魔導転生 ~大魔導士キョウスケ☆マギカ~   作:新世界のおっさん

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大魔導士、知る

唐突な退院することになった上条恭介を迎えにきた両親は、息子をマジマジと見つめた。

確かに息子が車に引かれ、ひどい状態だったのは知っている……だが全く問題なく手足が動いている。

それも最悪動かなくなると言われた指すらも完璧にである。

 

「先生……本当にもう息子は完治を?」

 

「恐れながら……真に恐れながら完治しています……もはや奇跡ですな」

 

苦笑する医者も実際に半信半疑だった。

そんな彼の様子を二人は一瞥したあと、母は恭介を抱き締め、父は頭を撫でる。

 

「良かったわ!本当に良かった……」

 

「ああ、恭介……お前が交通事故にあった時はどうなることかと思っていたが……父は嬉しいぞ……」

 

「母さん……父さん……」

 

両親のぬくもりは、魔術を本格的に始めたその時に絶ってしまった為に、恭介にとってとても暖かかった。

自然と涙腺に来そうになったが、首を振り、二人を見る。

 

「帰ろう、先生も忙しいだろうし……」

 

「はははっ、すまないね……気を使ってもらって……」

 

実際帰ってもらう方がありがたかった、あの後重い心臓病を患っていた患者もまた突然治ったらしく、退院すると連絡があり、彼は混乱しきっていたのだ。

 

「(何故私の担当に限ってこんな……)」

 

「それでは、失礼します」

 

「お世話になりました」

 

「あ、いえいえ、お大事に……」

 

三人が荷物をまとめて出ていくのを、医者は見送る。

恭介は彼にすまなそうな視線を送りながら、その場を立ち去った。

恭介達が去った後、医者は大きくため息を吐きながら、腹を抑えた。

 

「(これ以上、こっちの胃が悪くなる様な事は起こらないでくれよ?)」

 

そう思った矢先、看護士が急いで現れ、最悪のタイミングで報告した。

 

「先生!発ガン患者から突然ガンが消失を!」

 

「今日は厄日だ!もう好きにしてくれ!!」

 

なお、この医者は胃薬を大量に飲む羽目になったそうな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自宅へと帰る道程で、初めて乗った自動車や、見る景色、人々……全てが目新しく恭介をウキウキとさせた。

 

「知りたい……もっと学ばなければな……」

 

彼は小声で呟きながら、窓の外を眺める。

しばらくすると車が途中で止まり、とある場所に入っていく。

何事かと待っていると、父が外に出て機械に紙幣を入れ、何かを抜き出し、車の何処かに突っ込んだ。

 

「(この臭い、石油か!そうか、この乗り物は石油を燃やして走っていたのか……!)」

 

恭介の知っている石油の運用方は、やはり魔術行使の為の媒体の一つと言う認識だった……古き命達が腐り、溶け、泥々となっていったものなだけあり、エネルギーが豊富で媒体にはとても適していた……惜しむらくは簡単に手に入らない事だが。

それをこの場所では、燃料として使用していた事実に多少勿体無さを感じつつも納得した恭介。

 

「あらあら、どうしたの恭介?表情をコロコロ変えて……」

 

「な、何でもないよ」

 

母親は息子の様子をクスクスと笑いながら見ており、恭介は何となく恥ずかしくなって、視線を窓の外に向ける。

そこには、また別の自動車と家族の営みがあり、恭介は何となく微笑ましく眺めていた。

ふと眺めていた家族の一人である少女が恭介に気づき、驚いた顔をして車を出てきた……気になった恭介もまた外にでる。

 

「か、上条くん?」

 

「確かに上条だけど……?」

 

少女は、直し忘れの寝癖がある桃色の髪であり、優しげでほわほわした印象の雰囲気だった。

そんな彼女は<上条恭介>の知り合いらしい。

 

「確か交通事故で、暫く入院だって<さやかちゃん>や先生から聞いてたのに……あれ?」

 

「……予定より早く治ったんだよ、驚かせてごめんね」

 

真っ先にさやかの名前が出た事で、この少女がさやかの知り合いでもあることを理解し、恭介はとりあえず取り繕っておく。

すると少女は安心した表情になった。

 

「そうなんだ……うん、それならきっとクラスの皆喜ぶと思うよ!皆心配してたから……」

 

「そうか、なら明日はいつも以上に元気に登校しないとね……地獄の底から舞い戻ってやったさ!ってね」

 

「あははっ!そうだね、それが良いかもっ」

 

彼女の言葉に冗談混じりに返すと、少女も笑って賛同する。

と、その時後ろから音が聞こえて振り向くと、父が既に運転席に座り恭介を待っていた。

 

「と、ごめんね……そろそろ行かなくちゃ」

 

「ううん、こっちこそ引き留めちゃってごめんね」

 

恭介が謝り背を向けると、少女は首を横に振り逆に詫びた。

そのまま別れる……と思いきや、恭介は思い出した様に振り返り、少女に言った。

 

「そうだ、外に出るなら寝癖は直した方が良いよ?その方が君はもっと魅力的になれるんじゃないかな、<お姫様>」

 

「へっ!?」

 

恭介は少女の名前が分からなかったため、とりあえずの誤魔化しで、昔国のお抱え魔術師になった時世話係になったお姫様と重ねてそう呼び、車に戻っていった。

少女は突然の言葉にハッとして、頭を抑えると、直し忘れていたことに今さら気づいたのか、顔を真っ赤に染めて、恥ずかしそうに車に戻った。

 

「どうしたんだい、<まどか>?」

 

「ねーちゃ、どたぁ?」

 

「な、なんでもないから!」

 

その日から、少女<まどか>は自分の見た目にしっかり気を使うようになったそうな。

 

「(…………<お姫様>ってなに!?)」

 

そして家に帰り冷静になった後、恭介に<お姫様>と呼ばれた事について悶々とした夜を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で自宅に帰ってこれた恭介は、自らの環境についての情報を整理し始めた。

本を読んだり、暦(こよみ)を見たり、地図を見たり、アルバムを見たり……父の書斎には様々な物が揃っており、情報に事欠かなかった……今自分がおかれている状況を把握するのは必要不可欠な事だったため、彼は遠慮無く利用した。

恭介が特に驚いたのは、本によって知ったインターネットの存在だった……内容に偏りはあれど、様々な情報がパーソナルコンピューターと言う機械一つで調べられるのは、彼からすれば驚異的だった。

 

「(……この場所は日本と言う国に存在する見滝原市と言う土地、上条家は資産家で、母は見合いで嫁いできた……母の芸術家気質を受け継いでいる<上条恭介>は、音楽……特にバイオリンを愛しており、それで賞を受賞したりコンサートを開いたりもした……)」

 

大まかな情報は得たが、<上条恭介>についてより詳しく知るために、恭介は自室へと向かう……。

部屋はかなり整っている様で、目立った物がない。

 

「(強いて言えば、あのバイオリンくらいか……む?)」

 

ふとバイオリンを手に取った時、何となく身体に違和感が生じた……何かむずむずし、どうしようもない。

 

「(そうか……<上条恭介>、お前ここにいるのだな……そしてこれを弾きたいのだな?)」

 

恭介の世界にもバイオリンはあった、もっとも彼は触れたことも無かったのだが……しかし、どう持てばいいかは分かった。

正しい持ち方した途端、自然と弾く体勢になっていた。

 

「(よほど弾きたかったのだな……まあ、好きにすると良い……この身体は本来私のものではないのだから)」

 

力を抜き、意識の強さを下げ、恭介と<上条恭介>同調していく……次第に頬が緩み、手を動かす恭介。

 

「ありがとう……僕を治してくれて……またバイオリンを弾かせてくれて……だからこの曲は貴方に捧げたい」

 

<亜麻色の髪の乙女>……クロード・ドビュッシーの前奏曲の一つ、比較的高めな音で穏やかさと美しさを表現している曲である。

 

「(音楽については門外漢だが……とても良い曲だと思った)」

 

「ははっ、良かった……この曲、僕大好きなんです……」

 

恭介の言葉に喜ぶ<上条恭介>、彼がバイオリンを置くと次第に意識が弱まっていく。

 

「……良いのか?まだ弾いていても構わないんだぞ?」

 

「(僕はこれで十分……貴方にはかなりの恩があるし、貴方が成したいことに興味があって)」

 

「<魔法>についてか?ふふっ、やはりそう言うのに食いつくあたりお前も男だな」

 

想像以上に<上条恭介>と波長があったので、恭介も満足そうだった。

と、ここで恭介にとって嬉しい報告を彼はくれた。

 

「(テーブルの中に日記がありますから、それをみれば大体の交友関係は分かるかと……)」

 

「お、そうか……ありがとう」

 

「(…………)」

 

「……また沈んでしまったか」

 

意識の底に沈んでしまった<上条恭介>に感謝し、引き出しを調べると報告通り日記が存在した……かなりまめに記録されており、そこには彼にあった出来事が記されている。

 

「……中沢、さやか、鹿目さん等クラスの連中や、父の仕事の縁で知り合ったお偉いさん方、バイオリンでの繋がりで出来た友達もいる……それなりに広いな……そしてさやかは幼なじみで、一番親密と言える」

 

さやかが見舞いに来たのも、幼なじみを心配しての物だと理解し、日記を閉じる。

 

「多分<お姫様>が鹿目さんかな?さやかと仲が良いと書いてあるしな」

 

そう納得した恭介は、日記を元の場所に戻した。

背伸びしたあと、意思を決定した恭介は父の元へ行きこうお願いした。

 

「父さん、僕ね、出来るかぎり大きな温室が欲しい……出来るかな?」

 

ついに恭介は<上条恭介>も望んだ通り、行動を起こし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、暗躍するもう一人のイレギュラー<暁美ほむら>は、鹿目まどかを<契約>させないために、それを行う魔法の使者<キュウベえ>を殺しながら、危険性のある魔女を排除していった。

 

『君は何故ボクたちを』

 

「黙りなさい」

 

もう何匹殺したか数えきれない程、キュウベえの山が積み重なり、その処理にきたキュウベえをまた殺しとして、時間を稼ぐ。

 

「繰り返す……何度だって……貴女の為なら」

 

彼女の瞳は何を見つめているのか、それは<鹿目まどか>なのか、それとも……最早<暁美ほむら>にも分かっていなかった。




原作メインヒロインまどかとの遭遇や伏線を残しつつ、どんどん続きます(笑)

やはり一度書くと手が止まりませんね、書き物って奴はぁ(CV大塚芳忠
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