魔導転生 ~大魔導士キョウスケ☆マギカ~ 作:新世界のおっさん
全ての授業の過程が終了し、放課後となった見滝原中学校。
一息つけた恭介は、グッと背伸びをしてから立ち上がる。
「(父さんに昨日頼んだ温室は、まだまだ出来ないだろうからな、少々この辺りの地理を、歩いて調べてみる事としよう……やはり実際に見ると聞くとでは違うだろうしな)」
鞄を持ち、そのまま行こうとして声をかけられる恭介。
声の主は、<上条恭介>とそれなりに仲が良かったらしい<中沢君>だった。
「上条!暇なら俺とどっかいかないか?最近愚痴溜まってて聞いてほしいんだよぉ……」
「中沢……いいよ、僕でよければ」
「流石上条!お前はやっぱ良い奴だよっ」
中沢君について知るチャンスが無かった恭介には、その誘いが渡りに舟だったので了承し、二人で寄り道することになった。
「(さやか達も誘いたかったが、愚痴を聞くなら二人での方が良いはずだ……男にしか話せないこともあるからな)」
「あっ、恭介……」
「悪いね、帰りは一緒に出来そうにない……また明日」
「上条君、ごきげんよう!……わたくしは習い事に行かなくては……」
少し名残惜しそうな表情をしながら、仁美は親にいいつけられている、お茶や舞いの稽古へ早々に向かった。
「そっか、じゃあ今日はさやかちゃんと二人だね!一緒に帰ろ!」
「うん、そうだね!帰ろっか、まどか!」
「(ありがとう、まどか……フォロー助かったぞ)」
そしてさやかの事はまどかに任せ、恭介はそのまま中沢と学校を出た。
「ーーでなぁ、姉ちゃんがやたらデート行くときの服装はどっちが良いのか聞いてくるのさ!俺はどっちでも良いって言ってるのにさぁ……服選びのセンスなんか、俺には無いっての」
「……それは、深く考えずにどっちかを選んでおけば良いんじゃないかな?」
「いや、逆に選んだら選んだでそれで失敗したら、俺にとばっちりがくるんだぜ?答えたくなくなるわ~」
「(中沢がこう言う人格形成してるのは、姉が原因だったか……)」
現在話している二人は、学校を出て市街地まで来て、とりあえず当てもなくさまよいながら、中沢君の愚痴を恭介が聞いている状態だった。
中沢君の愚痴の大半が女性から二者択一を迫られた時であり、姉のせいでどちらでも良いが口癖になっている彼は、良く理不尽に悩まされているらしい。
「まあきっと不安だから、安心できる中沢に聞いてくるんだと思うよ……多分」
「その多分が余計だよ……はぁ、俺も上条みたいに没頭出来る物が欲しいねぇ」
心底羨ましそうに、中沢君は恭介を見る。
それに対して苦笑しながら、彼はこう返した。
「中沢が望んでるなら、いつか見つかると思うよ?」
「例えば?」
「……彼女?」
「……欲しいな」
彼の言葉に、いたって真面目な顔で返した中沢君。
その様子を見て思わず噴き出す恭介。
「そ、そこはどっちでも良いわけじゃないんだね」
「当たり前だろ!そう言う所はガチで曖昧に出来ないしな!」
「ちゃんと線引きは出来てるみたいで安心したよ……ただ僕からの中沢への印象が少しがっついてる男になったけど」
「ははっ、うるせーよ!」
互いに冗談混じりに盛り上がっていると、ふと中沢君の視線が一つの場所に定まった。
「うし、上条!ゲーセンに寄ろう!何かやってこのストレス発散したい!」
「僕はあんまり来たことないけど、面白そうだね、遊んでいこうか!」
実際は人生初体験のゲーセンだが、知識だけはあるので大丈夫だろうと、中へ入る。
「うっ!凄い音量だ……」
「そりゃゲーセンだからしかたない……っとあのレースゲーでもやろっと、人いるし」
「そっか……僕は少し静かな所にいるよ、今朝は疲れたし」
「りょーっかいっ」
慣れている中沢君には問題なかったが、恭介には初めての刺激であり、気分が悪くなったので、比較的静かなエリアへやってきた。
そこはクレーンゲームやプリクラが主な場所であり、休憩所もあったので、そこのベンチで腰かけた恭介。
「(雑音が耳に響くな……だから<上条恭介>は日記でゲーセンが嫌いと書いていたのか……ま、今ならその気持ちわかるぞ)」
耳を弄りながら項垂れていると、不意に小銭がばら撒かれる音が盛大に聞こえ、顔を上げる。
そこには自動販売機の前で、呆然と立ち竦んでいる、見滝原中学の制服を着た少女の姿があった。
「手伝いますよ」
「……は?」
放ってはおけないと、颯爽と立ち上がり小銭を拾い始める恭介。
それに驚いて、彼女もまた拾い始める。
しばらく無言で二人で拾い集め、少女の財布に納めていった。
「……数えたけど、全部ある……みたい」
「それは良かったです、では僕は……」
「あっ、待って……!」
役目を終えたと思い恭介がベンチに戻ろうとした時、少女に呼び止められた。
少女は単純に口下手なのか、内気な性格なのか、或いはどちらもなのか……多少時間をかけてこう聞いてきた。
「……な、なんで?」
「?」
「……なんで、拾ってくれたの?」
彼女の質問に、恭介は顎に手を当て困ったような表情になってから答えた。
「貴女が困っていた様子だったからですが、余計でしたか?」
「ッ!……いや、そんな事は……ないけども……さ……」
恭介の言葉に目を見開き、答えようとしてしどろもどろになる少女。
そんな彼女に対し、彼は首をかしげながらも言葉を待った。
「……今までこう言う感じで困った時、誰かに助けてもらったこと無かったの……だから……」
「……そう言う事でしたか、なら僕が初めて貴女の力になれた人間ってことですね」
少女の伝えたかった事が分かり、やっと納得できた様子の恭介。
そんな彼を、少女はキョトンとした顔で見つめていた。
「貴方……変な人だね」
「え?」
「あっ、ちがうっ、そうじゃなくてっ……あーっもう!どうして私はァ!」
突然の言葉に、今度は恭介がキョトンとし、少女は自分の発言内容に頭を抱えた。
その様子で彼女が何を言いたいのか恭介は理解し、語りかける。
「大丈夫です落ち着いて、ちゃんと聞いてますから」
「……うん」
「それで、僕が変……いや、変わってる人と言う事でしたが、それはどうしてでしょうか?」
恭介からすると、特におかしな言動をしたつもりはなくとも、彼女からすればおかしい所があったのかもしれないと、少女に改めて聞き直す。
それを受け、少女は申し訳なさげに口を開く。
「……私みたいな挙動不審で、口下手な奴の話をちゃんと聞いてくれるし……私と同じくらいの年でかなり落ち着いてるから……そこらの大人達よりよっぽど大人っぽいなぁ……とか思ったんだよね」
「あぁ……それはやはり家の事情ですとか、色んな経験を積み重ねた結果こうなっている感じですから……意識したことがありませんでしたね」
「……そっか」
少女は恭介の言葉を受けて、少し考え込む。
恭介はひたすら、彼女が再び話し出すのを待った。
しばらくして、少女は彼を見据え、決意を秘めた瞳で話し出す。
「……相談にのってほしい……」
「……僕で良いんですか?」
少女の言葉に、恭介が疑問を投げ掛けるが、彼女は即座に頷いた。
「……私サボり魔で、友達もいないし……ほとんど人間なんて信用してない……でも、君は私の話ちゃんと聞いてくれそうだと思ったから……」
少なくとも、恭介がまともに話を聞いてくれる人間だと信用している……少女は暗にそう言っていた。
「わかりました、でしたらお話を聞きましょう……しかし、その前に一応自己紹介を……上条恭介と言います、ご覧の通り見滝原中の生徒で、二年生です」
「……キョウスケか……私はキリカ、<呉(くれ)キリカ>……三年生だよ」
「なるほど、やはり年上の方でしたね……よろしくお願いします、呉さん」
「……キリカで良いよ、別に……私もキョウスケって呼ぶから」
「わかりました、キリカさん」
恭介としては互いの信頼の為、ここで名前を明かし、より信用性を増させるのが主な狙いだ。
無論、ずっとどう呼ぶべきかわからなかったのも理由の一つではあるのだが。
そして少女<呉キリカ>としても、名前を明かしてもらえたのが嬉しかったのか、先程よりも積極的に話し出した。
「今より小さい頃……たった一人の親友がいたの……でもその子は引っ越して会えなくなっちゃって……そして久しぶりにその子と再会した……でも最悪な事に、その子が万引きをしてる現場だった……」
「万引き……止めたんですか?」
キリカは暗い表情で頷く。
「でもそしたら、その子返さないまま逃げちゃって……残ってた私が疑われた……親より信じてた子だったのに、裏切られちゃった……」
「…………」
「その日から私は、何をするにも内向的になっちゃって、学校にもいけなくなっちゃって……最近は少しずつ顔を出せるようにはなったけど、人間関係はことごとくうまくいってない……また裏切られるような気がして……」
顔に手を当て、項垂れ、首を横に振るキリカ……それは現実を否定したい一心でやっているかのようにも見える。
「周りが信頼できなくて、そんな自分が嫌いで……でもどうしたら良いか分かんなくって……完全に袋小路……キョウスケ、私はどうしたら良いのかな?どうしたら苦しくなくなる?辛くなくなる?楽になれる?……答えてほしい……」
みるみるうちに縮こまってしまったキリカを見ながら、恭介は声をかける。
「キリカさん、今の自分が嫌なんでしょ?」
「……うん」
「どうしたら良いか分かんなくて、苦しくて辛くて楽になりたいんでしょ?」
「……うん」
恭介の声に対して、キリカは顔を上げない。
彼は全く怯まず続ける。
「なら変わりましょう?……嫌な自分から、本当に望んでる自分に」
「変わる……本当に望んでる自分に?」
多少声に力が戻るが、まだ弱々しい……恭介は続ける。
「誰も信頼できないなんて思ってたら、一人になるのは当たり前です……でも貴女はそれを望んでない、一人は苦しいから辛いから……」
「……うん、苦しい、辛い」
さらに少し力が戻る、恭介は続ける。
「なら、少しずつ信じてみませんか?いきなり周りを信じろなんて言いません……少しずつ地道にステップアップしていけば、キリカさんなら望んだ自分になれると思いますよ?少なくとも今、僕を信用して話を聞いてくれてますよね?」
「……確かに」
大魔導士はかつて、国からの依頼で渋々演説をした経験があった……その時かじった人身掌握術が、今一人の少女を立ち直らせる為に役立っていた。
「……キリカさんの話を聞いて、僕は貴女の力になりたいと思いました……だから、貴女が望めば僕は協力するつもりです……いえ、ぜひ協力させてください……幸い同じ学校ですから、いくらでも話は聞けますし」
「……分からない……」
キリカが呟き顔を上げると、その瞳には涙が溢れていた……。
「何でキョウスケは私にそんなに親身になってくれるのさ!親すら私を毛嫌いしてるのに!」
「当たり前だろ!今の貴女みたいな奴は僕も大嫌いだ!だからこそ、何とかしてやりたいんだろうが!一番苦しんでいるのがキリカさんなんだから!」
「うっ……うぅ……キョウスケェ……」
涙を流し続けるキリカの涙を、ハンカチで拭き取る恭介。
その行動が彼女には優しく伝わり、より歯止めが利かなくなってしまう。
我慢の限界を越えたキリカは、恭介の身体に抱きつき、嗚咽をもらす……その頭を彼は優しく撫でていた。
「……心が疲れた時は泣けば良いんですよ……泣けば少なくともスッキリします……そのあと頑張れば問題ないですから」
かつて同期の女性に泣きつかれた時に、この様にしていたな……と恭介は昔に思いをはせた……。
キリカが泣き止んだ頃には夕方だった。
目を腫らしながら、鼻をすんすん鳴らす彼女がようやく口を開いた。
「キョウスケ……」
「はい」
「……協力してほしい……」
「分かりました」
2時間の戦いに勝った恭介は、心の中でガッツポーズをし、微笑んだ。
「ん……キョウスケは友達?」
「もちろんです」
「そっか……へへ……」
「(この調子ならば問題は無さそうだな……私が骨を折った価値があったと言うものだ)」
心の底から嬉しそうに笑ったキリカを見て、恭介は彼女なら十分戻れる強さがあると確信した。
と、ここでキリカが何かに気づき、鞄を漁り始める。
「携帯、持ってる?」
「ええ、持ってますよ」
「……最新型だ……私とかまだガラケーなのに、良いなぁ」
「密かな自慢です」
赤外線で互いのアドレスを交換すると、キリカは笑って立ち上がる。
「毎日メールする!」
「バンバン返しますよ」
そこへ割ってはいる様に二人に同時に連絡が入る。
「……親から、そろそろ戻らないと叩き出すだってさ」
「こちらは友人から、そろそろ帰らないかと……」
それを聞いて一気に寂しそうな表情をするキリカ。
と、即座に返信メールを打ちながら口にだす恭介。
「い、ま、よ、う、じ、が、で、き、た……さ、き、に、か、えっ、て、く、れ……っと」
「キョウスケ……!」
「……プリクラでも撮りましょうか?」
「……もっちろん!」
キリカは満面の笑顔で頷いた。
一方で、銀髪の少女は一人焦っていた。
『……どうやら、またグリーフシードが出なかったようだね』
「どうしてなのです?……<なぎさ>は生きたいだけなのです……」
少しずつ溜まっていく穢れで、魔法少女の力の源である宝石<ソウルジェム>が黒く染まっているのをキュウベえは確認する。
『このままだと、取り返しがつかなくなるんじゃないかな?』
「知ってるなのです……そんな事は……なのです……」
自らを<なぎさ>と呼んだ少女の口から、血が垂れだす。
「……キュウベえ、知っててこうした……なのです?」
『知ってたよ、でも君はこうなる危険性があるか聞かなかったじゃないか……それに、契約しなければどのみちキミは』
キュウベえはその先を言う前に、泡のように破裂した……なぎさが魔法で攻撃をしたからである。
「チーズ食べたい……だからまだ、死ねない……なのです!」
彼女は穢れを浄化するため、街を駆け抜ける……彼女の行く末は、誰も知らない。
呉キリカ登場!
誰しもトラウマとかあるかと思いますが、人間不信がある意味一番怖い……人生台無しになります、そしてキリカはまさにその典型な娘ですよね(救いたい)
と言う事で参戦しました……え?誰か忘れてないか?もちろん、忘れてなどいませんが……検討させていただきます(低音)