魔導転生 ~大魔導士キョウスケ☆マギカ~ 作:新世界のおっさん
キリカが魔法少女になりました。
愛するものの為に、その勇気を奮います。
恭介は魔法<玩具・オブ・ザ・パトリオット>を手に入れました。
玩具ならなんでもござれです。
ゆまを救出しました。
身寄りがないため、保護しましょう。
それでは引き続き魔導転生をお楽しみください。
泣いているゆまを背負って上条邸に帰ってきた恭介……外はすっかり夜だった。
彼女が返り血(おそらく殺された両親の物)で酷く汚れていた為に、まず風呂に入る様に彼女に促す。
「さて、とりあえず風呂に入ろうかゆま……今のままだと気持ち悪いだろ?」
「うん、わかった!ゆま、お風呂に入る!」
すると、ゆまはとても素直に返事をして、彼の後に付いていく……脱衣場に着くと、特に恭介を意識することなくその場で、服を脱ぎだした。
「(……まあなぎさくらいの娘だし、気にはしないか……なっ!)」
脱いだ事で露になった肌を見て、恭介は驚く。
身体の至る所にある打撲、火傷、切り傷……出来たての青アザもあり、そこに衣服が擦れるたびに表情をしかめるゆま。
「あっ……ごめんなさい、気になるよね……?」
「……気にならないと言えば嘘になるかな、どうして君が……ゆまがそんな状態なのか、これから一緒に暮らす上でも知っておきたい」
恭介もこんな状態になる事象はかなり限定されるので、ある程度予想は出来るが、当人の口から事情を聞きたかった。
ゆまは彼の言葉を聞いてしばし、考えた後にこう言った。
「……お兄ちゃんも一緒にお風呂に入ろ!裸の付き合い!」
「え?」
「……ダメかな?」
無論小学生くらいの少女に邪な感情を持つ気はないが、少し考える恭介……しかし、どうしても来てほしそうな様子だったので頷く。
「……まぁ、良いか」
「やった!」
「じゃあ、とりあえず先に入ってて……ゆまが浴槽に入ってから僕も入るから」
「はぁい!」
とりあえず血糊が酷い為、急ぎゆまに先に入っていてもらい、バスタオルや着替え等準備を行う恭介。
ここで彼は気づく、彼女の着替えが無かったことに。
「……古いのはもう無いだろうな……致し方ない、普通に自分のを着せるか……」
なぎさに……と頭を過ったが、彼女は久々の母親との水入らず……さらにスズネもエバースマイルの店番らしいので、近場は全てアウトだった。
結局比較的小さめのサイズの恭介の服を準備しておく。
「明日は服を買いにいこう……親からの小遣いなら結構あるからな」
そう心に留めておくと、風呂場からゆまの元気な声が響く。
「いいよー!!」
「分かった、今いくよ!」
彼女のお呼びに応えて服を脱ぐと、恭介も風呂場に向かう。
上条邸の風呂場は、両親があまり滞在していない為に、広さはそれなりにあるが、一般家庭のそれと変わらない。
ゆまは浴槽で、気持ち良さそうに足をチャプチャプと動かしている……血糊はすっかり落ちていて、本来の綺麗な緑の髪を取り戻していた。
「いらっしゃ~い、お兄ちゃん!」
「お邪魔しま~す……あぁ、そうそう……僕は上条恭介って名前なんだ、名乗り忘れてたけど」
「へ~、じゃあ恭介お兄ちゃんだ!私は千歳ゆまだよ!」
ここに来て初めて互いに名乗る二人。
それも上条邸に着くまでの間、ゆまがずっと涙を流していたので、そんな暇がなかった為とも言えるのだが。
身体にシャワーを浴びながらも、恭介は出来る限りゆまに顔を向けて会話している。
「千歳ゆまか、改めてよろしく」
「うん!……それで、どうしてゆまの身体がこんななのかって……話だったよね」
「……ああ」
神妙な顔つきで恭介が頷く。
先ほどまでは笑っていたゆまだが、語りだすと少しずつ笑みが消えていった。
「これね……お母さんがつけたの……<お前は役立たず>だって……いつも怒ってた……」
「お母さんが……」
「うん……特にお父さんが仕事から帰ってこない日は、お酒のんで、殴ったり蹴られたり……タバコの火を押し付けられもした」
「(……夫へのストレスからの児童虐待だな……)」
恭介は自分の世界でも、似たような事で社会問題になっていたことを思い出す。
(自分もしくは子供に)魔術の才能がない、夫婦仲が悪い、育児ノイローゼ、トラウマ……心に余裕がなく、ストレスの捌け口を求め、手近でほとんど抵抗できない子供を虐待するのは、人類共通の問題らしい。
「私は嫌だった……でも力も無くて、何も出来なくて……」
「お父さんや親戚は?」
「お父さんは私を見向きもしないかった……おじいちゃんとおばあちゃんがいるけど、お母さんと仲悪いみたいで……」
「……それは酷いな」
ゆまは味方のいない四面楚歌の状態の中で、虐待を受け続け、それでも必死に生きていた。
優しさも、愛も、まともに受けられず過ごしてきた彼女だったが……いつかは自分も必要とされると信じていたから、自殺や家出もせず耐えてきた……。
しかしゆまの思いとは裏腹に、今日両親は離婚の為に言い争いを始めて、本人のいる前で押し付けあいをして彼女を絶望させた……その直後に結界に取り込まれたのだ。
「だから……あの時恭介お兄ちゃんに、<君に居場所をあげる>って言ってもらえて、本当に嬉しかったんだ!ゆまを助けてくれて、優しくしてくれて……思わず泣いちゃった……お母さんとお父さんが死んでも泣けなかったのに……」
「それは普通だと思うよ……泣ける方がおかしい」
話を聞きながら、身体を洗い終えた恭介は、シャワーで洗い流した後に自らも浴槽に入る。
震えるゆまを抱き締めながら、湯につかる。
「ゆま、僕が君を愛するよ……だから今まで甘えられなかった分、沢山甘えていいからね?」
「い、いいの!ゆま……我慢しなくて良いの!?」
「もちろん!今日からゆまは僕の家族だからね!」
恭介の言葉に、またもゆまの涙腺が決壊し、我慢できずに彼女も彼に抱きつく。
「お兄ちゃん……」
「なに」
「お兄ちゃん……」
「どうしたの、ゆま」
「お兄……ちゃんっ……」
「そうだよ、ゆま……僕はここにいるよ」
彼女が泣き止んで風呂から上がったが、ゆまは疲れていたのか、ソファで恭介の膝を枕に寝てしまった。
「なぎさは明日またこっち来るらしいし、事情説明考えておかなきゃな……」
ゆまを抱えてベッドに寝かせた後、恭介は一人ソファで物思いにふけった。
次の日の朝……目を覚ました恭介は、自分が考え事をしている間に寝てしまったのだと気づく。
「しまった……思いっきりソファで寝過ごし……毛布?」
何故か自分に毛布がかかっていた事に疑問を感じたが、それはキッチンに見える後ろ姿ですぐに氷解した。
「ありがとうスズネ、君だろ?毛布をかけてくれたのは」
「あら、起きたんですね……そうですよ、貴方が体調を崩すと、色々面倒でしょう?」
どうやら恭介の見解は正しかった様で、身を案じて彼女が毛布かけてくれたらしかった。
スズネはエプロン姿で鼻唄まじりに、味噌汁が入った鍋をまぜている。
毛布をよけて、恭介もキッチンに入って様子を確認すると、大皿に焼き魚(さば)とジャーマンポテト、ボールにシーザーサラダが用意されている。
「冷蔵庫の中に色々あったので、適当に作りました……ご飯は炊けていますので、味噌汁があったまったら食べましょう」
「……嫁に欲しいなこれは」
「……お世辞は良いので、皿の用意をお願いします」
「ふふっ、了解」
素直に褒められたのが照れるのか、彼にそっけなく指示をするスズネ。
その様子に微笑んで恭介は頷き、皿を出してそれぞれに出来ている料理を盛り付けていく。
「……ところで話が変わるんですが、また小学生を拾ったみたいですね……」
「いや、まあそうなんだが、その言い方はかなり語弊があるからやめてくれ……私がそれを趣味にしているようではないか」
「大丈夫ですよ、貴方がただのロリコン変態なら、今頃こんな場所に私はいませんから」
「ハハハ……ありがたいねぇ」
先ほどの礼とばかりに、いじってくるスズネ。
苦笑しつつ彼は料理を運んでいき、ならび終えてから彼女に声をかける。
「それじゃ、噂の小学生を起こしてくるよ」
「変なことはしないように」
「誰がそんなことするものか」
恭介はこう応えたが、昨日一緒に風呂に入り、裸で抱き締めあったのは内緒である……大人はかくもズルい生き物だ。
「ゆま、朝だよ」
「ん……あれ、お兄……ちゃん?」
時間は午前7時だ……良い感じの時間なので、ゆまに起きてもらう……彼女は若干寝ぼけ頭で起きるが、しばらくしてハッとしたように怯えた表情で飛び起きる。
「ご、ごめんなさい!いつの間にか勝手に寝ちゃってたよ!」
「疲れてたんだし、仕方ないよ……知り合いがご飯つくってくれたから一緒に食べよう」
「あ……うん!ゆまお腹ぺこぺこだよ~」
生活環境が変わっていたのを、今になって実感したゆまは、表情から怯えがなくなり笑顔になった。
二人でリビングへ行くと、スズネがよそったご飯をテーブルに置いている所で、その緋色の瞳でチラリとゆまを見た。
「おはよう……よく眠れたかしら?」
「は、はい……えっと、千歳ゆまだよ」
「どうも、私は天乃スズネ……最近ここに通う様になった者よ、仲良くしましょう、ゆま」
「うん、スズネお姉ちゃん!」
互いに笑顔で挨拶をするゆまとスズネ。
何だかんだ面倒見が良いスズネは、なぎさと言い、ゆまと言い、相性が良いらしい。
二人が席についたので、恭介も……と言ったところでチャイムが鳴る。
「なぎさですかね?」
「多分……だけど、魔力を二種類感じるんだ……マミさんか、それとも……」
恭介がその先を言いかけて、スズネは立ち上がる。
「……用心の為に私が後ろに控えますか?」
「ん……一応頼む、ゆま、すまないけど少しだけまっててくれるか?暇なら付いてきても問題ないし」
「うん、ゆまも一緒に行くよ!」
ゆまを連れて彼が先行し、その後ろからスズネが付いていく。
多少緊張感を持ちながら、玄関のドアを開ける……その先にいたのはなぎさと……。
「兄さま……と誰なのですっ?」
「あらら……キョウスケ、また女の子拾っちゃったみたいだね」
キリカだった。
その事実に予想外すぎて恭介は若干固まったが、すぐにいつも通り話しかける。
「……なぎさとキリカさん、どうぞいらっしゃい……この子の事も紹介したいので、とりあえず中へ……」
「わかったなのですっ」
「うん、分かった」
立ち話もなんだったので、二人を招き入れる。
スズネはいつの間にか消えていたので、恐らくリビングに戻ったのであろう……左手にゆま、右手になぎさの小学生サンドされた状態でリビングに向かうと、やはりもどっていた彼女の第一声が。
「ロリコンですね」
だったのは、必然であった……無論恭介は否定した。
五人とそれなりに増えたが、スズネが沢山つくってくれていたので、問題なくすぐ全員で食卓を囲めた。
席順で若干揉めたが、家主である恭介が上座、残りは年齢順と言う事で落ち着き、食事を始めた。
因みにそれで、スズネが中学一年生である事と、なぎさとゆまが同い年であることが分かった。
今恭介は、昨日まるまる会えなかった分、キリカと話をしていた。
「いやぁ、今日は朝から驚きの連続だよキョウスケ……ユマの事と言い、スズネの事と言い……」
「休んでから色々あったものですから」
「まっ、私は一向に構わないけどね……キョウスケの話す限り悪い子じゃないんだろうから」
「(……休んでいる間に、彼女は契約をしてしまったみたいだけども……以前と雰囲気が変わったな)」
魔力を感じた時点で、彼女が魔法少女になったことは、恭介もとっくに分かっていたが、疑心暗鬼が鳴りを潜め、すんなり物事を受け入れている。
さらに、自分を変えようと常に気を張っていた感じが無くなり、柔らかい雰囲気になっていた。
「何か、心境の変化でもありましたか?」
「……さすがにわかっちゃうか……」
「そりゃそうです……見てればすぐわかりましたよ」
悪戯がバレた子供の様な表情になった後、キリカは自分の今の心情を語りだした。
「戦うって決めたんだよ……大切なモノのために」
「……マミさんやほむらの様になると?」
「ふふっ……察しが良いね」
「あんな事があった後ですから……」
あんな事とはもちろん、ほむらが恭介を銃撃した時の事だ。
彼が心配そうな表情を浮かべたので、キリカは何事でも無いように笑う……これ以上恭介に心配をかけないように。
「私は大丈夫、だからそんな顔しなくて良いよ」
「……後悔はないと?」
「自分で決めた事だから……あむっ」
それ以上語ることは無いとばかりに、キリカご飯をかきこんだ。
「兄さま、ゆまちゃんは今日どうするなのです?」
「ゆま、一応学校には行ってるんだよね……なぎさちゃんとは学校違うんだけど」
話に一端区切りがついた所で、なぎさとゆまがこの後について話しかけてきた……恭介としては、なぎさはともかくゆまは自衛手段がないため、途中で分かれるのでは、二人で行かせるのは不安があった。
「なら、スズネに二人を送ってもらえると嬉しいかな」
「私は暇ですから構いませんよ」
「よろしくなのですっ」
「お願いします!」
二つ返事でokしてくれるスズネ、やはり面倒見が良かった。
それに彼女は現在学校に通っていないので、恭介よりも、動きやすかった……帰りはなぎさと二人で帰れば良いので、問題はなくなった。
朝食終了後、準備を整えて五人は外にでる……空は晴れ渡り、空気も清々しい。
「「行ってきます(なのです)!」」
「行ってらっしゃい、気を付けて行くんだよ」
「私がいるので、大丈夫ですよ」
「油断はしない方が良い……女の子なんだからね」
「……肝に命じておきましょう」
三人とはここで別れ、恭介とキリカは二人で見送る。
見えなくなった辺りで、不意に彼女は彼の腕に抱きつく。
「オウフッ……キリカさん?」
「やっと二人きりになれた……私だって心配してたんだ……皆の前では言えなかったけど」
恭介がキリカが契約したことで心配した様に、キリカも恭介が昨日来なかった事でかなり心配していた。
頬を膨らませ、かなり拗ねた様子のキリカを見て、恭介は安堵した。
「(見ぬ間に成長して、少しだけ寂しいと感じたが……根っこは変わっていないようだな……)」
「……キョウスケ?」
黙って自分を見ている恭介に疑問を懐き、首を傾げるキリカ。
「おっと、すみません……少し安心しただけですよ……やっぱり、キリカさんはキリカさんだって」
「あふっ……うん、当たり前じゃないか」
恭介が頭を撫で、キリカは気持ちよさそうに頬を緩める。
「……黙って休んでごめんなさい……何かして欲しいこととかありますか?」
申し訳なく思い恭介は、キリカにお詫びに何か出来ないか聞くと、彼女はこう返した。
「時間……まだあるから……もう少し撫でて欲しいかもしれない」
「……お安いご用ですよ」
二人はしばらくその場を離れることはなかった。
一方隣町である<風見野>では、縄張りにしている魔法少女<佐倉杏子>が、ぼんやりと空を眺めながらビルの屋上で昼寝をしていた。
「(……なんだか最近暇だな、随分魔女を見かけてねぇ気がする)」
彼女は基本利己的に自分の魔法を使っているため、魔女が少ないのは死活問題であった……グリーフシードが手に入らないせいで、好きに魔法を使えないからである。
「しゃーないっ!拠点移すか!」
それを良しとしないため、杏子は起き上がり、行動に移ることにした。
「(つってもこの辺りで一番魔女が集まってる場所なんざ決まってるよな……)」
彼女は風の流れる方向に目を向ける、流れる先には彼女の良く知る場所が存在している。
「マミ……悪く思うなよ、アタシは今腹ペコなんだからさ」
見滝原は今、魔窟へと変わろうとしているらしかった。
体調不良で書けないのが、私には一番苦痛です(リアル話)
上条邸の住人も増えていく一方、魔法少女と魔女も、見滝原に集っていきます(……タタカエー…タタカエー…!
次回はさやかちゃん!大活躍だよ!(おそらく)