがとう、それは責任重大ね」

 

「そう、だからよろしく頼むね」

 

「任されました……じゃあ、出発しましょう」

 

「「はい!」」

 

「了解」

 

マミの一声で、三人は立ち上がり付いていく。

その姿を、キュウベえは黙って見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法少女のパトロールは、実は地味で、ソウルジェムでダウンジングするように、魔女の反応がするまで歩いて探すのだ。

もしかしてこのまま何事もなく終わってしまうのでは?と三人は考えてかけたが、途端にソウルジェムが反応した。

 

「これは……近いわねっ」

 

マミがそう言って先導し、三人は付いていくと……廃ビルの近くまでやって来た。

ふとまどかが見上げると、廃ビルの屋上に人影が見え、その刹那人影が飛び降りた。

 

「マミさんっ!あれっ!」

 

「ッ!はぁッ!」

 

マミは咄嗟に変身し、リボンを使いクッションにして、それを受け止めた……人影の正体はOLで、その首には謎の模様が浮かんでいた。

 

「これは<魔女の口づけ>ね……人を惑わし、狂わせ、奇行に走らせる危険なものよ」

 

「ひどい……」

 

「何て奴らなの……」

 

「…………」

 

魔女の恐ろしい習性に、まどかとさやかは嫌悪し、キリカは険しい表情になる。

 

「とりあえず意識を失っただけだから、大丈夫だとは思うわ……さぁ、この人の為にも……行くわよ!」

 

「はい!」

 

「お任せあれ!」

 

「うん……行こう」

 

マミがソウルジェムを構えると、結界の入り口が視覚できるようになった……四人は覚悟を決めて乗り込んだ。

 

「あ、この感じ前のと……」

 

「ええ、前に貴女方が迷い混んだ結界と同じ魔女らしいわね……美樹さん、バットを貸してもらえる?」

 

「え?ど、どうぞ」

 

さやかがマミにバットを渡すと、光に包まれ、形状が変化して豪華になった。

 

「これで本当にマシになったはずよ」

 

「おお!これで使い魔くらいならぶっ飛ばせますかね!?」

 

「流石にそこまではいかないわ、あくまで自衛用ね……さぁ、付いてきて!」

 

先に進んでいくツアー一行、そこに襲い来る魔女の手下<使い魔>……以前見かけた物以外にも、蝶の羽が生えた様な物もおり、飛んでさやか達に向かってくる。

 

「三人とも問題ない!?」

 

「このぐらい!何でもないですってぇ!」

 

「な、何とか大丈夫です!」

 

「サヤカ、頑張って!」

 

「ぬおぉう!!」

 

マミが捌ききれない所は、さやかがマジカルバットを振るって必死に追い返して難を逃れる。

それを繰り返し、何とか最深部に到達する。

 

「良く頑張ったわね、美樹さん」

 

「まどかとキリカさんの為なら、えんやこらですよ!」

 

「ありがとう、さやかちゃん」

 

「私からも感謝を……それでマミ……もしかしなくてもあれが魔女?」

 

そう言ってキリカは最深部に座す巨大な化け物を指差す。

まさしく、それこそこの結界の主たる<薔薇園の魔女 ゲルトルート>であった。

 

「ええ、間違いないわ」

 

「うわぁ……グロい」

 

「……あ、あんなのに勝てるんですか?」

 

ゲルトルートの外観は、頭が薔薇の茂み、身体は芋虫の様であり、背中には蝶の羽が生えている……使い魔よりも遥かに化け物じみていた。

それでもマミは余裕を崩さない。

 

「大丈夫……負けるもんですかっ」

 

さやかのバットを使い、結界を張って飛び降りるマミ。

本格的に魔法少女と魔女の戦いが始まった。

マミは使い捨てだが、基本構造が簡単なのと、単発の威力に優れているマスケット銃を、複数魔力で作り出して次々撃ちだしていく。

対してゲルトルートは、体格のわりに素早く空を舞い、弾丸を回避しながら、拘束する使い魔をけしかけて隙を突くなどして、トリッキーに立ち回っている。

 

「(これが魔法少女の戦い……魔女を倒すためには魔法少女の力が必要になるのは絶対だ……今回魔女の実物を見て、感じて分かったよ……)」

 

マミの戦いを見ていると、キリカの中で沸々と戦う意志が湧いてきていた。

 

「(もし私の知らない間に、大切な人が……マドカが、サヤカが、マミが、ナギサが……キョウスケが魔女に殺されちゃったら?……きっと私は後悔してもしきれないだろう)」

 

蔓で足を捕られ、吊し上げられてしまうマミ。

しかし、心配そうなまどか達の顔を見て、笑顔をうかべる。

首元のリボンを外し、それにより蔓を弾き飛ばし、そのまま魔力で大砲の様な銃に変える。

 

「ティロ……フィナーレ!」

 

「(……なのに……私はこのままで良いのだろうか?)」

 

ゲルトルートは弾丸をモロで受けてしまい、魔力につつまれ爆散し、グリーフシードを落とす。

マミは地面に着地と同時に、作り出した紅茶を飲む……余裕の表情であった。

 

「やったぁ!」

 

「マミさん!凄いです!」

 

「……フフッ……」

 

「(……マミやキョウスケの様な……戦う<勇気>が私にあれば……!)」

 

キリカの中で変化が訪れようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結界が崩壊したのを確認し、マミはグリーフシードを拾う。

 

「これが魔女の卵であるグリーフシード……とても重要な物なの」

 

そう言って、ソウルジェムにグリーフシードを近づけると、少し黒ずんでいたのが無くなり、綺麗な状態になる。

 

「こうして、定期的に穢れを吸わせないと、魔法が使えなくなっちゃうの……だから、皆こぞって魔女を倒すわけね」

 

「おお、なるほど……やっぱり無制限に暴れれるみたいなうまい話はないわけですな?」

 

「さ、さやかちゃん暴れたかったの?」

 

「いやいやぁ、例えばのは・な・しっ♪」

 

すっかり談笑モードに戻っている二人、しかしマミとキリカは違った。

 

「さぁ、これをどうぞ……譲ってあげる……もう一回くらいなら使えるはずよ?」

 

「えっ?……ッ!転校生!」

 

「あぅ……」

 

「……暁美ほむら……」

 

マミが言って、二人は初めてほむらがいたことに気づいた。

気づいていたキリカは、静かな怒りを瞳に宿しながら、彼女を見ていた。

 

「いいえ結構よ、別にグリーフシードが欲しくて来たわけでは無いもの……今回私が来たのは、忠告のためよ」

 

「……ど、どう言うことさ!」

 

さやかが聞くと、ほむらは後ろ髪を払ってから話し出す。

 

「貴女方三人は契約をしない方が良いわ……特に鹿目まどか」

 

「うぇっ?わ、わたし?」

 

「契約しない方が良いって……私達には戦いなんて無理って言いたいの?」

 

ほむらの発言に、まどかは困惑、キリカは苛立ちが表情に出る。

 

「そこまでは言ってはいないわ呉キリカ……ただ曖昧な感情や焦りで契約すれば、後悔が待っているだけと言いたいのよ」

 

「…………」

 

「うぇひひ……私はまだ願い事も決まってないし、何とも言えないかなって……」

 

「右に同じ……っと言うか、あんたに忠告されるまでもない!」

 

それぞれの反応を見てタメ息を吐いた後、ほむらは改めて口を開く。

 

「それなら良いのだけれど……ただ、私は貴女達の誰も信用も信頼も出来ない……だから、邪魔になるなら誰だろうと容赦はしないわ……覚えておきなさい」

 

彼女はそう言い残して去ろうとした。

しかし、ほむらにとって予期せぬ事が起こってしまう。

キリカが<勇気>を振り絞ったのだ。

 

「キュウベえ、契約しようか」

 

「「「えっ!?」」」

 

「……呉キリカ?」

 

『どうやら、願い事が決まったようだね』

 

キリカの発言に、三人は驚愕し、ほむらは目を見開き振り返る。

待っていました、と言わんばかりにキュウベえは彼女の前に現れる。

 

「私の話を聞いていたのかしら?」

 

「聞いたうえでそうしているんだよ、私は……暁美ほむら」

 

ほむらと面と向かいながら、キリカは堂々と言う。

かつての内気な自分を否定するように。

 

「戦う理由が出来たから……私は今どうしても力が欲しい」

 

「……戦う理由ですって?」

「うん……キミが何を願ったのかは知らないし、何が目的なのかも知らない……だけど敵対する可能性があるなら、それを討つ力は必要でしょう?」

 

「ッ!呉キリカ……!」

 

「先に撃ったのはキミだッ!暁美ほむらッ!!私の大切な友達に銃を向けたのは誰だったか忘れたとは言わせない!!」

 

互いに睨みあうキリカとほむら。

二人の殺気に黙り混むまどかとさやかは、最早傍観しているしかない。

しかし、マミは何とか落ち着いてもらおうと、声をかける。

 

「呉さん、落ち着いて!」

 

「マミ、すまない……私にはこれしかないから……キュウベえ!私にキョウスケの敵を打ち倒せる力を!!」

 

『……契約は成立だ、おめでとう……これでキミも晴れて魔法少女となった』

 

キリカの身体から光が放たれ、それが形となりソウルジェムへと変わり、彼女の手に収まる……その色は青紫であった。

 

『……それにしても契約時に、全く微動だにもしなかった娘は初めてだ……凄まじい精神力だよ、キリカ』

 

「目の前に敵になるかもしれない奴がいるのに、悠長に倒れてなんていられるわけないでしょ?」

 

キリカは答えながらも、ソウルジェムを使い変身する。

その外観はほむらが別の時間軸で見てきたキリカと同じ、黒と白を基調とした服に、首元に真紅のネクタイ、右目に眼帯をつけたスタイルだ。

そして、その手には魔力で作られたカギ爪が現れる。

身構えるほむらにキリカは言った。

 

「暁美ほむら……私からの忠告だよ、もし私の身近な人間……特にキョウスケに手を出したりしたら……その時は容赦はしないからそのつもりで」

 

「……貴女を突き動かすもの……それは何?」

 

ほむらの質問に対して、キリカは微笑み答えた。

 

「<愛と勇気>だね……どちらも彼から貰ったものだから」

 

「……なるほど……確かに貴女は違うみたいね……少しだけ安心したわ」

 

キリカの答えを聞き、ほむらもまた微笑んだ。

 

「ん?どう言う意味?」

 

「今の貴女が知る意味などないわ……まぁ、巴マミと仲良くやりなさい」

 

キリカの疑問の答えを語ることなく、今度こそほむらは去った。

その後ろ姿が消えてから、キリカは変身を解く。

 

「……キ、キリカさん!すごい剣幕だった!」

 

「え、えっとキリカさん……ですよね?」

 

「大丈夫だよマドカ、私が呉キリカで間違いはない」

 

普段笑うときも作り笑いだった彼女が、今は自然に素の笑顔を見せている……勇気を振り絞ったキリカは一皮剥け、内向的でひねくれていた自分を卒業し、感情を素直に表現しているようだ。

 

「……後悔はないのね?」

 

「もちろんだよっ!これからは一緒に戦おうマミ!あっ、それから同い年なんだから、呼び捨てで頼むよ」

 

心配そうな表情のマミの手を取り、笑ってみせるキリカ。

そんな彼女に釣られて、マミも思わず笑った。

 

「ありがとう!……これからよろしく頼むわね、<キリカ>」

 

「うん、よろしくマミ」

 

手を取りあうキリカとマミ。

それをみて笑顔になるまどかとさやか。

こうしてまた一人、正義の魔法少女が生まれたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、同時刻……別の魔女の結界に、とある親子が閉じ込められた。

 

「ここは一体?……あ、あれは何だ?」

 

「ちょっと!何かのイタズラなら承知しないわよ!?」

 

「え……?これって……玩具?」

 

父親は混乱し、母親は怒り、小学生くらいの娘は逆に冷静になっていた。

辺り一面が玩具だらけのそこは、異様な雰囲気を漂わせていた。

 

「な、なんか不気味なのがこっちを見てるぞ!」

 

「何ビクついてるのよ、浮気バレた時なんて全くビクついて無かった癖に!」

 

「こ、こわい……何アレ?」

 

そこへ現れた、結界の主である<玩具の魔女 ローザシャーン>。

ビー玉の頭に白いフードを被った人型の魔女で、親子を無機質な顔で見つめている。

 

「……いい加減しなさいよ!さっさとこのくそみたいな場所から出しなさいよ!」

 

「バカ!あんまり刺激すんな!」

 

「……あっ」

 

母親が怒りに任せて、辺りの玩具をひっつかみローザシャーンになげつける……その瞬間物凄い速度で、父親と母親の前に躍り出るローザシャーン。

 

「え?」

 

「なっ」

 

ローザシャーンの手で二人の頭が掴まれ、一瞬で握りつぶされた……あまりに凄惨な光景だった……だが、娘は恐怖で涙を流すわけでも、顔を覆ったり錯乱したりするわけでもなく、黙ってその様子を眺めていた。

 

「私は死ぬのかな……誰にも求められず、愛されもしないまま……」

 

二人の死体を投げ捨てた、ローザシャーン……今度は幼い娘に手を振りかぶる。

 

「せめて……生まれ変わるときは……幸せな家庭に生まれたいな……」

 

死を覚悟して目をゆっくりつむる……しかし、中々その時は訪れない……恐る恐る目を開けると……誰かが、前に立っていた。

 

「まさか偶然とは言え、試験運用のチャンスがめぐってくるとはな……惜しむらくはもう少し早く発見出来れば良かったなと思うところだが」

 

その後ろ姿は、長い銀髪、白い燕尾服にシルクハット……そして、魔女の手を防いでいる右手には<白いグローブ>を嵌めている。

 

「<お姉さん>は……誰?」

 

長髪に、高い声だったので女性だと思った娘。

ローザシャーンを蹴り飛ばし、<彼は>振り返ってこう言った。

 

「私か?私は魔術師さ……」

 

「魔術師……?」

 

顔には目元を隠す仮面を着けているため、余計に性別不明になっているこの人物……そう、上条恭介である。

 

「(分からないようにするために、変身時にかつらと仮面が魔力で生成されるようにしたとは言え、まさか女に間違えられるとは……これは変声機能も検討するべきか?)」

 

とりあえず説明の暇がないため、戦闘に集中することにした恭介は右手を前につき出す。

グローブによりスズネの武器である、カッターナイフの様な刃の大剣を生成し、それを持って駆ける。

ローザシャーンは迎え撃つため、手の先から玩具の戦闘機や鋭い牙を持ったテディベアを生み出して飛ばしてきた。

 

「なら、こっちで迎撃だな」

 

さらにグローブで、左手になぎさの武器であるラッパを生成、吹き鳴らしてシャボンを飛ばし、玩具の編隊を撃破する。

これに対し、今度は大量のスライムを放射線状に放つローザシャーン。

 

「それは返すぞ」

 

そう言って恭介が右手をかざすと、スライムがテープの巻き戻しの様に、手に戻っていく。

これはなぎさの<またチーズが食べられる身体に戻してほしい>という願いにより生まれた固有魔法で、指定した対象を巻き戻しさせる事が出来る(ただし長時間使うには燃費が悪い)と言うものだ。

 

「それじゃあ、そろそろ決めさせてもらうぞ……」

 

恭介は自らの魔力による身体能力強化で、高速で接近……ローザシャーンも苦し紛れにビー玉を散弾の様にばら蒔いてきたが、翔んで回避される。

 

「さらばだ、なれの果てよ……」

 

大剣を上から降り下ろし、ローザシャーンを真っ二つにする恭介……仮面の奥の瞳からは、虚しさを感じさせた。

グリーフシードを手に取ってから、右手を掲げる恭介……すると真っ二つになっていた魔女の遺体が魂の様になり、グローブに宿る。

スズネの本来の固有魔法、倒した魔女の能力を一つだけ所持することが出来る(新しい能力が欲しい場合上書きになり、以前の物は無くなる)と言うもので、ローザシャーンの玩具を生み出し武器にする能力を得たのである。

 

「あれ?景色が元に……」

 

「結界の主が死んだからな、消えたんだよ」

 

本来の景色に戻ると、住宅街の一角で、空の夕陽が沈みかけている時間帯だった。

 

「えっと、魔術師さん!ありがとう、<ゆま>を助けてくれて!」

 

「ほう、君はゆまと言うのか……どういたしまして」

 

<ゆま>と自分の事を呼んだ少女は、ペコリと礼儀正しく恭介に礼を言った……しかし、途端に暗い顔になる。

 

「でも、お父さんもお母さんも死んじゃった……私はどうしたら良いの?」

 

「……そうだな……だったら」

 

恭介はゆまの前まで来て変身を解き、手を差し出す。

 

「僕の家に来ると良い……君に居場所をあげる」

 

その言葉を聞いたゆまの目が見開かれる。

<お姉さん>が実は<お兄さん>で、そんな事がどうでも良くなるくらい暖かい言葉をくれて……親が死んだときには涙も出なかったのに、自然と涙が溢れてこぼれた。

 




今回はキリカの契約、恭介の実戦、ゆまの登場と三拍子でした。

着々とコミュニティ、戦力、フラグが増えてきてます……とにかく書いてて楽しいです(笑)

ゆまがどう絡んでいくか、上条ファミリー誕生なるか、そして!杏子の出番はいつになるか!……未定です。
お楽しみに!
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